少年漫画のラスボスになったので異世界堪能します   作:Revak

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「ここが宿場町か」

 

 予定通りの日数をかけて商隊は宿場町に辿り着いた。

 時刻は既に夕方であり日が沈みかけている。

 

「よし。飯を食うぞ」

 

 ヴァルザールがそう言った。

 

「気持ちはわかるが……俺たちは護衛だぞ。勝手に動いたら駄目だ」

 

 肉体的疲労とは無縁なので疲れてはいないが精神的な気疲れはする。

 ヴァルザールは疲労を無効化できる種族ではないが元から膨大なスタミナを持つので実質無限みたいなものだ。回復速度も馬鹿速い。

 そのため二人とも旅の疲れはないが保存食ばかりも飽きてきたのでまともな飯が食いたいという欲求があった。

 といって旅の途中もそこそこの飯は食っていた。これは保存の袋(キープバッグ)という魔法道具(マジックアイテム)のおかげだ。

 <保存>(キープ)の魔法は食物を十年単位で保存できる。これがあれば旅でも保存食だけの貧しい食事をしなくて済むのだ。

 

「ああ、いいですよ。我々も泊るのでツルギさんたちも好きなところに泊ってくださいね」

「あ、そうですか……わかりました」

「それと明日の朝には出ますがヴァルザールさんの冒険者登録をする時間ぐらいはあるのでしてきた方がいいかと」

「わかりました。ありがとうございます」

 

 そしてツルギは商隊と離れ適当な宿を探す。

 

「いらっしゃい。暖かい飲み物と暖かい食べ物があるよ」

 

 適当に入った宿はそこそのランクの宿だ。一拍百セラの宿である。

 酒場も当然のように併設されている。

 ツルギとヴァルザールは酒場に行き適当な椅子に座ってメニューを見る。

 

「何頼む?」

「肉」

「シンプルだな……俺は魚食うか」

 

 一応持ってきた食材が念のために保存食の干し肉ばかりだったので魚が食いたいとツルギは魚を頼んだ。

 

「いただきます」

 

 ツルギは手を合わせて運ばれた料理を食べる。

 魚の塩焼きだ。何の魚かツルギは知らないがこの魚はブルーウォシュという青い魚である。

 淡水魚であるため刺身にはできないが塩焼きにするだけでもうまい魚である。

 

 といっても皮を剥いで焼いた状態なので青くもなんともないが。

 それにライスと鶏がらスープを頼んだ。合計八十セラした。

 

 ヴァルザールは肉だけ。五十セラである。

 

 ヴァルザールは竜だというのにちゃんとカトラリーを使って食べる。

 それが気になったツルギは問いかける。

 

「なぁ、ドラゴンなのに被支配者階層の人間のカトラリーが使えるのはなんでだ?」

「知らんのか? 太古の時代、世界の支配者は竜だった。竜が支配し、文明を与えたのだ。カトラリーも竜が与えたものだぞ」

「そうなんだ……ドラゴンって偉大なんだな」

「そうだぞ」

 

 ヴァルザールはどこか誇らしげに胸を張った。

 たゆんと揺れてほかの男性客がその胸に注視した。

 それを見た看板娘は己の小さい胸を見て呪詛を吐いたのだった。

 

 食事を終え料金を払うと宿の店主に二部屋借りたいとツルギは告げた。

 

「なぜ二部屋だ? 二人部屋でよかろう。その方が安いぞ」

「いやちょっと……そこはちょっとのっぴきならない事情があるというか……」

 

 体は女でも性自認がまだ男のツルギは女の人と同じ部屋とか緊張しすぎて無理、というのがある。そのために二人部屋を頼んだのだ。

 

「おい店主。二人部屋でいいぞ」

「ちょ」

「あいよ。二人部屋で百五十セラだ」

「ぐぬぬ……」

 

 ツルギは観念して二人部屋を借りた。

 二階に上がり奥の部屋に入る。

 

 そこそこのベッドが二つある。

 

「ヴァルザール、寝間着はどうする?」

「んなもん裸でいいだろ」

 

 ヴァルザールは服をいそいそと脱ぎ始める。

 

「わ、恥じらいを持てよ!」

「同じ女だろう。気にする必要はなかろう」

「そ、それはそうかもしれないけど……」

 

 ツルギはなんだかなぁ、という気持ちになる。

 肉体は女でもまだ男だと思い込んでいるツルギは何とも言えない気分となる。

 剣も服を脱いでパジャマに着替える。猫が描かれたパジャマだ。

 

 そうして就寝した。

 

 

 

 ■

 

「ここか」

 

 翌朝の八時。ツルギとヴァルザールは冒険者ギルドに来ていた。

 他の街のギルドと違いギルドは小さい。

 中にはいる。中の作りは左程変わらない。

 だが二階がなく一階だけしかない。

 

 二人は受付に進む。

 受付にはやる気のなさそうな中年の男がいた。

 

「いらっしゃい。何の用で?」

「えっと。この人の登録をしに来ました」

「わかった。千セラだ」

「はい」

 

 ツルギは財布を取り出し千セラ紙幣を出し支払う。

 

「んじゃこの書類に名前とか書いてくれ」

「わかった」

 

 ヴァルザールがきちんと書類に書いていく。

 種族竜。職業魔力系呪文詠唱者(スペル・キャスター)

 

「かけたぞ」

「はいどうも……えー……うん……ちょっとまて」

 

 受付の男は信じられないものを見た眼をする。

 何度か書類とヴァルザールの間で視線が行き来する。

 

「え、あんた、ドラゴン、なのか?」

「そうだが?」

「ドラゴニュートじゃなくて?」

 

 ドラゴニュートとは竜の力を持つ人の事だ。

 ヴァルザールのように竜の翼と尻尾と角が生えていることもあれば外見ほぼ人で竜への変身能力を持っている者などが居る。

 

「ちょ、ちょっと待っててくれ」

 

 受付の男はそういうと奥へ引っ込んでいった。

 

「なんだ、何か問題か?」

「さぁ……」

 

 ヴァルザールは何かあったかと頭をひねらせるがツルギもよくわかっていない。

 

 少し待つと奥から剥げた中年のおっさんがやってきた。腹が出ている。

 男は手のひらに大きな水晶を持っている。

 

「お、お待たせしました……そちらの方、ヴァルザールさんは竜でお間違いないですか?」

「そうだが、それが何か問題か?」

 

 ヴァルザールがそう答えると水晶が青く光った。

 この水晶は魔法道具(マジックアイテム)であり込められた効果は<嘘看破>(センスライ)だ。

 魔法名の通り相手の嘘を見破る魔法だ。といっても相手が嘘を真実だと思い込む狂人の場合には使えない魔法だったりするし、情報系の魔法になるため情報系魔法や特殊能力(スキル)、探知系の魔法に対して耐性を持っていたりする場合も無効化される。

 ヴァルザールは高い魔法耐性を持つが情報系魔法に対して耐性を持っている訳ではないので通じた。

 青い光は相手が嘘ではないという証明だ。

 

「りゅ、竜ですか……でしたらこちらをどうぞ」

 

 ギルドマスターらしき男は懐から白金級のプレートを取り出した。

 

「え、いきなり白金級ですか?」

「はい。竜という偉大なる方が冒険者として活躍してくださるのならこちらも忖度するという物。どうぞ活躍を祈っております」

「ふん。力を見せつけてやる」

 

 ヴァルザールはふふんと大きい胸を張った。

 

 

 

 ■

 

「来たか。じゃあ早速出発しようか」

 

 宿場町の門に甘楽団のキャラバンがあった。

 全員心なしか顔のつやがいい。きちんと眠れたのと、夜で発散できたのだろう。

 

「はい、行きましょう」

 

 そうして一行はノートの街に向かって出発した。

 

 

 

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