DollsNest 外伝 『定めと意志と世界の終わり』 作:Kazuha.Y
年明けと同時の投稿。お年玉かな?
今後の投稿は大分ペース控えめなので気長に待ってくれると嬉しいです。
___中層 ガーディナ第三特殊作戦大隊
「総司令より伝令!」
駐屯地の一角に設けられた作戦会議室へ、ひとりのニンフが駆け込んできた。
「三特は下層からの侵攻に備え、層間連絡線付近を防衛せよ。対異形警戒を厳と為せ。対ギプロベルデ戦線は一特が受け持つ。以上!」
「一特が? 珍しいこともあるもんだな」
「てっきりお飾り部隊だと思ってたが」
ざわつく部隊を気にせず、通信兵はそのまま部屋を出て行った。
「まぁ、我々がやるのは指示に従うだけだ」
別のニンフが立ち上がり、その場を静める。
「今回の作戦は防衛任務だ。昼前には出発するから、各隊暴れ馬を大人しくさせておけよ!」
笑い声が上がる中、レーヴは表情を曇らせた。
__どうせ、防衛戦で自分の出番はないだろうな
かつて所属していた特殊部隊の総長が忽然と姿を消し、転属してきたのはしばらく前のことだった。
どうせまた狙撃兵と名ばかりの任務になるだろうと、うんざりしながら配られたレーションに口をつける。
ガーディナを象徴する大部隊とは無縁の戦いを渡り歩いてきた彼女にとって、他人との共同行動は至難の業だった。
「レーヴ、今いいだろうか?」
「あなたは…」
声をかけられ、レーヴは胸元へ視線を落とす。
「ネール中佐、何か用件でしょうか」
「改まらなくていい。ヴォーグの件だ」
理由は分からずとも、レーヴは耳を傾ける。
「貴官の同僚であるヨドが行方を追っているが、手掛かりは未だ掴めていないそうだ」
「そうですか…」
「すまない、流石『霧』というか…一体どこへ行きやがったのか……」
予想はしていた。
何が原因か思い当たる節はなく、どうしようもないとも分かっている。
「これ以上探させるか?」
「いえ、もう十分と伝えてください」
十分なわけがないだろうと心の内で毒づく。
__考えたって仕方ない。出発まで少しあるし、少し寝ておこう
このホドでは銃声が絶えない。
いついかなる時も、砲弾が飛び交い、ニンフが死ぬ。
それこそが日常であり、当然のことなのだ。
◇
数時間後、電子アラームの無機質な音色が鼓膜を叩く。
レーヴは眉間に皺を寄せ、時計の頭を乱暴にタップした。
「うー……まだ眠いなぁ……」
愚痴を吐き捨てるようにベッドから起き上がり時刻を確認する。
出発までの残り時間は15分を切っており、急いで身支度を整えた。
__ライフルの整備は移動中にすればいいか
壁に立て掛けられたライフルケースを肩にかけ、部屋を後にする。
階段を飛び降りた先の寂れたエントランスには、すでに出発準備を終えた仲間たちの姿があった。
「おい、早くしないと置いていくぞ」
「すぐ行く」
同じ第七小隊のニンフに声をかけられ、軽く返事をして駐車場へ向かう。
既に灰色に塗装された移動用のトラックがエンジンを暖めていた。
幌で覆われた荷台に乗り込むと、振動とともにトラックは動き出した。
開け放たれている車内から見える外の景色は、次第に灰色を帯びていく。
「どこまで行っても変わらない景色だなぁ……」
誰にも聞こえない程度の小声で、そう呟く。
かつて炭素生物共が居住区やオフィスに使っていたこの中層には、現在でも見渡す限りに廃墟と化したビル群が広がっている。
辺りに点在する建物の残骸の間に、哨戒任務中のガーディナ兵たちが見えた。
__面倒だけど、早めに準備しておこうかな
床に置いてあるケースを開け、愛銃を取り出す。
長らく使っている狙撃用のライフルは、鈍い輝きを宿していた。
胸元に入れてあるタオルを出して銃身を磨き、バレルに溜まった埃を払う。
「今日は久々に前線から離れられるな」
「まったくだよ……」
出発してしばらく経ち、暇になったのか車内に愚痴が飛び交う。
精鋭を集める第一特殊作戦大隊“アイギス”は根拠地周辺の防衛が主だ。
そのせいで三特は常に前線で戦う羽目になっている。
「そう言うなって、立派な役目じゃないか」
「お前だってたまにはゆっくり休みたいだろうに、セレナ」
「そりゃあな……」
__誰だって休めるなら休みたいよ……
心の内で同情しながら仕上げを終える。
「にしたっていきなりアイギスが出るとは、どういう風の吹き回しだろうかね」
「粗方ルーンが戻ってきたとかじゃないか?」
「ありそうだ。アルカンドとの戦争が始まるかもしれないとか」
__上層との…戦争……?
ルーンは第二特殊の愛称で、基本的に上層との層間連絡線近くに展開している部隊だ。
巨大連邦であるアルカンドの偵察や観測を主としており、万が一があれば交戦も厭わない。
__まさか本当に始める気なの?
嫌な予感を振り払うように首を振る。
「そろそろ降りる準備をしておけ、我らは己の仕事をするまでだ」
隊長レイの号令で全員が武器を手に取る。
「せっかくの遠足だ、楽しくやろう」
「そうだな」
装備確認を終えた隊員たちの声が賑やかに響く。
運転席の窓から見えるのは、かつて下層と中層の港として栄えたらしい都市の廃墟だった。
◇
しばらく走って街の入口でトラックは止まり、荷台から飛び降りる。
他部隊も次々と到着し、それぞれ隊長の周囲に集まって作戦を聞いていた。
「ここからは徒歩だ。各員散開して狙撃位置を確保せよ。状況は随時部隊無線で報告すること」
「了解」
レイの命令を受け、三特全体と第七小隊の無線チャンネルに接続する。
「ちゃちゃっと制圧しよう。普段よりずっと楽な仕事だし」
「今日もご機嫌だなぁ」
軽口を言い合う声がする一方、レーヴは表情を引き締めた。
__対異形って…この中層に奴らが来るはずがないのに……
疑念を抱きつつも、目的地へ向かう。
「あそこが防衛ポイントか……」
双眼鏡越しに目を凝らす。
10階前後の建物が並ぶ中、ひと際高いビルがそびえていた。
『防衛陣地形成にあたり、全体の動きを伝える。一言一句聞き漏らすな!』
イヤフォンからネールの声が鋭く響く。
『第一から第六小隊は全建物のクリアリングを行う。この付近に我らガーディナの兵はおらん。動くものはすべて敵だ。いいな!』
アサルトライフルやマシンガン、ブレードを手にしたニンフたちがレーヴを追い越していく。
近接戦闘を得意とする彼女らは、狙撃部隊である第七・八小隊の安全を確保する役目を担っている。
『第七及び第八小隊は可能な限り多くの制高点を押さえろ。貴様らがこの防衛作戦の要だ。気を抜くな』
ビルの入り口へ進みながら命令を反芻する。
『第九から第一四小隊はメインストリートを進んで連絡線を封鎖だ。いつ異形が来るかも分からん。油断するなよ!』
__随分大掛かりな作戦だと思ったけど、この街の広さなら当然か
ガーディナの直接支配下にない区域では、何が潜んでいるか分からない。
下層から来るかもしれない異形への警戒以前に、この地の安全を確保せねばならない。
離反兵程度ならともかく、アルカンドの介入がある可能性もあるのだ。
『作戦は以上!健闘を祈る』
『聞いていた通りだ。我々は先を行く第二の後を進むぞ』
ネールの通信が終わると同時に、レイの声が部隊チャンネルから響く。
前方に目を向けると、第二小隊がエントランスの安全を確保して上のフロアへ向かっていた。
追いかけるようにレイが階段を駆け上がり、隊員たちも後に続く。
その様子を見て、レーヴは自らの車両脚を忌々しげに見下ろした。
__この脚で階段登るのは苦手なのに……
ダメ元でレーヴは近くにあったエレベーターのボタンを触るも、当然何の反応も示さない。
諦めてため息をつき、数段ずつジャンプして飛び越えていく。
上からしばしば銃声とグレネードの破裂音が響いた以外には、特に何の支障も無く制圧は進んでいった。
「ここがこのビルの中枢か……」
「思ったより荒れてないな」
仲間の呟きにレーヴは頷きながら周囲を警戒する。
階段が一旦途切れ、第二・第七小隊は開けた部屋で一時待機していた。
直接の戦地ではないにせよ、ここまで状態のいいとした建物が残っているのは珍しい。
「やはり大した敵も居なかったな。期待外れだ」
「戦闘が無いに越したことはないだろうに」
「そんなことを言ってるからお前は甘ちゃんなんだ」
相変わらず口論を繰り広げる彼女らの会話を聞き流し、レーヴは窓際へ歩み寄る。
窓の向こうには、崩れかけたマンションやショッピングモールが並ぶ廃都の景色が広がっていた。
そしてそれらの中心には、下層へと繋がっている巨大なトンネルが大口を開けている。
__あそこから異形が来るわけないと思うんだけど……
「おい、レーヴ」
振り向くと、レイが険しい顔でこちらを見ていた。
「そろそろ次の階に行くぞ。いつまでも観光してる場合じゃない」
「ごめん、珍しくて」
慌てて窓から離れるレーヴを見てレイは苦笑する。
「冗談だ。他の部隊からの報告が来たら動くからいつでも動けるようにだけしておけ」
「了解」
床に座り直したレーヴは、ふと視線を感じて顔を上げる。
上階へ続く扉の隙間から、一瞬だけ人影が通り過ぎたように見えた。
「?」
立ち上がって扉を覗き込むが、そこには埃が積もっており足跡の一つすらない。
「どうした?」
不思議そうな顔をする隊員たちに答えるよりも先に、イヤフォンから次々と無線通信が届く。
『こちら第三より総合、南東の複合娯楽施設内部を制圧。異常なし』
『北のマンション付近にて離反者と思われる武装勢力と交戦中。以上、第五』
『第一より報告。西側地区にてギプロベルデ残党と思われるニンフを撃破』
勝利の報告だけが続く。
近接戦闘はガーディナの十八番なだけあり、負傷者はあれど戦死は出ていないようだ。
「流石だな、仕事が早い」
「じゃあ、次行くか」
仲間たちが立ち上がる。レーヴもそれに倣った。
『こちら第二より総合及び第七へ。これより最上階へ向かう。遅れるなよ』
「了解」
『言われなくてもな!』
無線を聞きながら階段を駆け上がる。
先を行く部隊が扉を慎重に開けると、広大なフロアが視界に広がった。
一面がガラス張りになっており、空から光が斜めに差し込んでいた。
「……ここが頂上か?」
「どうやらな」
綺麗だな、と柄でもないことをレーヴは考えていた。
「敵影無し、制圧完了…っと。それじゃあ私らはここらで失礼するよ」
「了解した。ご苦労さん」
隊長同士が短く会話を交わし、第二小隊は他の隊の支援へ向かうべく来た道を戻っていった。
『第七・第二隊、中央Aタワーの制圧完了。第七は最上部で展開、監視を行う』
『了解。他の部隊も続々と制圧が完了し始めている。第九から第十四は予定通り連絡線を抑えた。残るは……』
無線のやり取りを聞き流し、手慣れた様子で狙撃銃を組み立てる。
「さてさて……敵はどこかな」
「とりあえず待つしかないね」
自分たちの担当じゃない以上、狙撃兵には特にやることがない。
愛銃を撫でながら外を眺める。
「暇だ」
「確かに。何も起こらないのが理想だけど」
退屈そうに呟く仲間の声に苦笑いしながら答えたその時、轟音と共に大地が震えた。
「地震!?」
「違う!これは……!」
全員が音の方向へ顔を向ける。
下層へ続くトンネルの方角だ。
『こちら第九!連絡線から大規模な爆発音確認!』
「何が起きてる!?」
無線越しの悲鳴の直後、建物を揺るがす衝撃が再び襲った。
「総員戦闘用意!何か来るぞ!」
「何かって言ってもねぇ…!」
ネールの指示で各自が武器を構える中、レーヴは屋上への階段へ駆け出した。
__指示を出している誰かがいるなら、一帯を一望できるこの上にいるはず…!
扉を回し蹴りで吹っ飛ばして辺りを見回すが、誰の姿もない。
状況を確認しようと下を覗き込んだ瞬間──トンネル口で巨大な閃光が炸裂した。
「────ッ!!」
鼓膜を裂く轟音と衝撃波が屋上を飲み込み、レーヴは咄嗟に身を屈めて地面に伏せた。
炎と煙が噴き出し、トンネルの出口が赤く染まる。
だが──それは始まりに過ぎなかった。
最初の爆心地を中心に、同心円状に次々と大きな爆発が巻き起こった。
まるで巨大な龍が渦を巻きながら天へ昇るように。
その爆風と振動が廃墟と化したビル群を叩き、さらなる崩落を誘発した。
「一体……何が……!?」
状況を把握し切れず、唖然とするレーヴ。
ただ一つ確かなことは__この街全体が、未曾有の大混乱に呑まれ始めているという事実だけだった。
『まずは状況確認からだ!落ち着け!』
ネールの声が無線を震わせるが、混乱は一向に収まらない。
『第九から第十四小隊はトンネル封鎖を継続!第七・第八小隊は狙撃ポイントを維持しろ。残る部隊は建物から出て安全確保だ!』
『しかし中佐、こんな状況では……』
『文句を言うな!これが命令だ!』
普段ならば即座に動くはずの兵士たちも、予想を超えた惨劇に立ち尽くしていた。
「くそ……!連絡線に一体何が……」
同じように屋上へやって来たレイが呻く中、レーヴは屋上の柵を握り締めた。
瓦礫と粉塵が舞い上がり、眼下の街は廃墟を通り越して地獄絵図と化している。
『レーヴ!無事か!』
セレナの声が飛び込む。
「今のところは大丈夫…」
レーヴは肩越しに返事を送り、周囲を見渡す。
『良かった……!今そっちに行く!』
第七小隊のメンバーが次々と屋上に辿り着く。
状況確認を試みる彼女たちの表情には、明らかな不安と緊張が滲んでいた。
『こちら第一!中央タワーが崩壊寸前__うわぁぁっ!?』
「おい!どうした!」
通信に応える暇もなく、全員がもう一つの高層ビルへ視線を転じる。
__あっちは確か…第八と第一が…!
次の瞬間、凄まじい轟音と共にビルが崩壊した。
雪崩のように崩れ落ちるコンクリートが街を覆い尽くす。
「そんな……嘘だろ!?」
悲痛な叫びが屋上に木霊した。
「みんなは無事なのか!?返事をしてくれ!」
「落ち着けセレナ!」
レイの叱責がかぶさる。
「まだ全滅と決まったわけじゃない!無線が途絶えていても、生存者が残ってる可能性はある!」
「だったらどうして助けに行かない!?あの崩落の中に仲間が……」
セレナの声が途切れ、代わりに乾いた音がする。
「冷静になれと言っているのが分からないのか!?」
怒気を含んだレイの声が、静かに響いた。
外を眺めていたレーヴは一瞬驚いたが、すぐに状況を理解した。
__ああなって当然だ、レイだって同じはず……
焦燥と恐怖を押し殺し、深く息をつく。俯瞰した思考で状況を整理する。
__まずは生き残ることが最優先。今は私情を持ち込むべきじゃない……
「……すまない」
セレナが顔を上げる。その目には涙が浮かんでいた。
「助けたい気持ちは分かる。だが今は作戦中だ。無益な犠牲を増やすわけにはいかない」
「わかってる……悪かった……」
仲間を見殺しにする苦しみを嚙み締めつつも、レイの判断の正しさが身に突き刺さる。
感情的な行動は碌な結果をもたらさないということを、レーヴは痛いほど知っていた。
「こちら第七、支持を乞う」
無線機に向けて話しかける――が、応える者は誰も居なかった。
「無線もダメか……」
「これじゃ何もできない……」
屋上を暗澹とした空気が漂う。
無線は繋がらないまま通信不能となり、状況把握もままならない。
加えて救援を呼ぶことも不可能だ。
この異常な状況下において指揮系統は完全に断絶されてしまっていた。
「ここにいても仕方がない。地上に降りて__ッツ!?」
建物全体が軋むような揺れに襲われ、レーヴはしゃがみ込む。
「おい…この音……」
「……まずい!総員走れ!!!」
レイの号令で、全員が階段へ駆け出す。
__これ…柱が折れてる……!?
扉に滑り込むと同時に、建物全体が傾き始める。
天井が崩れ落ちてくる音と悲鳴が混ざり合い、周囲は混沌に包まれていた。
「急げ!!」
最後尾のセレナが叫ぶ。
階段を飛び降りて切り返したところで、天井から大きなコンクリート塊が落下した。
レーヴは間一髪でライフルケースを抱え、地面を転がるように避ける。
「大丈夫!先に行って!」
仲間を安心させようと必死に笑顔を作る。
しかし、彼女の身体は悲鳴をあげていた。
先の爆発で飛んできた建材の破片が左肩を抉り、制服を真紅に染めている。
__一瞬でも立ち止まったら……みんな巻き込まれる……!
歯を食いしばり、ポケットの中の修復剤を流し込む。
「このままじゃ間に合わん!飛び降りるぞ!」
レイの言葉に、全員が階段から少し先にある窓に目を向ける。
「行け!」
レイが大剣で壁を砕き、窓枠を吹き飛ばす。
開いた穴から仲間たちが次々と飛び出した。
__この勢い…殺しきれない…!
重力で加速する己の身体を、加速翅が悲鳴を上げるほどの逆噴射で抑え込む。
地面が目の前に迫った瞬間に身体を丸め、受け身を取ってなんとか着地に成功した。
「みんなは無事…ッツ!?」
後ろを見ようと振り返ろうとしたレーヴのすぐ隣に鉄筋が突き刺さる。
背後ではビルが傾き始め、瓦礫の雨が降り注いだ。
「まだ終わらない!走れぇ!!」
レイの怒号が耳をつんざく。
周囲の建物も次々と倒壊し、地面のあちらこちらに亀裂が走る。
前方では、また別の高層ビルが崩れ落ちるところだった。
巨大な柱が轟音を立てて地面を穿ち、瓦礫が嵐のように吹き荒れる。
「危ない!」
セレナの声に反応して視線を上げた瞬間、頭上からコンクリートの塊が降り注いてくる。
急いでドリフトして方向を切り替えようとするも、旋回速度が間に合わない。
レーヴは目を閉じ、死を覚悟した。
しかし塊は粉々に砕け散り、粉塵の中で見覚えのある大剣が揺らめいていた。
舞い散る砂埃の中で、セレナが彼女の腕を引く。
「しっかりしろレーヴ!まだ終わりじゃないぞ!」
その言葉に勇気づけられ、再び走り出す。
しかし行く手には、瓦礫の壁と化したビルが行く手を阻んでいた。
倒れた支柱と崩れた壁が絡み合い、跳躍しても到底乗り越えられない。
他の部隊も同じ箇所で足止めを食らっていた。
「離れろッ!!!」
走りながらレイが大剣を構える。
圧縮空気が充填される音と共に刀身が三倍を超えるほど伸び、回転しながら突っ込んでいく。
一瞬目を閉じて開けた時には、ギリギリ通れそうな道が開けていた。
列になり次々と仲間が中央のエリアから脱出していく。
「もうちょっと……!」
だが、あと少しというところで地盤が沈下し始めた。
まるで足元を掬われるような感覚。
「まずい…急げ!」
後ろのセレナの声が耳に入るも、体が言うことを聞かずその場で踏み留まってしまう。
「レーヴ!!!」
誰かに押し飛ばされた瞬間、背後から崩落したコンクリートが押し寄せてきた。
激痛が走り、視界が歪む。最後に見た光景は__茜色の空を背景に舞い上がった瓦礫の嵐だった。