遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』 作:ふわ×フワ
前書き書かなーいと言ったその次に、もう書いている私です。でも必要だと思ったので……。
これまで、ゼアル本編にて登場したカードは、全て、その効果のまま処理する予定でいました。ですが、今後の展開の中でOCG版を使用するのが確定したため、全ての部分を、基本、に変更します。
こう言うのは事前に伝えておくべきもの。では、前回の魂の一撃は何だったのか……。白状します。ミスです。アニメカードだって忘れてました。
あまりに意識が不足している。そこに愛はあるんか?
あります! 私は遊戯王か大好きなんです! 本当なんです! 信じてください!
「ふぅ……」
Dゲイザーを外し、一息つく。その体に伸し掛かる倦怠感。
(こりゃマジに魂を消耗したか?)
そう思ってしまう程には重い。
「陸人君! 大丈夫?!」
「ああ、無事さ……」
答えつつも陸人の目線はカードに落ちる。
(Ⅲのカードといい、俺のこれといい……影が齎した力ってやつか?)
通常罠『魂の一撃』。自分の知る効果とは異なっていたように思う。何より、彼はそもそもこのカードを、デッキに入れていない。
「代償付き……か」
ただの罠カードなのに……。ぽつりと呟く。
「何か言った?」
「あぁ、後で言う。それよりも今は——」
視線を向けた先、Ⅲが仰向けに倒れ、空を見ている。
(僕はトロンから、紋章の力を得た。ついさっきだってそうだ…僕は新たな力を——)
「Ⅲ……」
歩み寄る陸人。Ⅲの横に胡座をかいて座る。手は後ろに突いて、並んで空を見る形になった。
「なんだい?」
何の力も持ち得ない相手に負けた。そう思っているⅢ。
計画の邪魔になり得るイレギュラーかもしれないと言えど、その事実には堪えた。
「いや? 少し打ちひしがれてそうだなって」
言いながら、一枚のカードを取り出す。
「言っとくと、俺はもうこの手の面倒事に巻き込まれてんだ」
「それは——〈No.76〉!」
ガバッと飛び起きるⅢ。
「偽物だけどな。お墨付きも頂いてるんだから間違いない」
「偽物……?」
紋章の力も借りながら、注意深く観察する。
「言われてみれば……確かにそうだ」
偽物は、言ってしまえば表面が取り繕われているだけ。精巧過ぎるだけで、見る者が見れば見破れる代物だ。
「でも、何でわざわざ……僕は君にとって敵のはず」
彼の手を取っていたならいざ知らず、払ったなら関係は変わらない。
しかし、そんなもの陸人には関係ない。
「俺は偽物を集めようと思っててね。だってややこしいだろ? 本物を手にすべき者のためさ」
アストラル。姿の見えない多分仲間を思う。
「手にすべき者……」
「ナンバーズについて話せるのはここまで。そもそもの話、俺は本物について首を突っ込む必要は無かったんだ……」
たまたま、優希がⅣのファンでナンバーズ集めのために標的となった。
たまたま、友達になった人がナンバーズと深い関わりがあった。
「でも、俺のこれまでは偶然の連続ばかりでね……さっき言ったろ? 心の底から願い、本気で頑張りゃ、力を貸してくれるもんが集まってくるって」
その言葉に俯き気味になるⅢ。
「……」
「それは、良い事ばかりじゃない。試練だって同じだ」
そう語る陸人の目は、立ち向かう者の目をしていた。決意に溢れ、目の前に聳え立つ障害を打ち破らんとする獰猛さを秘めている。
「試練……?」
「そうだ。生きてれば、どうしても苦難に苛まれる。ちょっとがっかりするような小さい出来事から、もう立ち上がれなくなりそうな絶望まで、選り取り見取りさ」
茶化すような軽い言葉選びをしているが、大真面目だ。
「そんなもの、選びたくないね……」
「だな。けど避けては通れない。自分で考え、動き、力を借りながらも超えて行く……そんな試練の一つが、今の俺にとっては、このナンバーズなのさ」
『グラディエール』をヒラヒラと揺らす。
一つ超えて、また一つ。頂点を目指すなら、挑み続けるしかない。如何なる困難にも。
無関係に思えるかもしれない。だが関係ない——意味を見出すのは自分自身。彼はそう信じている。
「だから首を突っ込む事にした。偽物を集めて、友達の力になろうってな……Ⅲ。お前の試練は何だ?」
その問い、迷うまでも無い。Ⅲは答える。
「僕は、家族の笑顔を取り戻したい」
そのためなら何だってする。強い覚悟を含んだ、心からの言葉。
陸人は微笑んだ。
「陸人……?」
「やっぱお前も同じだ。本気で願い、動いてる。力を手にしたのも、そのお陰かもな」
それを聞き、Ⅲも自らのカードを取る。
『No.36 先史遺産-超機関フォーク=ヒューク』
『先史遺産石紋』
「本気の証…か」
噛み締める。
出自不明の力故に怪しい事この上ないが、これも一つの巡り合わせなのかもしれない。
「もちろん俺もだ。できることなんて無いかもしれないが、せめて祈るぐらいはさせてくれ」
デュエルを経て、多少は気が晴れたのだろう。好意的に接する陸人。心の扉が固そうに見えて、以外とそんな事無い彼だった。
「……ありがとう」
Ⅲもまた、彼の本気をその身に受けて、少し素直になれたようだ。
「……凄い良い雰囲気。邪魔し辛いな」
「だな」
空気に徹していた遊八と、遊八以外知り合いじゃないので、彼に倣うように空気になっていたアンナ。
「あー、すまん。忘れてたわけじゃないんだ」
少しバツが悪そうな陸人。
「いや、わかってる。メンタルケアは大事」
「メンタルケアって……」
人畜無害で、何も考えてなさそうな笑みを見せながら、グッドサインを送る遊八。そんな彼に呆れる陸人。
「んでⅢ君。申し訳ないんだけど…その〈No.36〉のさ、鑑定をしてもいいかな?」
「あ、う、うん……」
流れが来た瞬間に掻っ攫っていく遊八。その勢いに押されて、Ⅲはナンバーズを見せる。彼自身も観察は忘れない。
「これは……」
『見るまでも無かろう。偽物だ』
そっと語りかけるデュガレス。紋章を警戒しているため姿は見せず、カードから。
「まああれはそうなるよねぇ」
「やっぱ偽物か」
「だね……」
「わ、わかんねぇ」
確信する三人と、一人ついて行けないアンナ。
「どうするよ。僕としては回収したいけど」
特に示し合わせでなどいないが、陸人の意思に合わせ、偽を回収する方向で考える遊八。
「正直言えばな。遊馬とも敵対しそうだし……」
当然陸人もそうしたいと考えるが、Ⅲはどうだろうか。
「? 何で遊馬なんだ?」
「それは後でね」
少し不満げなアンナを抑えてフェードアウトさせる遊八。事情説明は後と伝える。
さて、陸人からの視線を受けたⅢは——
「……僕たちが集めているのは本物だ。目的を果たすのに、これは要らない」
折角手にした力を、手放す選択をした。
「俺が言うのもなんだが、良いのか?」
「デュエルで負けたのは僕だ。なら、これは君に差し出すよ」
デュエルの勝敗と、陸人たちの目的を理由にする。
友になれない分、せめてもの義理を果たすための選択だった。
「そうか。なら受け取ろう。……Ⅲ」
差し出されたカードを受け取り、空いている手を伸ばして言う。
「俺は、いつかこの手を取ってくれる日を……友達になってくれる日を、待っている」
それを聞いたⅢ。まだ僅かに影はあるが、デュエル前よりは幾分か柔らかい表情だ。
「うん。いつか……」
Ⅲの背後に、ゲートのようなものが現れる。
「それが聞けて良かった。約束だからな!……それと、Ⅳにもよろしく言っといてくれ」
釘を差す陸人。彼との決着は必須事項と、心に決めている。
「ああ、伝えておくよ」
それを最後に、ゲートに吸い込まれるようにして、Ⅲはこの場から姿を消した。
(俺が取り戻せたんだ。お前だって…きっと——)
祈る。受け取ったナンバーズを胸に、遠く空を見上げて……。
(良かった。偽のナンバーズを回収できて……遊馬君なら大丈夫だろうけど、原作以上に苦戦させたくないからね)
大きな歪みが出現し影響を及ぼし始めた以上、それを如何に抑えるかに注力するしかない。
「で、結局何だったんだ?」
「あー、そうだね。そんじゃ優希の見舞いがてら、みんなでお話しようか」
「お話…ふわっふわだな。まあいい、異論なし」
正体不明の相手に対する彼ら。しかし事情説明しなければならない人物が一人。
初日のピース集めは終了。優希、堅護と合流して、それぞれの成果と軽い情報共有をすると決まった。
————
「Ⅲに宿った力……。なるほど、イレギュラーはコレだったか。ねぇ影さん?」
薄暗い室内にて、トロンはⅢの報告を聞き終え一人でいる。そのはずなのだが——。
「彩葉陸人も十分なイレギュラーだけど、それよりは君の方が気になるなぁ僕は」
モゾリモゾリと影が動く。次第に人型に成り行くソレに、トロンは声をかけ続ける。
「……Ⅲについて来たんでしょ? 目的は?」
『口を慎め』
声が響いた。悍ましい威圧感が、空間を満たす。
『我は外より来る者。今ここにあるのは、力と意志を込めた使者』
男女の判別がつかない姿と声。ソレから放たれ、感じる力は、脳内に阿鼻叫喚の地獄絵図を想起させる。
トロンは息を呑んだ。
「これは失礼。改めて聞きましょう。貴方の目的は?」
冷や汗を滲ませながらも、相手を測るのは止めない。
『バイロン・アークライト…いや、今はトロンだったな。其方に我の力を与えよう』
己の過去を知る。外からの使者に、警戒心が高まる。
「ありがたい申し出だね。でも、目的が見えない。そもそも外ってどこだい?」
『我の力はまだ不完全。この世界には力の一部を送り込む事しかできぬ』
(外っていうのは、この世界の外側か)
『楔は打った。記憶に刻み、影として存在を書き込んだ。残るは、力を蓄え、完全なる顕現の時に備える事』
淡々と語る。その姿は、どこか操り人形のようにも思える。
『トロン。我は其方に力を、怒りを与えよう。この手を取り、我が力となる心の闇、負の感情を集めるのだ。それは、我ら二人の更なる力となる』
怒り。それはトロンの持つ究極のナンバーズを操るのに、必須となるエネルギー。
これまでも、数々の手を用いて怒りを生み出し、この先のための算段も立てている。だがそれが無くとも、目の前の存在が与えてくれると言うのだ。
(求めるものはお互い似通っていると……メリットだけなら、十分あるけど……)
「それはエネルギーの前借りって話かな?」
『否。其方はこれまで通り動けば良い……信ずるに足らぬは理解している。だが、我らにそのようなものは必要あるまい?』
「お互い利用し合おうって事ね……」
トロンに有利な取り引き。当然このまま、はいわかりました。とはならない。
「いくつか質問するよ?」
『よかろう』
「貴方はこの世界に来て何をしたいの?」
『我はただ力を蓄えるのみ。我はただそこにあり、通り過ぎるだけの厄災。我が齎すは破滅と絶望。だが、案ずるな。手を取るならば、其方は…望むなら其方の家族も見逃そう』
力を授かり、自分はどうなるか。その質問を先取りされる。身の安全まで保証された。それも家族ごと……。
「世界を滅ぼすのが目的か……にしても都合が良いね。何故そこまでするのかな?」
ここまでされると、信頼関係を結べたとしても疑ってしまうだろう。
『言ったはずだ。我はただ通り過ぎるだけの厄災。自然現象と何ら変わらぬ。人の生など、我が糧でしかない』
「あー、どうでもいいんだ」
『我の本体は外にあり、我が身は不滅。故に其方にはどうすることもできぬ。そして……そうだな、こう言えば其方も受け入れ易いか——我にとって其方など、家畜の一匹に過ぎぬのだから』
ソレにとって世界は牧場。管理者として己がいれば、後は全てが自動で成り立つ。そして全てが滅ぶその日まで、提供された絶望を喰らう。
想像としてはこんなものだろうか。
(随分と物騒なのに目を付けられたね。まぁいいか)
「わかった、いいよ。その話受けよう。僕は復讐を成し遂げたい。貴方は力を蓄えたい……きっと貴方からは逃げられない。なら取れるのは受ける選択のみ。そうだろう?」
『身の程をよく理解している。好ましい……では、力を授けよう』
返答を貰ったその瞬間、空間内の威圧感は霧散し、影の形は崩れて変わる。力の塊。一枚のカードへと……。
それはトロンの手に触れ、その魂を宿す。
「〈No.18〉。これがⅢの言ってた偽物のナンバーズか……魂の一部が取られちゃった。でもこれって、死んでもこのカードさえあれば、魂は不滅って事だよね」
死んだ後すらソレの餌。もしくは別世界への尖兵か……。
神の如き存在を目の当たりにしたトロン。けれどもその口元は弧を描く。
「紋章とこの力、そしてもう一つ。フフッ、僕は復讐を成し遂げる。待っていろ——Dr.フェイカー……!」
影は揺れ、力は鼓動する。
歓喜と怒りを綯い交ぜにして、男は笑う。
——それは、影の主も同じだった。
「器は成長しつつある。力を手にした者達よ、祝福を受けし魂達よ——我が完全なる顕現の為、戦い続けよ」
朽ち果てた大地にあるのは、光なき力の塊。
世界に降りる、その日を待つ……。