少年漫画のラスボスになったので異世界堪能します   作:Revak

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「なんか、京都みたいな街だな」

 

 ツルギは昼食を終えた後、ヴァルザールを連れて街の散策に来ていた。

 この街の景観は京都によく似ている。

 色からして違うのだ。薄茶色い家で統一されている。

 もちろん冒険者ギルドや市役所などは違うが、店などはそういった作りが多い。

 

 ツルギは冷やしキュウリをぼりぼりとむさぼる。

 長椅子に座っての粗食である。隣ではヴァルザールが二本目に突入していた。

 

「二本も食うと腹冷やさないか?」

「竜をなめるな。この程度で冷やさんわ」

 

 ヴァルザールはそういい二本目を平らげた。

 

「で、この後どうする?」

「街を見て回ろう」

 

 そういうと椅子から立ち上がり二人は散策に出た。

 

 京都に近い街並みだが京都とは違い平坦な地面が続く。

 この大陸自体が元が平坦で起伏が少ないのに加えここは山からも遠いからだ。結果平坦な平原となる。

 

 街並みを二人はきょろきょろと面白そうに見ながら歩く。

 

「お、観光案内版だ」

 

 ツルギは歩いていると観光案内板を見つける。

 何か面白い物はないか、と熱心に見てみる。

 

 面白いと思ったのはダンジョンまでの魔車と大学、闘技場だ。

 

「うーん、どれに行く?」

「闘技場だ!」

「わかった、行ってみようか」

 

 二人は街を巡るバスを探す。

 

 この時代、すでにバスは実用化されている。

 といっても電気やガソリンで動く車ではない。魔法道具(マジックアイテム)だ。

 呪文詠唱者(スペル・キャスター)の魔力を原動力とする車であり実質無限のエネルギーで動く車だ。

 といっても使用に結構な魔力を消費するため最低でも第三環魔法が使える呪文詠唱者(スペル・キャスター)が使用するのが望ましい。

 

 バス停を見つけた二人は時刻表を確認する。

 

「えっと、今が十二時半だから……あ、来た」

 

 丁度都合よくそこにバスが来た。

 

 バスの作りは現代日本のそれと左程変わりはない。

 これはバスを広めた二百年前に来た賢王トイラが日本から来た存在だからだ。

 

 バスに乗って適当な席に座る。

 十分も走ればバスは闘技場に着く。

 

 誰かがボタンを押したため押すことはなく、二人もほかの乗客に紛れて降りる。

 

「でっか」

 

 降りたツルギは目の前の建物の大きさに面食らった。

 

 非常に大きい。敷地面積で言えば東京ドームに匹敵する広さだろう。

 そして闘技場の外からも聞こえてくる怒声と歓声が血の臭いを感じさせる。

 白い石づくりの建物だ。形で言えばローマのコロッセオに近い。

 

「で、どうする? 観戦するか?」

「いや、参戦するぞ!」

 

 ヴァルザールが意気揚々と入口の受付の男に話しかけに行った。

 

「おいそこの定命! 我を闘技場に参加させろ!」

 

 突然の定命呼ばわりに受付の男は驚くも冷静に対応をする。

 

「参戦ですね。でしたら参加料千セラかかります。また闘技場内では命の保証は一切ありません。魔法道具(マジックアイテム)の使用や装備も許可されますが消失したり破壊されても保証はありません。それでも参戦しますか?」

「する!」

 

 ヴァルザールは財布から千セラ取り出し律義に支払った。

 

「ではおそらく三試合後に試合開始となります。お連れの方はどうしますか?」

「あ、俺は観戦で」

「では入場料二百セラになります」

「安いな……どうぞ」

 

 ツルギは財布から百セラ硬貨を二つ取り出し支払った。

 

「んじゃなー」

「おう、我の勝利を刮目するがよい!」

 

 わーはっはっは! と笑いながらヴァルザールは闘技場の中に進んでいった。

 

 

 

 

 ■

 

 

「おお、すごい熱気」

 

 ツルギは闘技場の適当な席に座った。

 結果二メートルもある異形種の女なので隣の席の人はそそくさと立って去っていった。無念。

 まぁいいかと買ったポップコーン片手に試合を見る。

 

 闘技場内では二人の戦士が戦っている。

 片方はウォーハンマー、もう片方は両手剣で戦っている。

 打撃対斬撃だ。実力は拮抗しているのか中々見ごたえがある。

 

(うーん。俺に戦闘経験やスキルがないから、こういった場所で鍛えるのもありかな)

 

 いやけど人を傷つけたくないしな……という思いも発生する。

 

「隣、よろしいか?」

 

 そう声をかけてきたのは水色の髪の女、風守翼だ。

 

「どうぞ」

 

 ツルギは若干緊張しながら答えた。

 何故彼女が自分に会いに来たのだろうか、と疑問に感じる。

 

「貴女は何故、黄泉綾回廊(よみあやかいろう)を攻略しようと思ったのですか?」

 

 翼は前を向いたまま、闘技場に目線を向けたままツルギに問いかけた。

 

「……理由、ですか」

 

 理由を話すのは少し恥ずかしい。

 何せ戦いたくないという理由だけで領主になるのもいいかもなぁなんていう馬鹿な発想が元だからだ。

 それを他人に明かすのは恥ずかしいどころではない。

 

「えっと、ちょっと諸事情あって領主になってみたいな、と思って……それでこの国ではダンジョンを攻略すればなれると聞いたので……」

「他のダンジョンに挑む気はなかったのですか? 例えば、マキナ・アビスとか」

「アトラシアさんから聞いたのが黄泉綾回廊(よみあやかいろう)だったので、他のダンジョンに挑もうって気はなかったですね……」

「……そう」

 

 それっきり会話が止まる。

 沈黙が流れる。

 ツルギは沈黙を苦としないタイプの人間──今は妖怪──だが初対面の相手と沈黙のままというのは少々気まずい。

 

「あの、よく見に来るんですか?」

 

 ツルギは話題のきっかけになればと問いかけた。

 

「いえ。私はこういうのに興味はないわ」

「そ、そうですか……」

 

 ツルギは元ニートなのでコミュ障に近い。店員などとなら問題なく話せるし同僚とも話せるが初対面の人間と親しく話せるかと言われたらノーだ。

 

『さぁ続いては飛び入り参戦者だ! まさかの種族はドラゴン! 女呪文詠唱者(スペル・キャスター)ヴァルザール選手の入場だ!』

 

 魔法道具(マジックアイテム)の拡声器によって実況の声が拡散される。

 

「あ、次仲間のヴァルザールが出るみたいですね。一緒に見ましょう」

「はい」

 

 気まずさを感じながらツルギは観戦に移る。

 

 地上には自信満々なヴァルザールと刀を持った黒い髪の男がいた。

 男の方は胸に冒険者プレートを付けておりつけているのは白金。最低でもレベル三十の強者だ。

 

 試合が始まる。

 

<炎花葬>(フレイムフラワー・フューネラル)

 

 ヴァルザールが魔法を唱える。

 ヴァルザールは炎系魔法に特化したエレメンタリストという職業についている。

 エレメンタリストとは様々な属性に特化した者たちの事だ。

 この世界ではクラスに着くとその分職業補正が入るが、エレメンタリストは他の魔法の威力が下がるなどのデメリットを負う分その系統の魔法は強化される。

 

 ヴァルザールが上に手を掲げ、ヴァルザールの頭上に巨大な花が生成される。

 

 十メートルほどの大きさを持つ炎で出来たヒガンバナだ。

 

「え、ちょ」

 

 対戦相手の男は見たことのない規模の魔法を前に冷や汗を流し一歩下がった。

 

「死ぬなよ」

 

 ヴァルザールがニヤリと笑い魔法を放った。

 

「うぉぉぉぉ! <肉体向上><肉体超向上><根性><鉄壁守>!」

 

 男は攻撃ではなく防御に全振りするため特殊能力(スキル)を発動する。

 特殊能力(スキル)は自身のレベル割る五分発動できる。男のレベルなら六つまで発動できる。

 その六つすべての枠を自己強化と防御上昇に割り振った。

 

 男の体が炎に包まれる。

 

 数秒後、炎は幻覚だったかのように消える。

 だが結果は残る。男は全身大やけどの怪我を負った。

 死んでも自己責任のため問題ないが、ぎりぎり生きてはいるだろう。

 

 男がずさっと、倒れた。

 

「勝者、ヴァルザール選手!」

 

 観客席から歓声が上がった。

 

「……強いのね、あなたの仲間」

 

 翼がそう辛そうな顔で言った。

 

「……はい、強いです。お……私も、強いですよ」

「……そう」

「じゃ、じゃあこれで」

 

 女性とろくに話したこともない元ニートは逃げ出した。

 

 

 

 

 ■

 

 一日が過ぎた。

 結局ヴァルザールが一日闘技場で戦い、ツルギもヴァルザールが何かやらかさないかと心配になって常に見ていたため他の場所は巡らなかった。

 晩飯も領主の屋敷で頂き一晩過ごした。

 そして翌日になってツルギとヴァルザールは冒険者ギルドに来ていた。

 ギルドの作りは他の街とさして変わらない。

 

 中に入るとツルギとヴァルザールは注目を受ける。

 二人とも美人というのもあるが、視線の半分はヴァルザールが闘技場で暴れたからだ。

 連戦連勝の脅威の三十勝を果たした結果ヴァルザールは闘技場から出禁を食らった。

 

 そんな有名な存在が冒険者ギルドに来たとなれば戦い好きな冒険者たちも注目するのである。

 しかも美人となれば視線を集めようものだ。

 

 ツルギはどこかいたたまれなさを感じながら受付に進んだ。

 

「すみません、黄泉綾回廊(よみあやかいろう)っていうダンジョンに挑みたいんですけどここからどう行けばいいですか?」

「ダンジョンですね。でしたら街の門にスレイプニル便が出ているのでそちらをご利用ください」

「わかりました、ありがとうございます」

 

 礼を言うと二人はギルドを出ていく。

 今日は軽い探索だけで済ませる予定で本格的な探索は明日からの予定だ。そのためダンジョン内の依頼を受ける気はない。

 

 街の門まではギルドからは近いので徒歩で向かう。

 

「えー黄泉綾回廊(よみあやかいろう)行きの馬車間もなく出発しまーす」

「乗りまーす!」

 

 行きそうだったので慌ててツルギとヴァルザールは乗り込む。

 正直走っていった方が速いが場所がわからないので初回は乗っていくのだ。

 

 魔車は大きい。横に非常に大きく車輪が六つもある。

 引いているのは当然馬ではなくスレイプニルという異形種のモンスターだ。

 馬の体に八つの足が生えている馬である。八つもあって混乱しないかと思えば混乱しない。

 馬の八倍以上の馬力を持ち八分の一の食事量で済み疲労しないという特性を持つ種族だ。

 だがその分高く一頭で一軒家ぐらいの値段がする。

 それが二頭もいるとは贅沢なことである。ヴァルザールは気づいたがツルギはスレイプニルの価値に気づいていない。

 

 馬車に乗り込むが大きさに反し人は少ない。四人しか乗っていなかった。

 

 適当に座ると馬車が「出発しまーす」と御者がいい動き出す。

 御者は元冒険者で鍛錬した者だ。レベルも十を超えている。

 

 魔車が進む。

 道は整備されておりコンクリートで整備されているため順調に進む。

 街周辺のモンスターは狩られ尽くしておりいないし、万が一のためのモンスター除けの魔法が込められた魔法道具(マジックアイテム)が地面に埋まっているためモンスターはいない。

 このアイテムの名は異形除けの魔光(ヴァリアントアボイド・マジックルーメン)といいレベル十以下の異形種や亜人種が近寄らなくなるアイテムだ。

 青く光る鉱石のようなアイテムで所々地面に埋められている。

 これはこの国の全土にあるわけではなくノクスフォードと黄泉綾回廊(よみあやかいろう)の間までに置かれている。

 魔法道具(マジックアイテム)なのですべての道路に設置するとなると膨大な金がかかるのである。

 

 ツルギは景色を眺めながら移動を楽しむ。

 こういった平原は日本では見ることのない場所だ。北海道にでも行けば見れるがツルギは北海道出身ではない。

 平坦な地面がどこまでも続く。山は地平線の向こうなので見えたりはしない。

 

 のどかな平原だ……とのんびり眺め続ける。

 ヴァルザールは暇なので二度寝し始めた。

 

 ■

 

 魔車が出発して二十分。目的地にたどり着いた。

 

「ついたぞ、起きろ」

 

 ツルギはヴァルザールの肩をゆすって起こした。

 

「む、もう着いたか」

 

 起きた瞬間からヴァルザールの脳は完全に覚醒する。

 竜の脳は優秀なのである。

 魔車を降りて二人はダンジョンを目にする。

 

「……なんかざ、日本の城って感じだな」

 

 ダンジョンは多種多様だ。

 神殿のような形から洞窟の形まで色々とある。

 このダンジョン、黄泉綾回廊(よみあやかいろう)は日本の和の城其の物だ。

 全五階建ての名護屋城や大阪城の形をした城である。

 

 同じく魔車から降りていった者たちが黄泉綾回廊(よみあやかいろう)に入っていく。

 

「じゃあ俺たちは少し外れるか」

「おう」

 

 ダンジョンへの道の横にそれる。

 

「じゃあ、やってくぞ……できれば手加減してくれよな」

「手加減したら意味ないだろう」

 

 ツルギは万剣胎動の力で武器を作り出す。ウォーハンマーだ。

 それをヴァルザールが両手でがっしりと持つ。

 これは先日話しておいたダンジョン突入前にあらゆる攻撃に対し耐性を得ておこうという物だ。

 

「じゃあ行くぞー」

「こ、こい!」

 

 そうしてツルギの耐性会得が始まった。

 

 

 二十分後。そこにはあらゆる攻撃に対し耐性を会得しつつあるツルギが居た。

 

 斬撃、打撃、刺突、炎、風、冷気、雷、毒、空間斬、土、闇、光、その他多種多様な属性。

 それらに対し耐性を会得したのだ。

 これで最大九十九パーセントの軽減になる。

 更にはツルギは面白いダメージ計算式をしている。

 ダメージ÷九十九-ミハカノシノツルギの装甲=が受けるダメージになる。

 そのため大抵の攻撃は九十九パーセント軽減され一とか二とか大きくても十程度になりそこから素のミハカノシノツルギの防御力で軽減されるためダメージを受けないのだ。

 あらゆる攻撃に対し装甲を持っているためまずダメージを受けなくなった。

 

 じゃあ準備も出来たしダンジョンに行こうか、とツルギが言おうとしたとき歩いてくる者がいた。

 

「あれ、翼さん?」

 

 そこにいたのは風守家次期当主の翼だ。なぜか腰に刀を下げている。

 鍔からチェーンがついておりチェーンの先には青い水晶がついている。

 なんでいるんだ、と二人が頭にクエスチョンマークを付ける。

 

「ツルギ殿、少しいいか?」

 

 だが翼は気にもしておらずツルギに問いかける。

 

「いいですが……何ですか?」

「私と模擬戦をしてほしい」

 

 翼は腰から刀を抜いた。

 

「え、いやです」

 

 ツルギは思わず即答した。

 

 モンスターならまだしも人と戦うのは嫌である。人を傷つけたくないのだ。

 単に力加減を街がせて殺しそうだし、そうでなくとも人を殴ったり斬ったりした感覚など味わいたくないのだ。

 

「……そこをどうか頼む」

 

 翼は軽く頭を下げた。

 

 流石に次期領主に頭を下げられると立場的にツルギは困る。

 

「わ、わかりました! やりますよ!」

「ありがとう……では。行くぞ」

 

 翼は刀を構える。ツルギも四つの手で構えた。

 

 動きたくないツルギが翼の動きを待つ形になった。

 

「……来ないというのなら、使わせて貰うぞ」

「? 何を──」

「魔装展開!」

 

 翼は刀を天に掲げた。

 瞬間、翼が青く光った。

 

「な、何事?!」

 

 瞬間ツルギは目つぶしに対し耐性を会得し始めた。

 

 光が収まった後、そこにいたのは薄い鎧を纏った翼だ。

 青い競泳水着にも似た形のレオタードの上から腕や足などを鎧で纏っている。

 右手には先と変わらぬ刀を持っている。

 

 この世界には魔装と呼ばれるタイプの魔法道具(マジックアイテム)がある。

 全身鎧を纏うタイプの魔法道具(マジックアイテム)であり、強力な分デメリットもある。

 魔装以外の魔法道具(マジックアイテム)の鎧を装備出来なかったりするのだ。ただ指輪やアクセサリーは装備出来る。

 翼が持っている魔装はかなり上の方で聖遺物級の魔装になる。

 

 この世界には魔法道具(マジックアイテム)にもランクがある。

 下から順に下級、中級、上級、秘宝級、聖遺物級、伝説級、神器だ。

 神器は特別なランクで人の手で作れるアイテムではなくダンジョンなどで入手するしかない。

 

 翼の魔装の名は天裂ノ剣(あまさきのつるぎ)。聖遺物級の強力な魔装である。

 

「いくぞ!」

 

 翼は宣言と共に突撃した。

 速い。素直にツルギはそう思った。

 この世界に来てから戦ってきたものの中でもヴァルザールに次ぐ速さだ。常人の目ならば認識できぬ速さである。

 それもそのはず。翼のレベルは三十五と非常に高い。白金級冒険者相応の強さを持つのだ。

 

 刀を持って斬りかかる。

 ツルギは上の右手で刀をパシッと掴み止めた。

 

 翼は苦悶の表情を浮かべ刀を動かそうとするが動かせない。ツルギの筋力値は高いのだ。

 取り返せないと悟った翼は刀から手を放し距離をとった。

 

 ツルギは興味なさそうに刀を捨てた。

 

 ばっと翼が手をかざした。瞬間刀がひとりでに動き翼の手に収まった。

 

(これがあるから簡単に手放したのか)

 

 なるほど、とツルギは納得する。

 これは魔装の力ではなく窃盗無効の指輪の力だ。この指輪があればあらゆるスリや窃盗能力を無効化出来る。

 何気窃盗は攻撃ではないのでツルギは耐性をえれなかったりする。といっても心臓を盗むとかの頓智気相手には耐性を会得し始めるが。

 

 翼は刀を虚空に向かって振るう。

 振りかざした後から刃が飛んで行く。飛ぶ斬撃だ。

 特殊能力(スキル)の<空裂斬>だ。この特殊能力(スキル)は飛ぶ斬撃を放つが飛ぶ斬撃の癖に射程距離が短いという欠点がある。その分威力は高い。

 だがツルギとそこまで距離が離れてないので使われたのだ。

 

 ツルギは飛ぶ斬撃に対し拳を振るうことで破壊する。まったくのノーダメージである。

 

 だが斬撃を破壊したツルギの視界から翼が消える。

 

 どこへ、と思い感知能力を広げると背後にいるのがわかった。

 だが襲い。翼はツルギの首に刀を向けていた。

 

 固い金属同士がぶつかった嫌な音が響いた。黒板を爪でひっかいたような音だ。

 

「ちっ!」

 

 翼は舌打ちをして再び距離をとる。

 

「逃げてばかりか? ──今度はこちらから行くぞ!」

 

 ツルギは四つの拳を構えて突撃した。

 万剣胎動の力は使わない。使うと殺してしまいそうだから。手加減して素手だけで戦うのだ。

 

 四つの拳のうち二つが刀と衝突する。

 普通なら拳が傷つくが既に九十九パーセントの斬撃耐性を持っているので拳には傷一つつかない。

 残る下の二つの手で殴打する。

 二発殴った。翼は上の手に気を取られ防御も回避も出来なかった。

 

「かはっ」

 

 肺から一気に空気が抜け、後ろに吹き飛んだ。

 

「あっやべ」

 

 少し力を入れすぎた、とツルギは反省した。

 吹っ飛んで行き、地面に数度転がった。

 

「まだ、だ……!」

 

 大丈夫かと駆け寄ろうかとツルギは思ったが気合で立ち上がった翼を見て無事そうだとほっとい一息ついた。

 

「<天剣>!」

 

 翼は魔装の特殊能力(スキル)を行使する。

 巨大な刀の刃だけが生成される。

 

 十メートルを超える刃が振り落とされる。

 

「ふん!」

 

 ツルギは振り落とされる刃を殴り壊した。

 ガラスが割れるような音ともに刃が真っ二つに割れ霧散する。

 

 ツルギはダッシュをする。初速から音速に近い速度をたたき出す。

 翼に接近しその腹を殴った。

 

 結果、翼は倒れ意識を失った。

 

「つ、疲れた……」

 

 殺していいモンスターと違い相手は人間だ。手加減をする戦いなど二度と御免だとツルギは思った。

 

 

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