遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』 作:ふわ×フワ
連続投稿三日目。
お気に入りが減るのは覚悟の上。また別方向で無茶苦茶やっぞ! ……私結構好き勝手してるよね。皆さんの心の広さを感じる。
WDC予選。無事二勝目を手にした遊八は今、その対戦相手『星守成美』と喫茶店にいた。
「希宮さんは、よく貴方の事を口にしていました」
父の話を聞きたかったからだ。長らく会っていない彼が、何をしていたのか、自分の事をどう思っているのか、知りたかったからだ。
「自慢の子と、そう言っていました。まだ小さいのに、貴方一人で家事などをこなしていたそうですね」
「そう、ですね。最初は父がしていたのを、見様見真似でやっていたら自然と」
半分くらい嘘である。
小二くらいまでは、殆ど父が頑張って家事もしていた。が、遊八も家事は最初からできた。前世のお陰である。肉体的に厳しかっただけで、掃除などできそうな部分は進んでしていた。
(それは話せないからね。信じられない話に、しかも押し付けられてしていたから自然と、なんて)
前世で彼は親戚に、家事と、あらゆる責任を押し付けられた。理不尽極まりない。
結果、一人で電話対応ができるようになり、家事は体が勝手にやろうとするほどになった。それで今世の父に不思議がられた事もあったが、疲労もあってか、深く聞かれる事は無く、むしろ褒められた。遊八は心がポカポカした。
「凄いですよね。私なんてまだまだ未熟なのに…」
裕福な家庭だろうし、花嫁修行でもしているのだろうか。まだあまり上手くいかない自分と比較して、羨ましそうにしている。
「始めたのは最近ですか?」
「そうですが」
「でしたら経験の差ですよ。もう数年は一人ですし」
「でも以前からもできていると」
今と昔は違う。
「え? あ、まあやらないといけない状況でしたし、必死だったんです」
(前世の)事実である。上手く誤魔化した。
「とにかく、やればいつの間にかできるようになるもんです。ですから落ち込まないで!」
「ありがとうございます……そうだ、教えてもらおうかな」
妙案が浮かんだ。とばかりに呟く。
「へ?」
ちょっと予想外の内容が聞こえて、間の抜けた声が漏れる。
「いえ、よろしければ家事を教えてもらおうかと」
「僕で良いんですか? 多分基準がそちらと比べて緩いかと……」
一般と富豪では、求められるラインが違うだろうと、思い止まってもらおうとするが……。
「いえ、うちもそこまで厳しくはないので、お気になさらず」
「そ、そっすか」
押し切られた。彼女の押しが強いと言うよりこれは、遊八が押しに弱いだけな気がした。
「では後ほどご自宅にお邪魔しますね」
「そんな畏まらなくても…じゃなくて、家の住所、知ってるんですか?」
「知りませんよ。ですから案内していただければと」
「あ、はい。わかりました」
どんどん話が進んでいく。デュエルと違って遊八が弱すぎる。
「ふふ、それじゃ話を戻しまして、希宮さんが遊八君を褒めていた。と言うところまででしたね」
しれっと名前で呼び始めた。
「遊八君が深く愛されているのが、よくわかりました。だから、あれだけ必死になれるのですね」
窓の外、空の向こうを見やる。
一度だけ、働き過ぎではないかと問われた事があったらしい。しかし、そんな事はないと、遊八を思えばこれでも足りないと、そう言っていたそうだ。それともう一つ、とても身体の調子が良く、今働かなければ、これ以上はもう無い気がするとも。
「実際、かなり顔色が良く健康的。思考能力、身体能力も一般のそれよりも高く見えました」
仕事でも大きな成功が連続し、人生の絶頂期と言って差し支えない状態だった。彼は大出世を遂げ、それでも原点たる遊八を忘れず邁進し続けたのだ。
彼を知る者は皆、彼を尊敬し、信頼していた。
「唯一弱音を吐いたのが、遊八君を一人にしている事。でした」
まだまだ親の存在が必要な時期。だと言うのに、親として側にいてやれない。親としての自分は最低だ。そう嘆いていた希宮。
思い返せばその付近は、珍しく長期休暇を取っていた時期と重なっている。彼の友や会社が、各々連絡を取り合い、どうにか休みを捻出した結果だそうだ。
「倒れられては困ると、無理に休ませたと聞いています」
「そんな事が……」
「まあそれ以降は、何かとタイミングが合わず、あそこまでの長期休暇は取れてなさそうですがね。最近はどうでしょう」
直近では会っていないようで、様子を聞かれる。
「少し前に帰ってきてたかもしれないですね。これ、母の形見なんですが、綺麗になってて…手入れの仕方のメモも置いてましたね」
金盞花の指輪を見せる。以前よりも輝きを取り戻していた。
またそのすぐ後に、様々な業者の人が来て、家の清掃なり修理なりしてくれている。
「そうでしたか。父も心配しておりましたから、これなら良い知らせになりそうです」
親子の時間が無いのは残念ですが。と付け足し、これで話に一区切りがついた。
遊八も、父から想われていることを再確認でき、少し安心した。
「ではそろそろ行きましょうか。一度宿泊先に寄っても?」
「構いませんよ」
再び移動を開始する。
……
「それでその時にですね——」
「それはそれは…ふふ」
先よりも緩い雰囲気で、雑談しながら歩を進めていた、その時である。
「う、うわああああああ!!!」
二人の耳に、突如として悲鳴が突き刺さった。
「「——っ!」」
「今のは、一体…?」
「聞こえたのは、あっち!」
突如として走り出す遊八。
「遊八君!」
成美は驚きつつも、彼をすぐさま追いかけるのだった。
……
薄暗い路地裏。静かな空間を駆ける足音が二つ、やけに大きく響いている。空気は冷たく、不気味。その先へ行くのを止めろと、訴えかけてくるようだ。
しかし止まれない。
(どこまで行くの、遊八君。こんな場所に一人にはできないし……)
先を行く少年の背を追い、少女は憂う。
(なんで悲鳴が…只事じゃない。この先で何が……)
これほどの不安感を抱いた事は無い。影が揺れて見える。日の遮られたこの場に、揺れる影など無いはずなのに。
今すぐにでも引き返したい衝動を抑え、必死に走る。少年を見失わぬよう、必死に。すると——
「ゆ、遊八君?」
少年。築根遊八は不意に止まる。
「デュエルディスク? ハートピースまで…持ち主はどこに……」
遊八はその場に屈み、持ち主のいないそれに触れた。
瞬間——
『遊八! 後ろだ!』
デュガレスが叫んだ。彼が叫ぶなど異常事態でしかない。
猛烈に嫌な予感がする。狙いは自分…ではない。
「——っ!」
振り返る。視界が映ったのは一緒にいた少女。そして——
「成美さん!」
「え——きゃっ!」
成美を抱え、その場から飛び退く。
成美の立っていた場所に、何かがいた。真っ黒な何かが。
「な、何なんです? これは…影?」
「現実にまで出てくんのかよこいつ」
それは、遊八が夢で遭遇した影になった。
——同時刻
「また会うなんてな…」
陸人の目の前にも影が出現。
今回は、彼らだけではない。
「だ、誰だお前!」
『気をつけろ遊馬。只者ではない…!』
遊馬とアストラル。
「何だテメェ。どう見ても人じゃねぇな」
凌牙。
「貴様、何者だ…」
カイトの下にも。
この世界の重要人物の前にも、姿を見せている。
いや、まだ二人……。
「優希クン。アレって…」
「影? 人…じゃないね」
優希と堅護の前にも、現れていた。
本来存在し得なかった脅威が、この世界に足を踏み入れた瞬間である。
——
そんな事など露知らず、遊八は目の前の影を相手にする。
「デュエルディスクの持ち主も、お前の仕業だな」
「——」
返事は無い。しかし、ソレは腕を突き出し、デュエルディスクを出現させた。
「相手しろってか。良いぜ、今度もぶっ飛ばしてやる」
「待って遊八君。あれは何なのですか?」
状況についていけない成美。ただ相手が危険であるとだけ理解する。
「僕も知りません。が、倒さないといけない気がするんです」
影は揺れる。
得体の知れぬ存在に、臆せず立ち向かう遊八を見て、成美も意を決して参戦しようとするが、それは黒い膜により阻まれた。
「な、今度は何ですか!」
遊八と成美を分断する黒い膜。先を見通せる程薄いが、いくら叩こうと破れる気配は無い。
「閉じ込められた! デュエルに勝たないと出れないとかか…?」
『……ここを中心に、奴等の支配する空間と化しているのか。あの夢の先の異世界に近い。デュエルの強制は、正解だ』
瞬時にこの異変を分析したデュガレス。誘い込まれたのだと理解する。
「なんであれやらないと。行くぞ!」
「遊八君。どうか……」
成美は祈る。遊八の無事を。
「デュエル!」
「——」
影 vs 遊八
LP 4000 LP 4000
先行は影。トップを引き抜き、決められた動きを取る。
「——」
魔法を一枚発動。しかしそれは、ルールに反した一枚。
「〈強欲な壺〉……⁉︎ 禁止カードのはずじゃ…」
問題無く処理される。戸惑う遊八を無視して、二枚の手札を追加。壺は破壊される。
「——」
続いてはモンスターの召喚。今回は姿がはっきりしていた。
「それは、〈幻殻竜〉?」
『幻殻竜』☆4 ATK/2000
「何ですか、あのモンスターは……幻竜族? 見た事が無い」
ルール違反と未知のモンスター。成美は戸惑う。
(未来のカードまで使うとか、何でもありかよ……コイツっ!)
遊八は睨み付けるが、通じているのだろうか。影は止まらない。
続けて発動されたのは、三枚の魔法カード。
装備魔法〈ガーディアンの力〉
永続魔法〈強者の苦痛〉〈怨霊の湿地帯〉
「ロックデッキか? そんで〈ガーディアンの力〉で殴り勝つと。んで伏せカードか」
二枚の伏せを出し、これで終わりかと思えば……最後に一枚、フィールド魔法を出してきた。
フィールド魔法〈魔鍾洞〉
未来の禁止カード。強力なロック盤面を築きかねない恐るべきカードだ。
(純粋な活躍もあったけど、遅延戦法だとか時期的な問題だとかで、大会運営上の問題もあったとか何とか。いや強力カードに変わりはないよ)
前世におけるその存在を思い出す事で、冷静さを保つ。正直今にでもブチギレたい。
影のターンは終了。遊八に移る。
「俺のターン、ドロー!」
このドローフェイズ。影の裏側カードが開かれる。
影 LP 4000→3000
永続罠〈スキルドレイン〉〈魔封じの芳香〉
モンスター効果無効。魔法は伏せて、ターンを跨がなければならない。
「がああああああ! もう! 何じゃそりゃあよ!」
感情を抑えきれなかった。
(徹底した遅延戦法。このロックデッキ、穴はありますが強力ですね)
観戦しているが故に、俯瞰した視点で見れる。どうにか、突破手段を手にするまで時間を稼ぎたい。
「まあいいや、手はある。あまり俺を舐めんなよ。カードを4枚伏せてターンエンド!」
瞬時に切り替え、伏せのみでターンを終える。
「——」
影のターン。カードを引き、そのままエンド。
(えっと…いや、そうか。向こうも〈魔鍾洞〉適用されるんだ)
「んじゃ俺のターン、ドロー! さぁて、てめぇ覚悟はできてるな? できてなくてもぶっ飛ばす!」
普段の遊八らしからぬ強い語気。冷静に怒りをカードに込める。
「リバース!〈おろかな埋葬〉! デッキのモンスターを墓地に! 更にリバース! チェーン2、〈ダブルサイクロン〉!〈おろ埋〉と〈スキドレ〉を破壊!」
リバースラッシュで盤面のロックを一つ剥がし、墓地を肥やす。
「墓地に送るのは〈アークブレイブドラゴン〉! も一丁リバース!〈復活の福音〉! 蘇れ!〈アークブレイブ〉!」
『アークブレイブドラゴン』☆7 ATK/2400
復活したドラゴンは、遊八の怒りを乗せて光の波動を放つ。
「〈アークブレイブ〉の効果発動! 墓地から特殊召喚した場合に、相手の表側魔法・罠を全て除外! その数1枚につき200の攻撃力アップだ!」
今、場にいるモンスターの数は互いに同じ。魔鍾洞の効果は受けない。これにより、影の魔法・罠は跡形も無く消え去った。
『アークブレイブドラゴン』ATK/2400→3400
「これで俺を止めるカードは無くなった。〈レスキューラビット〉召喚!効果により〈アレキサンドライドラゴン〉2体を特殊召喚!」
『アレキサンドライドラゴン』☆4 ATK/2000
「バトル! 総攻撃だ! 〈アークブレイブ〉で〈幻殻竜〉、残りで直接攻撃!!」
輝く炎に焦がされ、幻殻竜は消滅。続くドラゴンの攻撃により、ついに影は倒れた。
影 LP 3000→0
YUYA WIN
「あー、なんかだるいや。ロックデッキは何でいつもこうなのか……」
低速なのに疲れるのは何故なのか。疑問に思う遊八である。
「さて、そんでこりゃどういうこったよ」
デュエルは遊八の勝利で終わった。しかし、影はまだ消えていない。
「前は勝ったら消えたろ。それに膜もまだ——」
周囲を見回し、膜が残っているのを確認する。
「遊八君!」
その叫びで、遊八は視線を影に戻す。
「な、うわっ!」
ゆらりと近づく影は、彼を飲み込もうと飛び掛かる。だが、影は遊八に届かなかった。
「——!——!!」
地に落ち、苦しそうにのたうち回っている。身体は溶けていき、抗うように身を捩り、手を伸ばす。
「——!……——」
ついに、影は力尽きた。
あまりに惨たらしい最期に絶句する。まるで、この世のルールを破ったがために、天から罰が下されたかのような、そんな最期だった。
影の消滅に合わせて膜は消え、先程まであった不気味さも無くなった。
「——っ! 無事ですか遊八君!」
立ち直った成美が駆け寄ってくる。
「あ、ああ。見てたろ? 傷一つないよ…です」
疲れからか敬語が外れた。それに気づき、すぐ語尾を訂正する。
「良かった……お疲れ様です。そしてありがとう。守ってくれて」
遊八がいなかったら、きっとデュエルする暇も無く、影の餌食になっていたはずだ。
「いえ、僕だけじゃ守りきれなかったですよ。カードが教えてくれたんです」
「そうですか。でしたら、遊八君のカードにもお礼をしなくては……ありがとうございます」
精霊を信じているのかは知らないが、律儀な少女は、カードにも礼を言う。
(だってよ、デュガレス)
『礼を言われる程でもない。あれは、我らにも害をなすやもしれんからな。何より、遊八の為でもある』
未だ正体不明の影。しかし今回の一件からすれば、脅威であるのは間違いないだろう。ナンバーズだからこそ感じ取ったものも、あるかもしれない。
遭遇したならば速やかに駆除する。それが遊八とデュガレスの方針である。
「さてと、巻き込んじゃいましたね。ごめんなさい」
「いえ、悲鳴を聞き、すぐに助けに向かおうとしたのですよね」
成美は遊八の心の内を見通している。
「私は遊八君のその行動を、素直に尊敬します。むしろ私こそ、足を引っ張ってしまいました」
「あ、いや、それは急でしたし、仕方のないことかと……それで、えと、その…お褒めに預かり光栄でございます?」
自分よりも大人な少女に敬意を表され、遊八はたじたじになる。
「ふふ、褒められると弱いですよね、遊八君。デュエル中はかっこいいのに……可愛い」
「揶揄うのはよしてください。慣れてないんですよこういうの…」
前世じゃ褒められるなどあり得ず、今世も褒めてくれる相手は遠くにいる。デュエルに関するものなら素直に受け止められるのだが、何故だかそれ以外は上手く受け止められないのだった。
「申し訳ありません、つい。では行きましょうか」
手の平で転がされている気がする遊八だが、彼女を相手に主導権を握るのは容易ではない。育ちの差を感じながら、その手と、笑顔に引きずられて行くのだった。
——少し先の、軽い後日談。
後に影と遭遇したメンバーに話を聞いたところ、遊八ほどのロック盤面は、敷かれなかったとの事。禁止や未来も無し。
遊八は叫び、嘆いた。いくつもの罵詈雑言が飛び出したという。
「なんで、僕だけ……」
ソリティアを止める方法。ロック戦法。止め方が強引だが、お陰で短く纏められた。
敵なら好き勝手やらせても良い。
そう思っている私ですが、当時の禁止カード使用は今回のみです。
オリカも使用予定は無いです。ほら、オリカってあまり好まれないでしょ?
だから使わない方針ではいるんですが、使って良いなら、せめて敵キャラだけでも許してはくれないか。そう思っているのです。
一番の理由
あるカードの介護を…失礼、格を保ちたいから。
てな訳でアンケート機能のお試しも兼ねてます。
ぜひご協力をば、よろしく。
(良い感じに使える遊戯王語録が無かった。ゼアルに絞ってそれっぽく…無理矢理感あるな?)