遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』 作:ふわ×フワ
遊八君たちオリキャラの紹介文みたいなの、いるかな…出すかは別として、一応は考えておこう。
消えていくARビジョン。Dゲイザーを取った陸人は、優希の元へと歩み寄り手を差し出す。へたり込んでいた優希もまた、その手を取り立ち上がる。
「やっぱ陸人くんは強いね。手も足も出なかったや…」
優希はそう振り返る。実際、彼は陸人のライフに傷一つつけられなかった。そんな彼に陸人は微笑んだ。
「そんな事はない。むしろお前の成長速度に驚かされたよ…良いデュエルだった」
「ホントにな! 優希クンもしかしてもうオレより強いんじゃね?」
「こりゃ僕たちもうかうかしてらんないねぇ」
遊八たちも駆け寄り、健闘を讃える。と、それを見計らったように陸人は切り出した。
「優希…遊八…いいか?」
「?」
「ん、何かな?」
「その、今まで本当にごめん。俺はお前たちを抑えつけて、自分の心を満たそうとした。自分の弱さを隠す道具にしてしまった。だから、ごめん」
頭を下げて、誠心誠意謝罪する。
「さっきのでそれは終わったんじゃ?」
「うん。ボクもそのつもりでいたんだけど…」
キョトンとした様子の二人。陸人は一瞬呆れた顔をして真意を話す。
「ほんと能天気な……ちゃんと謝ってなかったから。それじゃ俺が納得できないからだ。そっちが一方的に許してても苦しいままなんだよ」
「そっか、だったら…」
遊八と優希は目を見合わせて頷く。
「OK、許すよ。罰は…そうだな、デッキ調整の相手、サンドバッグで良いかい?」
「じゃあこっちは、先生として教えられる事、全部教えて貰おうかな」
「……ったくお前ら。でも、ありがとう。それとサンドバッグにゃならん。逆にこっちがしてやるよ」
これで、彼らの間にあった蟠りが完全解消されただろう。陸人の挑発がそれを証明していた。
「言ってくれるねえ。俺好みの答えだ」
「ちょっとちょっとぉ、オレらも忘れんなよなあ」
「そうだよ。二人にはまだ及ばないけど、ボクも追いつく気でいるからね」
遊八と陸人。良き友、良きライバルとして、関係が再構築されていくだろう。その中には当然、優希たちもいる。
「よーしそれじゃあ忘れないうちに、さっきのデュエルの振り返りをしようか。ログは残ってんな?」
「もちろん。俺が忘れるとでも思ったか?」
「さっすがぁ。じゃあサ店に行くぜ!」
並んで歩き始める二人。
「何か凄いね…あの二人、バチバチしてるのに笑えてくるよ」
「そうだね。ここだけの話な、陸人の奴、最初から遊八をライバル視してたんだよ。あんな奴に負けてたまるかって、そう言ってた」
「え⁉︎ そうだったんだ」
「聞き出すのに苦労したんだぜぇホント」
あの時は持ってた本投げようとしてやめてた。と補足しながら話す。そう語る彼の様子は、やれやれ、とでも言うかのようだった。
「信頼されてるんだね」
「でもオレじゃ変えれなかった。だから、ありがとな」
いつもの雰囲気とは打って変わって、羨ましげに空を見上げる。
「それは遊八くんに言うべきだよ」
「ああ、アイツにも言うさ」
彼らは知らない。ナンバーズによって齎された変化を。遊八の理想でありながら、遊八でない姿を。しかしそれでも、彼らにとって遊八は遊八、変化の中心にその存在があったのは、紛れもない事実なのだった。
「おーい! まだー?」「置いてくぞー!」
少し離れた所で待っている二人が見える。
「おっといけない。んじゃ行くか」
「うん」
四人並んで笑顔で行く……デュエル研究会。一人の少年を中心に生まれた変化、その最たる例が——。
「これは…凄いものを見たウラ……」
————
夕刻。一人の少年が帰宅する。
「ただいま」
「お帰りなさい。遅かったじゃない」
少年の母が出迎える。
「ああ、友達といた」
「そう。でも勉強はちゃんとしなさい。貴方には一番になってもらわないと」
「……」
母は少年に期待する。自分にできなかった事を子に継がせる為に。それは父の方も同じようだ。会話を聞きつけ、玄関へ出て来る。
「そうだ。デュエルも、勉強も…お前ならそれができるんだからな」
少年は、両親の期待を一身に背負い日々を過ごす。かつてあった温かな家庭は、いつしか親の願望を叶える為の偽り、押しつけの愛へと変わってしまった。それは彼に才能があったから。彼もそれを知っている。故に荒んでいた頃の彼は、自分の才能を恨んだことがあった。自分の歪みを客観視できてしまったから、自分が許せなかった。それでも両親を嫌いになれない彼は、歪んだまま一番を目指さざるを得なかった。誰もそれを止める者はいなかった…。
「……父さん、母さん」
けれど少年、彩葉陸人は出会った。恐怖しながらも、己の弱さと向き合い、自分の意思で、変わろうとした者に……。
「何だ」
「話がしたい。今はまだ、心の準備ができてないけど…」
だから今度は自分の番。彼は勇気の火種を手にする。自分を止めてくれた新たな友と並ぶ為に。これ無くして、彼へのリベンジは成せない。そう強く思うから。
「……そう。それじゃあ待ってるわ」
穏やかそうなその声はしかし、自分の望む理想から外れるのを許さない。そんな思いが滲み出ている。
「うん…」
まだ怖い。それでも意思は揺らがない。彼は自室に戻り、1枚のカードを取り出す。
「ドリアード…また俺に力を貸してくれるか…?」
強さに、一番に固執して、一度手放してしまった愛するカード。自分の一番を胸に抱き、勇気に薪を焚べていく。
『このカードが…いや、俺のデッキ全部が力を貸してくれる。だから君に立ち向かえた』
友の言葉を思い返す。なんだか、肩が軽くなった気がした…。
再び共に、歩み出す。
————
決意を固めたあの日から、自分の心と向き合わない日は無かった。自分のデッキを弄りながら、築根遊八は考える。
「……」
(俺が完全に生まれ変わる為に、一つだけ、絶対にやらなきゃならない事がある。それは神月アンナへの復讐。俺がトラウマを思い出したのは、アンナからの嫌がらせが原因だった。今でこそナンバーズのお陰で、対人関係で怯える事は無いけど…やっぱりまだ本心が怖がってるのがわかる。あの闇が蠢いてる気がする)
神月アンナ。築根ゆうやにとって因縁深いキャラクター。遊八となったこの世界でもそれは変わらずに、むしろ前世からの闇を、今世へと繋げる存在となってしまっていた。遊八はアンナを意識せざるを得ない。
ふと、1枚のカードが目に入る。それは心を闇から引き摺り出してくれた相棒。
「フェルグラント…」
(わかってる。復讐と言っても、別にやり返そうってんじゃない。僕はアンナの事をもっと知りたい。自分の本心をぶつけて、向こうの思いも受け止めて、また1から関係を再構築したい。それが僕の目的なんだから)
既に彼は変わりつつある。きっと彼の内にある恐怖は、思い込みなのかもしれない。記憶と深く結びつき、必要以上に意識してしまっているのだろう。どうあれ、アンナとは一度向き合わねばならない。それは、必要な事。
(しっかし、たぶんもう好意は冷めてるよね。トラウマがあったとは言え、もったいないことしたかなぁ)
彼女いない歴=年齢…あー、前世も追加だ。少し悲しくなった。そんな彼は、まあ俺だし。と結論づけて、普通に友人関係を構築する方に意識を向けた。
(まいっか、遊馬君との恋路でも応援したるかな……そうだ、逃げたこと謝らなきゃ。そりゃ客観的に見たら向こうのが悪いと思うけどさ、僕が行かなかったせいでアンナが傷ついたのも事実だし…過去に戻れたなら変わるのかな…)
ナンバーズに目をやる。
刻不知のデュガレス。彼が手にした内の1枚。天城カイトと相対して、今も日常を過ごせているのはこの力のお陰。これからもお世話になるのは間違いないだろう。だが——。
「違うな。これは僕が自分でどうにかする事…」
しっかりと口にして、心に刻み込む。
(虚像っていう手本を見て、それを自分にトレースするのが、僕のやるべき事。結局アンナへの復讐は一つの区切り、僕が強くなるための通過点に過ぎないんだ。大事なのはその先だから…)
「でーも折角推しに会えたんだし、仲良くはしたいじゃん」
本心。微笑みが零れる。
デッキをまとめて、ナンバーズ3枚を手元に並べる。
(シャークさんにカイトと会って…いや、ナンバーズを手にして、物語が一部変化した可能性がある。元々、モブとして生活すんだろうなって思ってたら、漢字が違うだけの名ありモブだって気付いて、まあでも大きくは関係ないし、それどころじゃなかったから気にしてなかったんだけど…まさかこうなるとはね。別に原作に関わりたくねーとかじゃないし、むしろ原作キャラに会いたい欲強いからバッチ来いだけどさ、できれば死にたくないからなあ。まだ画面外で回収されてましたで……はぁ、日和ってんな俺。強くなりたい、もっと上に行きたいって思ったばっかだろうに。じゃあ全力で原作介入する勢いじゃないと、強キャラには太刀打ちできないじゃんか。そも、アンナとの再会は居場所の特定ができないから、WDCを逃すとかなり後になる。後ろにずれ込むのは良くない。ならガッツリ登場して遊馬君の出番奪わんと。つまり介入待った無しだ)
一度クールダウン。深呼吸して、ナンバーズもデッキに戻す。
「ナンバーズを手にした時点で、こうなる可能性はあった。だったらあらゆる可能性を視野に入れて動くだけ。どうせだし行けそうな所は原作介入しちゃおうそうしよう」
原作介入はできるならする。そう決めた遊八はと言うと…。
「……ま、強くなって動き回れば勝手に色々巻き込まれるだろ」
特にそれ以上考えてなかった。強いて言うなら——。
(もっと原作キャラに会いたいなぁ)
これだけ。
(残りだと遊馬、小鳥たちナンバーズクラブ、トロン一家にあと……)
「ハ…」(ハルトオオォォォォォォォォ!!!!!!)
叫ぼうとして、結局脳内に留めた。ご近所迷惑はお断りだ。
「ふう」
(知り合いでも十分満足、できるなら仲良くなりたいなぁ、フンフフン)
非常に見通しが甘く。未だ浅はかと言わざるを得ないがしかし、彼の存在一つで物語がどう変化するのかわからない。実体験も当然あるわけないのだから、対策のしようがないと言うのも確かな話。この世界なら、デュエルが強ければそれだけで、ある程度リスクを下げられる分、むしろ今の彼ぐらいの方が柔軟に対応できる…かも?
さて、では肝心のデュエルはいかがなものか。思考はそちらへと移っていく。遊八はメモを取り出した。
「妨害が、無いんだよなぁ…。あってD .D.クロウぐらいか。デモチェかあと…あれ、この時期ってブレイクスルー・スキルってもうあったよね…? うん。あったはずあったはず。それらが欲しい。んでぇ? 何と言うか、パワータイプのデッキになっちゃっててなぁ…駄目じゃないんだけど、OCG民だからかな、妨害がないと安心できないんだよなあ。除去も少ない……陸人君が僕よりカード持ってるし、考え方がこの世界にしては珍しく
あれこれ考えていれば、やがて眠気に襲われる。
「くうっ——ふぁ〜…やっぱ遊戯王は最高だぜ。っと、そろそろ寝るか。また明日だな」
遊八はメモを閉じて、そのままベッドに倒れ込んだ。
(今後どうなるかなぁ…ま、結局なるようにしかならんか)
「未来は誰にもわかんないってね」
明かりを消し、最後におやすみと一言。遊八は瞳を閉じ、意識を闇へと落としていった。
こうして一日は幕を閉じる。
変化を受け入れ、自らも変化していく。彼らは言わば台風の目。それぞれの心、それぞれの考えで動き、大きな渦を巻いて周囲を巻き込んでいく。彼らは物語の中心ではないかもしれない。けれどデュガレスが語ったように、変化の中心に彼らはいる。これから刻まれていく歴史の中に、その存在はどう映るのだろうか…。
それぞれの物語は始動している。ここからが本番、なのだろう。
転生と言ったらのエピソードが、ここまで無かったとようやく気づきましたの。だから陸人君も合わせて一緒に展開。さっくり終わったな。
割と能天気な遊八君。でも世界の動きなんての、一人でどうにかできやしないですしね。そんな力も無い。
原作介入。できるならすると結論づけましたが、実際できるかは…どうでしょうね。