遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』   作:ふわ×フワ

17 / 26

 前回、約4700字
 今回、約9600字
 およそ二倍の差。おかしい。キリのいいとこで区切ったはず…ターン数で見ても真ん中辺り…。



No.15 決着の時! ぶつかり合う2つの光

 

 

『これは…』

 

 遊八がデュエルをしている一方で、デュガレスはその魂を観測していた。

 普段は遊八に力を貸しているのもあって、デュエル中の状態を観測できていない。だからこそ見ておきたかったのだ。

 

『我の見落としか? このような状態になっているとはな』

 

 注目するのは魂そのものでなく、それに憑いた偽のナンバーズ。

 

『力の吸収。奴の役割をそう結論付けていた。それも間違いではなかったが…今の奴は、巡らせている』

 

 『No.5』…偽物と断定されたそれに、絶え間なく何かが出入りを繰り返している。デュガレスの発言から察するにそれは、何かしらのエネルギーだろう。

 

『どこかから供給を受け、それを遊八へと。遊八と外部から吸収したものは、恐らく供給先か』

 

 まるで血液のように巡るエネルギー。光と闇。そう形容できる二種のエネルギーに、デュガレスはもう一つの気付きを得た。

 

『この力…直近で感じたもの…そう、あの影の、特にエースモンスターから強く感じたものと同じ。となれば』

 

 影。遊八が見た夢で遭遇した正体不明の存在。そして彼の存在が繰り出したエクシーズモンスター。この二つと同一の力となれば、偽のナンバーズの正体にも見当は付く。

 

『奴と影には同一の存在が関与している。そうでなくとも無関係ではあるまい。それは、あの世界そのものにも言える』

 

 しばし考え込む。それは偽のナンバーズを介しての干渉。異世界の調査をすべきかどうか。すると——。

 

『…ん、ああ、貴公か…なに、気にするな。少しばかりの敬意の表れだ』

 

 デュガレスに何者かの声が掛かる。態度からして、相手はナンバーズではなさそうだ

 

『…わかっている。この手では、我が単独で向かうことになる。しかし我一人では無謀もいいところ…どうやら、これ以上の収穫は得られないようだ』

 

 干渉は諦める。いずれ来る時を待つしか無さそうだ。デュガレスは踵を返し、もう一体もそれに追従する。

 

『…ほう。遊八も我らとの疎通手段を考えていたか…無力と知っていながら手を尽くす…助かるのう。歩み寄ってくれれば、こちらもやりやすくなる。これならば存外早く、可能にできそうだ』

 

 カラカラと笑うデュガレス。もう一体もそれを悪くは思っていない様子。関係は良好。

 

『…そうか、戻るか。では我らは、貴公の活躍を見届けるとしよう』

 

 そう言い残してデュガレスは消える。もう一体もそれを見届けた後、遊八の下へと飛び去って行った。

 

 

——

 

 

「「ドロー!!」」

 

 場面はデュエルへと戻る。

 戦局は、二体目のナンバーズが現れたことで、遊馬たち優勢に傾き始めたように見える。だがライフは遊八たちに分があり、まだ勝負の行方はわからない。

 

「このスタンバイフェイズ。〈痛恨の訴え〉の効果が終了し、そのコントロールは元の持ち主に戻る」

 

 ガガギゴが戻ったのを確認した遊八が、ホッとした表情を見せる。

 

「良かったよ。ちゃんと戻ってきてくれて」

(こっちだと戻って来るタイミングが違うんだった。ちょっと焦ったぜ…)

 

 二つの世界を知るが故に、持つ知識にも差が生じる。僅かな差。しかしこの差が、遊八に頭脳に負荷を掛ける。

 

(ほんの少し動揺しただけでも焦りは芽生える。だから落ち着け…まだこの程度問題無い)

「遊八くん。このカードじゃ…」

「ん? あー、そうだな。なら今できる事はこれしかない。〈リビングデッドの呼び声〉を発動。〈アステル・ドローン〉を蘇生だ」

 

『アステル・ドローン』☆4 ATK/1600

 

『これでレベル4が2体。来るか』

 

「レベル4の〈ブリザード・ウルフ〉と〈アステル・ドローン〉でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 来い、〈竜魔人 クィーンドラグーン〉!」

 

『竜魔人 クィーンドラグーン』★4 ATK/2200

 

「〈アステル・ドローン〉を素材としたので、カードを1枚ドローさせてもらう」

 

 優希へと目配せする。プレッシャーを感じつつも、優希はそれに頷いて返す。

 

『(彼らの様子から察するに、こちらの盤面を崩す手は恐らく無い。ならば、このドローに向こうの命運が賭かっている。と言ったところか)』

 

 たった一枚が、勝敗を分ける。侮り難いその可能性に、自然と意識は寄せられる。

 

「ドロー!」

 

 果たして、その結果は……。

 

「〈竜の霊廟〉を発動。デッキからドラゴン1体を墓地に送る。俺は〈ダークストーム・ドラゴン〉を墓地に送る。こいつは墓地で通常モンスターとして扱うため、追加効果を適用できる。通常モンスターを墓地に送った場合、もう1体墓地に送れる。〈エクリプス・ワイバーン〉を墓地へ」

 

 

——

 

「ドラゴンを2体墓地に送っただけ…遊八君は何を企んでるんでしょう」

 

 ナンバーズクラブの面々が訝しむ。盤面に直接影響しない墓地にカードを送った理由とは…?

 

「陸人、これって」

「墓地は第二の手札。あいつはそう言ってた。今すぐどうこうって感じじゃないだろうが、これだけは間違いない…まだ、終わらない」

 

——

 

 

「〈エクリプス・ワイバーン〉の効果発動。このカードが墓地に送られたことで、デッキからレベル7以上のドラゴンを1体除外する。〈フェルグラントドラゴン〉を除外…」

(これでフェルグラントにアクセス可能になった…さて、相手には召喚されたまま棒立ちのクリボルト。残りのライフで何の対策も無く置いたままはありえない。なら、このターンじゃ決め切れない)

 

 遊八の視線は、遊馬たちのフィールドにあと一枚残った伏せカードに向く。

 無策は無い。だからこそこちらも次を耐えれるようにする。それが遊八の選択。

 

「〈クィーンドラグーン〉の効果。墓地のレベル5以上のドラゴン1体を、効果を無効にして特殊召喚する。ただし、そのモンスターはこのターン攻撃できない。〈ダークストーム〉を特殊召喚」

 

 魔人が奏でる美しきハープの音色。その旋律は眠りし竜に、命の灯火を宿す。

 

『ダークストーム・ドラゴン』☆8 DEF/2500

 

「これで良しっと。さてさて、バトルだ。わかってるよね。その棒立ちのクリボルトを攻撃するだけで、こっちは勝てる」

「ああ、わかってるぜ」

「なら防げるよな!〈クィーンドラグーン〉で〈クリボルト〉に攻撃!」

 

 慌てふためくクリボルト。それを意にも介さず迫る、情け容赦の無い一撃。だが、その攻撃が届くことは無い。

 

『遊馬』

「わかってる! 罠発動!〈バトル・ブレイク〉!」

 

 盾になるが如く開かれたカードが、魔人の攻撃を防ぎ、逆に破壊して見せた。

 

「相手が攻撃宣言した時、そのモンスターを破壊して、バトルフェイズを終了させる!」

「…それだったか。これ以上の追撃もできないとなれば、ターン終了だな」

 

 想定からズレはせず。と、不利から脱せぬままだが、遊八は落ち着き払っている。

 

『防がれるのを予測し、可能な限り場を整えるか…しかしこちらにはナンバーズがあり、これを突破する手段を彼はまだ持たない。いくらライフに余裕あるとしても、流れはこちらにある』

 

 遊八たちの場にあるのは、ざっくりと言えばモンスター二体と伏せが一枚、手札も一枚。畳み掛けるならこのタイミングが最適。

 

『行くぞ、遊馬』

「ああ! 俺のターン、ドロー!」

『〈ワンダー・ワンド〉だ。手札を補充する』

「おう!〈ワンダー・ワンド〉を〈ガガガマジシャン〉に装備」

 

 勝つための計算を進めていく。だがまずは、答えを導くのに必要な材料を、揃えてなくてはならない。

 

「〈ワンダー・ワンド〉の効果! 装備モンスターとこのカードを墓地に送って、2枚ドロー!」

 

 ドローカードを確認し、アストラルは深く、しかし一瞬の思考を開始する。不確定要素はまだあり、完璧ではない。だが、しかし……。

 

『……勝利の方程式は揃った。遊馬!〈ガンバランサー〉を召喚だ!』

 

 可能性はこの手の内に。後は描いた道筋を突き進むのみ。

 

「〈クリボルト〉をリリースして、〈ガンバランサー〉を召喚!」

 

『ガンバランサー』☆5 ATK/1000

 

『〈ガンバランサー〉は、1体で2体分のエクシーズ素材となれるモンスター』

 

 今、二人の息はピタリと合っている。勝利が見えてきたこの絶好の機会を、逃す手は無い。ならばと呼び出すはこの一枚。

 

『〈ヴォルカザウルス〉をエクシーズ召喚だ!』

「俺は! レベル5の〈ガンバランサー〉でオーバーレイ! 2体分のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!〈No.61 ヴォルカザウルス〉!」

 

 火山岩を思わせるオブジェが現れ、噴火するように展開。恐ろしき紅蓮の竜へと姿を変えた。

 

『No.61 ヴォルカザウルス』★5 ATK/2500

 

「〈ヴォルカザウルス〉の効果発動! ORUを一つ使い、相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!〈ダークストーム・ドラゴン〉を破壊だ! マグマックス!」

「くっ、これはまずい!」

 

 胸部より放たれる高熱の火炎が、ダークストームを焼き払う。

 

「優希!…っぐあああああ!!!」

 

 咄嗟に優希を庇い、衝撃を一身に受けた遊八が吹き飛ばされる。

 

「遊八くん!」

 

 優希 LP 3100→300

 

「派手に吹っ飛んじまった…ふうー。痛いの貰ったなぁ。ライフが一瞬でここまで…」

『安心するにはまだ早いぞ!』

「〈リバイス・ドラゴン〉の効果! ORUを一つ使い、攻撃力を500アップ! これで3000。ガガギゴを超えたぜ! バトル!」

 

 召喚時よりも増した邪悪な圧。だが、これに屈する二人ではない。

 

「〈リバイス・ドラゴン〉で〈覚醒の勇士 ガガギゴ〉を攻撃! バイス・ストリーム!」

「優希君今だ!」

「永続罠〈竜魂の城〉発動! 墓地のドラゴン族モンスター1体を除外して、自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を700アップする! ボクは〈ブリザード・ドラゴン〉を除外!」

 

『覚醒の勇士 ガガギゴ』ATK/2950→3650

 

 竜の魂が更なる力を宿す。邪悪に負けぬ強靭な勇士の反撃が、リバイス・ドラゴンを地に落とし、その衝撃が遊馬たちを襲う。

 

「ぐうっ! 防がれちまった」

 

 遊馬 LP 1050→400

 

「ヴォルカザウルスが出た時は焦ったよ。破壊がガガギゴなら負けてたかもな。でもアストラルなら、ダークストームを破壊するだろうと思ってたよ」

 

 

——

 

「何で攻撃力の高いガガギゴを破壊しなかったんでしょうか?」

 

 等々力委員長の疑問に、陸人が答える。

 

「リバイス・ドラゴンの攻撃力はガガギゴを超えている。ならば守備表示のダークストームを破壊した方が、ダメージ量は多くなる。伏せがわからない以上、安牌を取るならそっちだろう。打点上昇なら両方攻撃表示にしてそうだしな。まあ結果的に、仕留め損なう事になった訳だが」

「な、なるほど…」

 

 彼も、このデュエルを前に気分が昂っているのか、解説に熱が入る。

 

——

 

 

『ナンバーズを相手にここまで…やはり彼は、カイトにも匹敵する実力者』

「ああ、こんな強え奴がすぐ近くにいたなんてな…ヘヘ、俺、今すっげぇ楽しいぜ!」

 

 遊八たちはデュエルを通して何度も、強く存在を刻みつける。意識せずとも自然とそうなる。

 カードを愛し、その全てを…魂をぶつけ合う熱き決闘者たち。彼らもまた、その一人なのだ。

 

「俺もさ。だからこそ、こんな最高のデュエルをあんな簡単に終わらせてたまるか」

「うん。ボクだって…だから遊八くん。ここはやっぱり、あのモンスターがいないとだよね」

「…ああ、そうだね!」

 

 優希がプレイヤーではあるが、これはあくまで遊八のデュエル。ならばこのデュエルには、足りないものがある。

 

「……あのモンスター?」

『どうやら彼らエースモンスターは、ガガギゴだけではないようだ』

『(とするなら恐らく、エクリプス・ワイバーンで除外された…)』

 

 デュエル終盤。まだ残された切り札がある…そう、まだ出てきていないのだ。遊八の信じる、最高の相棒が——。

 

「くぅ〜っ! ワクワクが止まんねぇ! 見せてくれ遊八! お前の切り札を! 俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

 そんなに輝く瞳で見られたら、応えないわけにはいかない。

 

「これが俺たちの運命のドローだ。気合い入れてくぞ!」

「うん! ボクのターン…ドロー!」

 

 引き当てたカードは…。

 

「まだ終わりじゃない。繋げてけ!」

「〈マジック・プランター〉! 永続罠1枚、〈リビングデッドの呼び声〉を墓地に送って2枚ドロー!」

 

 勝利は見えず、けれど無ではなく。

 

『(何を引いた…?)』

 

 可能性を探し続けるその一挙手一投足に緊張が走り、自然と遊八たちに視線が集まる。

 

「良い引きだ。でも…」

 

 遊八の見る先にはガガギゴの姿。

 預かっていると言えど、優希にとって大切なカードに変わりはない。ぞんざいな扱いはできない。しかし、勝つためには…。

 

「気にしないで。今は遊八くんのカードなんだから…それに、このカードが遊八くんの力になれるなら、ボクは嬉しい」

 

 察した優希の言葉。思考は一点に定まった。

 

「…ありがとう。それじゃあ遠慮無く」

 

 きっとこれがラストターン。その手に掴んだ、不完全な勝利への希望。これを完全へと昇華させるべく、遊八は全てを出し尽くす。

 

「手札の〈暗黒竜 コラプサーペント〉は、墓地の光属性ドラゴン1体を除外する事で特殊召喚できる!」

 

『暗黒竜 コラプサーペント』☆4 ATK/1800

 

「除外された〈エクリプス・ワイバーン〉の効果! 自身の効果で除外されていたモンスターを手札に加える!」

『やはり…』

 

 遂にエースが、その手に収まる。

 

「俺は、〈ガガギゴ〉と〈コラプサーペント〉をリリースしてアドバンス召喚! 我が相棒にして、雄大なる竜。〈フェルグラントドラゴン〉!」

 

『フェルグラントドラゴン』☆8 ATK/2800

 

 光の到来。黄金の輝き放ち、その翼が開かれる。

 

「これが、遊八のエースモンスター。けど攻撃力2800じゃ俺たちには勝てないぜ!」

「そう、その通りだ…だからこれは賭けになる。俺が、こいつの本領を引き出せるカードを引き当てられるかどうか…見届けてくれよな! まずは〈コラプサーペント〉の効果だ!〈輝白竜 ワイバースター〉を手札に加える!」

 

 一枚、たった一枚でもデッキを薄くする。可能性を高めていく。

 

「そして……魔法カード発動。〈アドバンスドロー〉! 自分フィールドのレベル8以上のモンスター1体をリリース、つまり〈フェルグラント〉をコストにして、カードを2枚ドローする!」

『自らのエースをリリースするだと⁉︎』

 

 これが、今彼らの手に残された唯一の可能性。

 予感がする。これがこのデュエルの、彼らの勝敗を左右する最後のドローだと…。

 

「遊八くん」

「何だい?」

「このドローは遊八くんが引くべきだ。って…そんな気がする」

「……」

 

 差し出されるデュエルディスク。少し考えて、頷く。

 

「そっか、わかった。むしろこの局面で俺に任せてくれるなんて、嬉しいよ!」

 

 ただカードを引くだけなら、アストラルの生死には関わらない。そう結論付け、ならばと、己の全霊を込めてカードを引き抜く。そう決めた。

 

「これが俺たちの、最後のカード!」

 

 負けたくない。けれどそれ以上に楽しい。この高揚感、これこそがデュエル。噛み締める。だからこそだ、迷いなく、堂々としていられるのは。

 カードを手に取る…。

 

「ドロー!!」

 

 確認。口角が僅かに上がる。

 

「勝つぞ優希君! これを発動だ!」

「うん!」

 

 手渡されたカードをすぐさま発動。墓地に繋がる穴が開き、一筋の光が天へと伸びる。

 

『この光は…』

 

 光の中、一つの影が高く空へと飛び立った。

 

「雄々しく偉大なる我が希望。地より再び天上へ舞い、金色(こんじき)の光以て未来を照らせ! 再臨せよ!〈フェルグラントドラゴン〉!」

 

 大きく開かれた翼は光を散らし、その巨躯から放たれる迫力は、神々しさすら感じさせる。

 

「〈復活の福音〉…墓地から、レベル7か8のドラゴン族モンスターを蘇生するカード。俺はこれで〈フェルグラント〉を復活させた。そして、〈フェルグラント〉は墓地から蘇ったこの瞬間にこそ、真価を発揮する。効果発動!」

 

 宣言と同時、巨竜の迫力が増していく。

 

「墓地の〈ダークストーム〉を対象に、そのレベル×200、攻撃力をアップする。その目に焼き付けな! シャイニンググロウ!」

 

『フェルグラントドラゴン』ATK/2800→4400

 

『これが、フェルグラントの真の力か』

「バトルだ!」

 

 

——

 

「これが通れば遊八クンの勝ちだね」

「そうだな。通れば、だが…」

「マジか…あそこから逆転すんのかよ」

「遊馬…」

 

——

 

 

『遊馬!』

「わかってるさ!」

 

 当然、ただで終わる彼らでは無く——。

 

「罠発動!〈エクシーズ・リボーン〉! そっちがエースを復活させるなら、こっちもだ! 蘇れ〈希望皇ホープ〉!」

 

 同じく墓地より復活する遊馬たちのエース。その頼もしき背が、再び彼らの前に降り立つ。

 

「くっ、なるほどね。〈フェルグラント〉で〈希望皇ホープ〉を攻撃!」

「ORUを一つ使い効果発動! ムーンバリア!」

 

 盾のように展開された白い翼が攻撃を弾き、遊馬たちを守る。

 

「決めれなかったか…仕方ない。カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

(向こうのライフは1000より下。たぶん来る。あのモンスターが…)

 

 遊八の切り札たる巨竜によって、遊馬たちの圧倒的有利は崩れ、これを超えるには僅かに及ばず。しかし、このピンチは逆に、彼らの闘志に更なる燃料を投下した。

 

『これが私たちの最後のターンだ。全てを込めるぞ! 遊馬!』

「ああ! かっとビングだ! 俺のターン! ドロー!」

 

 彼らにも、まだ切り札が残されている。遊八が警戒するモンスターが。

 

『まさか、このカードを使う事になるとはな…行くぞ!』

「おう! 俺は〈希望皇ホープ〉で——」

『「カオスエクシーズチェンジ!!」』

 

 オブジェに戻ったホープ。光の渦へと身を沈め、新たな力をその身に宿す。

 

「現れろ、CNo.39! 混沌を光に変える使者!〈希望皇ホープレイ〉!」

 

『CNo.39 希望皇ホープレイ』★4 ATK/2500

 

 カオスの力をその身に宿し、新生する希望の使者。その姿に優希は驚き、遊八はつい見惚れてしまう。

 

「カオスって、そんなモンスターが…凄い」

「おー、かっこいい…」

 

 黒くマッシブなボディ。元のホープとはまた違った力強さを感じる。

 この進化が、遊馬とアストラルを勝利へ導く。

 

「〈ホープレイ〉の効果! ORUを一つ使い、このカードの攻撃力を500アップする! オーバーレイ・チャージ!」

 

 展開する副腕が大剣を引き抜く。天に掲げられた剣にORUが消え、更なる光がホープレイを強化する。

 

「更に、相手モンスター1体の攻撃力を1000下げる!」

 

 同時にフェルグラントから力を奪う。

 

『CNo.39 希望皇ホープレイ』ATK/2500→3000

『フェルグラントドラゴン』ATK/4400→3400

 

「でもまだフェルグラントには届かない!」

 

 珍しく啖呵を切ったのは優希。相手の勢いに飲まれまいと声を張る。

 

『まだ終わりでは無い。遊馬、最後の手札だ!』

「ああ! 装備魔法〈最強の盾〉発動!〈ホープレイ〉に装備して、攻撃力を自身の守備力分アップする!」

 

『希望皇ホープレイ』ATK/3000→5000

 

「5000…か」

「これで、〈竜魂の城〉の効果を使っても届かない! バトル!」

『これが最後の攻撃だ! その伏せカードが攻撃を防ぐものなら、私たちに勝ちは無い。だが、そうでなければ——っ!』

 

 戦士の振るう大剣が、空を裂き巨竜へ迫る。

 

「…この伏せは攻撃を防ぐカードじゃない。何なら片方は現状意味が無い」

「ならこれでトドメだ! ホープ剣・カオススラッシュ!」

 

 遊馬の勝ちを確信した目。これにて決着……かと思われた。

 

「だが反撃はできる! 速攻魔法発動!」

 

 巨竜が大剣を掴んで止める。押し込もうにもびくともしない。

 

「〈禁じられた聖槍〉! 対象は〈ホープレイ〉! 対象となったモンスターは攻撃力が800ダウンし、他の魔法・罠の効果を受けない! これで装備カードの上昇分もダウンだ!」

 

『希望皇ホープレイ』ATK 5000→2200

 

「んなっ⁉︎」

「攻撃力の差は1400。これで逆転だ」

 

 目前にした勝利がたった一枚によって覆る。

 

「そっちにも最後の伏せカードが残ってるが、どうかな!」

『……』

「アストラル……」

 

 反撃は、無い。

 

「どうやら勝ちの目は潰れたようだね。んじゃあフェルグラント!」

 

 巨竜が動く。ホープレイを弾き飛ばして体勢を崩させる。

 

「反撃の…グランドレイ・バースト!」

 

 咆哮。ホープレイ目掛けて光線が放たれた。

 

『確かに、ここからの逆転は不可能。だが…』

「……?」

『敗北も無い! 遊馬!』

 

 開かれた最後のカード。それこそがこのデュエルの終着点。

 

「罠発動!〈バイバイダメージ〉!」

「なっそれは⁉︎」

「〈ホープレイ〉は戦闘で破壊されず、受けたダメージの倍のダメージを相手に与える!」

 

 

——

 

「遊馬のライフは、1400のダメージを受けて0になるけど」

「同時にその倍、2800のダメージが遊八のライフを削り取る」

「とどのつまり、引き分けってことですか⁉︎」

 

 鉄男と陸人の二人によって、観戦組に伝わる想定外の決着。そう…この激闘は、相打ちにて幕を閉じる。

 

——

 

 

「ははっ、もったいぶりやがって…」

『それはお互い様、だろう?』

「ふっ、確かに…こりゃあ一手、足りなかったなぁ」

『こちらも、ナンバーズを駆使して尚、攻めきれなかった』

 

 互いに互いを認め合う。デュエルを通じて、心を通わせる。

 

「『良い、デュエルだった』」

 

 光の中に掻き消える。

 

 

 遊馬 LP 400→0

            DRAW

 優希 LP 300→0

 

 

 

 

 ARが消え、二組が仰向けに倒れているのが確認できる。

 激闘によって熱された空間が、一瞬にして、静寂によって冷まされる。しかしその心には余韻が残る。

 

「ははっ…あっはははは」

 

 倒れたままの遊八から笑いが飛び出す。

 

「はあ、楽しかった」

 

 立ち上がり、優希を起こしたら、次は遊馬たちへと歩み寄る。それに気づいた遊馬も立ち上がり、向き合う。余韻のお陰か、まだアストラルを認識できた。

 

「改めて、良いデュエルだった。ありがとう」

 

 手を差し出す。

 

「俺も楽しかったぜ。次は勝つからな!」

 

 遊馬もその手を取り、握手する。

 

「いーや、俺…僕が勝つ!」

「俺だ!」

「僕が!」

「俺!」「僕!」

「「……ブフっ」」

 

 吹き出して、大声で笑い合う。彼らはもう友達だ。

 

『まったく…だが、築根遊八。私も、次は負けはしないぞ』

「…ふふっ、ああ。またデュエルしよう。可能ならナンバーズも込みでね」

『これは、手強そうだな』

 

 二人だけでなく、皆で笑い合う。先程までとは違う、温かな熱が彼らを包み込んでいた。

 

『(勝てはしなかったが、気持ちのいいものだな……デュエルをすればみんな仲間か…私にも、その考えが少し、わかった気がする)』

 

 

 

……

 

 

 

 しばしの談笑の後、傾く日を合図に解散する流れとなった。そんな中で——。

 

「……」

「どうした? 陸人」

 

 集団から離れていた陸人に、その友人が声をかける。

 

「いや、俺ももう覚悟決めなきゃなって」

 

 薪を焚べ、燃える灯火を眺め続けていた。だが、もう動き始めなければ置いて行かれる。

 

「お前がずっと隠してた事か?」

「気づいてたのか」

「何年一緒にいると思ってるよ」

 

 彼らの付き合いは長い。それこそ、幼馴染と言っていい程に。

 

「それもそうか…けど、これは俺の、俺ん家の話さ」

「あー、そうか…」

 

 家族間での交流も昔はあった。だから心当たりもあったり、無かったり。

 

「んじゃ、俺は先に帰るよ」

「そ…行ってらっしゃい」

「はっ、逆だろ」

「だな!」

「…頑張ってくるよ」

 

 ……

 

「あれ、陸人君はもう帰ったんだ?」

 

 帰る前に陸人とも一言交わそうと思っていた遊八たち。当てが外れた。

 

「んまあ…」

「何かあったの?」

 

 考え事をしているように見える。その疑問に返ってきたのは……。

 

「よし、陸人ん家行くぞ」

「「え?」」

「きっとまた面白いデュエルが見れそうだからな!」

 

 その後、事情説明を受けて、応援の体で陸人の家へと向かう話になった……面白いデュエルと聞きつけた遊馬と、小鳥、鉄男の三人組を連れて…。





 悩みに悩んだこのデュエル。カードパワーの差で遊八が何度も勝ちそうになり、でも遊馬とアストラルを相手に、簡単に勝たせるのは当然違うと。しかも縛りアリ。負けるにしても、仮にも本作主人公。あっさり負けたら面目潰れる。設定固めるついでに色々考え、捏ねに捏ねてこうなった。皆さんの納得いく結果かはわからないですけどね。

 この二話で、一月余裕で超えちゃって、私の脳みそ力尽きそう。
 エタりはしないがな! 来週出なかったら、お疲れなんだな。とでも思っといてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。