遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』 作:ふわ×フワ
やったね遊八君、友達ができるよ。
今更ながらサブタイ考えるのすごく苦手で、いつもずうっと悩んでる。
取り戻したナンバーズを手に、倒れている三人を見る。
「どうなるかと思ったけど、何とかなるもんだな」
不安、恐怖が無かったとは到底言えない。けれどナンバーズの力も借りて彼は今、前世からのトラウマに罅を入れたのだ。
「ぐっ、俺は何を……」
「あっ、目が覚めたんだね」
陸人と、続いて二人も起きる。
「体、ちょっと痛い」
「何だったんだ今の……」
ナンバーズの影響か、ダメージがARでなく現実のものとして発生している。この事実を遊八は再確認する。が、今はそれよりも——。
「デュエルは僕が勝ったよ陸人君。このカードは返して貰うし、僕とそこの彼が君に払う友達料はこれで無しだ」
デュエルに勝利したと言う結果が、陸人と対等に向き合う勇気を与えてくれている。
「……ああ、どうにも記憶がハッキリしないが、約束は約束だ。例え衝動的、感情的に発したものであってもそれを違えるつもりは無い」
意外にも淡白な反応。だが、その言葉に嘘は無いとその場の全員が理解できる。
「随分とあっさり受け入れるんだね」
「俺はただ誰よりも上で在りたいだけだ。その為にお前らにしてきた事は自分でも理解してるさ。それが褒められたもんじゃないこともな」
「陸人君……」
ナンバーズに取り憑かれたからだろうか、心の内を隠さず語りだす。
「だが、それが約束を守らない理由にはならないだろ?」
問われて、少し彼について思い起こしてみる。
(そういえば陸人君、これまで約束を破ったところ一度も見てないや。こっちのお願いも全部聞いてくれたし……もしかして元々は、もっと真っ直ぐで誠実な人だったのかも?)
デュエルの前、僅かに感じ取った焦りの感情は、彼がこうなった原因に関係しているのかもしれない。
「そうだね。どんな人だろうと約束は守るべきだと思う…それに、正直であって欲しいかな」
「…そうさ。だから負けた以上みっともなく抵抗するなんてことはしない。そして……」
少しの逡巡から、意を決してその言葉を紡ぐ。
「築根遊八、お前は俺より上だ。認める。だからもう見下しも奪いもしない、これまでの行いを許せとも言わない。煮るなり焼くなり好きにしろ」
俯いていた顔を上げ、目を逸らす事なく遊八を見つめ言い切った。
流れる沈黙。陸人の言葉を聴いて、遊八は目を閉じた。その言葉を何度も反芻し、自分の言葉を引き摺り出す。そして——。
「違う。違うよ」
「……」
「君とは対等だ。さっきのデュエルでようやく対等になれたんだ」
ゆっくりと目を開き、真っ直ぐ陸人を見据える姿は、今までと別人に思えた。まるで子どもが急に大人になったような、それも少し違うような……。
「だが結果はお前の勝ち。なら——」
「だからだよ。君に勝ったから対等に話せるようになった…実を言うとね、怖かったんだよ。ここに来るまで」
今度は遊八が語る番。
「ずっと人と関わるのが苦手だったからさ、君には本当に感謝してたんだ。例えどんな裏があったとしてもね」
「お前……」
表情、声音。彼は本気で感謝しているのが嫌でも伝わる。
「ずっと怖くてさ…でも、そんなのもう嫌だったんだ。変わりたかったんだ。そんな時に手に入れたのがこいつだった」
ナンバーズを見せる。
「このカードが…いや、俺のデッキ全部が力を貸してくれる。だから君に立ち向かえた。結局、一人じゃまだまだってね。ナンバーズの力は君も確かに感じたでしょ?」
頷く陸人。その表情はどこか素っ頓狂で普通の少年のものだった。
「てな訳で別に俺は君を超えちゃいないし、そもそもそんなのどうでもいい」
キッパリと言い捨てる。これにはその場の全員が素っ頓狂な顔をする。
「は? いや、じゃあさっきまでのは何だったんだよ」
流れを断ち切る一言につい突っ込みを入れる陸人。
「君が上下関係にこだわるから。とにかくどっちが上とか無い、対等対等」
投げやりな遊八。その場に屈み、座り込んだままの陸人の肩をポンポンと叩く。ちょっと距離が近い。
「急に気安くなるじゃねえか、距離感バグってんぞお前」
「あれ、駄目だった? 友達なら別に良いかと」
友達。この一言に、陸人は何度目かの間の抜けた表情になる。
「いつ友達になったんだ」
「え゛、ショック。表向きとは言えずっと友達だったんじゃ——」
「お前それは流石におかしいだろ! 友達ごっこは本物の友達じゃ無いだろうがよぉ!」
「あ、そっかぁ。確かに」
マイペースな遊八に頭を抱える陸人。
「何なんだこれは……」
呆れ果てる凌牙。
(ナンバーズを複数操るから何者かと思えば、飛んだ間抜けだったな。どっかの馬鹿を思い出すぜ)
そう思いつつも、ナンバーズの事があるのでこの場に留まるのだった。
「それじゃあ今からは本物の友達だ。これで良いでしょ」
真っ直ぐな微笑みで、陸人へ手を差し出す遊八。
「正気か?」
「正気だよ。俺と君は対等で、君は煮るなり焼くなり好きにすれば良いと言った。何もおかしなことは無い」
自分の言葉を逆手に取られた陸人は溜め息を吐いて、遊八の手を取った。
「わかった。俺は自分の言葉に嘘はつかないからな。それに…今までのお前よりかは今のが幾分かマシだ」
これにて二人の和解が成った。すると——。
「よかったじゃんよぉ、陸人君よぉ!」
ヴェルズ使いの取り巻きが陸人を小突いて揶揄う。思えばデュエル中も、他の取り巻きと違って対等にやり取りをしていた。ならば恐らく友達なのだろう。
「何がだ」
「おまえちょっと前からずうっとピリピリしててさぁ、オレ以外に普通の友達いなかったろ。なっ! 孤高のガキ大将!」
「馬鹿にしてんだろお前! この!」
「あー! い、いふぁい〜」
頬をつねる陸人。痛がりはするが、彼に新しい友達が出来た喜びが勝るのか笑顔が崩れない友人。
「あーいいね。俺もあんな風に戯れ合える友達が欲しかったんだよ」
しれっと凌牙の横に立ち羨ましそうに二人を眺める遊八。
「はっ、俺はごめんだぜ」
我関せずの凌牙。急に現れた遊八に実は少し驚いた。
「先輩って絶対めんどくさいですよね」
「喧嘩売ってんのか」
「正直に思ったことを言ったまでです」
「テメェッ!」
ついに凌牙がキレる。となったところで——。
「あっあの!」
「ん?」「あ?」
「ヒッ」
気弱な少年が声を掛けて、凌牙の圧に怯んだ。
「先輩。怖がられてますよ」
「やっぱ喧嘩売ってんだろ」
「後で買ってあげますから今は待って下さい」
自然な流れで凌牙を煽る遊八。本人にそんなつもりはない……半分くらい。
「売ってんのはッ……チッ、後で覚悟してろ」
面倒になったのか引き下がる。
「それで、どうしたんだい?」
少年に向き直る遊八。少年は意を決して話し始める。
「えっと、助けてくれてありがとうございます。あなたがいなかったらきっとボクは——」
「そんなつもりは無いよ」
またしてもキッパリ切り捨てる。
「え?」
「あーいや、自分の事で手一杯だったからさ。君の事は正直ついでぐらいにしか考えてなくて…あはは」
言葉が足りない事に気づいた遊八は言葉を足す。それでもあんまりな物言いな気はしないでもない。
「い、いやそれでも! ありがとうございます!」
この少年、気弱に見えて以外と心が強いのかもしれない。
「そ、そっか……あ、そうだ! はい」
遊八は少年にも手を差し出す。
「えっと?」
「君とも友達になろうと思って、あと敬語はいらないよ。同い年でしょ?」
「あ、はい…あ、いや、うん」
僅かな戸惑う少年。けれど敬語は無くした。
「じゃあ、ん」
再度握手を要求。
「えっと、うん。よろしく」
少年はその手を取った。
「やった。ようやく友達が出来たっ!」
反対の手でガッツポーズ。
「お、おめでとう」
「本当、馬鹿馬鹿しい」
押され気味な少年と、呆れ顔の凌牙だった。
「あ、そうだ遊八くん。受け取って欲しい物があるんだけど——」
…………
「話は済んだか?」
頃合いを見て凌牙が遊八へと話しかける。
「まだいたんですね凌牙先輩」
純粋な疑問である。
「……俺もお前に話があるからな。ちょっと面貸せ」
凌牙、ここはグッと堪えた。
「おー凄く不良みたい。良いですよ。俺もあなたと話したかったので」
快く受ける。その様子に周りの意見はおおよそ一致した。
「能天気かよ」
ジト目でボソッと陸人が溢す。
「はぁ、気の抜ける奴だぜ。まあいい、ついて来い」
そう言って凌牙は歩き出す。
「あっはい。そうだちょっと寄り道いいですか? デッキ弄りたい。流石にやりくりターボは常用できない」
遊八もそれについて行く。
「構わねえ。はなっからデュエルするつもりだからな」
「……あれ、大丈夫かな」
遠ざかる二人を見て、ふと一人が呟いた。
「無自覚に煽ってたしな。やっぱボコされんじゃね?」
「ご愁傷様だな」
「流石に今回はアイツのために祈るぜ」
「遊八君……」
「案外何とかすんじゃねぇの? それはそれとして祈るが」
皆口々に言うが割と心配されている。それだけシャークの名はまだ、恐れられていた。
学校を後にした遊八と凌牙は今揃って歩いている。
「しっかし何でこれくれたんでしょう。どうにも理由に納得行かなくて……」
遊八の手にあるのは《覚醒の勇士 ガガギゴ》少年から渡されたカードだ。
「知るかよ。きっと友情のカードってやつなんだろ、貰えるなら貰っとけよ」
「友情。なるほど、なら貰っときましょう。にしても先輩に友情への理解なんてあるんですね」
まだ腑に落ちない様子だが、とりあえず受け入れたようだ。それはそれとして余計な一言も足す。
「やっぱ今ここで相手してやろうか」
イラつく凌牙、当然の反応である。
「そんなつもりじゃ…すいません。それと、人目のつくところでナンバーズは使いたくないです。何があるかわかりませんから」
「はぁ、調子狂うぜ…まあいい。俺はテメェを見極める為にデュエルを申し込んだんだ」
「ふふ、やーまさかあのシャークとデュエル出来るなんて……昔の僕に言っても信じて貰えないだろうなぁ」
コロコロと表情が変わる遊八。しかし彼にとってこれは特別な時間なのだ。テンションが上がるのも仕方ないだろう。
(遂にゼアルの登場人物とのデュエル……! しかも相手はあのシャークと来た。これはもう頑張るしかない。全力で勝ちに行く!)
(何でコイツこんなテンション高えんだ。本当にあのデュエル馬鹿を見てる気分だ)
そしてしばらく経ち、人気の無い開けた場所へ着くと互いに距離を取り、向き合う。
「覚悟はいいか」
「ええ、手加減はいりませんよ。全力でお願いします」
「そんなつもりはさらさら無え」
「そりゃ良かった」
遊八の表情も引き締まり、睨み合う。そして——。
「「デュエルディスク、セット!」」
「Dゲイザー、セット」
「デュエルターゲット、ロックオン!」
準備は整った。遊八の深呼吸を挟み、開始の合図を互いに叫ぶ。
「「デュエル!!」」
激闘が今、始まる。
シャークさんか? これほんまにシャークさんか? この時期もっとピリついてなかったか? でも最初期よりちょっとは丸くなってるはずよな、これでええか。
この小説は、エミュ精度低めでお送りしています。