遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』 作:ふわ×フワ
連続投稿、二日目ですよ。
目的地に向かって歩みを進める遊八は、道中である人集りを見つける。
「ん、なんだ?」
まだ午前中。時間はあると考えて、少し覗いてみることにした。
(最悪デュガレスに戻してもらうか。多分できるだろ)
「失礼、失礼します」
人混みを掻き分けた先。見えてきたのはデュエル。ちょうど決着がついたようだった。
「対戦、ありがとうございました。良いデュエルでした」
「くっ、負けた……オレが、こんな少女に……」
勝者は、高校生くらいだろうか…まだ若い少女。まだ幼さの残る可愛らしい顔立ちをしているが、立ち振る舞いには気品のある。先程遊八が対戦した相手同様、良いところの出に見える。
「スゲェなあの娘。これで五人目だ」
「そうね、まだ若いのに。しかも別嬪さんよ」
これは、中々の実力者らしい。
「ハートピースは…揃いませんか。さて、次の相手はどなた?」
(ほむほむ、こりゃ手強そうなお方だね。だいぶ前に人集りを作ってた不良よりも、厄介そうに感じる)
ナンバーズを手にしてすぐを思い出す。
あの頃の、同じく連勝して注目を集めていた不良と比べて、少女の方が強い。遊八の直感は示した。
そうして観察していると……。
「そこの貴方」
目が合った。
「……?」
左右を確認して、自分を指差す。
「そう。貴方よ」
まさか指名されるとは思っていなかった遊八は、おずおずと前に出る。
「僕がどうかしましたか?」
「さっきからずっと見ていたでしょう? それに、決闘者ですよね」
「えっと、はい。不快でしたら申し訳ありません」
少々視線に熱が入っていただろうか。不躾だったな。などと考えつつ、どうにか受け答えする。
「お気になさらず、悪意が無いのはわかっていますから。それで、貴方の目に私はどう映ったのかしら?」
真意を探る。
「ついさっき来たばかりなのでほぼ直感ですが、手強そう、簡単には勝てなさそうだなと思いました」
頷きながら聞く少女。
「そうですか……見た目だけで判断する方たちとは、違いそうですね」
目つきは鋭くなり、口角が上がった気がした。
しっかりと観察している事を褒める。どうやら、これまでの相手は威勢がいいだけの雑魚だったようだ。
少し考える素振りをして、少女はある提案をする。
「宜しければ、私とデュエルしませんか? 今、とても物足りなくて…私を満足させてくれる方はいないものかと。そう思っていたところだったのですよ」
デュエルのお誘い。それも、かなり自信に満ちた言葉で。
「余程腕に自信があるんですね。そしてどうやら、僕は貴女のお眼鏡に適ったようだ」
「どうでしょう。貴方のデュエル次第ですね」
今は彼女が評価するターン。
彼女は飢えている。この飢えを満たす者が現れるのか……見極める。
対する彼の返答は——
「いいでしょう。お相手になりますよ。それと…お言葉、お返ししますね……俺を、満足させてくれよ!」
相手に合わせて、できるだけ丁寧な口調で誘いを受ける。ついでに中々言う機会に恵まれなかった台詞も言った。
「フフ、そう来なくては。私、
「築根遊八です。よろしくお願いします」
お互い自己紹介。
これは礼儀だ。忘れてはならない。
「築根…? もしかして…いえ、それは後にしましょう。それでは、参りましょうか」
何かに気づいた素振りをしたが、すぐに頭の隅に置く。
「? ええ、いつでも」
「「デュエル!!」」
遊八 vs 成美
LP 4000 LP 4000
「先行はお譲りしますよ。チャレンジャー」
「んじゃ遠慮なく。俺のターン! ドロー!」
相手は強敵。この初日、二人目にして厳しい戦いを予感させる。
「ぶん回せはしねぇか。カードを3枚伏せる。〈カードカー・D〉を召喚し効果。リリースして2枚ドロー。ターンエンド」
「随分と保守的な動きですね。期待外れでない事を祈りたいですが……」
「……」
中々に上から目線。しかし相応の実力もあるだろうしと、遊八は感情を制御する。
心は乱さない。コンディションも崩れてしまうから。
「私のターン、ドロー…ふむ、2枚の永続魔法を発動します」
光の帯が二人を囲い、地面には何かの印が刻まれる。
「〈
(セイクリッド…プレアデスとメシエ7しかわからん)
「この2枚により、光属性モンスターの効果の発動は無効にならず、ターン中一度だけ、私は〈セイクリッド〉エクシーズを特殊召喚した時にドローできます」
妨害をケアし、手札も補充する手厚いサポート。思った以上に堅実な相手だ。
「仕込みはここまで、行きますよ。相手フィールドにのみモンスターが存在する場合に、〈セイクリッド・シェアト〉は特殊召喚できます。〈シェアト〉召喚。更に〈セイクリッド・ポルクス〉を通常召喚」
『セイクリッド・シェアト』☆1 DEF/1600
『セイクリッド・ポルクス』☆4 ATK/1700
「〈ポルクス〉の効果。召喚したターンに一度、通常召喚に加えて〈セイクリッド〉モンスターを召喚できます。〈ポルクス〉をリリースして、〈セイクリッド・エスカ〉召喚」
『セイクリッド・エスカ』☆5 ATK/2100
「召喚時、デッキから〈セイクリッド〉モンスターを手札に…〈グレディ〉を加えます。〈シェアト〉の効果。フィールド、墓地の〈セイクリッド〉を対象に、そのモンスターと同じレベルにします。〈エスカ〉を選択」
「これでレベル5が2体か。セイクリッド、ランク5…あれ? もしかして——」
エクシーズ召喚。それは想定内。だが、そこから出てくるモンスターが問題だった。
「私は〈セイクリッド・シェアト〉、〈エスカ〉でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 星々を統べ降臨せよ〈セイクリッド・プレアデス〉!」
星はすばる。
降り立つ聖騎士は力強く、しかし馴染み深く感じられる。
『セイクリッド・プレアデス』★5 ATK/2500
(やっぱそうだ。打ち所ミスったなぁ)
「〈星痕〉により1枚ドロー。プレアデスの効果を発動。ORUを一つ使い、フィールドのカード1枚を対象に、そのカードを手札に戻します。真ん中の伏せカードを手札に」
指差されたカードを見て、遊八の顔は苦々しく歪む。
「罠発動。〈デモンズ・チェーン〉」
プレアデスを鎖が縛る。
「このカードが表側である限り、対象のモンスターは効果と攻撃を封じられる」
「発動ではなく効果を封じるカードですか」
「また伏せ直さないといけないですし、攻撃も封じるからここかなと」
「でしたら〈シェアト〉を止めるべきでしたね」
「おっしゃる通りで…」
ミスを指摘される。が、まだ致命的ではないため、その胸中は穏やかだ。
「それともう一つ……攻撃は止まりません」
「え?」
「〈セイクリッド・プレアデス〉でオーバーレイ」
「……あ、そうじゃん」
聖騎士は、光の中で生まれ変わる。
「このモンスターは、〈セイクリッド〉エクシーズに重ねてエクシーズ召喚できるのです。刮目なさい!」
二人を囲む帯が、生まれ変わろうとする光を包み、新たな光を紡ぎ出す。
「真なる正義。結束する力。秘められし力解き放つ時、伝説の龍が誕生する!〈セイクリッド・トレミス
聖騎士たちが力を束ね生まれたとされる神星龍。それが今、目の前に姿を現した。
『セイクリッド・トレミスM7』★7 ATK/2700
「この方法でエクシーズ召喚した場合、このターンの効果発動はできませんが……これで〈デモンズ・チェーン〉は脱しました、バトルです。〈トレミス〉!」
「重ねてエクシーズってやっぱずるいよね——ぐああっ!」
遊八 LP 4000→1300
「ターンエンドです」
大きくライフを削られ、一見不利に見える。しかし、遊八は焦らない。
「俺のターン。ドロー!」
手札はまだ十分あり、場には伏せカードもある。むしろ有利なのは自分。そう考える。
「二連続で活躍してくれるとはね。速攻魔法、〈超再生能力〉発動。手札から捨てられたドラゴン。及び手札、フィールドからリリースされたドラゴンの数だけ、エンドフェイズにドローする」
「まだドローするのですね」
「じゃないと重くて扱いきれませんから。〈トレード・イン〉発動。〈フェルグラントドラゴン〉を捨て、2枚ドロー」
コストとなるのは彼のエース。レベルは8。
成美は合点がいったように頷く。
「よし、これなら。相手にのみモンスターが存在するので、〈聖刻龍—トフェニドラゴン〉を特殊召喚。そしてこれをリリース。〈モンスターゲート〉発動」
出てきては消えるカード。何を目指しているのか。
成美は警戒する。
「通常召喚可能なモンスターが出るまでデッキの上をめくり、そのモンスターを特殊召喚。それ以外は全て墓地に送ります」
次々にカードがめくられて行く。
(コラプ、ワイバー、っておい両方とも墓地行ったぞ。あ、今度はナイス墓地送り……)
「……! 出たのは〈アステル・ドローン〉。これを特殊召喚。残りは墓地へ」
『アステル・ドローン』☆4 ATK/1600
「リリースされた〈トフェニドラゴン〉の効果。デッキから〈サファイアドラゴン〉を攻守0にして特殊召喚」
『サファイアドラゴン』☆4 DEF/0
「レベル4が2体」
狙いはエクシーズ召喚か……。
「いいえ。エクシーズはしますが、ランクが違います。〈サファイアドラゴン〉をリリース。〈異界の棘紫獣〉をアドバンス召喚」
『異界の棘紫獣』☆5 ATK/1100
「まさかランク5? でももう1体は…いえ、そうでした。〈アステル・ドローン〉の効果ですね」
「正解です。俺は〈棘紫獣〉と〈アステル・ドローン〉でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 顕現せよ。〈No.5〉! 黄泉より出でし朧なる竜。亡者喰らいてその身一つに力束ねよ!〈デス・キマイラ・ドラゴン〉」
異様なプレッシャーが場を支配する。
『No.5 デス・キマイラ・ドラゴン』★5 ATK/2000
「これが貴方の——」
「エースの1体です。バトル!〈M7〉に攻撃!」
攻撃力不足。ならば当然、仕込みがある。
「ここでリバースカード、〈竜魂の城〉発動! 墓地のドラゴンを除外し、攻撃力700アップ!」
「それでも攻撃力は同じですよ」
双方の攻撃により起こる爆煙が、両者の視界を遮る。
「そうですね。しかし、破壊されるのは貴女のモンスターだけです」
それが晴れた時、フィールドに残っていたのは——
「破壊耐性、ですか」
朧なる竜ただ一体のみ。
「〈No.〉は〈No.〉でしか破壊できない。バトル終了時〈デス・キマイラ〉の効果。墓地から〈コラプサーペント〉をORUに加え、攻撃力アップ。カードを1枚伏せ、エンドフェイズ。〈超再生能力〉の効果を処理します。該当するモンスターの数は3体。よって3枚ドロー。エンドです」
エースを強化。失った手札を取り戻し、ターンを渡す。
終始優位に立ち続ける遊八に、成美は今日一番の高揚感を抱いた。
「期待以上です。ここまでとは思わなかった……ならば私も、持ち得る全てをぶつけなくてはなりませんね」
ぞわりとした。
彼女は微笑んでいる。見惚れてしまいそうなほど可愛らしく——だというのに、彼女から感じるのは、その外見からは想像できないほどの並々ならぬプレッシャー。
(なんだよありゃ…一瞬だけどびびっちまった……)
彼女の圧と遊八の心の呟きは、デュガレスにも届いた。
『(あの若さで、ナンバーズに頼らずにこれ程…素晴らしい。やはり人間は面白いな)』
彼女を高く評価するデュガレス。同時に、ナンバーズを持っていない事も証明される。
(天然モノかよ。それはそれでヤベェや…)
「フフッ」
だからといって諦めなどしないが。
メインキャラを除き、陸人の父に次ぐ強者だ。逆に心が躍る。
「上等だ。見せてもらいましょう!」
「では遠慮なく。私のターン! ドロー!」
変わらず美しい所作。誰もが彼女に目を奪われる。
遊八は光を幻視した。彼女の操る聖騎士たちにも劣らぬ光輝を放っている。
「〈セイクリッド・グレディ〉召喚。効果によりレベル4、〈セイクリッド・ソンブレス〉を特殊召喚。〈ソンブレス〉の効果です。墓地の〈シェアト〉を除外し、〈ポルクス〉を手札に、もう一つの効果によりそのまま召喚」
ぐるりぐるりとカードが舞う。デッキが回る。一糸乱れぬ正確さで。
「〈グレディ〉と〈ソンブレス〉でオーバーレイ!〈セイクリッド・オメガ〉をエクシーズ召喚!〈星痕〉によりドロー。〈オメガ〉の効果発動。ORUを一つ使いこのターン、今場にいる〈セイクリッド〉は魔法・罠の効果を受けません」
まだ展開途中のはず。遊八は訝しむ。
「〈エクシーズ・ギフト〉で2枚ドロー。〈オメガ〉1体でオーバーレイ! 再び私に力を——っ!〈セイクリッド・トレミス〉!」
再臨する星神龍。心なしか、先程より輝きが増しているように見える。
「〈ポルクス〉の効果と、墓地に送られた〈ソンブレス〉の効果を適用します。〈ソンブレス〉は墓地に送られたターンに一度、〈セイクリッド〉モンスターの召喚に必要なリリースを一つ減らします。〈セイクリッド・レスカ〉を召喚」
ソンブレスは、オメガの効果発動時に墓地に送られている。
「だから〈オメガ〉の効果を……」
「召喚時、〈レスカ〉の効果発動。手札より〈アクベス〉を特殊召喚。効果、自分フィールドの〈セイクリッド〉モンスターの攻撃力を500アップ!」
『セイクリッド・トレミスM7』ATK/2700→3200
『セイクリッド・レスカ』ATK/2200→2700
『セイクリッド・ポルクス』ATK/1700→2200
『セイクリッド・アクベス』ATK/800→1300
「これで最後です。〈ポルクス〉と〈アクベス〉でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!〈セイクリッド・ビーハイブ〉!」
『セイクリッド・ビーハイブ』★4 ATK/2400
展開終了。
どうにもここ最近の遊八は、ソリティアを見たり、したり、されたりする。
心のどこかに、いつもの。と思う心があった。小さく笑う。
「貴方を倒し切るには足りませんが、これが今出せる全力です。行きますよ。バトル!」
神星龍が動く。
「〈トレミス〉で〈デス・キマイラ・ドラゴン〉を攻撃!」
当然亡朧竜も迎え撃とうとする。
「〈竜魂の城〉の効果!」
『デス・キマイラ・ドラゴン』ATK/3000→3700
「足りてませんよ!〈ビーハイブ〉の効果発動!〈トレミス〉の攻撃力を、ターンの終わりまで1000アップします!」
『セイクリッド・トレミスM7』3200→4200
集う光、その正体はハチの思わせる小型端末。攻撃を支援する。
「4000超え……っ! があああっ!」
遊八 LP 1300→800
「ぐっ、バトル終了時〈デス・キマイラ〉の効果! 墓地の〈ワイバースター〉をORUに加える! これで攻撃力アップだ!」
『デス・キマイラ・ドラゴン』ATK/3700→4700
「……カードを2枚伏せて、ターンエンド。〈ビーハイブ〉の効果終了」
「同じく〈竜魂の城〉の効果終了」
モンスターは健在。戦況は変わらず遊八が優位にある。だが両者共に、そこに意識は無い。
(私が勝つには、このカードたちにかかっている)
(あの伏せ…このまま攻めても間違いなく勝てない。俺も打てる手は全て打たないと)
するのは勝つための計算だけ。有利不利など最早関係無かった。
「俺のターン…」
神経を研ぎ澄まし、己の魂を込める。
「ドローー!!!」
運命のカードを引き抜く……お互いに。
「リバースカードです!〈エクシーズ・リボーン〉!〈セイクリッドプレアデス〉を特殊召喚! その後このカードはORUとなります。そして〈星痕〉の効果により1枚…ドロー!」
「……このターンで決着をつける」
「奇遇ですね。私もそのつもりでした」
両者の意見が一致した。
このデュエルを見守る人々にも緊張が走る。
「もう1枚開けましょうか。〈セイクリッドの流星〉発動。このターン、〈セイクリッド〉モンスターとの戦闘で破壊されなかったモンスターは、その戦闘が終わると同時にデッキに戻ります」
(連続攻撃が封じられた。二体以上で殴るか、一撃必殺かしか無い)
デス・キマイラで攻撃しなければ免れるが、どのみちデッキに戻されるだろう。なら予定通り、このターンで終わらせる方針を取る……曲げる気など一切無かったが。
「さあ、来なさい。築根遊八」
「ええ、もちろん」
睨み合う時間は終わり、決着へのカウントダウンが始まる。
「まずはここから行きましょう。装備魔法〈
(あれは、〈竜魂の城〉で除外されていた一体)
「リバース、〈牙竜転生〉! 除外状態のドラゴンを手札に、〈フェルグラントドラゴン〉回収」
(あれも…ここまで計算していた…?)
これで遊八の最高のエースが手札に戻ってきた。
「〈死者蘇生〉で〈サファイアドラゴン〉蘇生。〈トフェニドラゴン〉と共にリリースし、 アドバンス召喚! 我が相棒にして、雄大なる竜!〈フェルグラントドラゴン〉!」
威光を放ち竜は翼を広げる。遊八の魂、此処にあり。
『フェルグラントドラゴン』☆8 ATK/2800
「〈トフェニドラゴン〉の効果でもう1体の〈サファイア〉をデッキから特殊召喚」
(……まだ足りない。〈流星〉が辛いな。でも——)
「届かせる。〈馬の骨の対価〉!〈サファイアドラゴン〉を墓地に送り、2枚ドロー!〈アドバンスドロー〉!〈フェルグラント〉をリリース、2枚ドロー!」
カードが叩きつけられる度に決着は近づく。だが、ドローカードはそれを引き延ばす。焦らされた観衆は沈黙し、固唾を呑む。
一方で成美は動じない。如何なる結果も受け入れる覚悟ができているからだ。
「……〈ダブルサイクロン〉で、〈デモンズチェーン〉と〈神星なる領域〉を破壊。〈復活の福音〉で〈フェルグラント〉を復活させ効果、対象は〈ダークストーム・ドラゴン〉」
計算しながらの展開。静かに積み上げていく。
「〈D・D・R〉のコストになったカード……」
「そのレベル×200、攻撃力をアップ。これで4400だ」
大きな深呼吸を挟む。それが意味するのは当然——
「バトル!」
周囲が騒ついた。遂にこの時が来たのだと、汗の滲む手で拳を握り、見逃すものかと目を見開く。
「〈デス・キマイラ・ドラゴン〉で、〈セイクリッド・ビーハイブ〉を攻撃!」
先に動いたのは亡朧竜。開かれた口は魂をも喰らう。
「〈ビーハイブ〉の効果です! ORUを一つ使い、攻撃力を1000アップ!」
『セイクリッド・ビーハイブ』ATK/2400→3400
「でもまだ足りない!」
「ですからこうします!〈オネスト〉!」
「——それはっ!」
現出する天使。聖騎士に翼を授ける。
「このカードを墓地に送り、バトルする相手モンスターの攻撃力を、〈ビーハイブ〉に加えます!」
「んなの許せるか! カウンター罠!〈エクシーズ・ブロック〉! 自分フィールドのORUを一つ取り除き、その発動を無効にする!」
天使の翼は消えた。しかし——
「ですがこれで、攻撃力は逆転しましたよ!」
『デス・キマイラ・ドラゴン』ATK/4000→3000
「ライフで受ける……っ!」
遊八 LP 800→400
「〈流星〉の効果。〈デス・キマイラ・ドラゴン〉はデッキに戻ってもらいます」
「くうっ…!」
残りライフは風前の灯火。残されたモンスターはフェルグラント一体のみ。
「私のライフは無傷、モンスターも皆健在です。これは勝負ありましたかね」
誰もが彼女の勝利を確信した。
ここから全て削り切るなど不可能……。
「何勘違いしてんだ? まだ俺にはモンスターがいる」
しかし遊八は諦めていない。何故。成美は訝しむ。
「〈フェルグラントドラゴン〉1体のみでしょう? それで何ができると?」
「貴女のライフを削り切れる!」
断言した。これにより観衆の騒めきはより大きくなる。瞬きすら忘れて食い入る者もいる。
「……っ! いいでしょう。ならばやって見せなさい!」
「ええ勿論! これがラストバトル!〈フェルグラントドラゴン〉!〈セイクリッド・トレミスM7〉に攻撃だ!」
標的は成美の切り札、トレミスM7。
天高く舞い上がり、咆哮を上げる。
「〈竜魂の城〉の効果! 攻撃力700アップ!」
『フェルグラントドラゴン』ATK/4400→5100
「攻撃力は超えていますが、その差は1900。まだ足りない!」
「ですね。で、今更止めるとでも?」
揺さぶりは無意味。成美が考えるのは遊八の宣言がハッタリか否か。
(残り一枚の手札で何ができると言うの? いや、でももし本当にできるなら)
「どうあれすべき事は一つだけでしたね……〈プレアデス〉の効果発動!〈フェルグラント〉を手札に!」
「当然許さない! 墓地の罠、〈スキル・プリズナー〉の効果! このカードを除外し、〈フェルグラント〉を対象に発動したモンスター効果を無効にする!」
不意を突かれる。これを成美は予測できていなかった。
「墓地から罠⁉︎ まさか、〈モンスター・ゲート〉で…ですが攻撃力が足りないのに変わりはありません!」
揺らぎ出した勝利を、それでもまだ諦めないよう声を張る。
しかし見てわかる。彼女に残された手は、もう無い。
「……ダメステいいっすか?」
短く、確認の一言を発する。
「……え?」
彼女には、そのたった一言が死刑宣告のように思えた。
遊八に残された一枚の手札が、宣言と共にデュエルディスクへ。
「〈オネスト〉」
「それは——」
ついさっき使い、そして止められたカード。その効果は——
「バトルする相手モンスター…〈M7〉の攻撃力を〈フェルグラント〉に加える!」
後光が差すようだった。
薄らと浮かぶ天使のビジョン。フェルグラントと重なり、溶けるように消える。瞬間、その威光が増した。
『フェルグラントドラゴン』ATK/5100→8300
「これが俺の全力です。どうでしょう。僕は、貴女のお眼鏡に適いましたか?」
それは開始前にあった問答。彼女を満たすことができただろうか。
「……ええ、素晴らしいデュエルでした。満足です」
どうやらできたようだ。満面の笑みで返してくれる。
互いに全力を尽くしたデュエルは、勝っても負けても笑顔で終われるのだと、遊八は改めて実感する。彼女の笑みにニカっと笑い返した。
「それは良かった。ではこれにて幕引きです! 行くぞ〈フェルグラント〉! グランドレイ・バースト!」
掻き消える神星龍。見事、一撃でライフを削り切って見せた。
成美 LP 4000→0
YUYA WIN
「対戦ありがとうございました。こちら、ハートピースです」
受け取る。ピタリとハマった。
「こちらこそ。貴女と戦えて良かった」
二人の間で固く握手が交わされ、観衆が沸き上がる。気づけば先程よりかなり増えている。デュエルに集中していて気がつかなかった。
驚く二人。大観衆から、拍手と二人を称える声が浴びせられた。
「やっぱり、デュエルって素晴らしいですね。こんなにも多くの人を笑顔にできる」
「そうですね。こんなの、僕初めてですよ」
深い満足感を噛み締めながら、遊八は観衆に手をふり返す。
「私、
彼女の思い出に残るその人物は、遊八と同じ名字だった。
「へぇ、そうなんです…ね⁉︎ え、待って父さん⁉︎」
遊八の父ならば当然の話か。
「あら、思った通り。少し面影がありましたから、もしかしてって」
遊八の父は、仕事で各地を忙しなく飛び回っているのだが、その縁らしい。
彼女が会ったのは、遊八がまだ小学校低学年、彼女も小学生だった。そこそこ前である。
「家の父の会社が、希宮さんのお陰で立ち直りまして。今でも良き友、良き取引先として、父も懇意にしているのですよ」
遊八の父、大活躍。通りで自由に使えるお金が多いわけだ。
遊八のため、日夜骨身を惜しまず働く父が、目に浮かぶ。
「あの、もっと父さんの話を聞かせてもらえますか!」
「でしたら、近くの喫茶店にでも行きましょう。私も貴方ともっとお話したいですから」
そうして、観衆にお辞儀し、道を開けてもらってその場を離れる。
並んで歩く今の二人は、姉弟さながらだった。
現代遊戯王に取り憑かれた男! ス○イダーマッ!
気がついたらぐるぐる回っているし、ルート探していて困っています。誰か助けてください。
竜魂の城とダブルサイクロンが中々便利。
セイクリッドを回すの初めてでして、処理やルートに不安はありますがなんとか書き切りました。好きなカードはトレミスです。
ターミナルワールド。設定漁ろうかな…。