DollsNest 外伝 『定めと意志と世界の終わり』 作:Kazuha.Y
よろしくお願いします。
「第二ラインの損害率半分超えたぞ……アイギスはまだ来ないのか!?」
「知るか!手を動かせ!!」
怒号が飛び交い、ニンフたちが慌ただしく走り回る。
中層西部、第五防衛ライン。
戦術ドローンやガトリング砲を装備した機甲兵器群が、敵を迎え撃つべく展開されていた。
「対空システムはあと十分で準備完了!」
通信兵が叫ぶ隣で、フローレスは静かに戦況を見守っていた。
「……まさか、アルカンドの方から仕掛けてくるとはな」
彼女が見据える先では、地上部隊が激しい戦闘を繰り広げていた。
爆発の閃光が煌めき、黒煙が立ち込める。
「ですが、戦力的に劣る奴らがどうして……」
隣に控えている副官のカティアが呟く。
「……少なくとも現状、不利なのは我々だ。第一が来るまでは持ち堪える」
「了解」
敬礼を返す彼女を見送り、フローレスは拡張頭環を装着する。
「行くぞ。地獄への片道切符だ」
その声と同時に、複数のニンフを連れて彼女は走り出した。
『第七小隊、壊滅……!』
『近接航空支援はまだか!?』
通信越しに迎撃にあたるニンフの叫びに近い声が響く。
瞬間、凄まじい閃光と共に前方が火の海と化した。
「あれは……強襲浮遊砲台……!」
空を見上げた一人が唖然とする。
巨大な球体が花のように開き、辺りを蹂躙していた。
「っ……対空砲を集中させろ!」
「はっ!」
指示を出すフローレスの横を、爆風が吹き荒れる。
だが、彼女の表情には一片の動揺も見られなかった。
『第三ラインまで被害が及んでる……!このままじゃマズいぞ!』
「……退却は許さん。命尽きるまで撃ち続けろ」
淡々と応答する彼女とは裏腹に、周囲の空気は緊迫していた。
『何故ですか!?この戦力差でどうしろと……』
カティアの声が通信を通じて響く。
その問いにフローレスは小さく微笑み、冷静に答えた。
「アイギスが来るまで耐えれば、勝ちだろう?」
『ですが、このままでは全滅します!!』
「わかっているさ」
彼女は通信の向こうで叫ぶ部下の焦りを感じ取ると、毅然とした口調で言い放つ。
「女王の御楯となれ。死など厭うな」
その一言で、混乱に包まれていた空気がピタリと止まる。
『……了解』
カティアが短く答えると、すぐに各部隊への指示が飛び始めた。
「これでは死ねと言うようなもの、か……」
フローレスは小さく呟くと、前線へと向かった。
砲撃の雨が降り注ぐ中を駆け抜け、彼女は一直線に敵陣へと突入していく。
『第十二小隊壊滅!敵部隊の侵攻阻止できません!』
『増援を……うわぁあっ!?』
通信を通して届く悲鳴にも似た報告を背に受けながらも、彼女の足取りは一切乱れない。
__まずは……あの砲台からか
フローレスは冷静に戦況を見極めると、視線を上空に向ける。
空に浮かぶそれはまるで巨大な瞳のようにこちらを見下ろしていた。
「……さて、始めようか」
彼女はそう呟くと同時に、副腕の狙撃砲を放つ。
だが、瞬時に展開されたシールドに阻まれてしまった。
「そう来なくてはな、面白い」
口元に笑みを浮かべ、フローレスは突撃銃を構える。
「第一から第二十四小隊は第五ラインまで退却。防衛線を再構築しろ」
『隊長は!?』
「……こんな時まで俺の心配か?」
一拍の間を置き、彼女は言い放つ。
「安心しろ……そう易々と死にはしないさ」
その言葉を最後に通信を切ると、フローレスはレーザーを掻い潜りながら一気に距離を詰
める。
放たれたミサイルと狙撃銃の弾丸が、確実にシャーレの装甲を削っていた。
__あのイカれたレーザーを撃つ時に弱点を見せるわけか……!
着弾時の爆炎でシャーレの姿が見えなくなると同時に、フローレスは大きく跳躍する。
次の瞬間、地面から噴き出すようにレーザーの奔流が迸った。
「ははっ!随分と派手じゃないか!!」
それを嘲笑うかのように、フローレスは空中で身を翻しながら副腕の垂直ミサイルを撃ち
放つ。
命中したミサイルによってシャーレが大きく傾いた隙に、彼女は一気に懐へと飛び込ん
だ。
「これでも……食らえ!!!」
右手のパイルバンカーが装甲を穿ち、核を覆い隠す鋼鉄の花弁にヒビが入る。
続けざまに至近距離で放たれた狙撃砲の連射で、遂に一枚が崩れ落ちた。
「全砲門を集中させろ!奴の盾が剥がれた今がチャンスだ!」
フローレスは素早く距離を取りつつ通信機を開いた。
『第一砲兵隊、目標修正……発射よーい!』
空に浮かぶシャーレの花弁が開き、再びレーザーの閃光が走ろうとした瞬間__
「今だ!!!」
フローレスの号令と同時に、地上から放たれた対空ミサイルと高射砲の一斉射撃が空を切
り裂いた。
無数の火球がシールドに直撃し、ガラスのように砕け散る。
「徹甲弾に切り替えろ!再展開前に仕留め切れ!」
彼女の指示に従い、兵士たちは即座に対応する。
『第三砲兵隊、照準……撃てッ!!』
再び空に咲いた幾条もの閃光。
それらが全て一点に収束し、巨大な球体は音もなく崩壊していった。
『流石です……隊長』
カティアは驚愕の表情でその光景を見つめていると、通信越しにフローレスの声が届い
た。
『当然の結果だ』
彼女は無線機を切り、部隊に合図を送る。
「これで邪魔者はいなくなった。押し返すぞ!!!」
兵士たちの咆哮が響き渡る中、フローレスは再び走り出した。
◇
「ん……」
薄暗い空間で、シロの長い睫毛がかすかに動く。
ゆっくりと瞼が持ち上がり、色素の薄い瞳がぼんやりと焦点を結んだ。
「……夢、か」
小さく呟きながら身を起こそうとした時、一筋の雫が頬を伝った。
「え……?」
戸惑いの声が零れる。
__わたし……泣いてる?
自覚した途端、堰を切ったように涙が溢れ出した。
嗚咽を噛み殺しながら袖で何度も拭うが、止まる気配は一向に無い。
__なんで……悲しいの……?
そんな問いかけに答えられるはずもなく、ただひたすらに服だけが濡れていく。
頭の中がぐるぐると回り始める感覚に襲われたその時__
「……シロ?」
すぐ傍から聞こえて来た声に、思わず肩が跳ねる。
そっと視線だけを動かすと、すぐ目の前にレーヴの心配そうな顔があった。
「起きてたの? 大丈夫?」
寝起き特有の柔らかい声が鼓膜を揺らす。
シロは慌てて涙を拭い、平静を装って答えた。
「……うん。ちょっと、変な夢見ただけ」
「そっか」
レーヴはそれ以上何も聞かず、ただ優しく微笑んだ。
その温かさに触れ、シロの心に渦巻いていた感情が少しずつ溶けていくような気がした。
「……ありがとう」
小さな声で呟くと、レーヴは小さく首を横に振る。
「お礼なんていいよ。ずっと助けられてきたのはわたしの方だし」
そんなやり取りをしていると、ヴォーグが欠伸をしながら身体を起こした。
「……ようやくお目覚めか?女王様」
冗談めかした口調にシロは苦笑する。
「ごめん……迷惑かけた」
「問題ない。それよりまずは飯だ」
ヴォーグの言葉に釣られるように三人の腹が鳴る。
誰からともなく笑いが込み上げてきた。
「……とりあえず、食べよっか」
レーヴがそう言うと、ヴォーグが素早く非常食を取り出す。
三人は黙々とレーションを口に運びながら、今後のことを考え始めた。
「上層との戦争が始まったのなら……中層戦争を超える惨劇になりかねんぞ」
ヴォーグの言葉にレーヴは顔を曇らせる。
「でも、今はそっちを気にしてる余裕は無い。できるだけ早く下に行こう」
シロの声に迷いは無い。
「じゃあ行くか。あんまりのんびりしてる暇はなさそうだしな」
ヴォーグが立ち上がりながら促す。
エレベーターの操作盤にシロが再び手をかざすと、緑のランプが灯り扉が滑らかに開い
た。
「……随分と旧時代的な作りだな」
「大脊柱ができた頃のものだろうね。技術的には今のものよりも洗練されてると思うけ
ど」
そんな会話を交わしながら三人は慎重に乗り込む。
シロがボタンに触れると、低い駆動音と共にモーターが動き出した。
「……結構揺れるんだね」
レーヴの言葉通り、ガタゴトと車輪の回る音が響く。
「故障したりしないだろうな?」
ヴォーグの懸念をよそに、機械は順調に稼働し続けていた。
しばらくしてエレベーターは下降を終え、鈍い衝撃と共に停車する。
「……戦闘準備」
「わかってる」
扉が開いた瞬間、シロとレーヴが銃を構えて飛び出す。
だが、そこに広がっていたのは不気味なほど静まり返った空間だった。
「誰も……いない?」
「安心するのはまだ早いぞ」
ヴォーグも警戒しながら周囲を見回す。
三人は注意深く足を進め、壁際を伝いながら暗闇の中を進んで行った。
「あ、あの扉から外に出られるんじゃない?」
レーヴの指さす先には、大袈裟な程に頑丈そうな扉が待ち構えている。
「罠かもしれん……慎重にな」
ヴォーグの忠告を受けつつもシロはロックを解除する。
ゆっくりと扉が開き、砂が風に乗って吹き込んできた。
「……ちゃんと下層に来られたみたいだ。よかった」
安心したように息をつくシロに続き、レーヴとヴォーグも外へ出る。
眼前に広がるのは、どこまでも続く廃墟だった。
「ここで……間違いないの?」
レーヴが不安そうに尋ねる。
シロは遠くを見つめたまま頷いた。
「そうだよ。この近くにある大きな穴から下に行ける」
「随分と……雰囲気が違うな」
ヴォーグが呟くように言う。
その視線の先には、かつての大都市の痕跡が延々と続いている。
「異形が下層を埋め尽くして、大体のコロニーは滅んでるからね」
シロの説明に、レーヴは改めて辺りを見回す。
まるで時間が止まったかのように、静寂だけが支配している空間だった。
「こっち。道案内は任せて」
先頭に立ったシロが歩き出し、二人もそれに続く。
廃墟と化した街を抜けると、巨大な穴が口を開けて待ち構えていた。
「本当に…この先に行くのか?」
「……階段を踏み外したらぺしゃんこだけどね」
シロの言葉に、レーヴの顔が引き攣る。
それでも三人は迷いなく足を進めた。
「ちょっと怖いね……」
階段の隙間からは、遥か下方に広がる暗黒が覗いていた。
「もうしばらく我慢して」
シロの言葉に促され、一行はさらに深層へと踏み込んでいく。
やがて、目の前に巨大な扉が現れた。
「すごい……」
息を飲むレーヴの隣で、シロはゆっくりと手を伸ばす。
瞬間、扉が地響きを立てながら左右に開き始めた。
「行くよ」
シロの声に促され、二人は警戒しつつ中へ足を踏み入れる。
そこは、静謐に満ちた空間だった。
「……ここは?」
「大脊柱の最下層。中央大洞穴って呼ばれてる」
シロの説明通り、天井が見えないほどに高い空間が広がっていた。
そして、その中心には__
「またエレベーター……?」
レーヴが目を凝らして尋ねる。
「うん。あれに乗らないで下に行こうとすると、レーザーに焼かれて死ぬから」
さらりと言ってのけるシロに、レーヴとヴォーグは顔を見合わせる。
「冗談……だよな?」
ヴォーグが問いかけると、シロは無言で手榴弾を取り出す。
それを軽く投げ入れた瞬間、轟音と共に激しい閃光が辺りを包み込んだ。
「ッ……!?」
あまりの眩しさに顔を背ける二人。
やがて閃光が消えた時、そこには何も残されていなかった。
「これがアーヴドの迎撃システム。すごいでしょ?」
得意げに胸を張るシロを見て、二人は唖然とするしかなかった。
「まったく……いきなり驚かせるな」
ヴォーグの愚痴に、シロはくすりと笑う。
「実際に見てもらった方がわかりやすいと思って」
そう言いながら彼女は大穴の周囲を歩き出す。
__が、その足はすぐに止まった。
「……武器構えて」
突然の警告に二人は反射的に銃を構える。
シロが睨む先に、一人のニンフが倒れていた。
「生体反応は無いが……」
ヴォーグは慎重に近づき、倒れているニンフを調べる。
「……この匂い、種子か?」
「どうして、この深層に……」
シロが静かに呟く。
その表情は険しく、普段の彼女とは別人のようだった。
「ねぇ、あそこの部屋……なんか嫌な感じがする」
レーヴが指差した先にあったのは、半開きの扉。
シロの直感が、警鐘を鳴らしていた。
「……行こう」
ヴォーグが先行し、二人が後に続く。
慎重に扉の中に入った瞬間、鼻を突く腐臭が三人を包み込んだ。
「う……吐きそう……」
レーヴが思わず口元を覆う。
少し歩いた先にあったのは、衝撃の光景だった。
「やっと見つけた。あいつらがどこから生み出されてたのか……」
部屋の一面に張り巡らされた白い根。
そして、その天井から吊るされた大量の繭の中に居たのは__
「このニンフたちが……種子の正体?」
「多分、というか間違いない……」
レーヴが呟くと、シロは小さく頷く。
「全部殺す。こいつらは生まれちゃいけない」
ゾッとするほど冷たい声でシロは告げる。
狙撃銃を構え、一つずつ確実に撃ち抜いていった。
「これで全部?」
全ての繭を破壊した後、レーヴが不安そうに尋ねる。
だが、シロは首を横に振った。
「ここは多分女神が作った仮のものだと思う。本来のは別にあるはず」
「……そうか」
ヴォーグは複雑な表情を浮かべた。
「急ごう。時間が無い」
シロの言葉に二人は頷き、中心にあるエレベーターへ走り出した。
『認証を確認__深層昇降機封鎖解除____』
機械的な声が響き、ハッチが開く。
三人は慎重に乗り込み、操作盤に手を添えた。
「これでいいはず」
シロの言葉と共にエレベーターがゆっくりと降下し始める。
「ねぇ……この先にシロのお母さんがいるんだよね?」
レーヴの問いに、シロは無言で頷く。
その表情には緊張が滲んでいた。
__わたしのこと、覚えててくれるかな……
不安が胸の中で渦巻く。
もし自分のことを忘れられていたら?
そんな考えが脳裏を過るたびに、手が震えた。
「大丈夫。きっと覚えているよ」
その思いを見透かしたように、レーヴが励ますように肩に触れた。
「そうだといいけど……」
小さく呟くシロの声は、いつもより僅かに弱々しかった。
エレベーターは止まる事なく降下を続け、やがて緩やかに速度を落としていく。
「そろそろみたいだな」
ヴォーグが警戒するように銃を構える。
やがて、完全に停止した。
「……行こう」
三人は意を決して扉の外へと足を踏み出した。
そこは薄暗い洞窟のような空間で、微かに湿った空気が漂っていた。
「ここが……ホドの最下層……」
レーヴの呟きに誰も答えない。
ただ静寂だけが支配する空間の中で、三人の足音だけが不自然に響いていた。
「こんなところにもあるんだな」
ヴォーグの視線の先、大きな扉の前に光が無い状態の機械根が生えていた。
「……花が咲いてないからメーヴェはまだ来てないみたい……」
安心したように、シロはため息をつく。
外壁に沿った階段を下りていくと、やがて巨大な隔壁が行く手を阻んだ。
「行き止まり……じゃないよね?」
レーヴが困惑したように呟く。
その時、シロはそっと隔壁に触れ、目を閉じた。
「……」
何も語らずとも、彼女の纏う空気が変わる。
刹那、隔壁に刻まれたライトが淡い青色に輝き始めた。
「まったく……なんでもありじゃないか」
ヴォーグが驚いたように目を見開く。
重低音と共に隔壁が左右に分かれ、さらに下へ続く道が現れた。
幾重に重なった扉の最深部で、輝く炎が燃えている。
「飛び降りるよ。ちゃんと逆噴射して減速してね」
そう言った直後、シロは躊躇いなく身を投げ出した。
「……正気か?」
「えぇ……嘘でしょ……」
レーヴとヴォーグは顔を見合わせる。
「行くしかないみたいだね……」
レーヴは深呼吸をして覚悟を決めると、真っ逆さまに落ちていった。
その後に続き、ヴォーグも意を決して飛び降りる。
自由落下が始まると、耳元で風を切る音が響いた。
「チッ……鎧殻が重いせいで加速が殺しきれん……!」
ヴォーグは焦りながらも加速翅を最大出力にセットし、減速を試みる。
歯を食いしばり耐えようとするが、体勢を保つのが精一杯だった。
「まず……ッ」
意識が遠のきかけた瞬間、シロが背後からヴォーグの身体を掴んだ。
「捕まえ……た!」
「馬鹿野郎!一緒に墜落するつもりか!?」
華奢な鎧殻のどこにそんな出力があるのか。
だが、シロは確かにヴォーグを抱きかかえた状態で速度を落としていく。
「大丈夫だから、動かないで!」
そう言うと彼女は器用に仰向けの状態で滞空する。
そのままゆっくりと螺旋を描きながら降下を続け、緩やかに着地した。
「心臓が止まるかと思ったぞ……」
ヴォーグは信じられないといった表情でシロを見つめる。
「まあまあ……それよりレーヴは?」
その言葉にヴォーグは我に返り、上を見上げた。
「……あそこだ。大丈夫そうだな」
レーヴは器用に減速しながら滑るように着地し、二人の方へ駆け寄ってきた。
「良かった。無事だったんだ」
「おかげさまでな……」
ヴォーグが軽口を叩きつつ苦笑いを浮かべる。
「さて、あとはあそこのとび…ら……」
シロが奥に視線を向けた、その時だった。
薄暗い通路の奥から、ひとつの人影が静かに歩いてくる。
淡い光に照らされたその姿を見て、シロの呼吸が止まった。
「……そんな」
声にならない呟きが零れた。
ヴォーグとレーヴも息を呑み、武器を構えるのも忘れて立ち尽くしている。
そこにいたのは、シロと瓜二つの顔をしたニンフだった。
髪の長さこそ異なるものの、その面差しは間違いなく自分自身と重なった。
「あ……」
言葉が喉に詰まる。
だが次の瞬間、相手は無言のままこちらに熱塵銃を向けた。
「ッ……!?シロっ!!」
レーヴの叫びと同時に、鋭い銃声が闇を切り裂く。
反射的にシロは跳躍し、弾丸を回避した。
「やめて……!」
思わず叫ぶが、相手は意に介さず追撃を加えてくる。
その動きは驚くほど正確で素早かった。
「クソ……こいつ……!」
ヴォーグが咄嗟に榴弾砲を構えるが、牽制射撃がそれを許さない。
「だめ……!二人を撃たないで!」
シロは必死に両手を広げ、二人を庇うように立ちはだかる。
しかし相手は容赦なくライフルを連射してきた。
「危ないッ!!」
ヴォーグがシロを抱きかかえて跳び退いた瞬間、彼らの居た場所に無数の銃弾が降り注い
だ。
「何なんだ……あのニンフは……!?」
ヴォーグは息を切らしながら尋ねる。
シロは唇を噛みしめながら相手を見つめ返した。
「あの子は……わたしがホドで暮らしてる間に産まれた……」
言葉が詰まる。
相手はまるで機械のように感情の欠片すら見せない表情でこちらを見据えていた。
「……妹だよ」
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回投稿は4/12 0:00予定です。
遂に『Dolls Nest: ORPHANS』が連載開始しましたね!
遅かったじゃないか……