古の灯火   作:丸亀導師

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3極冷戦

1945年から1959年という期間は、旧世界の残骸から「三つの巨大な帝国」が立ち上がり、暴力による熱戦から、法と経済と科学技術による「冷戦(システム・ウォー)」へと世界が完全に移行した、極めて濃密な歴史の転換期です。

 

大日本帝国、欧州連合(ドイツ・イタリア)、そしてソビエト連邦。彼らがいかにして自らの生存圏を確定させ、相手の急所を睨み合いながら均衡を構築していったのか。その15年間の詳細なタイムラインを解説します。

 

第一期:戦後処理と帝国の再編(1945年〜1949年)

1945年:ワシントン・モスクワ条約(北米大陸解体協定)** *北米の四分割:飢餓とインフラ崩壊で降伏したアメリカ合衆国は、戦勝国によって完全に解体されました。太平洋側は日本の傀儡国家「カスカディア民主共和国」、南部は欧州連合(EU)の息がかかった「南部連合(CSA)」、北東部は緩衝国「北部連邦」、中西部はどの陣営も手を出さない「無法の農業プラント・資源地帯」として国境線が引かれました。

* 大軍縮とドクトリンの転換:** 大日本帝国の「総力戦研究所」は、これ以上の領土拡大は統治コストの無駄であると判断。陸軍の大部分を解体する大軍縮を断行しました。性急な前進を避け、自陣のインフラと経済圏を徹底的に強固に守り固めてから相手の失策(疲弊)を待つという、極めて堅実な**「防衛的カウンター」の戦略ドクトリン**へと国家方針を完全に移行させます。

 

1947年:大東亜共栄圏・経済統合憲章の発布

* 日本は武力による占領から「経済と法による支配」へシフトします。金本位制に裏打ちされた「円」を基軸通貨とし、契約書や公文書の言語を「商用日本語」に統一。従う国にはSTEL(蒸気タービン・電気駆動)による圧倒的なインフラ投資を行い、逆らう国には容赦ない「経済制裁(兵糧攻め)」を行う、血を流さない巨大な経済ブロックを完成させました。

 

1948年:欧州連合(EU)の「新秩序(ノイエ・オードヌング)」確立

* ドイツ第三帝国は、力によるヨーロッパ支配をソフト路線へ変更。名目上の「高度な自治権」を各民族に与えつつ、クルップ社やIG・ファルベンといった巨大企業を通じて全ヨーロッパの資源と富をベルリンへ吸い上げる「新植民地主義」を確立。さらにアフリカ大陸西岸を完全に掌握し、莫大なレアメタル利権を確保します。

 

1949年:ソビエト連邦・第4次五カ年計画の「大転換(プラグマティズム)」

* 戦勝国でありながらドイツの高度な技術(V2ロケット等)を奪えなかったソ連は、宇宙開発競争やハイテク兵器開発から「完全な撤退」を決断します。限られた予算を宇宙の浪費から引き剥がし、シベリア鉄道の複線化、農業機械(トラクターと戦車の互換生産)、そして国内の絶対的な治安維持のみに全振りしました。「見栄を捨てて泥臭く生き残る」というこの苦渋の決断が、結果的にソ連という国家の寿命を21世紀まで劇的に延ばす最大の要因となります。

 

第二期:静かなる衝突とテクノロジーの恐怖(1950年〜1954年)

1950年:中国大陸・内戦激化と「代理戦争」の始まり

* 三極の直接衝突が不可能になった結果、火種は中国大陸に集約されました。毛沢東率いる北部(親ソ・共産政権)と、南部から中部にかけて割拠する軍閥(日本が裏で操る親日政権)による果てしない泥沼の戦いが始まります。日本は自国の兵士を一切送らず、旧式の武器と食糧だけを供給し、中国大陸を「ソ連の体力を削るための巨大な緩衝地帯」として利用し続けました。

 

1951年:ロッキー山脈の「血の防壁」事件

* 旧アメリカ中西部の内戦と飢餓から逃れようと、数千人の武装難民がロッキー山脈を越えてカスカディア(西海岸)へ侵入。カスカディア自衛軍は日本の命令の下、自らの同胞である旧アメリカ人を容赦なく機関銃で掃討しました。これにより、北米大陸における「市民同士の分断」は決定的なものとなります。

 

1953年:ヴァルキューレ・ショック(世界初の人工衛星打ち上げ)

* 3月、EU(ドイツ)が世界初の人工衛星『ヴァルキューレ1号』の軌道投入に成功。「宇宙から核ミサイルが降ってくる」という地政学的な絶望が世界を覆います。日本国内はパニックに陥りますが、総力戦研究所と糸川英夫博士らは冷徹に状況を分析し、焦って粗悪なロケットを打ち上げることを拒否。赤道直下(インドネシア)の立地を活かした「段階的宇宙開発大綱」を策定し、確実なペイロード(積載量)での逆転を狙う長期戦へと突入します。

 

1954年:北海道・加圧水型原子力発電所の臨界と「絶対国防国家」の完成

* 日本が世界初の商業用原発を稼働。国内の電力網が完全に整備され、外海からのエネルギー封鎖を無効化する体制が整います。同時に、総力戦研究所は国内の共産化を防ぐため、富裕層から富を削り取って労働者に再分配する「対共防波堤法」を推進し、旧態依然とした財閥との内部闘争を繰り広げます。

 

第三期:境界線の確定と「冷戦の日常化」(1955年〜1959年)

*956年:南アフリカ資源紛争(アフリカの暗闘)

* 核兵器開発に不可欠なウランとダイヤモンドを巡り、南アフリカでEU支援の武装勢力と、日本支援の武装勢力(旧英軍の「マッド・ジャック」らが指揮)が激突。最新のジェット機が空を飛ぶ時代に、ジャングルとサバンナでは長弓と大剣、そして対戦車バズーカが飛び交うという、時代錯誤で血生臭い局地戦が展開されました。最終的に決定的な勝敗はつかず、資源の分割で暗黙の妥協が成立します。

 

1957年:ソ連「第2シベリア鉄道(BAM)」の一部開通

* ソ連が長年注力してきた国内の巨大ロジスティクス網が形になり始めます。これにより、ソ連はユーラシア大陸の奥深くに「絶対に物理侵攻不可能な要塞」を完成させました。日本やEUのハイテク兵器をもってしても、冬のシベリアの奥底に引きこもったソ連を屈服させることは不可能であることが、両陣営の計算機によって証明されます。

 

1958年:大東亜情報通信網(海底ケーブル)の敷設開始

* 日本は、共栄圏の海域(東京〜サンフランシスコ〜シンガポール)を光と電子の信号で結ぶ、巨大な海底ケーブルネットワークの構築を開始します。物流による支配から、「情報と金融決済のスピード」による支配へのアップグレード。リアムのような法学のエリートたちが戦うべき主戦場が、徐々にサイバー空間の前段階へと移行し始めます。

 

1959年:ブエノスアイレス協定(南米ブロックの中立化宣言)

* 日本、EU、ソ連の三極は、泥沼の覇権争いを避けるため、南アメリカ大陸を「いかなる陣営の軍事基地も置かない、非武装の資源供給・中立市場」として扱うことに秘密裏に合意しました。これにより、ブラジルやアルゼンチンは三つの超大国を天秤にかけながら、独自の驚異的な経済成長を謳歌することになります。

1959年の終わり。

かつての「戦争」を知る世代が徐々に権力の中枢から退き、「檻の中で生まれ育った、冷戦の第一世代」**が、本格的に歴史の表舞台に立つ準備を整えた時代。

この15年間で世界に引かれた「三色の境界線」は、もはや戦車や爆撃機では決して動かせないほど、分厚いコンクリートと法律、そして核ミサイルの照準によってガチガチに固定されていました。この完璧な膠着状態こそが、21世紀まで続く狂気の平和の基盤なのです。

 

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