DollsNest 外伝 『定めと意志と世界の終わり』   作:Kazuha.Y

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十話目です。よろしくお願いします。

随分と久し振りの投稿になってしまった。

勉強が忙しいけど、なんとか頑張ります。


『動き始めた秒針』

「……201小隊、作戦領域に到達。随分押し返されてるようだけど?」

 

『上の見通しが甘かったんだろう。第二師団最強の実力、見せてこい』

 

「分かった。まずは指揮官殿に挨拶してくるよ」

 

シロたちが深層を後にした頃。

 

中層と上層を繋ぐ層間連絡線では激しい戦闘が続いていた。

不意討ちの形で中層に侵攻したアルカンド連邦だったが、相対する第二特殊部隊の抵抗に苦戦を強いられていた。 

 

「ッチ……向こうの後方支援込みでは航空士が来ない限り前線を抜くのは厳しいか」

 

作戦指揮官であるエーレが舌打ちをする。

 

重装鎧化兵から砲兵までを取り揃えているガーディナの部隊は、容易に押し切れるもので

はなかった。  

 

「おいフェーネ。種子の方はどうなってる?」

 

「さぁ。もう一部隊こっちに釣った後に動くとは言ってたけど……」

 

アルカンド側の狙いはあくまでホド全域の掌握。

 

窟を滅ぼして回るガーディナとは違い、女王を殺すことは目的としていない。

 

その為に下層から援軍として呼んだ異形を陽動として使い、守りの薄くなった中央都市を

奇襲するのが計画の要である。 

 

「フェーネ様、報告をよろしいですか?」

 

伝令兵が急ぎ足で現れ敬礼した。

 

「どうしたの?」

 

「二千人規模の部隊が接近中とのこと。偵察によると第一ではなく第四かと」

 

その報せに指揮所内の空気が一気に張り詰める。

 

「援軍が来るまではこちらが不利か……」

 

エーレの表情は苦々しい。

 

「連絡線まで前線を後退させるのも視野に入れておけ。死ぬだけ損だ」

 

周囲の兵士が頷く。

 

だが、アルカンドの計画にとってここで撤退するわけにはいかなかった。 

 

「最低限時間を稼げれば十分だ。本隊が来てから一気に攻め__」

 

「失礼。指揮官はここ?」

 

エーレの話を遮って幕内に入って来たのは、全身白の鎧殻に身を包んだニンフだった。

 

「……所属と名前を言え」

 

ニンフは背筋を伸ばし、胸に自らの手を当てる。

 

「201連合試験小隊のサイカ。よろしく」

 

淡々とした物言いに、隣で聞いていたフェーネの片眉が上がる。

 

「……あなたが"サイサスの天使"?」

 

「そんな呼び方されてるの?別に構わないけどさ……」

 

サイカは興味無さげに肩を竦めると、テーブルに広げられた地図を覗き込む。  

 

「相手の援軍が来る前に、今対面している相手は潰したい。同時に二部隊を相手するのは

無理でしょ?」

 

「随分詳しいんだな」

 

エーレの棘のある言葉にも動じず、サイカは作戦区域を指でなぞる。

 

「第五師団の航空士が来るのには時間が掛かる。なら、私の部隊を使えばいい」

 

「おい、待てよ……いつの間に」

 

エーレは耳を疑った。

 

「作戦が始まる前から準備してたんだよ。中層との"聖戦"なんだからさ」

 

「……だが」

 

苦渋の表情を浮かべる二人に対し、サイカは笑みを浮かべる。

 

「同じ神を信じてるんだから、生まれた窟の違いは関係無い……そうでしょ?」

 

サイカの言葉にエーレは顔を歪ませる。

 

「だがお前たちは外様だ。頼るわけには……」

 

「……そんなくだらないプライドに、いつまで縋ってるの?」

 

静かな怒りを滲ませたフェーネが間に入る。

 

エーレたちは比較的新しい編成であり、いくら訓練されていると言え実戦経験が少ない。

 

一方の第二師団はアルカンド連邦の成立以前から存在する古参部隊。

 

旧アーヴドやFolsなどの初期型鎧殻を装備しているニンフが多いが、その練度は屈指のも

のである。

 

「彼女たちは強い。使えるものは積極的に使うべきだよ」

 

「……あぁ」

 

吐き捨てるように言いながらも、エーレは頷くしかなかった。 

 

「数で不利な以上、こっちがやれるのは一気に攻めて相手の指揮官を殺すこと。異論はあ

る?」

 

「無いよ。貴方の指示に従う」

 

フェーネの言葉にサイカは微笑む。

 

「私達が前線を切り開くから、騎士の皆さんはバックアップをよろしく。それじゃ」

 

軽く会釈をして彼女が外に出ると、一人の鎧化兵がすぐそばに佇んでいた。

 

「上手くやったか?」

 

飄々とした口調とは裏腹に、その目は鋭く光を宿している。

 

それを躱すようにサイカは軽く肩をすくめた。

 

「心配しないでよラズリア。私をなんだと思ってるの?」

 

「……別に、お前の事だから気にしてたわけじゃないが」

 

素っ気ない態度を見せる彼女だが、その声音には友人を案ずる気持ちが滲んでいた。

 

「そろそろ行くぞ。作戦開始まで余裕ってわけでもないだろう?」

 

気を取り直すように、ラズリアは顔を上げる。

 

目線の先では、二人と同じ白い鎧殻を纏う数十名のニンフたちが集まり談笑していた。

 

「はぁ……こういう作戦指揮は慣れてないんだけどな」

 

サイカは仕方がないとばかりに嘆息する。

 

普段の約八倍、中隊規模を率いるのは彼女にとって初めての経験だ。

 

軽く咳払いをし、通信回線を開く。

 

『__第二師団の皆、通信は聞こえてる?』

 

拡張頭環を通して放たれる、凛とした声。

 

それは、つい先程までの彼女とは別人のような気迫を纏っていた。

 

『正式に出撃許可が下りた。各小隊の航空兵は作戦開始までカタパルトで待機、重装兵は

前線へ向かうように』

 

号令と共に散らばっていく隊員たちを見送り、サイカは小さく息を吐く。  

 

"サイサスの天使"の二つ名が広まる原因となった、第ニ次上層統一戦争。 

 

上げた戦果に比例するかのように、散った姉妹の数も決して少なくなかった。 

 

「……私は、神様じゃないけど」

 

通信波には乗らないように小声で呟くと、サイカは濁った空を仰ぎ見る。

 

白銀の鎧殻が、割れたプレートから漏れ出す人工太陽の光を映して輝いた。 

 

「皆の命は……無駄じゃなかったって証明してみせるよ」

 

それは誓いであり、願いでもあった。

 

失った仲間達を想いながら、愛用している一振りの熱塵剣を握り締める。 

 

『サイカ隊長、いつでも行けます』

 

「了解。射出後は上空で各小隊毎に集合して、前線の支援に向かうように」

 

通信から流れてきた部下からの報告に応え、サイカもまた指定位置へと向かう。

 

真横に飛び立つ部下たちとは違う、垂直式のカタパルト。

 

「打ち上げ花火は……上から見るのが一番綺麗だからね」

 

軽快な口調で呟き、射出台に片膝を付く。

 

「ラズ、スイッチ頼んでいい?」

 

『まったく……毎度毎度、整備兵にでもやらせればいいだろうに』

 

どこか呆れた様子で、ラズリアはコンソールを操作する。

 

「いいじゃん別に。そっちだって楽しみにしてるの……っ」

 

『ほら、喋ってると舌が飛ぶぞ』

 

サイカの言葉を遮るように熱風が吹き荒れ、二人の髪が舞い踊る。

 

『カウントダウン。5、4、3__』

 

ラズリアの無機質な声と対照的に、エンジンは唸りはとどまることを知らなかった。

 

カタパルトから迸る閃光が、白い鎧殻を黄金色に染めていく。 

 

『__1』

 

「『ゼロ!!!』」

 

言葉が電波に乗るよりも先に。

 

轟音と共に放たれた彼女の姿は瞬く間に雲を突き抜け、遥か高くへと舞い上がった。 

 

「っ……耳抜きし忘れた……」

 

愚痴を零しながら空中で向きを整え、眼下に広がる戦場を眺める。

 

所々から上がる黒煙が戦いの激しさを雄弁に物語っていた。 

 

『回線は大丈夫そうだな。そこからの眺めはどうだ?』

 

「戦況はまぁまぁかな……皆の着陸ポイントはちょっと下げた方がいいかも」

 

『こっちから伝えておこう。総員離陸準備!』

 

『01から12番射出よーい!』

 

通信越しに聞く皆の返事は、いつになく力強いものだった。

 

サイカは満足げに頷き、声を張り上げる。 

 

『全員生きて帰るよ!出撃!!!』

 

彼女の号令に呼応するように、白に包まれた鎧化兵たちが次々と空へ解き放たれていく。 

 

「……天使だ!救いの天使が来た!」

 

空を見上げた一人のニンフが叫ぶ。 

 

それに触発され、周囲に居たアルカンドの兵士たちは次々と歓声を上げた。 

 

『よく耐えてくれたね。あとは任せて』 

 

『陣形を組んで押し返す!高脅威目標を捕捉し迅速に制圧しろ!!』 

 

ラズリアの指示に合わせて、前線に集められていた重装兵が一斉に走り出す。 

 

その様子を背後から見つめていたエーレは、爆炎が上がる前線をただ呆然と眺めていた。 

 

「電撃戦……だと?」

 

「彼らの十八番だよ。兵力が少ない彼らがなんで強いのか考えたこと無かったの?」

 

嘲笑を含んだ声色で、フェーネは言う。  

 

「まぁ、鉄壁かと思ってたガーディナ相手にここまでとは思わなかったけど」

 

その言葉通り、彼らの攻撃は迅速かつ苛烈だった。 

 

装甲に物を言わせた突撃に航空士による近接航空支援。

 

本来後方にある指揮権を前衛の航空士に委譲する事で、不可能だった速度と精度を実現し

ていた。 

 

「……そういえば、第二師団の指揮官は二人いるのか?無線で知らない声が聞こえたが」

 

「あぁ、"ラズリスの神槍"?それなら……」

 

意味ありげに呟き、フェーネは後ろを指差す。

 

エーレの瞳に映ったのは、丘陵の上に佇む純白の鎧化兵だった。

 

「__第二師団及び全部隊へ、これより戦域上空を飛行制限下とする。射線上にいる者は

速やかに移動せよ」

 

口元のマイクを下ろし、ラズリアは深く息を吸い込む。 

 

蜘蛛の子を散らすように散開する友軍機を一瞥し、彼女は副腕の狙撃砲を構えた。

 

__連続照射リミッター解除……照準補正……

 

拡張頭環の設定から、全てのセーフティを順に解除していく。

 

「……全員、しゃがんで」

 

次の瞬間、空気を切り裂くように青白い光線が迸った。

 

直撃を受けた多脚要塞の装甲が爆ぜ、周りにいたニンフが巻き込まれて煙に消える。 

 

『ちょっとラズ!?いくらなんでもデンジャークローズよ!』

 

サイカの悲鳴を他所に、ラズリアはガーディナの前線をレーザーで薙ぎ払う。  

 

その圧倒的な火力による制圧は、彼女の二つ名に恥じぬものだった。

 

「はぁ……そうならないための指示はしたけど?」

 

涼しい声とは裏腹に、冷却液が蒸発したのか砲身からは湯気が立ち昇っていた。

 

鳴り続けるオーバーヒートの警告を無視し、再装填。

 

「……次弾準備完了。次はどこを狙えばいい?」

 

制限区域より遥か上空から、サイカは辺りを見渡す。

 

「突っ込む道でも作ってくれない?流石にこの数を正面から相手するのは面倒だし」

 

『了解』

 

端的な返事の直後、再び青白い閃光が敵陣を薙いだ。

 

ラズリアの放った一撃が防衛線を両断して空に消えていく。  

 

『さぁ、行くよみんな!』

 

サイカの言葉を皮切りに仲間たちが猛スピードで敵陣に突撃する。

 

それを眺めながら、ラズリアは火花が飛び散る副腕を操作していた。

 

「この運用は、流石に負荷が高過ぎるか」

 

パージした狙撃砲は地面に落ちると、数秒後に小さな爆発を起こした。

 

新しいものを取りに行こうと後ろを振り返ったとき、一人のニンフが歩いてきた。

 

「……居たのか、ライラ。行かなくてよかったのか?」

 

「サイ……隊長に任せられてるから。」

 

彼女が担いでいた荷物を下ろす。

 

「ほら、新しいやつ持ってきたよ。付けてあげるからこっち向いて」

 

副腕部の換装は一人で出来るものではない。

 

ラズリアは渋々身体を預けた。 

 

「もう……これ高いんだから丁寧に使ってよね?」

 

拗ねたような表情と視線に、彼女は肩を竦める。

 

「すまん。なるべく気を付ける」

 

「……本当かなぁ」

 

溜息交じりの返事と共に、慣れた手つきでライラが副腕の接続作業を行う。 

 

《武装確認__"Sys227-L G02 Lapls"火器管制認証完了》

 

一瞬のノイズと共に、ラズリアの視界に照準サイトが浮かび上がった。 

 

拡張頭環を操作し、前線の戦況に目を凝らす。  

 

「あまり余裕は無さそうだな。急ぐぞ」

 

ライラは軽く頷くと、素早く安全装置を解除した。

 

「……私もすぐに行くけど、無理はしないで」

 

「あぁ」

 

一言告げるとラズリアは踵を返し、カタパルトへと向かう。 

 

金髪に結ばれた大きな水色のリボンが、風を受けて揺らいでいた。

 

『ラズ、そろそろ上がって来てくれない?思ってたより敵のリカバリーが早い』

 

無線を通じて聞こえてくるサイカの声には珍しく焦りの色が滲んでいた。

 

「悪い、今行く」

 

通信を切ると同時に射出ボタンを押す。

 

甲高い駆動音と共に、ラズリアの身体は一気に曇天の空へと躍り出た。 

 

「……あれだけ削って、まだ陣形が崩せていないとはな」

 

独り呟きながら敵陣を凝視する。

 

上空で待機していたサイカに軽く手を振ると、彼女も嬉しそうに微笑んだ。 

 

「待たせたな。友軍の損害はどの程度だ?」

 

『被害自体は軽微。今のところはだけどね』 

 

サイカの声色が僅かに険しくなる。

 

『相手の指揮官……かなりの腕だよ。こっちの狙いを見透かされてる感じがする』 

 

「どうする?一旦退くか?」

 

ラズリアの問いにサイカは一瞬考え込んだ後首を横に振った。

 

『いや、向こうが援軍を呼んでる以上時間を与えるのは悪手だ。押し切るしか__』

 

言葉を紡ごうとした瞬間、突如として無線が乱れた。

 

「サイカ!避けろ!!!」

 

『……はやっ!?』

 

ラズリアが叫ぶと同時に、サイカは反射的に身体を捩る。

 

直後、一発の砲弾が加速翅を掠めて飛んで行った。

 

「上空2000ヤードだぞ……一体どこから撃って……ッ!?」

 

距離を計算しながら地上を睨みつけていると、更に複数の砲弾が放たれる。  

 

咄嗟に回避運動を取るが、そのうちの一発がラズリアのバーニアを吹き飛ばした。 

 

「このままじゃお陀仏だ!下に降りるぞ!」

 

『分かってる……!』

 

高度を急激に下げながら砲撃をかわし続け、二人はやっとの思いで陣営の後方へと降り

立った。 

 

「はぁ……助かったぁ……」

 

墜落寸前の姿勢をラズリアに支えられながら、サイカは心底安心したように息を吐く。

 

「まったく……お前が油断してるのがバレてたんじゃないか?」

 

呆れたような声に、彼女は苦笑いを返した。

 

「まさかあんな遠くから撃ってくるとは思わなくて。降りてくる途中で狙撃地点は割り出しておいたけど」 

 

拡張頭環に表示されたマップには、一つの赤いマーカーが点滅している。  

 

その位置は、予想されているガーディナの作戦本部だった。

 

「……7マイル以上先から撃ってきたってのか?」

 

「そう。しかも熱塵と違って重力で大きく弾道が変化するから相当な技術持ちだよ」

 

肩を借りて立ち上がりながら、サイカは小さく溜め息をつく。

 

「上空からラズの砲撃で吹き飛ばすつもりだったんだけど、私たちが墜とされたら全部

パーだ」

 

「あぁ……ここからは力戦になるぞ」

 

悔しそうに歯噛みする二人の間に、カタパルトで飛んできたライラが駆け寄ってきた。 

 

「あれ、とっくに先に行ったと思ったのに。何かあったの?」

 

「かなり厄介なスナイパーがいてさ……凄い距離で当ててきたんだよ」

 

サイカが言い淀む。

 

「しかもこっちのキャノンと違って連射してきた。迂闊に近付けない」

 

「航空戦力が主体の私たちにとって最悪なんじゃ……」

 

顔を引き攣らせながらも、ライラは素早くライフルを構える。

 

その瞳には、どこか狂気的な炎が燃えていた。 

 

「HQ、第一師団から何人かOW使える奴を寄越してくれない?一気に片付けたいんだけど」

 

『既に済ませてある。それまで今そっちに飛ばしたファルナでどうにか凌いでくれ』

 

「助かるよエーレ。ちなみに貴方は出ないわけ?」

 

『まだ出る幕じゃない。それだけだ』

 

苦笑と共にサイカは無線のチャンネルを切り替え、第二師団へと繋ぐ。

 

「201から03は私のところへ集合!他の皆が戦ってる間に横から本陣を叩くよ!」

 

無線越しに聞こえてくる多数の返事を聞きながら、彼女は軽く伸びをする。 

 

「さて。こっからが本番だ」

 

その声は、誰に届くこともなかった。

 

 

「隊長。敵勢力の動きに変化が」

 

通信機から届いたカティアの声に、フローレスは狙撃砲の照準から目を離す。

彼女の手元にあるモニターには、刻一刻と変化する戦場の様子が映し出されていた。

 

「具体的には?」

 

冷たく抑揚のない声で訊ねる。

 

「小隊単位で分かれ、我々の防御ラインを突破しようとしています。前進速度はかなりものかと」

 

モニターを睨みつけたフローレスの表情がわずかに変わる。

彼女の鋭い眼差しは画面に映る白い鎧殻のニンフ__サイカに注がれていた。

 

「……なるほど。噂に違わぬ手際だ」

 

フローレスは立ち上がり、拡張頭環を身に着ける。

硝煙と埃で霞む空を見上げながら、彼女は静かに笑みを浮かべた。

 

「だが、その自信過剰が命取りになる」

 

『隊長、狙撃部隊からの報告です。再度航空部隊に打撃を与えましたが……』

 

通信士が緊張した面持ちで言葉を続ける。

 

『低空を飛んでいるようで有効打にはなりませんでした』

 

「構わん。狙撃と言うのはそれがあるというだけで相手に一定の圧を与えるからな」

 

フローレスは手早く部隊配置を確認する。

各ユニットの進行ルートとタイミングを精査し終えると、彼女は小さく頷いた。

 

「どうやら、奴らは迂回して奇襲を狙うつもりらしい。ならば__」

 

彼女の瞳に獰猛な光が宿る。

 

「各分隊へ通達。第四防衛ラインへの誘導を開始。迎撃態勢は既存のものからCパターンに変更せよ」

 

通信機に向かって素早く指示を出し終えると、フローレスは壁に掛かっていた狙撃銃を担ぎ上げた。

 

「私が直々に出る。死にたい者だけついてこい」

 

『ですが隊長! あまりに危険です!』

 

カティアが声を荒げたが、フローレスは涼しげな笑みを返す。

 

「戦局は常に動いている。リスクを冒さなければ何も変えられない」

 

肩越しに手を振りながら歩き出したフローレス。

 

彼女を見送る者たちの間には、畏怖と尊敬の入り混じった雰囲気が漂っていた。

 

「しかし……彼女たちは我々の想像を超えてくるかもしれないな」

 

フローレスは遠方で蠢く白い影を眺めながら呟く。

 

その口元は僅かに緩んでいた。

 

「面白くなってきた」

 

彼女の軍靴が砂利を踏む音を、響く砲撃音が掻き消す。

 

闘いはまだ、始まったばかりだった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

フローレスさんマジで格好良いですよね。
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