遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』   作:ふわ×フワ

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 前回に引き続き当日仕上げ。粗はあるでしょうがどうにか書き上げました。(満身創痍)

 前書きと後書き。なんか書いとかないとーって思ってずっと書いてましたが、見返してこれ自分書かんほうがええ気がするわぁ思いまして、今回が最後。
 今後は必要そうならそん時にって感じやね。

 それでは陸人vsⅢ、終盤戦をどうぞ。



No.27 積み重なった想いの力

 

      

「僕のターン、ドロー!」

 

 Ⅲの足元、影が円形に広がり波打っている。

 

「何が起きてんだ……あの影、まさかあの人型のと同じとか言わねぇよな……」

 

 

「遊八…あれって一体……?」

 

「わからない。けど……ただの演出じゃあ絶対無い」

(でもあの感じは……受け入れたくないな)

 

 突如として溢れ出した力に、動揺が広がる。Ⅲに異常は見えないが、遊八にとってこの事態は看過できない。

 

(原作大崩壊。これまでずっと僕たちだけだったのに、主要キャラにまで影響し出した。これでまだバリアンが控えてんだろ? 収拾つくのかよ……いや、今はとにかく——)

「頼む……陸人君……」

 

 今はただ、勝利を祈るしかできない。

 

 

「僕は魔法カード〈パレンケの石棺〉を発動! 自分フィールドに〈先史遺産〉カードがある時、カードを2枚…ドロー!」

 

 新たな力を得たⅢが、動き出す。

 

「〈先史遺産ネブラ・ディスク〉を召喚!」

 

「新たな〈先史遺産〉モンスター。レベル4が2体揃ったか……」

 

「〈ネブラ・ディスク〉の召喚に成功した時、デッキから〈ネブラ・ディスク〉以外の〈オーパーツ〉カードを手札に加える! 僕が加えるのは、〈先史遺産ウィングス・スフィンクス〉! そしてこのカードには、〈先史遺産〉モンスターがいる時特殊召喚できる効果がある」

 

 それが意味するのは、レベル変更効果の実質的な封殺。

 

「レベルを変えても、あのモンスターを特殊召喚すればまたナンバーズが……なるほどな」

 

 その意識を植え付けることで、陸人は効果を使用せずにスルー。この瞬間を、Ⅲは待っていた。

 

「そう言うことさ。そして僕は、レベル4の〈コロッサル・ヘッド〉と〈ネブラ・ディスク〉で、オーバーレイ!」

 

「っ! しまった!」

 

 既に見えているナンバーズに、気を取られすぎた。

 

「2体の〈先史遺産〉モンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! これが僕の新たな力! 現れろ、〈No.36〉!」

 

 

「あれは——っ⁉︎」

 

 

 小型のマシュ=マック、と言うのが近いだろうか。水色のバリアに覆われた街。その中央には、黒い石が浮いている。

 

「〈先史遺産-超機関フォーク=ヒューク〉‼︎」

 

『No.36 先史遺産-超機関フォーク=ヒューク』★4 ATK/2000

 

 持っていないと思われた、本編未登場のナンバーズ。あの影の影響なのだろう。ならばおそらく、偽のナンバーズだ。

 

「新たな…ナンバーズ……」

 

 もはや余裕ぶってなどいられない。しかし、一体だけならまだ——

 

「新たな力は、ナンバーズだけじゃない! 僕は罠カード〈先史遺産石紋(オーパーツ・エスペランサ・グリフ)〉を発動!」

 

 

「ヤバい! 陸人君っ!」

 

 記憶が正しければ、あれは未来のカード。時代にそぐわぬその一枚は、オーパーツと言って差し支えないように思える。

 

 

「〈フォーク=ヒューク〉を対象として、そのランクよりレベルが一つ上の〈先史遺産〉モンスター2体を、手札、デッキ、墓地から、効果を無効にして特殊召喚する! 来い!〈先史遺産モアイ〉!〈モアイキャリア〉!」

 

「一度に2体…でも〈覚星師〉の効果で——」

 

「それは無理だ陸人! まだ効果は終わっていない! 僕は特殊召喚した2体で、オーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 再び現れろ、〈No.33 先史遺産-超兵器マシュ=マック〉‼︎」

 

『No.33 先史遺産-超兵器マシュ=マック』★5 ATK/2400

 

「効果による…エクシーズ召喚……? しかも素材の確保まで同時に行うなんて……」

 

 

「インチキ効果もいい加減にしろ!」

 

「そ、そうだそうだ!」

 

 

 空中に浮かぶナンバーズが二体。陸人に絶望を突き付ける。

 

「覚悟しろ陸人! ORUを一つ使い、〈フォーク=ヒューク〉の効果発動!1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を、このターン0にする! 僕は〈バロメット〉を選択!」

 

『神羊樹バロメット』ATK/1900→0

 

(攻撃力0……でも、それだけなら——)

 

「そしてこの瞬間!〈マシュ=マック〉の効果発動!」

 

「——ッ!」

 

「モンスターの攻撃力が変化した時、ORUを一つ使い、その変化した数値分のダメージを相手に与える! インフィニティ・キャノン!」

 

 空中都市の外壁から伸びる砲台。その一斉掃射が陸人を襲う。

 

「何っ⁉︎ ——ぐあああああああ!!」

 

 陸人 LP 3700→1800

 

 今までに受けたことのない苦痛に身を焼かれ、陸人は叫び、倒れ伏す。

 

 

「陸人君っ!」

 

 

「……どうやら、これで終わりみたいだね」

 

 このまま立ち上がれず敗北か。そう思われた矢先——。

 

 

「う…ぐっ——っ!」

 

 痛みに耐え、立ち上がる。その目はまだ鋭い。

 

「まだ立つか…なら、僕は2枚目の〈パレンケの石棺〉を発動して、2枚ドロー!…〈先史遺産ウィングス・スフィンクス〉を特殊召喚して、リリース!〈フォーク=ヒューク〉第二の効果を発動! 攻撃力が元々の攻撃力と異なる相手モンスター1体を破壊する!〈神羊樹バロメット〉を破壊!」

 

(破壊自体は許せる…俺の手札は0で、次を考えると…ライフが怖いが……いや、だとしても今はっ——!)

「罠発動!〈地霊術—「(くろがね)」〉!〈バロメット〉をリリースして、墓地の地属性モンスターを特殊召喚する! 蘇れ、〈アステル・ドローン〉!」

 

 間一髪破壊は免れるも、その程度では足りない。

 

「新しいモンスターを出したところで、敗北は変わらない! 手札から永続魔法〈先史遺産-ピラミッド・アイ・タブレット〉を発動! このカードがある限り、自分の〈先史遺産〉モンスターの攻撃力は800ポイントアップする!」

 

『フォーク=ヒューク』ATK/2000→2800

『マシュ=マック』ATK/2400→3200

 

「バトル!〈マシュ=マック〉で〈覚星師ライズベルト〉を攻撃!」

 

「終わってたまるかよ! 罠発動!〈立ちはだかる強敵〉! 攻撃対象は〈マスマティシャン〉だ!」

 

「だけど攻撃は止まらない! 喰らえ! ヴリルの火!」

 

 再び迫る火球。今度は弾かれる事なく着弾した。

 

「ッ——があああああああ!!!」

 

 陸人 LP 1800→100

 

 爆炎に焼かれながら、吹き飛ばされる。しかしまだ……いや、もう倒れない。

 

「ぐっ、くぅ……っ!〈マスマティシャン〉の…効果!」

 

 優希は折れなかった。ならば、その彼にデュエルを教える自分が、倒れてなるものか。そう自分に言い聞かせて、陸人は立ち直る。もう声を荒げすらしない。

 

「戦闘で破壊された時、1枚…ドロー!」

 

 

「さっきの罠、デッキの下に戻ってたんじゃ…?」

 

「そうだね。けど〈マスマティシャン〉の召喚時、効果を使ったことでシャッフルされてる。つまり考えられるのは、運良く一番上に来たか、二枚目だ」

(でも、それよりも……一枚のカードのためだけに、敢えてダメージを受けるなんて……勝つための選択肢としては理解できるし、場合によっちゃ僕もやるけど、相手はナンバーズだぞ? あのリアルダメージを、しかも一度受けた上で許容できるものか?)

 

 胆力がある、と言うのだろうか。知れば知るほど、強さの底が深く感じられる。同い年とは、とても思えなかった。

 

 

「仕留め損なった……けど、ライフは残りたったの100だ。カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

 勝ちは決まったようなもの。であるはずのⅢだが、苦しそうにしている。それでもあの手を払った以上は、目の前の敵を倒さねばならない。彼もまた覚悟を決めている。

 

「今度はこっちの番…だがその前に、〈覚星師〉で〈ドリアード〉をレベルアップ! そして俺のターン、ドロー!……っ!」

 

 ☆8→9

 

「残念だけどこれで終わりだ!〈フォーク=ヒューク〉の効果発動!〈ドリアード〉の攻撃力は0になる!」

 

 ORUが使用され、中央部の石に光が走る。同時に、ドリアードから力を奪う。

 

「相手ターンにも発動可能だったのか……っ!」

 

『精霊術師 ドリアード』ATK/1200→0

 

「この瞬間〈マシュ=マック〉の効果発動! その魂ごと燃え尽きろ! インフィニティ・キャノン!」

 

 

「まずい! 陸人君っ!」

 

 再び放たれた一斉掃射。陸人の全てを焼き尽くさんと、大地を穿ちながら迫り来る。

 

 

「焦んなよⅢ。速攻魔法発動!〈禁じられた聖杯〉!〈マシュ=マック〉の攻撃力を400アップし、このターン効果を無効にする!」

 

「そんなっ——⁉︎」

 

 聖杯より垂らされた一滴(ひとしずく)。それは砲火を掻き消す激流と化し、陸人を守る。

 

「たった1枚の差。間一髪だったな。タイミングが違えば負けてたぜ」

 

 額の汗を拭い、笑って見せる。

 

「焦っていた? 僕が……?」

 

 陸人の持つ何かに当てられたのだろうか。見えていたはずのビジョンが、遠ざかっていく感覚を覚えた。

 

「ああ、必死そうに見えたな……そのお陰で、ナンバーズのORUは無くなった。これで心置き無く戦えそうだ」

 

「いいや、ORUが無くなってもナンバーズは健在! 僕の勝ちは揺るぎない!」

 

「じゃあどうにかしねぇとな。早速〈ドリアード〉をレベルアップ!」

 

 ☆9→10

 

「そして、レベル4の〈覚星師ライズベルト〉と〈アステル・ドローン〉で、オーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 来い、〈恐牙狼 ダイヤウルフ〉!」

 

『恐牙狼 ダイヤウルフ』★4 ATK/2000

 

「〈アステル・ドローン〉を素材とした事で、1枚ドロー!〈ダイヤウルフ〉の効果! ORUを一つ使い、自分の獣、獣戦士、鳥獣族モンスターと、相手フィールドのカードを1枚ずつ破壊する! こっちは〈ダイヤウルフ〉のみ、そっちは〈マシュ=マック〉だ!」

 

 死力を尽くした吶喊。しかし——

 

「二度もナンバーズは破壊させない! 永続罠発動!〈ナンバーズ・ウォール〉!」

 

 砕けたのは、恐牙狼のみ。

 

「もう諦めろよ陸人! お前に勝ち目は無い!」

 

 自分に言い聞かせるように言い放つ。だが実際彼の場は強固。戦闘、効果破壊に耐性を持ったナンバーズが二体。その攻撃力はどちらも、陸人の持つ『グラディエール』を超えている。

 突破は困難。しかし陸人は平然としている。

 

「その結論を出すのは早計だな!〈貪欲な壺〉を発動! 墓地のモンスター5体をデッキに戻す!」

 

 本当の本気で、勝つ気でいる。

 

(〈バロメット〉、〈ダイヤウルフ〉、2体の〈ライズベルト〉、〈マスマティシャン〉に〈アステル・ドローン〉と——。ギリ数足りてて良かった……)

 

「新たなカードに可能性を託すか……」

 

「2枚ドロー!〈サモンプリースト〉召喚!」

 

「——っ!」

 

 まだ、止まりそうにない。

 

「効果発動! 手札の魔法を1枚、墓地に送って…〈覚星師ライズベルト〉を特殊召喚! ここでコストになった〈代償の宝札〉が、効果を発動する! 2枚ドロー!」

 

「手札が、無くならない…無駄が無い……ならやっぱり、〈ドリアード〉のレベルを上げ続けるのにも意味が……?」

 

 未だ意味を成さない行動。陸人はそれを無意味に行う人間ではない。Ⅲもその結論に達した。

 

(んな特別凄い事にはならねぇけど、〈ドリアード〉を守るのは変わらんし、まぁいいだろう)

「〈覚星師〉で、〈ドリアード〉をレベルアップ! そしてこの〈ドリアード〉は魔法使い。よってこのカードは手札から特殊召喚できる!〈稲荷火〉を特殊召喚!」

 

『稲荷火』☆4 ATK/1500

 

「〈稲荷火〉と〈サモンプリースト〉で、再び〈神羊樹バロメット〉をエクシーズ召喚! そして効果発動! ORUを一つ使い、墓地から〈立ちはだかる強敵〉をデッキの下に戻し、ドロー!カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

「随分動いた割には、結局ナンバーズは倒せなかったね。やっぱり君では、僕に勝てない」

 

 安心を滲ませ、強気な笑み。そこに陸人も煽り返す。

 

「さっき言ったばかりだろ。早計だ。記憶力足りてるか?」

 

「ッ、その減らず口もここまでだ! 僕のターン、ドロー!……バトル!」

 

 勢いよくカードを引き、引導を渡すべく宣言する。

 

「行け〈マシュ=マック〉! ヴリルの火!」

 

 

「これを食らったら終わりだぜ?!」

 

「大丈夫。陸人君ならきっと……」

 

 二枚の伏せカード。彼ならば、あの中に攻撃を防ぐ手を仕込んであるはず……。遊八は信じる。

 

 

 バチリと、電気が走る。

 

「Ⅲ…目を逸らすな。俺から……いや、俺たちから逃げるな」

 

「……?」

 

 赤く染まる空を無視して、Ⅲへ言葉を投げかける。

 

「そうやって無視するから、俺の言葉が抜け落ちる……そんなんだから、焦るんだ。視野が狭くなって、見落とす」

 

 意図が読めない。

 

「何を言って——」

 

「俺はもう、カード効果を発動してるぜ」

 

「なっ——⁉︎」

 

 落ちて来るはずの火球が、いつの間にか消え失せている——何故?

 

「〈超電磁タートル〉はデュエル中に一度だけ、相手バトルフェイズを強制終了する効果を持つ。俺はこの効果を発動し、バトルを終わらせた」

 

「そんなカードいつ……まさか⁉︎」

 

 

「〈ドリアード〉の儀式素材だ!〈マスマティシャン〉が違うなら、もうそのタイミングしか無い!」

 

「嘘だろ⁉︎ 最初も最初じゃねぇか⁉︎ なのにずっと使わずに温存してたのか⁉︎」

 

 一ターン目の二手目。アンナの言う通り最序盤から、ずっと陸人の墓地にあった。どうしても避けねばならないバトル……つまり今、この瞬間のために。

 

 

「そんな……いや、まだこのターンを凌いだだけだ! 次のターンで、必ず仕留める! カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

(今伏せたのは〈雷雲の壷(サンダーポット)〉…〈先史遺産〉への攻撃を無効にして、バトルを終了させるカード。仮に攻撃力を超えられても、このカードなら凌げる)

 

 その耐久性を信じるⅢに、陸人は淡々と、効果発動を宣言する。

 

「だったらエンド前に〈覚星師〉だ。〈ドリアード〉をレベルアップ。そしてターンが終わり、〈ドリアード〉の攻撃力も戻る……覚悟はいいな?」

 

「——ッ!」

 

 思わず後退る。

 

「俺ターン! ドロー!」

(後1枚なんだ…ライフを削り切るには後1枚欲しい)

「魔法カード〈ナイト・ショット〉!相手のセットされた魔法、罠1枚を破壊! 更に対象のカードは発動できない!」

 

「くっ……!」

 

「〈雷雲の壷〉……攻撃無効か」

 

 相手の場の不安要素は消えて、勝利のピースも揃いつつあるが、足りない。もう後がないこの局面に残されたのは、ドローという不確定の手のみ。

 

「罠カード〈貪欲な瓶〉を発動! 墓地からカード5枚をデッキに戻し、シャッフル。その後1枚ドローする!」

(……違う。これじゃない)

 

 しかし陸人に迷いは無い。恐れは無い。ほんの僅かにでも可能性がある限り、終わりは来ない。

 

「Ⅲ。今の俺にはそのナンバーズを倒す術も、ライフを削り切る術も無い」

 

「……ようやく諦める気になったかい?」

 

 その問いに、陸人は鼻で笑った。

 

「バカ言うなよ。んな事するならとっくにしてるさ。俺が言いたいのはな——次で全てが決まるって事さ」

 

「次?」

 

「〈バロメット〉効果発動! ORUを一つ使い、〈貪欲な瓶〉を戻す」

 

 デッキトップに指がかかる。

 

「……このドローで俺の、このデュエルの結末が決まる」

 

「……」

 

 息を呑む。

 勝利を掴むか、敗北を確定するか……。防御札も戻しているため、延長戦もあり得るが、直感が告げる——それは無い。これが真の最後のカードだと。

 

「さあ、行くぞ……」

 

 わざとらしく焦らす陸人。緊張が高まる。

 

「ふぅ……ドロー!!!」

 

 一呼吸置いて、チラリと目をやる。

 

「フッ」

 

「ッ!」

 

 口元には弧が描かれ、しかしその小さな笑みは、結果を確定させるには至らない。知るのは陸人ただ一人。

 

(わからない。引いたのか、違かったか……どっちだ……っ!)

 

 

 安心か……

 

 

「……」

 

 

 諦念か……

 

 

「……」

 

 

 果たして結果は——

 

 

(頼む……陸人……っ!)

 

 

 カードを手札に加えた陸人は、天を仰ぐ。

 

 

「まさか……そんな……」

 

 外れ。そう思わせる彼の姿に、遊八は呆然とし、Ⅲは安堵する。

 

「ここまで、だね」

 

 その時、空を見上げたまま、陸人は唐突に語り始める。

 

「……祈り、願い……まとめて想いかな…努力と同じで積み重なってくもんだと、俺は思うんだ」

 

「……」

 

 Ⅲは何も言わず聞き届ける。きっとそれは、彼が最後に言い残したい言葉だろうからと。

 

「想いってのは原動力になる。自分のため、誰かのため、大小問わず願って祈る。そしたらそれが実を結ぶよう、想いを糧に、努力へ繋げるんだ……」

 

 たとえそれが間違ってても……。以前の自分を回顧する。

 

「絶対に実るとは言えない。失敗もすれば、無駄に終わることもある…結果として悔やんだり、諦めたりだってするだろうさ。でもそこで終わりじゃないから、また人は立ち上がる」

 

 敗北を経て、許されて、自分の心と家族に向き合った。そして彼は想いを新たに、また歩き始めた。

 道半ばの自分の言葉じゃ軽く聞こえるかもしれない。それでも語らずにはいられなかった。

 

「時に一人で、時には協力しながら…その数は、時間と共に増えてって、その度に僅かにでも強くなれる。誰かを思い遣ったなら、その分だけ優しくなれる……そうして思い合い、繋がって、高め合い、成長する……きっとそうして生きてくんだろうな。人間ってのは」

 

 自分と、周りの人たちを見て出した結論。

 目を閉じて、首に手を添えながら一度回して解す。

 

「だから、本当に心の底から願う何かがあるなら、きっとそのために本気になれるはずで、本気で頑張ってんなら、力を貸してくれるモノが集まって来る」

 

 人も、カードも、全部が彼の力になっている。だから彼は、何事にも全力で挑む。

 

「今の俺も、お前たちのために祈って、力を貸したくなった——本気でな」

 

 だから彼は諦めない。だから彼は強いのだ。

 

 大きく息を吐き出して、陸人はⅢに視線を合わせた。

 

「だからⅢ——俺の勝ちだ」

 

 その顔は、とびっきりの笑顔だった。

 

「なっ——」

 

 天を仰いだのを見た時、語り始めた時、勝ったと思った……違かった。ぬか喜びをさせられた。

 

「フフッ、希望を与えてそれを奪う…だったか? 本当はⅣ相手にやりたかったが…ま、タイミングが悪かったってやつだ。許してくれよ。じゃあ締めと行こうか」

 

 イタズラ成功と言わんばかりの少年の顔は、やはりまだ中学生なのだと思わされる。しかし勝負に戻ればまた一変。鋭い表情と余裕ある態度。落ち着きつつも力強い声。負ける気がしない。

 

「〈覚星師〉の効果を発動してレベルアップ!……俺は積み重ねたぜ。祈りを、〈ドリアード〉にな。そしてこれが、その末の力だ!」

 

 耐えた末に集まったカード。手に取ったカードが、精霊術師に力を与える。

 

「1枚目! レベルを上げ続けたのはこのためだ! 装備魔法〈バウンド・ワンド〉! 装備した魔法使い族モンスターの攻撃力を、レベル×100アップ!」

 

 赤い宝石の付いた杖。この一枚はまさに、耐え抜き、積み重ねた証となる。

 

 

「なぁ、今の〈ドリアード〉のレベルって……」

 

「うん。限界突破の13。つまり上昇値は、1300」

 

 

 積み上げた星は、思いの外大きな力となって恩恵を齎した。

 

『精霊術師 ドリアード』ATK/1200→2500

 

 

「2枚目! 装備魔法〈団結の力〉! ドリアードに装備し、その攻撃力を自分の表側モンスターの数×800アップする!今いるのは3体。よって2400アップだ!」

 

 続くカードで、陸人の下に集まったモンスターたちが、彼のためにその心を一つにする。

 

 ATK/2500→4900

 

「攻撃力4900……ッ!」

 

 レベル13、攻撃力4900。最早初期のステータスなど見る影も無い。

 

「行くぞバトル!〈ドリアード〉で〈マシュ=マック〉を攻撃!」

 

 天を舞うドリアード。彼女を中心に発生する極光と広がる波動。Ⅲの影は揺れ、元の形を残しながら、虚空へと消えていく。しかしまだ——

 

「〈マシュ=マック〉の攻撃力は3200! 僕が受けるダメージは1700だ! まだライフは残る!」

 

「んなミスするわけねぇだろ! これがラストカードだ! 罠発動!」

 

 それは、陸人の場に伏せられていた一枚。

 

「〈魂の一撃〉! ライフが4000以下で、相手モンスターとバトルする攻撃宣言時、ライフ半分を払い自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる! 対象は当然〈ドリアード〉!——くっ」

 

 陸人 LP 100→50

 

「対象モンスターの攻撃力は、自分のライフから4000を下回っている数値分アップする! 俺のライフは50。つまり4000からの差3950を、〈ドリアード〉に加える!」

 

『精霊術師 ドリアード』ATK/4900→8850

 

「攻撃力……8850⁉︎」

 

「俺の本気だ。余すことなくその身に刻みな! アウラースプリーム‼︎」

 

 陸人の全霊を込めた至高の輝き。祈りと共にⅢを包む。

 

「僕が…負ける……? ナンバーズ使いじゃない彼に……?」

 

 光に飲まれゆくⅢは実感する。

 

(これが陸人の祈り……積み重ねて来た想いの力か……)

 

 最後に見たのは、天から優しく微笑みかける精霊術師。陸人の祈りの体現者、その姿だった……。

 

 

 Ⅲ LP 3700→0

 

   RIKUTO WIN 





 途中で使用カードとか変えてて、特にミスが怖い回になりました。主に手札枚数とライフ。でもやりたい事(高レベル高打点ドリアード)はやれたので良し。
 陸人君のフィニッシャー筆頭なので、決め方には気を使わないとマンネリしちゃうよね……ここでこれやって良かったの? もうドリアードでインパクトのあるフィニッシュは難しいわよ?

 3000打点が欲しい。精霊神后……セブンスロード……。
 ドリアードたちは良い。使う可能性も考えてるし、夢産、改め影産で手に入る。でもラッシュは……いや、行けるか? やれるのか? 影なら……?
 マジに困ったら手に染める。でもまだいらない。大丈夫。

 
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