遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』   作:ふわ×フワ

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 連続投稿三日目。

 お気に入りが減るのは覚悟の上。また別方向で無茶苦茶やっぞ! ……私結構好き勝手してるよね。皆さんの心の広さを感じる。



No.20 潜む影

 

 

 WDC予選。無事二勝目を手にした遊八は今、その対戦相手『星守成美』と喫茶店にいた。

 

「希宮さんは、よく貴方の事を口にしていました」

 

 父の話を聞きたかったからだ。長らく会っていない彼が、何をしていたのか、自分の事をどう思っているのか、知りたかったからだ。

 

「自慢の子と、そう言っていました。まだ小さいのに、貴方一人で家事などをこなしていたそうですね」

 

「そう、ですね。最初は父がしていたのを、見様見真似でやっていたら自然と」

 

 半分くらい嘘である。

 小二くらいまでは、殆ど父が頑張って家事もしていた。が、遊八も家事は最初からできた。前世のお陰である。肉体的に厳しかっただけで、掃除などできそうな部分は進んでしていた。

 

(それは話せないからね。信じられない話に、しかも押し付けられてしていたから自然と、なんて)

 

 前世で彼は親戚に、家事と、あらゆる責任を押し付けられた。理不尽極まりない。

 結果、一人で電話対応ができるようになり、家事は体が勝手にやろうとするほどになった。それで今世の父に不思議がられた事もあったが、疲労もあってか、深く聞かれる事は無く、むしろ褒められた。遊八は心がポカポカした。

 

「凄いですよね。私なんてまだまだ未熟なのに…」

 

 裕福な家庭だろうし、花嫁修行でもしているのだろうか。まだあまり上手くいかない自分と比較して、羨ましそうにしている。

 

「始めたのは最近ですか?」

 

「そうですが」

 

「でしたら経験の差ですよ。もう数年は一人ですし」

 

「でも以前からもできていると」

 

 今と昔は違う。

 

「え? あ、まあやらないといけない状況でしたし、必死だったんです」

 

 (前世の)事実である。上手く誤魔化した。

 

「とにかく、やればいつの間にかできるようになるもんです。ですから落ち込まないで!」

 

「ありがとうございます……そうだ、教えてもらおうかな」

 

 妙案が浮かんだ。とばかりに呟く。

 

「へ?」

 

 ちょっと予想外の内容が聞こえて、間の抜けた声が漏れる。

 

「いえ、よろしければ家事を教えてもらおうかと」

 

「僕で良いんですか? 多分基準がそちらと比べて緩いかと……」

 

 一般と富豪では、求められるラインが違うだろうと、思い止まってもらおうとするが……。

 

「いえ、うちもそこまで厳しくはないので、お気になさらず」

 

「そ、そっすか」

 

 押し切られた。彼女の押しが強いと言うよりこれは、遊八が押しに弱いだけな気がした。

 

「では後ほどご自宅にお邪魔しますね」

 

「そんな畏まらなくても…じゃなくて、家の住所、知ってるんですか?」

 

「知りませんよ。ですから案内していただければと」

 

「あ、はい。わかりました」

 

 どんどん話が進んでいく。デュエルと違って遊八が弱すぎる。

 

「ふふ、それじゃ話を戻しまして、希宮さんが遊八君を褒めていた。と言うところまででしたね」

 

 しれっと名前で呼び始めた。

 

「遊八君が深く愛されているのが、よくわかりました。だから、あれだけ必死になれるのですね」

 

 窓の外、空の向こうを見やる。

 

 一度だけ、働き過ぎではないかと問われた事があったらしい。しかし、そんな事はないと、遊八を思えばこれでも足りないと、そう言っていたそうだ。それともう一つ、とても身体の調子が良く、今働かなければ、これ以上はもう無い気がするとも。

 

「実際、かなり顔色が良く健康的。思考能力、身体能力も一般のそれよりも高く見えました」

 

 仕事でも大きな成功が連続し、人生の絶頂期と言って差し支えない状態だった。彼は大出世を遂げ、それでも原点たる遊八を忘れず邁進し続けたのだ。

 彼を知る者は皆、彼を尊敬し、信頼していた。

 

「唯一弱音を吐いたのが、遊八君を一人にしている事。でした」

 

 まだまだ親の存在が必要な時期。だと言うのに、親として側にいてやれない。親としての自分は最低だ。そう嘆いていた希宮。

 思い返せばその付近は、珍しく長期休暇を取っていた時期と重なっている。彼の友や会社が、各々連絡を取り合い、どうにか休みを捻出した結果だそうだ。

 

「倒れられては困ると、無理に休ませたと聞いています」

 

「そんな事が……」

 

「まあそれ以降は、何かとタイミングが合わず、あそこまでの長期休暇は取れてなさそうですがね。最近はどうでしょう」

 

 直近では会っていないようで、様子を聞かれる。

 

「少し前に帰ってきてたかもしれないですね。これ、母の形見なんですが、綺麗になってて…手入れの仕方のメモも置いてましたね」

 

 金盞花の指輪を見せる。以前よりも輝きを取り戻していた。

 またそのすぐ後に、様々な業者の人が来て、家の清掃なり修理なりしてくれている。

 

「そうでしたか。父も心配しておりましたから、これなら良い知らせになりそうです」

 

 親子の時間が無いのは残念ですが。と付け足し、これで話に一区切りがついた。

 遊八も、父から想われていることを再確認でき、少し安心した。

 

「ではそろそろ行きましょうか。一度宿泊先に寄っても?」

 

「構いませんよ」

 

 再び移動を開始する。

 

 

……

 

 

「それでその時にですね——」

 

「それはそれは…ふふ」

 

 先よりも緩い雰囲気で、雑談しながら歩を進めていた、その時である。

 

「う、うわああああああ!!!」

 

 二人の耳に、突如として悲鳴が突き刺さった。

 

「「——っ!」」

 

「今のは、一体…?」

 

「聞こえたのは、あっち!」

 

 突如として走り出す遊八。

 

「遊八君!」

 

 成美は驚きつつも、彼をすぐさま追いかけるのだった。

 

 

……

 

 

 薄暗い路地裏。静かな空間を駆ける足音が二つ、やけに大きく響いている。空気は冷たく、不気味。その先へ行くのを止めろと、訴えかけてくるようだ。

 しかし止まれない。

 

(どこまで行くの、遊八君。こんな場所に一人にはできないし……)

 

 先を行く少年の背を追い、少女は憂う。

 

(なんで悲鳴が…只事じゃない。この先で何が……)

 

 これほどの不安感を抱いた事は無い。影が揺れて見える。日の遮られたこの場に、揺れる影など無いはずなのに。

 今すぐにでも引き返したい衝動を抑え、必死に走る。少年を見失わぬよう、必死に。すると——

 

「ゆ、遊八君?」

 

 少年。築根遊八は不意に止まる。

 

「デュエルディスク? ハートピースまで…持ち主はどこに……」

 

 遊八はその場に屈み、持ち主のいないそれに触れた。

 瞬間——

 

『遊八! 後ろだ!』

 

 デュガレスが叫んだ。彼が叫ぶなど異常事態でしかない。

 猛烈に嫌な予感がする。狙いは自分…ではない。

 

「——っ!」

 

 振り返る。視界が映ったのは一緒にいた少女。そして——

 

「成美さん!」

 

「え——きゃっ!」

 

 成美を抱え、その場から飛び退く。

 成美の立っていた場所に、何かがいた。真っ黒な何かが。

 

「な、何なんです? これは…影?」

 

「現実にまで出てくんのかよこいつ」

 

 それは、遊八が夢で遭遇した影になった。

 

 

 

 ——同時刻

 

「また会うなんてな…」

 

 陸人の目の前にも影が出現。

 

 今回は、彼らだけではない。

 

 

「だ、誰だお前!」

『気をつけろ遊馬。只者ではない…!』

 

 遊馬とアストラル。

 

 

「何だテメェ。どう見ても人じゃねぇな」

 

 凌牙。

 

 

「貴様、何者だ…」

 

 カイトの下にも。

 

 この世界の重要人物の前にも、姿を見せている。

 いや、まだ二人……。

 

「優希クン。アレって…」

「影? 人…じゃないね」

 

 優希と堅護の前にも、現れていた。

 

 

 本来存在し得なかった脅威が、この世界に足を踏み入れた瞬間である。

 

 

——

 

 そんな事など露知らず、遊八は目の前の影を相手にする。

 

「デュエルディスクの持ち主も、お前の仕業だな」

 

「——」

 

 返事は無い。しかし、ソレは腕を突き出し、デュエルディスクを出現させた。

 

「相手しろってか。良いぜ、今度もぶっ飛ばしてやる」

 

「待って遊八君。あれは何なのですか?」

 

 状況についていけない成美。ただ相手が危険であるとだけ理解する。

 

「僕も知りません。が、倒さないといけない気がするんです」

 

 影は揺れる。

 得体の知れぬ存在に、臆せず立ち向かう遊八を見て、成美も意を決して参戦しようとするが、それは黒い膜により阻まれた。

 

「な、今度は何ですか!」

 

 遊八と成美を分断する黒い膜。先を見通せる程薄いが、いくら叩こうと破れる気配は無い。

 

「閉じ込められた! デュエルに勝たないと出れないとかか…?」

 

『……ここを中心に、奴等の支配する空間と化しているのか。あの夢の先の異世界に近い。デュエルの強制は、正解だ』

 

 瞬時にこの異変を分析したデュガレス。誘い込まれたのだと理解する。

 

「なんであれやらないと。行くぞ!」

 

「遊八君。どうか……」

 

 成美は祈る。遊八の無事を。

 

 

「デュエル!」

「——」

 

 影    vs   遊八

 LP 4000     LP 4000

 

 先行は影。トップを引き抜き、決められた動きを取る。

 

「——」

 

 魔法を一枚発動。しかしそれは、ルールに反した一枚。

 

「〈強欲な壺〉……⁉︎ 禁止カードのはずじゃ…」

 

 問題無く処理される。戸惑う遊八を無視して、二枚の手札を追加。壺は破壊される。

 

「——」

 

 続いてはモンスターの召喚。今回は姿がはっきりしていた。

 

「それは、〈幻殻竜〉?」

 

『幻殻竜』☆4 ATK/2000

 

 

「何ですか、あのモンスターは……幻竜族? 見た事が無い」

 

 ルール違反と未知のモンスター。成美は戸惑う。

 

 

(未来のカードまで使うとか、何でもありかよ……コイツっ!)

 

 遊八は睨み付けるが、通じているのだろうか。影は止まらない。

 続けて発動されたのは、三枚の魔法カード。

 

 装備魔法〈ガーディアンの力〉

 永続魔法〈強者の苦痛〉〈怨霊の湿地帯〉

 

「ロックデッキか? そんで〈ガーディアンの力〉で殴り勝つと。んで伏せカードか」

 

 二枚の伏せを出し、これで終わりかと思えば……最後に一枚、フィールド魔法を出してきた。

 

 フィールド魔法〈魔鍾洞〉

 未来の禁止カード。強力なロック盤面を築きかねない恐るべきカードだ。

 

(純粋な活躍もあったけど、遅延戦法だとか時期的な問題だとかで、大会運営上の問題もあったとか何とか。いや強力カードに変わりはないよ)

 

 前世におけるその存在を思い出す事で、冷静さを保つ。正直今にでもブチギレたい。

 

 影のターンは終了。遊八に移る。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 このドローフェイズ。影の裏側カードが開かれる。

 

 影 LP 4000→3000

 

 永続罠〈スキルドレイン〉〈魔封じの芳香〉

 

 モンスター効果無効。魔法は伏せて、ターンを跨がなければならない。

 

「がああああああ! もう! 何じゃそりゃあよ!」

 

 感情を抑えきれなかった。

 

 

(徹底した遅延戦法。このロックデッキ、穴はありますが強力ですね)

 

 観戦しているが故に、俯瞰した視点で見れる。どうにか、突破手段を手にするまで時間を稼ぎたい。

 

 

「まあいいや、手はある。あまり俺を舐めんなよ。カードを4枚伏せてターンエンド!」

 

 瞬時に切り替え、伏せのみでターンを終える。

 

「——」

 

 影のターン。カードを引き、そのままエンド。

 

(えっと…いや、そうか。向こうも〈魔鍾洞〉適用されるんだ)

「んじゃ俺のターン、ドロー! さぁて、てめぇ覚悟はできてるな? できてなくてもぶっ飛ばす!」

 

 普段の遊八らしからぬ強い語気。冷静に怒りをカードに込める。

 

「リバース!〈おろかな埋葬〉! デッキのモンスターを墓地に! 更にリバース! チェーン2、〈ダブルサイクロン〉!〈おろ埋〉と〈スキドレ〉を破壊!」

 

 リバースラッシュで盤面のロックを一つ剥がし、墓地を肥やす。

 

「墓地に送るのは〈アークブレイブドラゴン〉! も一丁リバース!〈復活の福音〉! 蘇れ!〈アークブレイブ〉!」

 

『アークブレイブドラゴン』☆7 ATK/2400

 

 復活したドラゴンは、遊八の怒りを乗せて光の波動を放つ。

 

「〈アークブレイブ〉の効果発動! 墓地から特殊召喚した場合に、相手の表側魔法・罠を全て除外! その数1枚につき200の攻撃力アップだ!」

 

 今、場にいるモンスターの数は互いに同じ。魔鍾洞の効果は受けない。これにより、影の魔法・罠は跡形も無く消え去った。

 

『アークブレイブドラゴン』ATK/2400→3400

 

「これで俺を止めるカードは無くなった。〈レスキューラビット〉召喚!効果により〈アレキサンドライドラゴン〉2体を特殊召喚!」

 

『アレキサンドライドラゴン』☆4 ATK/2000

 

「バトル! 総攻撃だ! 〈アークブレイブ〉で〈幻殻竜〉、残りで直接攻撃!!」

 

 輝く炎に焦がされ、幻殻竜は消滅。続くドラゴンの攻撃により、ついに影は倒れた。

 

 影 LP 3000→0

 

   YUYA WIN

 

 

 「あー、なんかだるいや。ロックデッキは何でいつもこうなのか……」

 

 低速なのに疲れるのは何故なのか。疑問に思う遊八である。

 

「さて、そんでこりゃどういうこったよ」

 

 デュエルは遊八の勝利で終わった。しかし、影はまだ消えていない。

 

「前は勝ったら消えたろ。それに膜もまだ——」

 

 周囲を見回し、膜が残っているのを確認する。

 

「遊八君!」

 

 その叫びで、遊八は視線を影に戻す。

 

「な、うわっ!」

 

 ゆらりと近づく影は、彼を飲み込もうと飛び掛かる。だが、影は遊八に届かなかった。

 

「——!——!!」

 

 地に落ち、苦しそうにのたうち回っている。身体は溶けていき、抗うように身を捩り、手を伸ばす。

 

「——!……——」

 

 ついに、影は力尽きた。

 あまりに惨たらしい最期に絶句する。まるで、この世のルールを破ったがために、天から罰が下されたかのような、そんな最期だった。

 

 影の消滅に合わせて膜は消え、先程まであった不気味さも無くなった。

 

「——っ! 無事ですか遊八君!」

 

 立ち直った成美が駆け寄ってくる。

 

「あ、ああ。見てたろ? 傷一つないよ…です」

 

 疲れからか敬語が外れた。それに気づき、すぐ語尾を訂正する。

 

「良かった……お疲れ様です。そしてありがとう。守ってくれて」

 

 遊八がいなかったら、きっとデュエルする暇も無く、影の餌食になっていたはずだ。

 

「いえ、僕だけじゃ守りきれなかったですよ。カードが教えてくれたんです」

 

「そうですか。でしたら、遊八君のカードにもお礼をしなくては……ありがとうございます」

 

 精霊を信じているのかは知らないが、律儀な少女は、カードにも礼を言う。

 

(だってよ、デュガレス)

 

『礼を言われる程でもない。あれは、我らにも害をなすやもしれんからな。何より、遊八の為でもある』

 

 未だ正体不明の影。しかし今回の一件からすれば、脅威であるのは間違いないだろう。ナンバーズだからこそ感じ取ったものも、あるかもしれない。

 遭遇したならば速やかに駆除する。それが遊八とデュガレスの方針である。

 

「さてと、巻き込んじゃいましたね。ごめんなさい」

 

「いえ、悲鳴を聞き、すぐに助けに向かおうとしたのですよね」

 

 成美は遊八の心の内を見通している。

 

「私は遊八君のその行動を、素直に尊敬します。むしろ私こそ、足を引っ張ってしまいました」

 

「あ、いや、それは急でしたし、仕方のないことかと……それで、えと、その…お褒めに預かり光栄でございます?」

 

 自分よりも大人な少女に敬意を表され、遊八はたじたじになる。

 

「ふふ、褒められると弱いですよね、遊八君。デュエル中はかっこいいのに……可愛い」

 

「揶揄うのはよしてください。慣れてないんですよこういうの…」

 

 前世じゃ褒められるなどあり得ず、今世も褒めてくれる相手は遠くにいる。デュエルに関するものなら素直に受け止められるのだが、何故だかそれ以外は上手く受け止められないのだった。

 

「申し訳ありません、つい。では行きましょうか」

 

 手の平で転がされている気がする遊八だが、彼女を相手に主導権を握るのは容易ではない。育ちの差を感じながら、その手と、笑顔に引きずられて行くのだった。

 

 

——少し先の、軽い後日談。

 

 後に影と遭遇したメンバーに話を聞いたところ、遊八ほどのロック盤面は、敷かれなかったとの事。禁止や未来も無し。

 遊八は叫び、嘆いた。いくつもの罵詈雑言が飛び出したという。

 

「なんで、僕だけ……」





 ソリティアを止める方法。ロック戦法。止め方が強引だが、お陰で短く纏められた。

 敵なら好き勝手やらせても良い。
 そう思っている私ですが、当時の禁止カード使用は今回のみです。
 オリカも使用予定は無いです。ほら、オリカってあまり好まれないでしょ?
 だから使わない方針ではいるんですが、使って良いなら、せめて敵キャラだけでも許してはくれないか。そう思っているのです。

一番の理由
 あるカードの介護を…失礼、格を保ちたいから。

 てな訳でアンケート機能のお試しも兼ねてます。
 ぜひご協力をば、よろしく。
 (良い感じに使える遊戯王語録が無かった。ゼアルに絞ってそれっぽく…無理矢理感あるな?)
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