遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』 作:ふわ×フワ
誰か…ゼアルキャラの、大人組の年齢知らない?
ハートランドはいつできた? その時のフェイカーの年齢は? 教えてけれぇ…。
前回同様盛り盛り彩葉家。こーゆーのって主人公を盛るもんとちゃうん?
ま、今回ほど好き勝手する回はそう多くないだろうし(未定)、エピソード限定バフって事でどうにか…。
「何が届かないだ。そんな諦めたような口ぶりで…」
その陸人の言葉に、晴磨は疑問を呈する。
「何を言っている? 俺がまだ諦めていないかのような…」
諦めたからこそ、子に託したのだ。一方的に…。
「諦めてるもんか…そんな人が、毎日中継されてるデュエルを観てさ、事細かに分析なんかするかよ。それを基に…自分のデッキを調整し続けるかよ!」
彼の胸中を、陸人は真っ向から否定する。
ずっと見てきた。自分に押し付けるだけなら、この親への想いは無かっただろう。
「あの目は本物だった。本気だった…! デュエルに真摯に向き合ってた! そんな姿を見ていたから、俺もそれに応えたくなったんだよ!」
「——っ!」
本気の本音にたじろぐ。ほんの少しだけ、鉄仮面に罅が入った。
そんな二人のやり取りを見守る陸人の母。
「陸人…お父さん…」
「母さんもだ」
「……え?」
いきなり向けられた視線に、間の抜けた声が漏れる。
「デュエルディスク。デュエルと共に進化を続ける俺たちの必須アイテム、その最新型…これの開発に最年少で参加してたんだろ?」
「……ええ。そうね」
晴磨の表舞台での活躍を、陰で支えたのが彼女。未来を担う科学者の一人だったのだ。
デュエルの発展に寄与した一人で、ハートランド建設の際にも見学に来ていた。その創造者である人物との面識もあるらしい。
ここまで聞けば、彼女の挫折の理由には想像がつく。100年に一度の天才、ハートランドの創造者『Dr.フェイカー』の存在。
(圧倒的な才能の前には、自分の才能なんて霞んで見える…か。理解できちゃうな)
内心で共感を示す遊八。
ありふれた話だ。彼自身も、陸人にシャーク、カイト、アストラル…成長性を鑑みれば遊馬と優希もだろうか。彼らの存在を考えると、似た感情を抱く事がある。
周りの人達からすれば「あんたも大概だろ」と突っ込みたくなるが……。
「母さんも、今でも最新技術を常に確認してる。学び続けてるじゃないか。その手の相談だって未だに来てて、澱みなく答えてる。しかも、そのどれも相手の期待に添えてるんだってな。教えてもらったよ、母さんは凄い人なんだって」
「……」
「そんな父さんと母さんだから、俺は尊敬してるんだ…大好きなんだよ!」
涙ぐむ母。心に刻み込む父。
陸人は一歩、踏み出した。
「俺は、二人の偉大さをもっと世界に知って欲しい! 認めて欲しい! ……その息子である俺の事もな」
はにかむように笑う。それは、真っ当な自己顕示欲の発露。歪んでいたそれを、友の力も借りて叩き直したものだ。
「だから俺は一番を目指す! 誰に言われたからじゃない。俺の意思でだ!」
一切の迷い無く、真っ直ぐ目を見てする意思表示。
「陸人……そうか」
ここまで言われて、情けない姿を晒し続けるようなら、それこそ親失格だ。夫婦で思いを確かめ合う。そこに言葉は要らなかった。ただ頷き合うだけ……。
「これまで辛かったろう。そんな思いをさせてしまって、親として恥ずかしく思う……すまなかった」
代表して父、晴磨が言葉を紡ぐ。それは謝罪だけでは終わらない。陸人が求めているのは、それではないから——。
「もう背負わせはしない。お前が決めたように、俺たちも己の意思でこれからを生きる」
鉄仮面が崩れていき、彼の顔に色が蘇る。かつての熱が戻ってくる。
「そして、認めよう…陸人。お前の選択を俺たちは尊重する……立派になったな」
深い慈愛の笑みを携え、デュエルディスクを構え直す。そして、デッキトップを手に取れば、勝負師の顔に戻っていた。
「そんなお前の決意に応えて、俺は乗り越えるべき壁となろう。これは試練だ……覚悟はいいな?」
その問いに、陸人の答えは一つしかない。
「もちろんだ。見せてくれ、本当の父さんのデュエルを!」
お互い不敵に笑う。ここからが、本当の勝負だ。
「いいだろう。俺のターン…ドロー!」
ただのドロー。だと言うのに、そこに込められた力は陸人だけでなく、この場にいる少年少女皆を圧倒した。
「なんて貫禄だよ…これがチャンピオンに至った決闘者」
自分の知らない画面外の強者に、遊八は思う——世界は広い。
(原作キャラ以外にも、こんな人がいるのか…強い奴の周りには、強い奴が集まるんかね)
ハートランドが魔境に思えてきた。
「早速リバースカードを発動させようか、罠発動」
先程開かなかったカードの正体は……。
「〈炎王の結襲〉」
「ちゃんとあるじゃんか防御札」
「だが展開に使った方が効果的だろう? 手札・デッキ・墓地から1体ずつ、炎属性の獣・獣戦士・鳥獣族をそれぞれ特殊召喚する。来たれ、3体の陽炎獣、〈サーベラス〉〈スピンクス〉〈メコレオス〉。ただし、この効果で召喚したモンスターは効果が無効化され、ターンの終わりに破壊される」
カードより噴き出す炎。三つに分かれ、陽炎の獣と姿を変える。
『陽炎獣 サーベラス』☆6 ATK/2000
『陽炎獣 スピンクス』☆6 ATK/1900
『陽炎獣 メコレオス』☆6 ATK/2200
「そうか、エンドフェイズに破壊されるから場には絶対残らないし、陸人としてはサーチ持ちのサーベラスを破壊させたくないから、電光千鳥でバウンスするはず…そりゃ防御札で使いたくないよな」
「見事に惑わされちまった。流石だよ父さん」
狙いを読ませない徹底したポーカーフェイス。一切の隙を見せず、掴みどころのないその様は、まさに陽炎。
「そうさ、父さんは凄いんだ…そして、当然これだけでは終わらない」
腐っていた彼も、ここから這い上がろうとする。かつての熱を頼りに、己の限界に挑む。
「手札より魔法発動。〈
(来たれ…我が全霊を呼び起こすカードよ)
「ドロー!!」
確認。思考回路をフル稼働。ミス無くデッキを回し切るには……。
「少々長くなるぞ」
「覚悟の上さ」
現代遊戯王では珍しくない、所謂ソリティア。この時代ならそう長くはないだろうが、始まりそうだ。
「長くなるって?」
「どうやら回り出すみたいだね。彼のデッキが。優希君…よく見ときな」
「では行くぞ…〈スピンクス〉をリリースし、〈ペリュトン〉を通常召喚。速攻魔法〈炎王炎環〉で〈サーベラス〉を破壊。墓地の〈スピンクス〉を特殊召喚。破壊された〈サーベラス〉の効果により、〈ヒッポグリフォ〉を手札に加える」
迷いが無い。怒涛のカード捌きに、言葉を失う者もいる。だが、彼の展開はまだまだこれからだ。
「〈ペリュトン〉の効果。手札の〈ヒッポグリフォ〉を墓地に送り、自身をリリース。デッキより〈ヒュドラー〉と〈メコレオス〉を特殊召喚。〈スピンクス〉の効果。カードの種類を一つ宣言。俺はモンスターを宣言する。デッキの一番上を墓地に送り、宣言した種類ならば更に、手札か墓地から炎属性モンスターを特殊召喚できる。一番上は…〈グリプス〉だ。モンスターだったため〈ヒュドラー〉を召喚。〈ヒュドラー〉2体で再び〈ソルデ〉をエクシーズ召喚。更に効果で、墓地の〈グリプス〉と〈ペリュトン〉をORUに…これでモンスター・エクシーズが互いの場に合わせて2枚。〈エクシーズ・ギフト〉発動。2枚ドロー……魔法発動〈真炎の爆発〉。墓地から、守備力200の炎属性モンスターを可能な限り特殊召喚。〈ヒュドラー〉と〈サーベラス〉召喚」
「モンスターゾーンが埋まった…」
『運すらも味方につけた圧巻のデュエルだな』
運を前提とした展開。だが、彼はそれを確信を持って選択した。
運も実力の内と言う…恐るべき実力だ。
「総攻撃力11100…くっ」
総攻撃を受ければ敗北。防ぐ手はあるのか……。
「バトルだ。〈サーベラス〉で〈電光千鳥〉を攻撃!」
「くっ…」
陸人 LP 4000→3900
「〈スピンクス〉で〈クリッター〉に攻撃!」
「〈闇霊術—「欲」〉発動…っ!〈クリッター〉をリリースし、2枚ドローする。この効果は相手が魔法カードを見せることで無効にできるが——」
手札を見る晴磨。彼に残された最後の一枚は……。
「いいだろう。引け」
「んじゃ遠慮無く…2枚ドロー! 更に〈クリッター〉の効果。攻撃力1500以下のモンスターを手札に加える。〈マスマティシャン〉」
手札の補充はできた。が、攻撃を止めたのではない…幻獣の攻撃は止まらない。
「〈スピンクス〉の攻撃続行。直接攻撃!」
「ぐっ」
陸人 LP 3900→2000
「どうした。もう終わりか? ならばトドメだ。〈ヒュドラー〉!」
「マジかよ…陸人…」
「もう後がないぞ陸人君。何かないのか…?」
「陸人くん…」
遊八たち研究会メンバーは、こうもあっさりと追い詰められる陸人を想像できていなかった。流石は彼の父親で師匠、と言ったところか…。
「まだだ…」
だが、陸人もただでは終わらない。
「俺はまだ終わらねぇよ! 罠発動!〈パワー・ウォール〉!受けるダメージ500につき1枚、デッキからカードを墓地に送りダメージを0にする! 受けるのは2300。よって5枚を墓地に!」
これが彼の場に残された最後の一枚。五枚のカードからなる壁が彼を守る。
「だがまだ、攻撃可能なモンスターは残っているぞ!」
残り二体。もう陸人の場にカードは無い。これで終わり——。
「〈エヴォルカイザー・ソルデ〉で直接攻撃!」
……。
「……?」
動かない。攻撃宣言を受け付けない。一体何が起こったのか。
「〈超電磁タートル〉…デュエル中に一度、墓地から除外して、相手バトルフェイズを強制終了させる」
「そうか…〈パワー・ウォール〉で送られていたのか」
「言っただろ。まだ終わらないって…賭けではあったけどな」
彼は繋いだ。可能性を繋いで見せた。
「いいや、十分だ。そうでなくては困る。ならば俺も、最後の切り札を出そう」
切り札…まだ、上があると言うのか……。
陸人は気を引き締める。
(陽炎獣の切り札…わかんねぇ。マイナーテーマだったからな。さあ何が来るかな?)
観戦者たちも皆食い入るように見る。
空気が…熱されていく。
「俺は、レベル6の〈サーベラス〉〈ヒュドラー〉〈スピンクス〉〈メコレオス〉で、オーバーレイ!」
「上級四体を素材にしたエクシーズ召喚⁉︎」
「し、信じらんねぇ」
「4体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!」
炎が四つ、光の渦にて重なり合う。爆ぜて噴き出す炎の柱より、彼の切り札が現出する。
「揺らぐ陽炎、伝説と成れ。業火現を焼き払い、仇なす者みな灰と帰す! 来たれ!〈陽炎獣 バジリコック〉!」
『陽炎獣 バジリコック』★6 ATK/2500
「〈ヒュドラー〉を素材とした事で効果。墓地の〈ヒッポグリフォ〉をORUに加える。〈バジリコック〉の効果。こいつは、自身のORUの数が三つ以上ある場合に、更なる効果を得る」
「今の数は五つ…」
「これにより、今の〈バジリコック〉は、ORU一つにつき攻撃力200アップ。相手の効果の対象にならず、効果で破壊されない」
火力が増す。並の力では届かず、逆に焼き尽くされるだろう。
『陽炎獣 バジリコック』ATK/2500→3500
「こいつが出せる状況ならば、大抵はその前の総攻撃で終わる。だがお前は耐えた。誇ると良い……さあ、これが俺からの最後の試練だ。来い! カードを1枚伏せて、ターンエンド!」
進化の頂点たる皇帝と、陽炎が生み出した幻獣。この壁はひどく高い。
(どちらも効果破壊耐性付き、特殊召喚時の着地狩り四回と、高打点高耐久のモンスター。中々厳しそうだなぁ。陸人の手札に何があるか…)
「俺のターン…」
構えて、念じる。信じる。カードを引くこの手に全てを込めて、今——。
「ドロー!!」
(……そっちが運すら味方につけるなら、こっちだって)
「〈逆境の宝札〉! 相手の場に特殊召喚されたモンスターが存在し、俺の場にモンスターがいない時、カードを2枚、ドロー!」
手札は潤沢にある。今のままでは足りないが、可能性を繋ぐカードはある。ならば、何度だろうと繋いで見せよう。
「墓地の〈ブレイクスルー・スキル〉の効果! ターンの終わりまで、相手フィールドのモンスター1体の効果を無効にする。対象は〈エヴォルカイザー・ソルデ〉!」
「墓地から罠を…!」
厄介なモンスターが沈黙する。
「〈マスマティシャン〉を召喚し、効果発動! レベル4以下、〈サモンプリースト〉を墓地に送る。〈死者蘇生〉発動! 墓地の〈サモンプリースト〉を特殊召喚」
「これまた長くなりそうだね」
「またさっきみたいになんのか⁉︎」
予感。遊八にはそんな気が、なんとなくした。
「〈サモンプリースト〉の効果で、手札の魔法1枚をコストに、デッキから〈聖鳥クレイン〉を特殊召喚。ここで特殊召喚した〈クレイン〉と、コストになった〈代償の宝札〉の効果発動!合計で3枚ドロー!」
(条件軽くね?)
「〈トランスターン〉発動!〈マスマティシャン〉を墓地に送り、同属性同種族で、レベルが一つ上のモンスターを特殊召喚する。〈アステル・ドローン〉! そして、〈サモンプリースト〉と〈アステル・ドローン〉でエクシーズ召喚!〈恐牙狼 ダイヤウルフ〉!」
『恐牙狼 ダイヤウルフ』★4 ATK/2000
「〈アステル・ドローン〉を素材としたことで1枚ドロー!」
一度呼吸を整える。そして、手札を確認した彼は、その内の二枚を取り、発動した…驚愕のカードを——。
「手札の〈水征竜—ストリーム〉の効果!」
「——はあっ⁉︎」
「うわっ! どうしたの遊八くん?」
『征竜』…それは、遊戯王にて一時代を築いたテーマ。規制と寄生を繰り返し、しぶとく環境で戦い続け、遂にはメインパーツの上級征竜全てが禁止指定された。2013年、第八期…そう遊八の今いる時点からあと少し先のカードなのだ。
前世では規制解除されているが、現時点ではオーバーパワーに違いない。となれば、遊八の反応は当然と言えるだろう。
「手札のこのカードと、水属性かドラゴン族1体を捨て、デッキから〈瀑征竜-タイダル〉を特殊召喚!」
『瀑征竜—タイダル』☆7 ATK/2600
「デッキから上級を容易く……」
そんな事など知らない彼らは、恐ろしい効果だと認識するも、そのままデュエルを続行する。
(まあ、エラーが無いならいいか。俺も未来の使ってるんだし)
自分も同じ。棚上げはできない。
「征竜にはまだ種類と効果がある。墓地の〈嵐征竜—テンペスト〉の効果! 手札と墓地から、風属性かドラゴン族を2体除外して、自身を特殊召喚!」
『嵐征竜—テンペスト』☆7 ATK/2400
「今度は墓地から……」
「いやでもやっぱヤベェわ。強い」
シンプルなカードパワーだけで上位に入る。陸人本人の実力と合わせて、どこまで強くなるのか…。
「……何だ?」
不意に陸人は、EXデッキから鼓動のようなものを感じた。それはまるで、彼に語りかけてくるよう……。
(お前は…あの影か。意思があるんじゃ、とは思っていたが…カードに宿っていたのか)
その正体は黒塗りのカード。夢で手にしたものだ。
(…父さんに負けてから人生転落してたのか…八つ当たりもいいとこだな。お前が深く絶望したのはわかった。同情してやるよ…だが、それは父さんのせいじゃない。わかったら大人しく成仏しな)
瞬間、塗り潰されたカードが真の姿を解き放った。同時に影は、祓われるように追い出され、天へと昇る。
「俺は!〈瀑征竜—タイダル〉、〈嵐征竜—テンペスト〉でオーバーレイ!」
夢の中、人知れず陸人に敗北した影の魂は、カードに宿り彼の体を奪う機会を窺っていた。だが影は弱かった。デュエルも、魂も…呆気なく陸人に負けた。クソ雑魚だった…。
カードは陸人の物となり、彼の魂を宿す。
「2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れよ、〈No.76〉!」
「「「「「「——⁉︎」」」」」」
『ナンバーズ、だと…⁉︎』
間違いない。この感覚はまさしくナンバーズのもの。
陸人の身が案じられる。
「奏でる旋律虹を描き、その美しき光憂いを断つ。天への橋は架けられた! 調和を齎し、世界を導け!〈諧調光師グラディエール〉!」
美しい旋律が聞こえてくる。同時に虹が架けられ、夜闇であろうとその存在感は強い。
『No.76 諧調光師グラディエール』★7 ATK/2700
「ぐっ、これは…まだ残ってんのか? しぶといなあいつ……だが——っ!」
彼の身を蝕むのはナンバーズの呪縛か、あの影の残穢か…いずれにせよ、彼にとっては些細な事。
「これでフィールドには、4体のモンスター・エクシーズ。〈エクシーズ・トレジャー〉発動!」
正気を保っている。今の彼の心には、闇に負けぬ強い光が宿っているのだ。
「4枚のドローだ!」
「引きすぎじゃね? あいつ何枚引くんだよ」
「このターンだけなら、通常のと、逆境、代償、クレイン、アステル・ドローン、そしてこれ。合計11枚だね」
「でも遊八クンも人の事言えなくなぁい? 12枚引いた事あるのにさぁ」
「3枚戻したから9枚だし…」
「いや、十分引きすぎだぜ」
それだけ手札があればできることは多い。目の前にその証人がいる。
何をするか逆に悩みそうだな。と遊馬は思った。幸せな悩みに少し憧れる。
さて、大量にドローした陸人はどうか。
「…やっぱ、俺には君もいてくれないと、だな」
呟く。その声を聞き届けたのは、彼のカードだけ。
声に反応して、光が一つ、明滅した。それは誰の目にも見えてはいない。しかし、彼の胸には淡い光が確かに灯った。彼の心に宿るものと同じ光……そう。これこそ——。
「儀式魔法〈ドリアードの祈り〉を発動! 手札の〈マシュマロン〉をリリースし、手札からこのカードを儀式召喚する!」
彼の、彼らの魂の輝き。心蝕む闇を祓い、そのオーラは至高の領域へ至らんとする……。
「麗しき精霊術師よ。その祈り、我が祈りと重ね合わせて、森羅万象を網羅し照らし出せ!」
彼の愛は、彼女に届いていた。
「その、カードは……」
「そうだ。父さんが俺に不要だと言ったカードさ。実際俺も手放した。でも…」
彼女は見捨てない。彼の努力を、彼の本心を、一番近くで見ていたから。
「このカードはなくして俺はない! 俺の全てを捧ぐ魂のカード!〈精霊術師 ドリアード〉!」
だから彼女は共に歩む。今、その想いは重なり合う。
『精霊術師 ドリアード』☆3 ATK/1200
「すっげぇ」
「これが、陸人のエース…」
「綺麗…」
遊馬たちは、そのオーラに圧倒される。
攻撃力だけで見れば、大したモンスターではない。そう、攻撃力だけで見れば——陸人のドリアードは別だ。
『モンスターと一体となっているかのようだ。遊八とフェルグラントと同じ、カードと心通わせたデュエル。一つの理想……これがまだ発展途上だと言うのだから、恐ろしい』
未来の最強デュエリスト。その一人に間違いなく彼はいる。そう確信するアストラルだった…。
「役者は揃った。クライマックスだ。〈ダイヤウルフ〉効果発動! ORUを一つ使い、自分の獣・獣戦士・鳥獣族と、フィールドのカード1枚を破壊する!〈クレイン〉と〈ソルデ〉を破壊!」
咆哮を上げる宝玉の狼。その研ぎ澄まされた牙が、敵も味方も噛み砕く。
「くっ…だが、俺にはまだ〈バジリコック〉がいるぞ」
立ちはだかるのは、業火が生み出した伝説上の怪鳥。最後の試練を討ち取れるのか——。
「その炎。今に掻き消してやるさ! バトル!」
彼の場にその攻撃力を超えるモンスターはいない。どうするつもりなのか…。
「速攻魔法〈武装再生〉! 墓地の装備魔法を、装備可能な自分モンスターに装備する!」
「墓地の装備魔法…まさか!」
「流石に目敏いな。〈パワーウォール〉で墓地に落ちたカードにあったのさ、〈バジリコック〉を倒せるカードがな。〈レインボー・ヴェール〉を〈グラディエール〉に装備!」
虹を纏う。
神聖な力で美しく着飾ったグラディエールが、眼前の業火を払いバジリコックへ——。
「〈グラディエール〉で〈バジリコック〉を攻撃! この瞬間、〈レインボー・ヴェール〉の効果により、〈バジリコック〉の効果は無効。攻撃力は元の数値に戻る!」
清らかなる光が、幻獣からその力を奪う。
『陽炎獣 バジリコック』ATK/3500→2500
「断ち切れ! アン・リュミエール・キ・ギッド!」
陽炎を断つ虹色の一閃。
「ぐぁっ!」
晴磨 LP 1100→900
「これで終わりだ!〈ドリアード〉!」
「いいやまだだ。罠発動!」
立ち昇る業火。彼の炎は終えていない。
「〈エクシーズ・リボーン〉! これにより蘇れ! 〈バジリコック〉!」
姿を変え行く炎。伝説は蘇ろうと大きく畝る。しかし——。
「…これは、何が起きている⁉︎」
畝り、揺らぐ炎は形を得ず、グラディエールの下へ。そして次第に、虹へと溶けていく。
「〈グラディエール〉の効果。ORUを一つ使い、相手の墓地のモンスター1体を、このカードのORUにする…イーリス・ハルモニア!」
遂に炎は全て虹へと消えた。残ったのはその温度だけ。
「復活するより先に吸収したのか…ははっ、完敗だな」
「父さんこそ。強かったよ…さあ、今度こそ終わりしよう。全部…」
グラディエールの描いた虹と共に、ドリアードは空へ舞う。
眩く美しい、慈愛に満ちた虹色の光が、天空より注がれる。それは、心を洗う光のシャワー。
「祓え…浄化の極光、アウラースプリーム」
光が彼らを包む。肌を撫でるそよ風は、業火の残した熱を含み温かい。
彼女は、新たな彼らを祝福する。
彼女は祈る。彼らの未来に、幸多かれと。
彼らを縛る呪いに、終止符が打たれた。
晴磨 LP 900→0
RIKUTO WIN
「……見事なデュエルだった」
心は晴れやか。かつては忌避していた敗北も、今は心地良い。
子の成長を喜び、勝利を讃える。
「本当、凄かったわ。お疲れ様。二人とも」
それはこのデュエルを見届けた陸人の母も同じ。
息子の成長を喜び、これからも支え続ける決心をした……今度は、心を無視しないように。
「ありがとう…はあ、疲れた。久しぶりの感覚だな」
やり切った。と言わんばかりの穏やかな表情。
陸人の疲労は、同時に満足感を生んだ。
「それだけエネルギーを消費したのね。じゃあご飯にしましょうか。お友達もどう?」
「え、良いんですか?」
そこそこ人数いるが、大丈夫なのだろうか。と考える遊八だが、心配は無用なようだ。
「いいのいいの。これは私からの感謝…陸人と友達でいてくれて、ありがとうございます」
「勝手に話を進めんなって…いいけどさ」
「ふふっ、知ってる」
友達との時間も奪っていただろうから、少しでも。そう考える陸人の母。
その笑顔は、かつて陸人が見たものと重なった。歪む前の幸せだった頃と…。
(ありがとな遊八。俺に勇気をくれて)
立ち向かう姿を見せてくれた友へ感謝を。
そして当然、このカードにも。
(ありがとう。ドリアード…ずっと側にいてくれて…君がいてくれなきゃ、俺はもっと歪んで、元に戻せなかった気がする)
幼い頃の純粋な心を忘れずにいられた。それは、彼女との出会いがあったから。
一目惚れして、これをどうにか使いたい。と父に強く訴えたのを覚えている。初めてのおねだりだった。
(ねだってないか。喜んで準備してくれたもんな。こりゃお願いだ)
このカードが、この記憶が、彼を繋ぎ留めてくれた。
(まるで俺の意思の具現だな、君は……大好きだ。ドリアード)
胸に手を当て、デッキケースに手を添える。二枚のドリアードに想いを込める。
(っても、ただのカードに聞こえはしねぇか)
果たしてそうだろうか。それは、カードにしかわからない。
「おーい! 陸人ー!」
親友の声が聞こえる。うるさかった。
耳を抑えながらお返しする。
「るっせーよ! んな叫ばんでも聞こえるわ!」
「飯だ。行くぞ。お前ん家の飯は久しぶりなんだ」
変わらず元気な幼馴染だ。
幼い頃からの縁も、彼を繋ぎ留めてくれていたはずだ。感謝する相手は多い。
「別に他所も変わんねぇだろ。ったく……ありがとな堅護。友達でいてくれて」
「…なんだよ急に。別にお礼を言われたくてやってたんじゃねーよ」
ど直感な感謝に、面食らう堅護。
たまたま家が近くて、たまたまデュエルが好きで…そんな偶然の連続が、彼らを結びつけた。それだけ。何も特別なことは無かった。
だからか、感謝されるとは思っておらず、なんだか気恥ずかしくなった。
「ま、あの孤高のガキ大将の素直な姿は珍しいんでナ。目に焼き付けとくゼ!」
照れ隠しでついつい揶揄ってしまう。
「んなっ、テメェゴラふざけんな! 俺の感謝を返せ!」
「ンー、断る」
こうして言い合えるようになったのも、つい最近の事。ずっと側にいてくれた親友を、これからも大事にしていこう。そう陸人は思った。
「やっぱあーゆーのっていいよねー」
「遊八くん。今は君も混ざれるんだよ」
遠巻きに見る遊八の背を押すのは優希。強いんだか弱いんだかわかんない友の背を、物理的に押した。それはもう思いっきり。
「バッ、優希君⁉︎」
「「「うわあああ!!」」」
仲良く喧嘩する二人に突っ込む。遊八、参戦。
「あらあら、これはご飯の前にお風呂かしらね」
じゃれあう彼らを見守る陸人の母。長らく失われていたその光景を目に焼き付け、お風呂とご飯を準備しに行く。
「あ、私も手伝います!」
「ボクも手伝いますよ」
「あら、ありがとね」
小鳥と優希がそれに続く。
「あ! 優希君待っ——」
「逃がさん!」
やっと取り戻した日常を噛み締め、彩葉家は再び前へと進む。きっともう、失くさない。
「まったく。すまないね」
成り行きとは言え、立会人になってもらった少年たちに、陸人の父は謝る。
「いえ! むしろ凄いものを見せてもらいました! それで、あの、サインください!」
「ずるいぜ! 俺も! 俺デュエルしたい!」
元と言えどプロ。今も多くに望まれる彼に、鉄男と遊馬が食いつかないなどありえない。
「もう引退した身なんだがね…いいだろう。ただ、デュエルはご飯の後だ」
彼もファンサービスは忘れない。二人は大いに喜んだ。
『彩葉陸人と彩葉晴磨。親子揃って素晴らしい決闘者だ。WDCにも出場する可能性は高い。今からでも対策を練らなくてはな』
『(それに、あのナンバーズ…あのエネルギーは間違い無く本物だが、どこか違和感があった。私の知らない何かが、動いているのか…?)』
日常の裏に潜む影。それはいつどこから襲いくるかもわからない。
『(願わくば、彼らにはこれからも、平穏な日々を送って欲しいものだ)』
溢れる彼らの笑顔を見たアストラルは、その牙が向かない事を祈る。
ナンバーズを懸けた戦いは激化する。これまで以上に手強い相手が、遊馬とアストラルを待ち受けるだろう。自らの記憶を取り戻すため、アストラルは更に決意を固める。
だが今は、この温かな空間を味わうのも、悪くはない。
大きな戦いを前に、決闘者たちは一時の休息を堪能した……。
よし、これで次回からWDCに入れる。入れる?
オリキャラに未OCGを使わせてしまった…ドローソースがギフトとトレジャーばかりになるの避けたかったんです。(どっちも今回使ってるけど)今後も使うかもしれませんが、頻度は高くないし抑える。
『逆境の宝札』…アニメ版のだし使ってもおかしくないよね。アニメ本編では、天城カイトが使用。
『代償の宝札』…漫画版より不動遊星が使用。手札から墓地に送られた時に二枚ドローできる。手札コスト用。
陸人君の強さを盛りに盛ってしまいましたが、前書きにもある通り本エピソード限定のバフでしょう。彼のスタートはこっからなので、実質初登場補正。
急にぶち込んではならない。積み重ねが大事なんだ。いいね?
※キャラの背景と掛け合いは丁寧に。覚えておこう!
召喚口上に効果、攻撃名。考えるの楽しいぃ〜。
でも不安もある〜。意味、読み方、語感諸々。