遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』   作:ふわ×フワ

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 苦戦した。一回書いて、全部消して、また最初から書いた。お陰でギリギリに……うーん不安!

 もはや何も言うまい。私とて何も考えていないわけではないのだ。思う通りに進まないだけなのだ。それでも書くと決めたのだ。ならばやるだけやってやろう。



No.26 不滅の祈り 迫る紋章の影

 

      

「「デュエル!!」」

 

 陸人   vs   Ⅲ

 LP 4000     LP 4000

 

 

「先行は俺が貰うぞ」

 

 陸人は考える。目の前の彼と、その兄弟の闇は深い。ならば光を当てる。それが無理でも、せめて穴を開けたいところだ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 そのためには、このデュエルを生半可な結果に終わらせるなどあり得ない。

 

(Ⅲも当然ナンバーズ使いのはず。どんな力を持ってんのか……)

 

 『No.』。遊八に敗北した日から、何度か存在を示してきたカード群。その強大さはよく知っている。

 そして今は、偽物といえどそれを手にしている。

 

(恐るべき相手だが、カードである以上隙はある。無敵でなど絶対に無い。ならこのデュエルで俺がすべきは——)

 

 コンマにも満たない一瞬の思考は、彼の取るべき手を確定した。

 

「手札から、魔法カード〈儀式の下準備〉を発動。デッキの儀式魔法1枚を選び、そこに名が記された儀式モンスターをデッキ、墓地から選ぶ。俺が選ぶのは、〈ドリアードの祈り〉と〈精霊術師 ドリアード〉だ。そして選んだ2枚を手札に加える」

 

(彼も儀式使い……それもかなりの使い手。もう儀式魔法とモンスターを揃えた)

 

 先程のデュエル、Ⅳに敗れた少年はしかし、想定外の粘りを見せた。ならばその友人も、侮り難い相手だろうとⅢは考える。

 

「油断は無さそうだな。そうでなきゃ困る」

 

「どう言う意味だ」

 

「それを話すのはこいつを発動してからだ。儀式魔法発動!〈ドリアードの祈り〉! 手札、フィールドからレベル3以上になるようモンスターをリリース…このモンスターを儀式召喚する!」

 

 描かれた魔法陣から、光が湧き溢れる。

 

「麗しき精霊術師よ。その祈り、我が祈りと重ね合わせて、森羅万象を網羅し照らせ! 降臨。〈精霊術師 ドリアード〉!」

 

『精霊術師 ドリアード』☆3 DEF/1400

 

「さっき加えたモンスター。でもその守備力は、たったの1400……」

 

「雑魚モンスターだと思ってんのか? だったら倒してみなよ」

 

 短く、煽るような声音。

 

「……なんだって?」

 

「だから、倒してみろって言ったのさ」

 

 低ステータスのモンスター。突破は容易なはず。彼の自信の正体は一体……。

 

「さっき言っただろ? 君たち家族が、また笑い合えるよう祈るって」

 

「……」

 

「俺は本気だ。それをお前に伝えてやるってんだよ」

 

 その目は真剣そのもの。眼力だけでも本気度が伝わってくる。

 

「祈り……そうか、そのモンスターが陸人、君のエースカードなんだね」

 

「間違っちゃねぇが、物足りないな……ドリアードは俺の全部だ。意思も、魂も、このカードに全てが詰まってるからな……。Ⅲ、お前にもあるんじゃないのか? お気に入りのカードとか、思い出のカードってやつが」

 

「お気に入り……思い出……」

 

 確かにある。彼のデッキには、彼の好きが詰め込まれている。父から貰った思い出も——。

 Ⅲの反応を見た陸人は、彼と真っ直ぐ目を合わせ、不敵に宣言した。

 

「ここに宣言しよう。このデュエルで俺は——〈ドリアード〉を絶対に、絶対にフィールドから離さない——!」

 

 自身の胸に拳を置き、その存在が如何に大きいかを示した上での宣言は、Ⅲに動揺を与える。

 

(攻守共に低いモンスターを守り切って勝つつもりなのか⁉︎ それとも、これは揺さぶり……? 狙いを一つに絞らせて、別のカードから意識を逸らす気か?)

 

 狙いも正気もわからない。けれどあの自信から、何かあるのは間違いないと確信させる。

 

(今はとにかく見極めるしかない)

 

「……さてと、デュエルを続けようか。〈覚星師ライズベルト〉召喚」

 

『覚星師ライズベルト』☆4 ATK/1500

 

「効果発動。1ターンに1度、フィールドのモンスター1体のレベルを1つ上げる。対象は〈ドリアード〉」

 

 ☆3→4

 

「カードを2枚伏せる。ターンエンド……さぁ、かかって来いよ」

 

 挑発的な態度でⅢを煽る。

 

(レベルが揃ったのにエクシーズ召喚をしない。本気なんだね……僕にはそのカードを、祈りを捨てさせるのは不可能だと、そう言いたいのか……)

「いいだろう! なら僕は、君のその自信を破って勝つ! 僕のターン、ドロー!」

 

 まだ冷静。だが陸人は無自覚に刺激する。Ⅲの負けず嫌いを、少しずつ。

 

「相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターがいない時、〈先史遺産(オーパーツ)クリスタル・スカル〉は、手札から特殊召喚できる!」

 

『先史遺産クリスタル・スカル』☆3 ATK/900

 

「この効果で特殊召喚した時、さらにデッキから、〈先史遺産クリスタル・ボーン〉を特殊召喚!」

 

『先史遺産クリスタル・ボーン』☆3 ATK/1300

 

 フィールドに、水晶ドクロとその体が並ぶ。

 

(オーパーツ。これがⅢのデッキか……)

「ロマンだな。俺も好きだぜそういうの…でもデュエルに手加減はしない!〈ライズベルト〉の効果発動!〈クリスタル・スカル〉のレベルを上げる!」

 

 ☆3→4

 

「相手ターンで、しかも相手モンスターも対象に取れる効果……っ!」

 

「狙いはやっばりエクシーズ召喚。そしてその様子、手札にレベル4はいないと見た。残念だったな」

 

「くっ」

(妨害が的確。これが、彩葉陸人のデュエルか)

 

 その観察眼は、デュエルにおいても健在。行動を読まれたⅢは、妥協の手を打たざるを得ない。

 

「〈クリスタル・スカル〉をリリースして、〈先史遺産モアイ〉をアドバンス召喚!」

 

『先史遺産モアイ』☆5 ATK/1800

 

「バトル!」

(もし宣言が嘘じゃないなら——)

「〈モアイ〉で〈ドリアード〉に攻撃!」

 

「罠発動!〈立ちはだかる強敵〉!〈ライズベルト〉を選択。このターン相手は、選択したモンスター以外を攻撃対象にできない」

 

「やっぱり……」

 

 攻撃は覚星師へと向かう。宣言通り、陸人はドリアードを守った。

 

 陸人 LP 4000→3700

 

「自分モンスターが戦闘で破壊されたこの瞬間、罠カード〈リグレット・リボーン〉を発動。そのモンスター1体を、守備表示で特殊召喚だ。〈ライズベルト〉復活。ただし、この効果で特殊召喚したモンスターは、自分エンドフェイズに破壊される」

 

『覚星師ライズベルト』DEF/1500

 

「モンスターを減らせなかった……カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

「ならそのターン終了前に、〈ライズベルト〉の効果発動。〈ドリアード〉のレベルを上げる」

 

 ☆4→5

 

 

「なあ、あの効果ってターン中に一度じゃ……」

 

 陸人は確かにそう言った。アンナの疑問に遊八が回答する。

 

「そうだよ。でも、一度場を離れてから出し直した事で、もう一度使えるようになったんだ。一枚につき一回、同じカードでも出し直せば、それは別のカード扱い……で、説明大丈夫かな……?」

 

「バッチリ理解したぜ!」

 

 伝わったらしく一安心。言葉だけで説明するのは難しく感じたので、実例からの疑問で良かった。

 

(しっかし、なんでドリアードのレベルを上げてるんだ?)

 

 一見すると無意味な行動。しかし、陸人がそのような事をするだろうか。否、必ず意味があるはずだ。

 

 

「俺のターン、ドロー。〈ライズベルト〉の効果で〈ドリアード〉のレベルを上げる」

 

 ☆5→6

 

「そして〈アステル・ドローン〉を召喚、このカードと〈ライズベルト〉でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。〈神羊樹バロメット〉」

 

『神羊樹バロメット』★4 ATK/1900

 

(今の俺に求められるのは、防御力と持久力。ならこのカードで良いはずだ)

「〈アステル・ドローン〉を素材にエクシーズ召喚した事で、1枚ドロー。そして〈バロメット〉の効果発動。ORUを1つ使い、墓地の通常罠1枚をデッキの一番下に戻し、その後1枚ドローだ。〈立ちはだかる強敵〉を戻す」

 

「リソース回復。持久戦に持ち込む気か……」

 

 けど、とⅢは考える。陸人が守るドリアードは、攻守が低いのは勿論、耐性を持つカードでもない。長期戦になればなるほど、守るのは難しくなる。全く考えが読めない。

 

(そうだ。悩め。キーパーツが揃ってない今、動きが鈍れば時間も稼ぎやすくなる)

「魔法カード〈死者蘇生〉を発動。〈ライズベルト〉を再び復活させ、効果で〈ドリアード〉のレベルをアップ」

 

 ☆6→7

 

 流れを完璧に支配する陸人。今のうちにピースを揃えたい。

 

「バトルだ。〈バロメット〉で〈モアイ〉に攻撃!」

 

 Ⅲ LP 4000→3900

 

「くっ…〈モアイ〉の効果発動! バトルによる破壊を無効にして、このカードを守備表示にする!」

 

 ATK/1800→DEF/1600

 

「次!〈ライズベルト〉で〈クリスタル・ボーン〉に攻撃だ!」

 

 Ⅲ LP 3900→3700

 

「——っ! 罠発動!〈ストーンヘンジ・メソッド〉! 自分フィールド上の〈先史遺産〉モンスターが破壊された時、デッキから〈先史遺産〉と名のつくレベル4の岩石族モンスター1体を、守備表示で特殊召喚できる! 僕は〈先史遺産コロッサル・ヘッド〉を特殊召喚! この効果で特殊召喚したモンスターは、表示形式を変更できない」

 

『先史遺産コロッサル・ヘッド』☆4 DEF/1600

 

 ただでは転ばないⅢ。ペースを乱されつつも、盤面は維持する。

 陸人としては厳しいものがあったが、表情には出さない。

 

「…バトル終了。カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

「僕のターン、ドロー! 手札から魔法カード〈先史遺産の共鳴(オーパーツ・レゾナンス)〉を発動!〈先史遺産〉モンスター1体を選択し、そのモンスターよりもレベルが1つ上の〈先史遺産〉モンスターを、手札から特殊召喚する! 僕が選ぶのはレベル4の〈コロッサル・ヘッド〉! 来い、〈先史遺産トゥーラ・ガーディアン〉!」

 

『先史遺産トゥーラ・ガーディアン』☆5 ATK/1800

 

 

「今度はレベル5が揃った!」

 

 またしてもエクシーズ召喚の条件を満たしたⅢ。実力の高さが窺える。

 

「でも、まだ陸人君にはレベル変更効果がある……」

 

 

「〈ライズベルト〉の効果発動!〈モアイ〉のレベルを上げる!」

 

 強力なモンスターの出現は、状況を変化させかねない。許したくない。そんな思いが感じ取れる。

 しかし当然、Ⅲも対応してくる。

 

「無駄だよ! 僕は〈先史遺産ゴールデン・シャトル〉を召喚し、効果発動! このカードのレベルをターン終了時まで1上げる!」

 

『先史遺産ゴールデン・シャトル』☆4→5 ATK/1300

 

「くっ、そう来るか……これじゃエクシーズ召喚を止められねぇ」

 

 予測はできても、止められないなら意味は無い。その面持ちは渋い。

 

「何度も思い通りになると思うなよ! 僕は、レベル5の〈ゴールデン・シャトル〉と〈トゥーラ・ガーディアン〉で、オーバーレイ!」

 

 ここから反撃。そう言わんばかりに語気が強まる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!現れろ、〈No.33〉!」

 

 雲を裂き出現するのは、超巨大空中都市。

 

「〈先史遺産-超兵器マシュ=マック〉‼︎」

 

 圧倒的な迫力が伸しかかる。

 

『No.33 先史遺産-超兵器マシュ=マック』★5 ATK/2400

 

 

「で、デケェ……」

 

「おお……やっぱ生はすげぇや」

 

 遊八は当然として、超弩級のモンスターを操るアンナも、これには圧倒される。

 

 

「チッ……遂にご登場、だな。ナンバーズ」

 

 余裕を見せる陸人だが、舌打ちは思わず出てしまった感じだろうか。表情も完璧ではない。

 

「そうやって余裕ぶっていられるのも今のうちだ!〈モアイ〉を攻撃表示にして、バトル!」

 

 陸人の顔つきが険しいのは見えている。そうなっているのはつまり、対処が困難である事の証左。

 

(防御する手は無いはず。そして陸人が長期戦を望むなら、狙うモンスターは——)

「〈マシュ=マック〉で〈神羊樹バロメット〉を攻撃! ヴリルの火!」

 

 天へと放たれる光線。それはやがて火球となり、空を赤く染めながら地表へ迫る。

 

「攻撃宣言——してくれたな?」

 

「何を……まさかっ⁉︎」

 

 されど陸人は取り乱さない。先程までの険しい顔は何処へやら。してやったりとニヤリ笑う。

 Ⅲは気付く。どちらが作られた顔だったのかを。

 

「罠発動!〈聖なるバリア—ミラーフォース〉! 相手の攻撃表示モンスターを、全て破壊する!」

 

 彼らを守る鏡の障壁。それは火球をそっくりそのまま反射して、Ⅲのフィールドを襲う。

 

「そんな……ナンバーズがこんなあっさりと……」

 

 圧倒的威容を誇った超兵器は、その真価を発揮する間も無く崩壊した。

 

 

「うわぁ、容赦ねぇ……。アンナ、伏せカードを甘く見ない事だ」

 

「おう……こんなの見せられたら、嫌でも警戒しちまうぜ……」

 

 尤も、陸人は自分自身すら利用してくるのでより厄介。今したように……。

 

 

「全滅。とはならなかったが、ナンバーズは破壊してやったぞ。さあ、次の手は?」

 

 陸人はとにかく挑発する。Ⅲから徹底して冷静さを奪いにかかる。

 

「くっ……魔法カード〈貪欲な壺〉。墓地のモンスター5体をデッキに戻し、2枚ドロー」

 

(ナンバーズを回収したか。もうレベル変更は通用しないだろうし……時間との勝負か?)

 

 普通は苦し紛れと考えるのだろうか。しかし追い詰めたとは、まだ思えなかった。

 勝負は最後までわからない。自分で言った手前、ここで気を抜くなどあり得ない。

 

「……?」

(何だ……これ……?)

 

 引いたカードに確認するⅢ。その表情に変化が見える。それは……疑問…困惑?

 

「どうかしたか?」

 

 影が揺れる。

 

「いや…なにも。僕はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 訝しむ陸人だが、カードを見て疑問とは、一体何を引いたのか……。

 

「そうか。なら俺のターン、ドロー」

 

 その正体がなんであれ、警戒するに越した事はない。ゴール地点が定まっていて、必要なカードがわかっているのだから。その思考は非常に整然としている。

 

「〈マスマティシャン〉を召喚。効果発動。デッキから、レベル4以下のモンスター1体を墓地に送る……〈調星師ライズベルト〉を墓地に」

(さて、〈調星師〉の方は上振れすればってとこだが、〈覚星師〉の効果は……〈マスマティシャン〉に使えばエクシーズ召喚ができる。となれば出せるのは〈ダイヤウルフ〉か)

 

 陸人の注目は伏せカードに向く。これを除去するか否か……。

 彼のデッキでナンバーズに対抗するのはそう難しくはない。しかし、たった一枚の偽物を除くと、ナンバーズを相手にできるモンスターは少なく、魔法と罠に頼らなければならなず、今の手札と伏せに、そのカードは無い。貴重なモンスター・エクシーズをここで切るべきか。陸人が出した結論は——。

 

「〈バロメット〉の効果発動。墓地から通常罠、〈ミラーフォース〉をデッキの下に戻して、ドロー!……このカードが来るなら、〈覚星師ライズベルト〉の効果を〈ドリアード〉に対して発動。レベルアップだ」

 

 ☆7→8

 

 

「エクシーズしないか……確かに〈先史遺産〉は除去カード少なかった記憶あるし、後から対処でも問題無い…かもな」

 

 アニメ世界なら尚更。と内心で付け足し、それでもどこか不安を感じながら、遊八は陸人の行動に納得する。

 

 

「バトル。〈バロメット〉で〈コロッサル・ヘッド〉に攻撃!」

 

「罠発動!〈コスタリカン・ストーン・ボール〉! 相手モンスターが攻撃する時、その攻撃を無効にする! 更にそのモンスターは、次の相手ターンに攻撃できない!」

 

「止められたか……俺の残りモンスターじゃ攻撃力が足りない。ならバトル終了。カードを2枚伏せる…ターンエンド」

 

 やっぱしとくべきだったかもと、判断ミスを疑うが、リカバリー可能と判断。ふぅ、と息を吐いて切り替える。

 そして気付く。ターンを始めないⅢに。

 

「どうした? お前のターンだ」

 

「……彩葉陸人」

 

「何かな?」

 

 不意に名前を呼ばれ、返事する。

 

「君は何故、見ず知らずの僕たちに寄り添おうとする……っ、僕たちは君の友達を傷つけたんだぞ! なのにどうして、君はそんなに落ち着いていられるんだ!」

 

「……それ、俺もう答えたろ?」

 

 ついさっきの、Ⅳも交えたやり取りで答えている。そのはずだが……何故問うたのか。

 

「そうだね。でも、何度だって問いたくなるんだ……。少し変えるよ。僕たちが憎くないの? 僕が言えた立場じゃないけど、怒ってるなんて、軽く流せるものじゃなかったはずだ」

 

「……」

 

 少し間を置く。そして口を開けば——

 

「だってよ。どう思う? 遊八」

 

「え? 僕?」

 

 急に振られて困惑。それでも迷わず、スッと答えは出た。

 

「別に、かな。そりゃ怒りたい気持ちはあるよ。ここに来るまで考えてたんだ」

 

 トロン一家を知る彼は、優希の状態を知らされた時、まず最初に自分を恥じた。自分の事に夢中で、悲劇を止める可能性を自ら閉したから。

 次にⅣ。当然怒りを覚えた。でも彼に限らず兄弟皆、かつての父を取り戻したい一心での行動なのだ。誰も復讐を止めなかったのは、諦めだったのかもしれない。嫌われたくない、父のため、そんな思考放棄……それは無い。失礼だ。侮辱だ。もっと葛藤したに違いない。自分じゃないんだから……。と、横道に逸れながらも理由があるのを根拠に怒りを鎮めようとした。

 

 詳細には語らない。何か理由があっての事なら……と、怒りつつもそれを抑えようとしたのを伝える。陸人の意思も踏まえて。

 

「陸人が直接見て、話して至った結論なら、きっとそんな遠くはないのかもね。でも、だからってこの怒りを完全に鎮めるのは無理かな。せめて一発くらいは、殴りたい」

 

 友達が傷付くのが、こんなにも心を揺さぶられるものとは思っていなかった。だから遊八は自分の心に驚いている。思いの外寛容じゃなかったんだと。

 それでもⅢからすれば、その反応は軽く思えた。

 

「……それだけ?」

 

「それだけ。事情次第では許せる気でいたんだけどねぇ……。でも、優希が許すなら、許せるかも」

 

 何故彼は、申し訳なさそうにしている? それは自分たちが抱く感情じゃないのか?

 ここまでずっと、憎しみを胸に生きてきたⅢには、理解できなかった。

 

(Ⅲ……そうだよね。わかんないよね。僕は、前世があるから。Dr.フェイカーへの復讐。トロンを……かつての父、バイロン・アークライトを取り戻したいからって知ってるけど、陸人が何でそこまで寄り添おうとするのかは、僕もわかんないよ。でも——)

「陸人君。優希君が何か言ってた?」

 

 きっかけは優希にある。そう確信する。

 

「それもある。後で本人に聞いとけ」

 

「そうするよ。んで、それなら……うん。許せそうかも」

 

 胸のつっかえが取れた気がした。Ⅲとは友達になりたくて、でも怒りを抱いたままでは、難しそうに思えた。そんな憂いは、今消え失せた。スッキリしたように、一度大きく呼吸する。

 

「とまぁ、こんなお人好しが近くに何人かいてな。それが移ったのかもな」

 

 自嘲するように、でも悪く思ってなさそうに笑う。

 

「別に僕はお人好しじゃないよ。さっきだって完全に許せてなかったし。それを言うなら遊馬君の方が……」

 

「OKOKそう言う事にしとくよ」

 

 根本的に自分を認められる人間じゃない。それを知るため、面倒くさがった陸人は雑に流す。

 アンナも、遊八の横で呟いた。

 

「十分お人好しな気はするぜ」

 

 あーだこーだ言いたそうな遊八を無視して、陸人はⅢと向き合う。

 

「悪事を働いたとして、もしかしたら事情があるのかもしれない。それを無視して敵視するのは良くないのかもなって、最近思い始めたのさ」

 

 自分を許してくれた友達がいる。その友達のためにできることがあるはず。彼は不向きと思いながらも、友達と同じ優しさを広めようとしたのだった。

 

「当然、悪い事は悪いと言うさ。だからお前はここで倒す。俺はまだ怒ってるからな。軽く流してもねぇ」

 

「そっか……友達、か」

 

 友情。絆の力。とでも言うのだろうか。陸人の強さにも関係していそうだと考える。

 

「僕には、そうやって自慢できる友達はいない……」

 

 家族以外に、絆を感じられる存在はいない。そして、今はその家族すらも……。

 

「だったらなればいいだろ!」

 

「——っ!」

 

 陸人は叫ぶ。自分がしてもらった事を、今度は自分がする。手を伸ばす。

 

「でも——」

 

「今すぐにとは言わねぇよ。お前が胸張って、この手を取れるようになったらで良い。俺は、多分遊八も、いつまでも待っててやるから」

 

 その言葉に偽りは無く、視線は真っ直ぐ向けられる。これを首を縦にぶんぶん振って全力で肯定する遊八と、それを見て笑うアンナ。

 Ⅲは呆気に取られる。そして——

 

「君たちは、凄く良い人たちだ。でも、その言葉を受け取る事はできない」

 

 彼らを拒否する。申し訳無さそうに——。

 

「……」

 

「僕は家族のために戦っている。それこそ、どんな手を使ってでもね……だから——」

 

 体に自然と力が入る。目の錯覚だろうか、影が大きく揺らめいている。

 

「僕はその手を取っちゃいけないんだ! 僕に必要なのは憎しみと復讐心、家族との絆だけだ!」

 

 苦しみながらも拒絶する。瞬間、揺れていた影が噴き出した。まるで主と認めたかのように。

 

「あれって——⁉︎」

 

「これは……初めて見る現象っ!」

 

 Ⅲの紋章が輝き、影と交わり、新たな力を齎す。

 

「これは……」

 

 Ⅲ自身もそれに驚く。予兆はあった。

 

(真っ黒なカード。いつの間にかデッキにあったカードが……力を宿したのか? それにこれは——)

 

 その影は力の集合体にして器と化す。Ⅲの紋章、彼自身の魂の力が宿り、一枚のカードとなった。

 

「彩葉陸人! 僕はこの力で、君を倒す!」

 

 陸人に頬に流れる冷や汗。本当の勝負は、ここからだ——。





 いつ週一投稿が途切れるかわからない。でも大丈夫。亀更新のタグをつけているから。むしろここまでがイレギュラー。話の展開もイレギュラー。最初私こんなになるなんて思ってなかったが……?
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