古の灯火   作:丸亀導師

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メソポタミア派兵

1916年、政府が英仏からの派兵要求に応じ、メソポタミア戦域への陸海空軍合同派兵を決定したことは、民衆に複雑な反応を引き起こした。

 

青島攻略戦の勝利から1年余り、大戦の長期化が報じられる中、民衆の感情は愛国心と疲労感が交錯するようになっていた。

 

軍学研究会の創設と共に、大日本帝国軍は、効率化を重視する軍としての側面を持つようになっていた。

これにより、軍部は積極的に内需への資金供給を行うようになり、史実以上の工業化と生産能力を持った国へと変容し始めいていたが、この時期はちょうどそれにあたる。

 

物資の流動化や、経済的な強大化によって都市部へと人間が移動するようになり、農村から来た人間が都市部で疲弊して行く事態が増え始めていた。

 

特に、女性の社会進出の増大や医療・栄養学分野での改革によって、児童人口の増加が進み、それによって女性労働者に対する待遇改善を訴える流れができ始めていた。

 

更に、それと呼応するようにこの時期社会主義の浸透が日本国内でも起こり始めており、労働ストライキ等も散発的に起きていた時期だった。

 

ただ、国内の自信は史実よりも上がっていた。

日露戦争の低損害勝利に加え、自国の国力の上昇を航空の国産化という形で、目に見える形で史実よりも先んじているのも、それを強く後押している。

 

しかし、それでもなお軍の改革から始まる、軍優先の政策から政党政治の混乱が、それを助長して国内の不満を蓄積させていた。

 

そんな中での第一次世界大戦の勃発と、散発的な派兵。

そして、戦争景気によって好転的に回りだした需要は、日本に特需を齎して其れ等を軽減する力があった。

 

今回の派兵に対しては、肯定派と否定派は明確に分かれており史実よりも、国民の反応は表面的に見て取れている。

 

支持派は国内の半数以上。大半の層を占めており、それは知識層、財界、中間層、学生層と多様な層を巻き込んだ大きな肯定派となっている。

 

東京朝日新聞や大阪毎日新聞などの主要紙は、政府決定を「日英同盟の履行」と「連合国勝利への貢献」と報じ、国民の支持を喚起し

 

「日本軍の質的優位が欧州で証明される」

 

との論調が強く、青島勝利の余韻から派兵を

 

「栄光の機会」

 

と捉える声が多かった。

 

知識人・学生層を中心に、「日本軍の航空・機械化が欧州で活躍する」と期待が高まった。

 

研究会の影響と総力戦意識が民間に浸透し、「大戦参加で日本の地位向上」との意見が優勢となり、志願兵募集に応じる若者が増加し、軍部の士気向上にも寄与していた。

 

つまりどういう事かと言えば、陸軍の派兵要求も、空軍がそれを後押しした形も、全ては国民が第一次世界大戦に対して前のめりに構えていた結果でもあった。

ここで海軍が反対すれば、海軍は国民から総スカンを食らい戦後での発言権の低下の可能性もあるのだから、反対もできない。

 

内閣もまた、これに後押しされていた…。

 

これに対する声は極少数となり、特に多かった反対は農村部で、食糧価格の上昇と労働力不足が懸念され、「欧州遠征で家族が苦しむ」との声が上がっていた。

社会主義者や平和主義者は、「無駄な消耗戦への参加」と批判し、小規模デモが発生してはいたものの、運動自体は小規模で問題視されなかった。

 

これらの反対を抑制したのは、偏に日本国内の改革が順調に進んでいたからという側面もあった。

法治国家として、民主的な側面と軍事国家的側面が派兵を無制限的ではなく、限定的に押し留めたのもそういう側面の現れだった。

 

また、これらに付随する問題は、多岐に渡り例えばこの問題の根幹にあったのは、忠義と個人主義の対立であった。

軍事優先の総力戦意識が、家族・地域の絆を犠牲にし、伝統的な「家制度」や村落共同体を弱体化させ、都市部への民衆の流動化を促進し、知識人層では、武士道の美化(乃木希典の自決など)が、国民的英雄像として残る一方、近代個人主義の台頭が「忠義の強制」を疑問視する声を生み出していた。

 

大正天皇の憲法改正決断は敬愛を集めたが、軍事優先が「立憲主義の逸脱」との批判を招き、伝統的忠誠と近代的権利意識の摩擦を増大させてしまった。

コレは複合的な事でもあり、上記の物事とは切ってもきり離せない事でもあった。

 

従ってこれらの全体的文化的疲労の特徴は、外部の戦争負担ではなく、内部の急速変革が主因であった。

勝利の余韻が伝統を支える一方、総力戦準備が近代化を強制し、文化的断層を深め、国家的形の変容を内包していた。

結果、国民は愛国心を維持しつつ、内面的疲労を抱えていた。

 

こんな国内事情の中、大日本帝国は中東メソポタミア戦域へと手を伸ばしたのだ。

 

 

メソポタミア派兵に際し、日本は英国並びに仏国に補給の確保を条件にしていたが、それが完了するのが1917年初頭であった。

その間、国内の安定化と軍の準備を着々と進め派兵を開始したのだった。

 

以下、1917年メソポタミア戦域派兵軍並びに、大西洋地中海護衛艦隊の編成である。

 

総司令官: 陸軍中将 神尾光臣(青島攻略戦経験者)

統合参謀本部の監督下で、陸海空の合同指揮を担当。

副司令官: 海軍中将 加藤定吉(護衛任務統括)。

空軍准将 山本五十六(航空支援統括)。

 

陸軍部隊(1個師団相当、約12,000〜15,000名)

主力: 第18師団または第20師団相当の混成部隊(最新版では2個師団から1個師団規模に縮小)。

日本備戦法の機動包囲を基調とし、歩兵・砲兵・工兵のバランス編成。

 

機械化支援: 軽戦車原型(明治45年式改良型大正5年式軽戦車)約50輌程度(規模縮小に伴い調整)。

装軌トラクター・自動車による補給・砲兵機動強化。

 

火力: 75mm野砲・軽迫撃砲随伴、重擲弾筒小隊レベル配備(対オスマン軍陣地攻撃想定)。

 

役割: ペルシア南部経由の上陸後、英国軍と連携し、バグダッド方面進撃支援。

 

 

海軍部隊(駆逐艦護衛主力)

駆逐艦: 12隻(峯風型相当・神風型、内飛行艇運用母艦化: 若干)。

対潜護衛と船団支援を主眼。

爆雷初期型搭載でUボート脅威に対応。

補助艦: 給油艦・運送艦若干(神威型・能登呂型相当)。

役割: 地中海・紅海での船団護衛と陸軍輸送の安全確保。

 

 

空軍部隊(約30機程度)

主力機: 一式偵察機改良型(約20機程度)

観測・砲撃支援を担当。

戦闘機: 大正5年式戦闘機初期型(約10機程度)

11mm航空機関銃(同期射撃装置搭載)で敵機迎撃・地上攻撃。

役割: 英国基地(バグダッド近郊)から発進し、偵察・対空・対地支援。オスマン軍補給線撹乱と英国軍進撃の空中援護。

 

 

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峯風型相当艦性能

 

排水量: 基準排水量約1,215〜1,345トン(公試排水量約1,500トン程度)。

寸法: 全長約102.6m、全幅約8.9m。

機関: ギヤードタービン主機(出力約38,500馬力)、4軸推進。

速力: 最大39ノット(史実記録では一部艦で40ノット超を達成)。

航続距離: 14ノット時約3,600〜6,667km(長期航海対応)。

武装:

主砲: 12cm単装砲4門。

魚雷: 53cm連装魚雷発射管3基(魚雷6〜8本)。

対潜装備: 爆雷初期型(投下台・軌道搭載)、機雷敷設能力。

その他: 6.5mm機銃若干、作品世界線では一部艦で飛行艇運用設備追加(水上偵察機母艦化)。

乗員: 約150〜160名。

特徴:

凌波性向上(ウェルデッキ採用、スプーンバウ艦首)。

高速機動を重視した艦隊型駆逐艦で、護衛・雷撃・対潜任務に適応。

作品独自要素: 工業化先行により爆雷・対潜装備が史実より早期搭載され、地中海・紅海でのUボート脅威対応を強化。

 

 

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峯風型相当艦水上機母艦型性能

 

排水量: 基準排水量約1,200〜1,350トン(改造により若干増加、航空設備追加でトップヘビー対策が必要)。

寸法: 全長約102.6m、全幅約8.9m(史実準拠)。

機関: パーソンス式ギヤードタービン(出力約38,500馬力)、4軸推進。

速力: 最大39ノット(改造後も高速維持、護衛・偵察任務に適合)。

航続距離: 14ノット時約3,600〜6,000km(長期航海対応、地中海・紅海運用を考慮)。

武装(改造後調整):

主砲: 12cm単装砲3〜4門(後部砲一部撤去で航空設備スペース確保)。

魚雷: 53cm連装発射管2〜3基(雷撃能力維持)。

対潜装備: 爆雷初期型(投下台・軌道搭載、Uボート脅威対応強化)。

対空機銃: 6.5mm機銃若干増加。

航空設備(作品独自の母艦化改造):

搭載機: 水上偵察機(飛行艇)2〜4機(クレーンによる揚降ろし、簡易カタパルトなし)。

格納・整備スペース: 後部甲板拡張または魚雷管一部撤去で確保。

運用: 発艦・回収用クレーン、燃料・弾薬庫追加。偵察・対潜哨戒を主眼。

乗員: 約150〜170名(航空要員追加で増加)。

特徴:

高速駆逐艦の機動性を活かし、船団護衛中の前方偵察・飛行艇による広域索敵が可能。

作品の総力戦意識により、対潜・航空連携を早期強化。史実では駆逐艦の航空母艦化は後年(例: トンボ釣り)だが、本世界線では1917年派兵時点で実現。

限界: 搭載機数が少なく、本格母艦ではなく補助運用。荒天時の揚降ろしが困難。

 

 

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神風型相当駆逐艦

 

排水量: 基準排水量約1,270トン(公試排水量約1,500トン程度)。

寸法: 全長約97.5〜102.6m、全幅約9.2m。

機関: ギヤードタービン主機(出力約38,500馬力)、4軸推進。

速力: 最大約37.25ノット(峯風型の39ノットから若干低下、復原性向上のため)。

航続距離: 14ノット時約3,600〜6,000km(長期航海対応)。

武装:

主砲: 45口径12cm単装砲4門。

魚雷: 53cm連装魚雷発射管3基(魚雷6〜8本)。

対潜装備: 爆雷初期型(投下台・軌道搭載、作品世界線で早期強化)。

その他: 6.5mm機銃若干、機雷敷設能力。

乗員: 約150〜160名。

特徴:

峯風型の改良型として、艦幅拡大による復原性向上と重心安定化。

高速機動を維持しつつ、護衛・雷撃・対潜任務に適応。

作品独自要素: 対潜装備(爆雷)と航空連携が史実より早期に強化され、地中海・紅海でのUボート脅威対応を重視。

 

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軽戦車原型改良型 大正5年式軽戦車

 

主な性能(作品描写に基づく推定値)は以下の通りです。

重量: 約7〜9トン(装甲・武装強化による増加)。

寸法: 全長約5.0m、全幅約1.9m、全高約2.2m。

装甲: 前面20mm級(斜面配置)、側面・後面12〜15mm(小口径砲・機関銃に対する耐性向上)。

機関: ガソリンエンジン(出力約80〜100馬力、国産強化型)。

速力: 道路上約20km/h、不整地約10〜15km/h(初期原型からの大幅向上)。

航続距離: 約150〜200km。

乗員: 3名(操縦手、機銃手/砲手、車長)。

武装:

主武装: 37mm級小口径砲1門(対軽装甲・堡塁対応、研究会具申に基づく標準化)。

副武装: 11mm重機関銃または軽機関銃1〜2挺。

特徴:

無限軌道による優れた地形突破力と歩兵随伴能力。

日本備戦法の機動包囲を支援する軽量設計で、量産性・信頼性を重視。

 

 

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これらの部隊は、大日本帝国の新たな軍事形を体現する先鋒として、遠く中東の砂漠に派遣された。

 

青島の栄光を継ぎ、欧州列強の戦場で日本軍の質的優位を証明する機会を得た彼らは、単なる連合国支援を超え、国家の地位向上と総力戦の現実を世界に示す役割を担っていた。

 

陸海空の合同運用は、研究会戦法の結実として機能し、オスマン軍の補給線を撹乱しつつ、英国軍の進撃を支えることとなる。

 

しかし、この派兵は国内の文化的断層をさらに深める一因ともなり、勝利の余韻と近代化の疲労が交錯する大正末期の日本を象徴する出来事として、歴史に刻まれることとなった。

 

大日本帝国は、こうして中東の戦域に手を伸ばし、アジアの大国から世界の一員への変貌を、軍事力によって示さんとしたのである。

 

この派兵部隊は、限定的な規模ながら顕著な戦果を挙げ、連合国側からさまざまな評価を受けた。

 

英国軍の報告書では、三軍合同運用――陸軍の機動包囲、海軍の護衛、空軍の偵察・支援――の連携が極めて効率的であった点が特に称賛され、「東洋の精密機械」(Precision Machinery of the East)と呼ばれることが多かった。

 

この表現は、日本軍を「機械のように正確で信頼できる味方」と位置づけるもので、連合国軍内部で最も頻用された敬称の一つとなった。

 

 

一方で、派兵規模の小ささを強調し、貢献を過小評価する声も存在した。

 

一部フランス軍内部では、特に欧州本土優先を主張する論者から、「砂漠の小部隊」(Petty Desert Contingent)と蔑称されることもあった。

 

これらの評価は、戦場での文化的摩擦と戦略的認識の違いを反映するものであったが、実際の戦果は敬称を優勢とし、日本軍の質的優位を中東戦域で確実に証明するものとなった。

 

こうして、メソポタミアの砂漠は、大日本帝国の軍事力が世界に示す最初の舞台となったのである。

 

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