遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』   作:ふわ×フワ

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 みんな大好きあのキャラの登場。
 私のキャラエミュの精度はご存じの通りと思いますが、どうにか形にしました。



No.24 悪魔に挑む勇気

 

 

 ——???

 

「来たね。Ⅲ」

 

 薄暗い部屋。カートゥーンアニメがいくつも流れる画面を見る、高貴な少年といった風貌の男が一人、椅子に座っている。

 その彼に呼び出され、Ⅲと呼ばれた中性的な人物が、彼に声をかける。

 

「お呼びですか。トロン」

 

「急な話にはなるけど、Ⅳについて行って欲しいんだ」

 

 薄暗い故に、その表情が窺い知れず。特に彼、トロンは仮面を着けているのだから尚更。

 

「Ⅳ兄様に……? 何故」

 

「イレギュラーがいる。その正体まではわからないけど、もし計画を邪魔されたら困っちゃうからね」

 

「僕に調査と、観察をして欲しいと……」

 

「そう言う事。Ⅳにも既に伝えてある。頼んだよ、Ⅲ」

 

「はい。トロン」

 

 短いやり取りを終えて、部屋にはカートゥーンの音声と、笑うトロンの声だけが響く——。

 

 

 

 

 

 ——人気の無い空き地

 陸人と合流した優希たち。彼らは今、Ⅳから指定された場所に時間通りやって来た。

 

「ここだね」

 

「人気の無い場所だな…いや、有名人だから敢えてか?」

 

「だろうね。下手に注目されちゃ困るだろうし」

 

 それを迎える紳士的な声が、彼らの耳に届く。

 

「お待ちしていました。優希君と、そのご友人ですね?」

 

 その声の主は、当然Ⅳ。もう一人を連れて現れた彼の歓迎を受ける三人。

 

(彼がⅣ…と、あれは誰だ? 年は俺らと同じくらいか。服装も似てるし、Ⅳの弟が妥当か……)

 

「はい。本日はよろしくお願いします」

 

「これはご丁寧に…こちらこそよろしく」

 

 軽く挨拶を交わしたところで、陸人が質問する。

 

「そちらの彼は? Ⅳさんの弟でしょうか」

 

「おや、これは鋭い……ええ、その通り。弟のⅢです」

 

 紹介を受けて、一礼するⅢ。陸人も礼を返す。

 

「どうも。Ⅲ…ですね。よろしく」

(ふーん。なんでわざわざ。それに二人とも何か……邪推か。止め止め、どうせなんかありゃじきにわかる)

 

 何かを感じ取った陸人だが、優希の折角の時間を邪魔するわけにはいかないので、一度引く。

 

「へぇ、Ⅳさんって弟いたんだぁ。ちょっと羨ましいかも」

 

「俺もお前も一人っ子だもんな」

 

 そうして、軽いアイスブレイクを終える。

 

「それでは、デュエルを始めましょうか」

 

 ついに本命、デュエルの時間だ。

 研究会を名乗る彼らは、このデュエルをしっかりと観察する。

 

「プロのデュエル。今から楽しみだなっ!」

 

「ああ。父さんを超える実力、分析させてもらう」

 

 デュエルする優希も、この機会に更に成長する気でいる。

 

「勝手ながら、胸をお借りします! Ⅳさん!」

 

「遠慮なく…楽しいデュエルにしましょう」

 

 紳士的な笑みのまま。圧倒的な余裕を感じる。

 

(さて、この違和感の正体。突き止めてやるよ——チャンピオン)

 

 本性を知らぬ彼らに、これを止めるのは不可能。

 地獄の時間が始まろうとしていた。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 優希   vs   Ⅳ

 LP 4000     LP 4000

 

 

「先行はお譲りしますよ」

 

「では……ボクのターン、ドロー!」

 

 圧倒的格上との勝負。自然と力が入る。

 

「最初から全力で行きます。儀式魔法発動!〈高等儀式術〉!」

 

「儀式魔法⁉︎ これは珍しいカードを……」

 

 この世界。エクシーズ召喚が主流であり、融合や儀式を見るのは稀なのだった。故にⅣは驚いた表情を見せる。

 

「レベルの合計が、召喚するモンスターのレベルと同じになるよう、デッキの通常モンスターをリリース。手札から儀式モンスターを儀式召喚します! ボクは、デッキの〈メカファルコン〉と〈アクア・マドール〉をリリース。〈ゼラ〉を儀式召喚!」

 

『ゼラ』☆8 ATK/2800

 

「いきなり最上級モンスターの儀式召喚とは……excellent! 良い腕をお持ちだ……!」

 

 Ⅳの称賛を浴びる優希。だが、こんなものでは終わらない。

 

「お褒めに預かり光栄です。でも、まだ気が早いですよ! 手札より魔法、〈黙する死者〉を発動。墓地の通常モンスター、〈メカファルコン〉を復活させ、〈ガガギゴ〉を通常召喚!」

 

『メカファルコン』☆4 ATK/1400

『ガガギゴ』☆4 ATK/1850

 

「これは、レベル4が2体……! まさか——」

 

 次の手を予想するのは容易い。Ⅳの目つきが一瞬、僅かに細められた。

 

「その通りです!ボクは、レベル4の〈メカファルコン〉と〈ガガギゴ〉でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!〈ジェムナイト・パール〉!」

 

『ジェムナイト・パール』★4 ATK/2600

 

 

「優希クン。調子良さそうじゃん」

 

「ああ、そうだな。これならⅣの実力も幾分か引き出せるだろ」

 

「随分と真剣だねぇ。ま、お前ならそうか」

 

 注意深く観察する陸人。好調な優希に、プロへの善戦を期待する。

 

 

「たった1ターンでエクシーズ召喚までやってのけるなんて……まったく想定外。本当に素晴らしいよ優希君!」

 

 優希の太鼓を持つⅣ。その笑みはまだまだ崩れそうにない。

 

「ありがとうございます。では最後に、〈召喚師のスキル〉を発動。〈ダイヤモンド・ドラゴン〉を手札に加えて、カードを1枚伏せます。ターンエンド」

 

 舞い上がりたい気持ちを抑えて、粛々とターンを終える。

 

「では僕のターン、ドロー……うーむ。これは困りましたねぇ」

 

 手札を見て唸るⅣ。あまり良い手札ではなさそうだ。

 

「モンスターと2枚のカードをセット。そしてフィールド魔法、〈エクシーズ・コロッセオ〉を発動」

 

 囲むように現れる円形闘技場。その雰囲気はどこか不気味だ。

 

 

(あれは、墓地……? このフィールドで散った者のってとこか。悪趣味だな)

 

 顔を顰める陸人。

 

 不気味さを際立てるのは、外縁部に無造作に建つ幾つもの墓。地獄への道が、着々と整えられていく。

 

 

「このカードは、フィールドにいるモンスター・エクシーズの攻撃力を200ポイントアップさせ、モンスター・エクシーズ以外の攻撃を禁止します。僕はこれでターンを終了」

 

「攻撃制限……〈ゼラ〉が封じられた」

 

 

「時間稼ぎかぁ」

 

「いや、案外もう手のひらの上かもな。例えば……エクシーズ召喚をさせたい。とか」

 

「そっか、しなきゃ攻撃できないもんな。言われてみれば確かにだ」

 

 ライフを削るための行動を制限。それを越えさせるのにリソースを割かせる。これが陸人の予想。

 となれば、完成した盤面を一気に崩す逆転のカードがあるのは間違い無い。

 

(あそこの彼。中々鋭いな。もしかしてトロンの言っていたのは……でも——)

 

 聞こえた会話内容から、Ⅲの注目は陸人へと向く。

 

 

「ボクのターン、ドロー! ここで罠、〈凡人の施し〉を発動。2枚ドローして、手札の通常モンスターを除外。〈ダイヤモンド・ドラゴン〉を除外します」

 

「手札増強ですか。さっき加えたのはこれのコストのため……抜かりがないですね」

 

 一々褒め言葉が入るので、優希は気分良くデュエルを進められる。自分を鍛えてくれた研究会に感謝しながら、優希は全力を尽くしていく。

 

「〈レスキューラビット〉を召喚し、そのまま効果発動! 自身を除外して、デッキから同名の通常モンスター2体を特殊召喚です!〈幻のグリフォン〉を特殊召喚!」

 

『幻のグリフォン』☆4 ATK/2000

 

「わお! レベル4が2体。まさかもう来るのですか……」

 

 目を見開きながら額に手を置くⅣ。

 

「はい、もうですよ。ボクは〈幻のグリフォン〉2体でオーバーレイ、エクシーズ召喚!〈ダイガスタ・エメラル〉!〈エクシーズ・コロッセオ〉により攻撃力アップ!」

 

『ダイガスタ・エメラル』★4 ATK/1800→2000

 

 パールに続いてエメラルド。優希のフィールドをモンスターが彩る。

 

「つくづく想定を超えてきますねぇ。優希君、君は最高の決闘者ですよ……!」

 

 Ⅳの褒めも相まって、優希のテンションは益々上がる。

 

「それではバトル! まずは〈ダイガスタ・エメラル〉で、セットモンスターに攻撃!」

 

「僕が伏せていたのは〈ギミック・パペット—ベビーフェイス〉」

 

『ギミック・パペット—ベビーフェイス』☆1 DEF/0

 

 翠緑の一撃が、人形を砕く。

 

「これでフィールドはがら空きですね」

 

「いいやまだです。罠発動〈リペア・パペット〉。このカードは、レベル4以下のパペットモンスターがバトルで破壊された時、同じモンスターをデッキから特殊召喚します。2体目の〈ベビーフェイス〉を特殊召喚」

 

「ならそれも破壊するまでです。〈ジェムナイト・パール〉で攻撃!」

 

 再び砕かれる人形。これで今度こそ場ががら空きになった。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 フィールド魔法が無ければ。そう思うも対処ができず、仕方なくターンを渡す。

 

「僕のターン、ドロー! おお、これなら……」

 

 良いカードが引けたと声を漏らす。

 

「〈ギミック・パペット—死の木馬(デス・トロイ)〉を召喚。そして魔法カード、〈からくりの宝札〉を発動。自分フィールドの〈ギミック・パペット〉1体を破壊して、カードを1枚ドロー!……よしっ! この瞬間、〈死の木馬〉の効果発動! このカードが効果で破壊された時、手札から攻撃力1000以下の〈ギミック・パペット〉2体を特殊召喚できる!」

 

 反撃のチャンスを掴んだⅣだが、これを許したくない優希はすかさず妨害する。

 

「罠発動!〈エクシーズ・ブロック〉! 相手がモンスター効果を発動した時、自分フィールドのORUを一つ取り除き、その発動を無効にします!」

 

「なんと! これでは特殊召喚ができないっ! 非常に困りました……ターンエンドです」

 

 見事に妨害成功。Ⅳは敢え無くターンエンドすることとなった。

 

 

「おお! 優希クンが王手をかけたよ!」

 

「Ⅳの手札は残り2枚。〈死の木馬〉の効果を発動できたってことは、モンスターで確定。つまり、新たな防御カードはほぼ無いに等しい……」

(ただ、ずっと伏せてあるアレ。少し怖いな……)

 

 

 訪れたこの絶好のチャンスに、優希は勝負を決めにかかる。

 

「ボクのターン! ドロー!〈ダイガスタ・エメラル〉の効果を発動! ORUを一つ使い、墓地の通常モンスターを特殊召喚!〈ガガギゴ〉を復活! 更に魔法カード、〈馬の骨の対価〉で〈ガガギゴ〉を墓地に送り、カードを2枚ドロー!」

(……伏せカードは剥がせないか。ならこのまま——)

「バトル!」

 

「くっ!」

 

 一部モンスターに攻撃制限があれど、Ⅳのライフを削るには十分な火力が揃っている。

 

「〈ダイガスタ・エメラル〉でⅣさんに直接攻撃です!」

 

「うわっ! ぐぅっ……」

 

 Ⅳ LP 4000→2000

 

(伏せを使わなかった。これは、行けるか?)

「これでトドメ!〈ジェムナイト・パール〉で直接攻撃!」

 

「ああっ!」

 

 宝石の戦士による、鬼神の如き攻撃がⅣを襲う。その強烈な一撃により巻き起こった土煙が、Ⅳを隠す……。

 

 

「まさか、やったのか?」

 

「どうだろうな。単体の防御札が無いとは言い切れない」

 

 まだ気を抜いていない陸人に、堅護は口を尖らせる。

 

「もっと喜んでも良いだろうになぁ」

 

「勝負は最後までわからない。それはお互い同じなのさ」

 

 

 薄れゆく土煙……。

 

「いやぁ、見事な攻撃でしたぁ。でも僕はダメージを受けていません」

 

 Ⅳの声が優希たちの耳に届く。それは煽るような声色で……。

 

「防がれた…のか……?」

 

「残念ですが今の攻撃で、僕は永続罠〈ギミック・ボックス〉を発動していた。このカードは、バトルでダメージが発生した時、そのダメージを無効にして、トラップカードからモンスターカードに変換し、特殊召喚される。そして無効にしたダメージの数値が、こいつの攻撃力となる」

 

『ギミック・ボックス』☆8 ATK/2800

 

 纏う雰囲気が変わる。先程までの紳士的な彼はどこへ消えたのか。今の彼は悪魔のように笑い、絶望を煽る。

 

 

「だから言ったろ?」

 

 陸人の表情が苦々しく歪む。堅護もまた、彼の豹変に呆然としている。

 

「あれが…Ⅳさん……?」

 

「兄様、もういいでしょう。彼はナンバーズを持っていない」

 

 Ⅲのその一言を、陸人は聞き逃さなかった。

 

(ナンバーズ。あいつらの目的はそれだったのか)

 

 

「わかっている。そろそろ受けてもらおうか……俺の本当のファンサービスを」

 

「本当の……?」

 

「ああ、そうさ。わかったらさっさとターンを終了しな」

 

「ボ、ボクはカードを2枚伏せて……ターン、エンド」

 

 状況の理解が追いつかない優希に、Ⅳの本性が牙を向く。

 

「良い顔だ……希望を与えられ、それを奪われる…その瞬間こそ人間は一番美しい顔をする。それを与えてやるのが、俺のファンサービスさぁ」

 

 

「——チッ」

 

 違和感を抱いていながら、あれほどの残虐性を見抜けなかった自分を恨む。だが始まったデュエルはもう止められない。優希が踏ん張るのを祈る陸人だった。

 

 

「俺のターン! ドロー! お前のデュエルは素晴らしかった! 戦略、対応力。どれを取っても今日一番の決闘者だった! だが! しかし! まるで全然! この俺を倒すには程遠いんだよねぇ!」

 

 実力差を明確にし、抗う気力を奪う。

 

「魔法カード〈トレード・イン〉。手札のレベル8、〈ギミック・パペット—ネクロドール〉を捨て2枚ドロー! そして手札から、〈傀儡儀式—パペット・リチューアル〉発動! こいつは俺のライフが2000以下の時、墓地の〈ギミック・パペット〉1体を特殊召喚できる。復活しろ、〈ネクロ・ドール〉!」

 

『ギミック・パペット—ネクロ・ドール』☆8 ATK/0

 

 

「レベル8……マズイな」

 

「それって、まさかランク8を……」

 

 

 優希の希望を奪う最後のピース……運命の糸は既に、彼に絡み付いている。

 

「とくと味わってくれよ……俺のファンサービスを‼︎ 俺はレベル8の〈ギミック・ボックス〉と〈ネクロ・ドール〉でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 現れろ、〈No.15〉!」

 

「——っ!」

 

「地獄からの使者。運命の糸を操る人形……〈ギミック・パペット—ジャイアントキラー〉‼︎」

 

『No.15 ギミック・パペット—ジャイアントキラー』★8 ATK/1500

 

 現れる巨人型の人形。ただでさえ不気味な容貌。そこにフィールドと、ランクに見合わぬ攻撃力なのも相まって、言いようのない不安感に襲われる。その威容に息を呑む。

 

「〈エクシーズ・コロッセオ〉の効果で攻撃力は200ポイントアップ! そして、俺は〈ジャイアントキラー〉の効果発動!〈ジャイアントキラー〉はORUを一つ使い、相手のモンスター・エクシーズを全て破壊する!」

 

 

「なっ、全部⁉︎」

 

「そのための〈エクシーズ・コロッセオ〉……やっぱり誘導だったか」

 

 強烈。折角並べたエースカードを、まとめて処理する恐るべき効果だ。

 

 

「そして、貴様は破壊されたモンスターの攻撃力分のダメージを受ける事になる」

 

「て事は……ボクのモンスター・エクシーズの攻撃力の合計、4800のダメージ……」

 

「そうさ……まずは〈ダイガスタ・エメラル〉からだ!」

 

 人形の指から伸びる糸。絡み付いたそれに引き摺られるその先には——ジャイアントキラーの胸部。露になった粉砕機。

 

「あ、ああ……」

 

 不快な音を撒き散らし、美しいエメラルドの肉体が砕かれる。

 

「〈ダイガスタ・エメラル〉の攻撃力は2000! 俺のファンサービスだ。受け取れぇ‼︎」

 

 粉砕を終えて現れる砲台。その一撃が優希を飲み込む。

 

 

「優希クンっ!」

 

「くそっ……あの野郎……」

 

 

 優希 LP 4000→3000

 

「罠…発動っ——〈ダメージ・ダイエット〉! このターン受けるダメージを半分に……っ!」

 

 通常のデュエルとは桁外れの痛みが襲うも、優希はまだ立っている。

 

「へぇ、耐えやがるか。なら次は〈ジェムナイト・パール〉だ!」

 

 再び伸ばされた糸が、次の獲物を絡め取り、引き摺り込む。

 

「その攻撃力は2800。その半分、1400のダメージだ!」

 

 粉砕。砲撃。優希の心と体、両方へダメージを与えていく。

 

 優希 LP 3000→1600

 

「ぐうっ……耐え、た……あ——」

 

 まだ堪えた。かと思ったその時、優希の身体は糸が切れたように倒れ込んだ。

 

「おいおい、おねんねするにはまだ早いぜぇ。俺のファンサービスは終わってねぇんだからよぉ! 墓地の〈ギミック・パペット—ベビーフェイス〉の効果発動! バトルで破壊されたこのモンスターが自分の墓地にいて、これらを破壊した相手モンスターもまた、自らの墓地にいる時、このカードを除外して、その相手モンスターを特殊召喚できる。蘇れ!〈ダイガスタ・エメラル〉!〈ジェムナイト・パール〉!」

 

 

「なんでこんな事を……」

 

「あのナンバーズ……まさかもう一度効果を使えるのか?」

 

「そっちじゃねぇだろ! 早くこのデュエルを止めないと!」

 

 優希の体はもうボロボロだ。これ以上続けるのは危険と判断する。

 

「落ち着け。止めれると思うか? あいつのお仲間がいるんだぞ」

 

 ちらとⅢへ視線を投げる。彼も陸人たちを見ておりその表情に変化は無い、ように見える。

 

「それに……あれを見てみろ」

 

「え——」

 

 

「〈エクシーズ・コロッセオ〉の効果で攻撃力が200ポイントアップ……お前は破滅の糸に操られた木偶人形。俺の支配から逃れることはできん!〈ジャイアントキラー〉!」

 

 再び効果が使われようとしたその時——

 

「っ! なんだと⁉︎」

 

 突如として竜巻が起こる。それがORUを巻き上げ、消滅させたのだ。

 

「〈スペース・サイクロン〉……フィールドのORUを…一つ、取り除く……これで効果は…使えません」

 

 ふらつく体で、ゆっくり、どうにか、立ち上がる。

 

 

「優希クン!」

 

「あの目。優希の奴、ここで終わらせる気は無いらしいぞ」

 

 諦めていなかった。小さな体に宿った小さな勇気が、目の前の悪魔に立ち向かう力をくれる。

 

 

「貴様……そうか。この程度のサービスじゃお気に召さなかったようだ」

 

 一瞬不機嫌そうな顔を見せたⅣ。ならばと、別の手を用意する。

 

「手札の〈ギミック・パペット—ナイトメア〉は、自分のモンスター・エクシーズ1体をリリースする事で特殊召喚できる!」

 

『ギミック・パペット—ナイトメア』☆8 ATK/1000

 

「この効果で特殊召喚に成功したこのカードは、エクシーズ素材とする時2体分として扱える! 俺は〈ギミック・パペット—ナイトメア〉2体分でオーバーレイ! 2体の闇属性モンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 現れろ!〈No.40 ギミック・パペット—ヘブンズ・ストリングス〉‼︎」

 

『No.40 ギミック・パペット—ヘブンズ・ストリングス』★8 ATK/3000

 

 

「ここで、新たなナンバーズ⁉︎」

 

「これは想定外だったな……!」

 

 

 Ⅳの顔が悪意に歪む。目の前にいる優希(にんぎょう)をぶっ壊すために……。

 

「〈エクシーズ・コロッセオ〉により攻撃力アップ! バトルだ!〈ヘブンズ・ストリングス〉で〈ジェムナイト・パール〉に攻撃! ヘブンズブレード!」

 

「ぐっ——まだ…まだ!」

 

 優希 LP 1600→1200

 

 風圧だけでもふらつくほどに、限界ギリギリの肉体。けれど優希は立っている。

 

「本当の地獄はこっからだ。〈ヘブンズ・ストリングス〉の効果発動! ORUを一つ使い、このカード以外のフィールドのモンスター全てにストリングスカウンターを置く! そして次のターン終了時、カウンターの乗ったモンスターを全て破壊して、その元々の攻撃力分のダメージを、モンスターのコントローラーに与える!」

 

 運命の糸が絡み付く。破滅へ導くカウントダウンが始まった。

 

 

「そんな大ダメージを食らったら優希はもうお終いだぞ!」

 

「だがまだ手は残ってる。信じよう——優希を」

 

 

「もうお前に逃げ場は無い。カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

 破滅を目の前にした優希。しかし希望は消え失せていない。この運命を越えるべくカードを引く。

 

「ボクの……ターン! ドロー!」

 

 絡み付く糸を、自らの手で操らんとする。

 

「ボクは、LP800を支払って、魔法カード〈魔の試着部屋〉を、発動!」

 

 優希 LP 1200→400

 

「——っ、デッキの上から、四枚をめくり、その中にあるレベル、3以下の通常モンスターを特殊召喚!」

 

 痛みを堪え、苦悶の表情を浮かべながらも、その手に澱みは一切無い。

 

「めくられたのは……これだ!」

 

『岩石の巨兵』☆3 ATK/1300

音速(ソニック)ダック』☆3 ATK/1700

 

「更に、魔法カード、〈シフトアップ〉…! 自分フィールドの、最もレベルの高いモンスターを選択する。このターン、自分フィールドのモンスターのレベルは、選択したモンスターと、同じになるっ! 今ボクのフィールドで最もレベルが高いのは、〈ゼラ〉の8!」

 

 

「これでレベル8が揃った!」

 

 肩で息をしながらも、切り札を出す準備が整った。奇跡の大逆転を願う……。

 

 

「ボクは! レベル8となった〈岩石の巨兵〉と〈音速ダック〉で、オーバーレイ! 2体の通常モンスターでオーバーレイネットワークを構築——っぐ、ぅぁぁあああ‼︎ エクシーズッ召喚‼︎」

 

 限界が近づきつつある。でもまだ倒れたくない。気力を振り絞って繰り出した、優希最後の切り札。

 

「これがボクの、全力……っ!〈サンダーエンド・ドラゴン〉‼︎」

 

『サンダーエンド・ドラゴン』★8 ATK/3000

 

「攻撃力は同じか……ナンバーズでもない。それでどうしようってんだ?」

 

 煽るような笑み。もう諦めろと、全て無駄だと心に突き刺す。けれど優希は止まらない。残った力の全てを込めて、今、運命の糸を——

 

「焼き尽くすんだ!〈サンダーエンド・ドラゴン〉の、効果発動! ORUを一つ使って、このカード以外の全てのモンスターを破壊する! サンダーエンド・クラッシュ‼︎」

 

「なっ⁉︎」

 

 降り注ぐ雷。絡み付く糸諸共全てを焼き払う。フィールドが炎に包まれた。

 

 

「やった! これならナンバーズだろうとお構い無しだ!」

 

「……」

 

 勝利に舞う堅護。しかしまだライフを削り切ったのではない。陸人はただじっとⅣのフィールドを見るだけ。

 

 

「……ダメ、でしたか」

 

 炎の中に浮かぶ影。悪魔はその存在を示す。

 

「罠カード、〈ストリングス・シェード〉…こいつの効果で、〈ヘブンズ・ストリングス〉は効果による破壊を免れる。が……自分のモンスターすら巻き添えにする効果か。カウンターが消えた事で、〈ヘブンズ・ストリングス〉の効果は不発に終わるってわけだ……驚いたぜ。まさかここまで抗うなんてな……」

 

「あ…へへ……最後の、最後まで…褒めてもらってばかり…ですね」

 

「んだと?」

 

 逆転の目は潰えたというのに、その顔は晴れやかだった。

 

「こんな、貴重な時間をくれて…ボクのデュエルを、何度も、褒めてくれた…今日一番って、言ってくれた。プロの、しかもチャンピオン…ですよ……こんなの、嬉しくないわけ、ないでしょ……すっごく、良いデュエルだったと思います——」

 

 気力が持たなかったのか、姿勢が崩れる。どうにか片膝で立ち、倒れはしなかったが……もう立つ力は無さそうだ。

 

「あ、はは……ボクも、もうダメか……Ⅳさん。対戦、ありがとうございました。次は勝てるように、ボク、もっと強くなります……! ターン…エンド」

 

 笑顔でそう伝える優希。あれほどの苦痛を味わって尚、彼の心は絶望していなかった。

 

「……クソッ」

 

 小さくつく悪態。ほぼ勝利が決まった状況で、けれどその顔に先程までの歪みは無い。ほんの一瞬、悪魔が消えた。

 彼は悟ったのだ。自分の『ファンサービス』では、唯野優希という少年に絶望を与えるのは不可能。それどころか、彼の言葉にどこか、喜びを感じている。

 

 トロンのために非道な真似は何度もしてきた。しかしどうやら、まだ人の心が残っているようだ。

 

(あんなボロボロだってのに、なんで俺を……これじゃただのファンサービスだ……あーでも、たまにはそんなデュエルもあり、かもなぁ)

 

 Ⅳの与える絶望のファンサービスは、優希によって絶望を打ち消された。それを悪くないと思っている。まだ自分に良心が残っているのを、自覚させられた。

 だとしても——もう後戻りはできない。

 

「俺のターン! ドロー! …素直に認めてやるぜ。お前は強かった……だがここまでだ!」

 

 やはり、自分は悪魔の決闘者。

 

「魔法カード!〈アタック・ギミック〉!〈ヘブンズ・ストリングス〉はこのターン、攻撃力を500ポイントアップし、戦闘でモンスターを破壊した時、その相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える! バトルだ!」

 

 その身に罪を背負いながらも、果たすべき目的のために歩み続ける——暗い暗い復讐の道を……。

 

「〈ヘブンズ・ストリングス〉で〈サンダーエンド・ドラゴン〉を攻撃! ヘブンズブレード!」

 

 悪魔が雷の竜を切り裂いた。

 

「ぐあっ——」

 

 優希 LP 400→0

 

「まだ終わりじゃねぇ。〈アタック・ギミック〉の効果!〈サンダーエンド・ドラゴン〉の攻撃力分のダメージを食らえぇ!」

 

「がああああああああぁぁぁぁ!!!」

 

「優希クン!」

「優希!」

 

    Ⅳ WIN

    

    

「優希クン! おい! しっかりしろ!」

 

 デュエルの終了と同時、一目散に駆け寄る二人。どうやら優希は、気絶しているようだった。

 

「呼吸はある。堅護、今すぐ病院に連れてけ」

 

 そう言ってⅣと向き合う陸人。

 

「お前はどうすんだよ!」

 

「あいつと話がある」

 

 落ち着いた口調。だが強く握られた拳から、怒り心頭なのが伝わってくる。

 

「おや、君も俺のファンになったのかな?」

 

「それはそれはもう——あなたに夢中ですよ」

 

 両者笑みを浮かべるも、しかしそれは軽薄で、両者間には火花が散る。

 

「おい陸人——」

 

「早く連れてってやれ、あと遊八にも連絡を」

 

「……わかった。無茶すんなよ」

 

 我儘に付き合ってやる。そんなスタンスで指示に従う堅護。優希を背負い走り去って行った……。

 

「さぁて…ではもう少し、俺とお話しましょうか? Ⅳさん」

 

次に悪魔と対峙するのは、彩葉陸人。祭りの裏で蠢く陰謀に立ち向かう——。

 





 エミュができそうでやっぱ難しいぞⅣォォォォ! 内心まで描写した所為で尚更ね。
 敵ポジの方々大体内心複雑じゃなぁい? 我困る。だから変に因縁できると余計頭抱えてまうんですがねぇ……。

 オリキャラが制御できない。
 
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