ポケットモンスター シンギュラポイント   作:雁木まりお

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ラドンVSアオキ 前

GEAEEEEEEEEEEEEE!!!!!

 

 何だこのポケモンは…いや、本当にポケモンなのか?目の前の赤い生き物からはかつて見たヌシポケモン以上の威圧感を感じる。ヌシポケモンと違うのは、彼らは秘伝スパイスを守っている都合上こちらが引けば逃げられるが、この生き物は完全にこちらを敵として認識し遅いかかっている。

 

 数秒ほどペパーとネモはラドンを見て固まっていたが、その沈黙はラドンが降り立った民家が崩れ去ったことで破られた。

 

「GEAAAAA!?」

 

 自分の体重を理解していなかったのか、ラドン自身も驚いた様子で崩れ落ちる様はコントのようで、こんな状況でなければ笑いを誘ったかもしれない。しかし驚いてのたうち回るだけで周辺の民家が倒壊していく様子は周辺をパニックに陥れるには十分であった。瓦礫が人やポケモンに降り注ぎ、既に負傷者もでている。

 

「走れるか?あいつが慌ててるうちに一旦隠れるぜ!」

「で、でも放っておいたら町に被害が…」

「ポケモンを出すにもこのままじゃ狭すぎるし、あいつは俺たちを襲って来た…隠れていればどこかに飛んでくかもしれないだろ?」

 

 果たして本当にそうか?自分の言葉に対して湧いた疑問を振り払うようにネモの手を引き路地裏に駆けこんだ。二人を見失ったラドンは周囲を見渡し、クチバシを民家に突っ込んでみたり、人やポケモンを追いかけていた。幸い追いかけるだけでそれ以上のけが人は出なかったが、それでも諦めていないのかどこにも飛んでいく様子は見えない。

 

 このままではじり貧だ…。あの生き物はどこにも飛んでいくようには見えないし、気のせいか少しずつ苛立ち始めたようだ。しばらく車を腹立たし気に嚙みついていたが、とうとう我慢の限界がきたのか空に向かって咆哮を上げた。

 

GEAEEEEEEEEEEEEE!!!!!

 

「ひっ」

 

 その時物陰から小さな悲鳴が上がった。どうやら子供が逃げ遅れていたらしく、ガタガタ震えていた子供をラドンが見つけてしまった。ペパーが反射的にボールを構えた瞬間、ペパーより早くネモがボールを投げた。

 

「行っておいで!ヌメルゴン!」

「ヌメメー!」

「ああ、もう!頼んだぜキョジオーン!」

「ジオオォォ!!」

 

 ヌメルゴンもキョジオーンも比較的大きなポケモンである。二人はタイプ相性もわからないラドンを相手取るため、無意識に大きなポケモンを繰り出した。

 

「りゅうのはどう!」

「しおづけ!」

 

 ネモはラドンがドラゴンタイプであるという推測からりゅうのはどうを、ペパーは継続的なダメージを与えるためにしおづけをそれぞれ指示し、ヌメルゴンとキョジオーンは技を放った。ラドンは避けるそぶりも見せず、観察するかのようにその攻撃をじっと見つめたままだ。案の定技をまともにくらってしまったが、ネモとペパーは緊急事態故にそれを気にすることもなかった。

 

「GEAAAAA!?」

「当たった!」

 

 攻撃が通じたのか、それとも大袈裟に痛がっているだけなのか、少なくとも子供からこちらに注意を向けることができた。二人を見つけたラドンは当初の目的を思い出したのか、翼をたたみ前足のようにしこちらに体当たりをしかけてきた。技ですらないただの体当たりだが、巨大な質量が超スピードで迫ってくるだけで人を殺傷するには十分だ。

 

「ヌメメッ!」

「ジオォ!!」

 

 ヌメルゴンとキョジオーンはトレーナーの元へは行かせまいと壁となって立ちはだかるが、ラドンの勢いは凄まじく少しずつ押され始めている。クチバシが、牙が、爪がヌメルゴンとキョジオーンを傷つけるが、二体とも引くことはしない。少しでも時間を稼ぎ、しおづけでラドンの体力を削ろうとしているのだ。しおづけが当たった箇所が結晶に覆われていく。だがラドンは自分の肉ごと塩の結晶をかみ砕いた。

 

「なっ…自分ごと!?」

 

 ラドンのクチバシから血が滴り、骨が傷つくのも構わずバキバキと結晶がかみ砕かれていく。

 

「これは…流石にもうダメちゃんかもな…」

 

 ヌメルゴンが、キョジオーンがあまりに凄惨な光景に後ずさる。ラドンはにたりと笑うように口を開け、真っ赤に染まった牙を向く。牙にこびりつく肉片になるのは自分かもしれないという考えがペパーの頭をよぎったとき、空から何かがラドンに直撃した。

 

「…ムクホーク?」

「あの子…アオキさんのムクホークだ!」

 

 空から降って来たそれはアオキのムクホークであった。ジムで対戦相手のレベルに合わせ手加減している姿からは想像できない獰猛さでラドンの傷口を広げるように抉ると、ネモとペパー、そして子供から遠ざけるようにブレイブバードでラドンの頭を打ちあげた。

 

「やれやれ…トップから言われて海を見張っていたら、まさか海から空へ飛び出すとは…これがレンジャーが遭遇した生き物なのでしょうか?」

 

 いつの間にかアオキがいつも通りの気だるげな顔で立っていた。急いでいたのかネクタイや髪型も乱れているが、目だけはラドンを鋭く見据えている。

 

「アオキさん!気を付けて!その子とっても狂暴で…!」

「ええ、よく頑張りましたね。後は大人の仕事です。私も死にたくありませんので…全力でやらせていただきます」

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