DollsNest 外伝 『定めと意志と世界の終わり』 作:Kazuha.Y
ところどころ拙い所もあると思いますが、何卒生暖かく見守ってやってください。
「……来ないなぁ」
あちこちから銃声と砲弾の音が響く中、一人のニンフがビルの屋上に佇んでいた。
夜風が銃身を掠め、引き金にかけている指に冷たさが伝わる。
「上に行くには、このルートを通るしかないはずなんだけど……」
白い狙撃銃の照準器から目を離し、ため息を漏らす。
__いい加減、諦めてくれないかなぁ
首を回して体をほぐし、ビルの縁に腰掛けて曇天を見上げる。
彼女の身体が淡く輝いて、夜の闇にそのシルエットを浮かび上がらせていた。
「今まで、こうして何人殺してきたのかな……」
おもむろに取り出したブロック状の栄養食を半分に割り、コーヒーに浸す。
孤独に戦ってきた彼女__シロの、ささやかな楽しみだった。
「……美味しい」
そう呟き、また一口頰張る。
苦いはずなのに、どこか甘い。
この味を教えてくれたのは誰だったか。
「何度やったって同じ結末にしかならないよ……貴方もそう思わない?」
誰に向けられたものでもない言葉が、空の海に溶けて波紋を作る。
返事のように、空を砲弾が切り裂いてどこかへ飛んで行った。
「でも__」
シロはふと手を止めた。
廃墟と化した高層ビル群の向こうに、ちらちらと赤い火の粉が舞っているのが見える。
「今回は……違うかもしれない」
拡張頭環が敵影を捉え、ライフルを持って立ち上がる。
照準を覗いた先に居たのは、四つの羽を持つ異形だった。
__飛行型?珍しいな
スコープを微調整し、狙いを定める。
引き金に指を掛けたその時、拡張頭環が新たな警告を発した。
咄嗟に顔を上げ、周囲を見渡す。
赤い光が、シロを取り囲むように飛んでいた。
「……へぇ、そういう知能はあるんだ」
軽く笑いながら、腰のポーチを探る。
その手に握られていたのは、赤と水色の手榴弾だった。
「ちょっと派手に行こう」
空中に舞う異形たちが、機関銃を乱射して接近してくる。
シロは右手でライフルを持ったまま、二つを投げ上げた。
爆発と同時に電磁波が迸り、方向感覚を失った数匹が墜落する。
__次は……そっちか
三連装のスラスターが火を噴き、シロの身体が宙に舞う。
空中で姿勢を整えながら放たれた銃弾は、二匹をまとめて貫いていた。
「……これで終わり?」
屋上に着地し、レーダーを確認する。
敵影が無い事を確認し、シロは息を吐き出した。
「戦いの先に何が待ってるかなんて、誰も知らないんだろうね」
灰に白が混じる長髪が風に揺れ、遠くでまた爆発音が鳴り響く。
__もう少しだけ待ってて、母さん
シロは立ち上がり、ポケットから取り出した結晶を撫でる。
母の温もりを思い出し、涙が一筋頬を伝っていった。
「……ずっとここで待っててもしょうがないし、上に行こう」
ライフルを手早く仕舞い、大きなケースを背負う。
左右で色の違う瞳が、揺るがぬ意志を映していた。
偽りの空にも、夜は訪れる。
そして、夜明けが。
終わりの始まりは、すぐそこまで迫っていた。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
最初考えてたプロローグは480文字だったのだが、投稿しよう!となって見てみたら本文は1000文字以上じゃなければいけないと知り急遽戦闘シーンを追加する形に……
次回投稿は未定です……が、一応7章までは大体固まって来たのでひとまず1章は再来週くらいに投稿出来ればいいなと考えてます。