古の灯火   作:丸亀導師

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南洋諸島海戦 2

 

1914年9月上旬、太平洋・マリアナ諸島近海。

 

連合艦隊は、ドイツ東洋艦隊の位置を捉えていた。

哨戒網を形成していた偵察機の報告が、無線で次々と届いていた。

 

海は穏やかで、青い空が広がっていたが、艦隊の甲板は、緊張に満ちていた。

 

連合艦隊旗艦の艦橋で、山屋他人長官は、報告書を手にしていた。

海上飛行隊の水上偵察機が、早朝に発進してから既に30分が経過していた。

巡洋艦からクレーンで海上に降ろされ自力で滑走し飛び立ったそれは、青い空へ舞い上がったそれはエンジンの音が、海面を越えて響いたそれも、今は懐かしくなりつつあった。

 

偵察機のパイロットは、上空から敵艦の影を正確に捉えていた。

ドイツの装甲巡洋艦シャルンホルストとグナイゼナウの艦影が、その姿を讃えている。

 

マリアナ諸島のパガン島近海で、石炭補給を試みているその姿からは、黒煙が立ち上り、艦隊の動きが鈍くなっていた。

観測士が、無線機に向かった。

 

「敵艦隊発見。パガン島北東、距離約200海里。主力2隻、軽巡若干。補給中。」

 

無線は、モールス信号で艦隊に伝達された。

山屋長官は、それを受信すると静かに命令を出した。

 

「艦隊、進路変更。敵を包囲せよ。敵艦隊を撃滅する。」

 

金剛型巡洋戦艦が、船足を上げ始め高速で波間を切るように進む。

 

河内型戦艦が、艦隊を纏めて砲撃による火力支援を準備した。

 

駆逐艦が、側面を固め、偵察機は、継続観測を続けた。

 

敵の動きを、正確に伝達上空からの目が、艦隊を導いていた。

 

 

一方、ドイツ東洋艦隊旗艦シャルンホルスト、艦橋ではフォン・シュペー中将が補給の遅れに苛立っていた。

 

青島脱出に失敗し、マリアナで石炭を積むしかなかったこの艦隊の運命はこの時既に風前の灯火であった。

 

艦橋の将校が、叫んだ。日本艦隊の接近が、報告されたのだ。

 

「上空に、日本機!偵察だ!!」

 

シュペーは、双眼鏡を手に取った。

豆粒のように小さな点が、クルクルと空を飛んでいる。

水上機、日本海軍の偵察機だった。

 

東洋のちっぽけな黄色い猿真似の上手い猿のような種族、それが欧米での一般的な見方で合ったはずのその国が、今までに無い方法で海戦を始めようとしていることを、シュペーは理解した。

 

「補給を急げ。退避を準備せよ。もう時間がない…。」

 

その時参謀が、言った。その声は何処か間抜けているようであった。

 

「日本艦隊の位置は、まだ不明ですが……。」

 

典型的な白人主義の軍人の言葉だ、日本という国を舐めている。

しかし、シュペーは、首を振った。

「もう、遅いかもしれない。彼らの偵察機が、我々を見つけているからな。」

 

ドイツ艦隊は、補給を急いだ。だが最低でも大西洋に逃げる分は積み込まなければならない、動きは鈍かった。石炭の積み込みが、終わっていないのである。

 

 

日本艦隊には続報が次々と偵察機から入ってくる。

 

「敵艦隊、補給中。動きが鈍い。軽巡が、警戒を強めているもよう。」

 

山屋長官は、海図を睨んだ。それこそ、机に穴が開くほどに。

 

「距離を詰めろ。金剛型を先行させ、敵を脅かす。」

 

金剛型巡洋戦艦が、更に速力を上げた。

35.6cm砲が、静かに準備された。

偵察機は、敵艦隊の上空を旋回し、敵の動きを監視した。観測士は、無線で座標を打電する。

 

「敵旗艦、補給継続。退避準備中。」

 

 

東洋艦隊のシュペーは、艦橋で海図を睨んでいた。遅々として進まない補給、日本機がハゲタカの様に、上空を旋回している。

位置が、完全に把握されている。

 

「補給を中断せよ。出航準備。」

 

しかし、石炭が不足していた。

これでは航続距離が、限られる。参謀が、提案した。

 

「散開して、突破を。」

 

しかしそれは不可能であろうとシュペーは、決断した。

 

「戦うしかない。日本艦隊を、引きつける。」

 

ドイツ艦隊は、限られた時間の中で戦闘準備を始めた。

 

 

偵察機の最終報告。

 

「敵艦隊、出航開始。戦闘態勢。燃料残量残り僅か、後続と入れ替わる。通信終わる。」

 

偵察機パイロットは自機の燃料を把握しつつ、入れ替わりで入った味方に、手で信号を送ると艦隊の方へと戻っていく。

 

「後続、通信変わった。」

 

それが入るとともに、山屋長官は、静かに言った。

 

「全艦、砲門開け。敵艦隊に対して砲撃開始を許可する。」

 

海戦は、始まった。

 

朝の陽光が、海面を金色に染めていたが、艦隊の甲板は、砲煙と緊張に覆われていた。

連合艦隊は、ドイツ東洋艦隊を包囲し、砲撃を開始した。

金剛型巡洋戦艦が側面を突き、河内型戦艦が正面から火力を集中させたのだ。

 

連合艦隊旗艦の艦橋で、山屋他人長官は、双眼鏡を手に敵艦隊を観察していた。

偵察機の報告が、無線で次々と届いていた。

上空の水上偵察機が、敵の動きを正確に伝達し、砲撃観測を支援していた。

 

展開はほぼ一方的なものとなっていた。

 

「敵旗艦に命中確認。シャルンホルスト、損傷大。」

 

観測士の声が、無線から響いた。

山屋は、静かに命令を出した。

 

「主砲、継続射撃。金剛型に、側面を突けと命令。」

 

金剛型巡洋戦艦の35.6cm砲が、轟音を上げて発射されていた。

各砲塔に搭載されている2門の砲身、それを片方ずつ動かし交互に射撃を続けている。

 

対する旗艦である河内型の30.5cm砲も、正面から敵を圧倒していた。

 

戦艦並びに巡洋戦艦の打撃部隊が敵を抑えている間に、駆逐艦が、煙幕を張り、雷撃を準備している。艦隊の連携は、完璧だった。

偵察機は、上空を旋回し、敵の損害を報告した。

 

「グナイゼナウ、火災発生。軽巡、散開中。」

 

山屋は、内心で満足した。海上飛行隊の搭載が、決定的だった。

空の目が、艦隊を勝利へ導いていた。

 

 

シャルンホルストの艦橋で、フォン・シュペー中将は、衝撃に耐えていた。日本艦隊の砲撃が雨霰と降り注ぐ…。

その時日本砲弾が、甲板を直撃し、火災が発生した。

 

「損害報告!」

 

参謀が、叫んだ。余裕など無かった…。

 

「主砲塔一基、無力化。機関部に損傷。速力が低下します!!」

 

グナイゼナウも、被弾したようだった。

 

日本艦隊の火力は、予想以上だった。

高速の巡洋戦艦が側面を突き、戦艦の砲撃が正面を圧倒して、艦隊そのものを押し潰してきている。

シュペーは、双眼鏡で日本艦隊を睨んだ。

僅かに確認できる情報から、煙幕の向こう側はコチラを完全に視界には捉えていない筈である。

 

にも関わらず、正確な砲撃が艦隊を撃ち付けている。

 

「日本機が、上空にいるか…間接いや、観測射撃と言ったところか…、」

 

参謀が、提案した。彼は額から出血していた。

 

「退避を。散開して、突破を試みましょう。」

 

それに対してシュペーは、力なく首を振った。

「雌雄は決したよ…、我々にはもはや選択肢など無い。」

 

日本艦隊の包囲網が、狭まっていた。

東洋艦隊は、必死の応射をしたが。

 

しかし、日本艦隊の速力と砲撃打撃力。何よりも艦隊の規模は、東洋艦隊を大きく上回っていた。

 

 

日本艦隊は、損害を最小限に抑えていた。

敵の砲弾は煙幕の影響で、あらぬ方向へと飛んでいく。

時折ガゴーンという音が、装甲から響くが河内型の装甲は、それを耐えていた。

金剛型の高速が、敵の射撃を避け、反撃とばかりに砲撃を続ける。

 

偵察機の報告が、続いた。

 

「敵艦隊、混乱。退避を試ている。」

 

山屋は、命令を出した。

 

「追撃せよ。雷撃部隊を前進。」

 

駆逐艦が、煙幕から僅かに顔を出し魚雷攻撃を敢行した。

 

 

シュペーは、静かに海図を睨んだ。

包囲網が、狭まっていた。

 

「雷撃か避けられるか?」

 

しかし、魚雷の速力は、速かった。魚雷が、海面を泳ぎ…。

シャルンホルストに、命中。爆発と轟音が、艦を震わせた。

火災が、広がった。

シュペーは、静かに言った。

 

「降伏を、検討せよ。」

 

参謀たちは、沈黙した。海戦は、日本側の優勢で進んだ。

 

 

気が付けば海戦は、終了していた。

砲煙が海面に漂い、波が静かに艦体を揺らしていた。

連合艦隊は、ドイツ東洋艦隊主力の撃破を達成し、悠々と海を泳ぐ。

シャルンホルストは、魚雷攻撃を耐えられず乗員を退避させた後、数時間後には完全に沈没し、旗艦を預かったグナイゼナウは白旗を掲げて降伏した。

 

軽巡若干は散開して突破を試みたが、追撃で拿捕された。

 

 

連合艦隊旗艦の艦橋で、山屋他人長官は、報告書を手にしていた。

連合艦隊の損害は軽微だった。

金剛型と河内型の火力が、敵を圧倒した。

偵察機の観測が、砲撃の精度を高め、決定的な勝利をもたらしたのだ。

山屋は、静かに命令を出した。

 

「敵艦隊、無力化完了。次は、島嶼の占領だ。」

 

戦闘隊の後ろ200海里程離れ位置で待機していた揚陸部隊が、準備を始めた。

 

島嶼部に接近すると、次々に運送艦から舟艇が降ろされ、陸軍の部隊が上陸を開始した。

 

奪取した港からは装軌トラクターと自動車が、資材を運んだ。

 

島嶼のドイツ守備隊は、抵抗を最小限にし、無血占領が進んだ。

偵察機は、上空から島嶼を監視し、敵の欺瞞を看破した。それを見上げる敵の残存兵力は、直ぐに降伏した。

 

山屋は、内心で満足した。

海上飛行隊の搭載が、勝利の鍵だった。空の目が、すべてを決めた。これがなければ、敵を早期に発見することなど出来ない。

索敵能力は、全てを決する

 

直ぐに戦闘の結果を大本営へと打電すると、外務省からの連絡が、届いた。

 

「英国から、祝賀の意。太平洋島嶼の占領を、承認。とのことです。」

 

連合艦隊は、見事に任務を完遂したのだった。

 

 

グナイゼナウの艦橋で、移乗したフォン・シュペー中将は、降伏を決めた。シャルンホルストの沈没が、艦隊の終わりを告げたのだ。

日本艦隊の強さは、彼の想像を上回っていた。

 

「完敗だ。」

 

ドイツ東洋艦隊は、壊滅した。

 

 

俘虜となったシュペーは、日本艦に収容されると彼は、静かに考えた。

 

「日本は、強くなった。我々の退避が、失敗するのは当然の帰結か?」

 

傲慢に驕り、自信過剰となっていたドイツ。それを思い切り顔面を殴られたかのように錯覚していた。

 

ドイツの太平洋拠点は、完全に失われたのだ。

 

数日のうちに占領は、完了した。

カロリン・マーシャル・パラオ諸島が、日本の実効支配下に置かれ、陸軍の揚陸部隊が、島に上陸。

 

外務省は、声高らかに国際的に宣言した。連合国側の義務履行として。

山屋長官は、報告書をまとめた。

 

「南洋諸島、無力化完了。これより、本艦隊は帰投する。」

 

海戦は、終わった。

勝利は、日本海軍の新時代を告げた。

 

 

 

一方、インド洋方面に繰り出していたドイツ東洋艦隊所属、装甲巡洋艦エムデンは、通商破壊を繰り返しながら、その報告を受け取った。

 

インド洋・セイロン沖。

 

ドイツ装甲巡洋艦エムデンは、波を切り裂いて進んでいた。

艦長カール・フォン・ミュラー大佐は、艦橋で海図を広げ、静かに状況を分析していた。

 

エムデンは、東洋艦隊から分離し、インド洋で単独の通商破壊作戦を続けていた。

英国の商船を次々と捕獲・撃沈し、連合国の補給線を脅かしていたのだ。

 

この日、無線で、マリアナ諸島近海の報せが届いた。

主力艦隊――シャルンホルストとグナイゼナウ――が、日本艦隊に捕捉され、壊滅したという。

ミュラーは、無線士から報告書を受け取った。

 

「主力艦隊、無力化。シュペー中将、降伏か…」

艦橋の将校たちは、沈黙した。エムデンは、完全に孤立したのだ。

インド洋の広大な海で、単独行動を続けるしかなかった。

 

ミュラーは、内心で苦悩した。日露戦争の勝利が、日本海軍をここまで強くしたのか?

白人優勢の時代は、既に終わりを告げているのか?と…。

 

エムデンは、補給が限界に近づいていた。しかし、任務は続く。

通商破壊で、英国を苦しめるために…。

「進路を、南へ。マダガスカル方面だ。」

 

ミュラーは、命令を出した。

エムデンは、英国商船を狙い、航行を続けた。

インド洋の狼は、まだ牙を研いでいたが…、しかし、心の奥で、ミュラーは知っていた。

主力の喪失は、東洋艦隊の終わりを意味する事を。

 

 

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