少年漫画のラスボスになったので異世界堪能します   作:Revak

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第3話

 

 街の掃除というのは地味だが大切な仕事だ。

 賢王が齎した知識で街中に税金でゴミ箱が設置され回収員も税金から出されているとしてもポイ捨てする馬鹿は一定数いる。

 それだけでなく街中で魔法を使った馬鹿などが残したごみなども出てくる。

 そのために街中のゴミ掃除は必要な仕事である。

 

「……よし、ここはこれぐらいかな」

 

 ツルギは上の右手に箒を。下の右手にトングを持ち左手の上に袋、下の左手に塵取りを持ちながらつぶやいた。

 

 圧倒的肉体スペック、マッハで走ってマッハで殴れる怪物がする仕事ではないが命の危険は絶対にないため安心して仕事をしていた。

 戦うのはゲームだけで充分。異世界に来たとしても何故危険な行為をしなければならないとツルギは本心からそう思う。

 もちろん夢やロマンに溢れることは否定しない。だがそれはそれとして怖いものは怖い。

 

「ツルギちゃんありがとね~」

 

 そういうのは老人だ。歳も六十いっている、この世界では充分老人といえる人間だ。

 

「いえいえ、これが仕事ですから」

 

 ツルギは笑顔でそう返す。

 異形種が差別される世界でなくてよかった、と心から思う。

 そうでなければ人の来ない森に結界張って暮らすぐらいしかできなかっただろうから。孤独は嫌なのである。

 

 この後めちゃくちゃ街掃除した。

 

 

 ■

 

(え~と……ここか)

 

 夕方になって依頼を終えたツルギは街中をある宿屋に向かって歩いていた。

 ゴミ掃除の報酬は百セラだ。一拍素泊まりが十セラ、食事が一食二十セラなので順当に行けば三十セラは余る。

 だが三十セラでは服も買えないし剣も買えない。冒険者として暮らすなら堅実に貯めていく必要があるだろう。

 

「ここか」

 

 ついた先は木造の宿屋だ。

 二階建ての建物であり、少々ぼろい。

 

 ドアを開けて中に入る。

 

 中には多数の武装した者たち、冒険者が居る。

 木で出来た机と椅子が多数あり、カウンター席もある。

 

(うわ……)

 

 ツルギは妖王の体の優れた嗅覚によってこの場所の臭いを嗅ぎ取った。

 洗ってない男特有の嫌な臭いに何かの食べ物が腐った匂いがする。

 

 床を見れば木と木の間に食べ物のカスが入っており、窓の淵は埃でまみれている。ロクに掃除していない証拠だ。

 

(すげぇいや)

 

 だがギルドから紹介された最も安い宿はここだ。

 ここ以外にも泊まれる宿はあるにはあるがそれは普通に高い。身の丈に合わない生活は控えるべきだろう。

 

 少しおどおどしながら奥へと進みカウンターに立つ。

 

「すみません、一泊したいんですが……」

 

 じろりとツルギを見るのは禿げた男の店主だ。人間種である。

 

「宿だな。四人相部屋で一泊十セラだ。飯は肉入りのスープとパンで二十セラ、別売りだ」

「……一人部屋ってないですか?」

「うちにはないな。二人部屋なら四十セラだ」

 

 普通に今日の収入を超えてしまう。ツルギは微妙な顔をした。

 

「……相部屋でお願いします」

「わかった。飯はどうする?」

「ここで食べます……えっと……」

 

 ツルギは腰に下げたバックから財布を取り出し通貨を取り出し支払う。

 このバッグと財布もルシフェルからもらった一万セラで買ったものだ。併せて二千セラした。

 

「まいど。飯は持ってくから適当なところに座ってくれ」

「わかりました」

 

 ツルギがカウンターから離れようとすると足が出された。

 店主と同じように剥げている冒険者の男だ。胸から下げているのはツルギと同じ銅のプレートだ。

 

 ツルギは面倒だな、と思いつつ足を大きく上げることで避けようとする。

 だが相手がそれに合わせ足を動かすことで当ててきた。

 

(うわ……)

 

「おいおいいてぇじゃねぇか! こりゃ治療費いるなぁおい!」

 

 男は立ち上がりつつ文句を言う。

 

(うーん。この手のチンピラってどうしたらいいんだ……?)

 

 異世界物の定番だが実際に遭遇するとどう対処したものか困る。

 というか少し怖い。チンピラなんて目にするのは殆どないのだ。

 

「えっと、やめてください。警察……衛兵呼びますよ」

「あぁん?! 冒険者が衛兵怖がってどうするよ!」

 

 その怒声に嫌なものを感じる。こういった人間は苦手だ。

 

「やめてください……殺しますよ」

 

 少しだけ本気の殺意と妖力を解放する。

 

 ミシミシと空間がきしむ。

 木の机にひびが入り、コップが割れる。

 男は泡を吹いて倒れ、ほかの者たち──店主以外も同じように倒れた。

 

「あ、あれ」

 

 少し脅すつもりで妖力を解放しただけなのにこの事態になって混乱する。

 

(あ、妖力って普通の人間には害なんだっけ……異世界人にもそれが通じるのか……)

 

 斬炎(ざんえん)の陰陽師の世界では妖怪が使う妖力は普通の人間にとっては害になると説明がある。

 この世界の人間にも弱い人間相手にはそれが通じてしまうのだ。

 

「す、すみません……これどうしましょう」

 

 ツルギはどうしたものかと無事だった──それでも片膝ついている店主に話しかける。

 

「……これはこいつらの自業自得だ。放っておけ」

 

 店主は強がりながらそう返答した。

 

「わ、わかりました」

 

 言われるがままツルギは冒険者たちを放置し空いている席に座る。

 五分ほど待つとスープとパンが渡される。

 

「ほら、飯だ……警告しとくが、寝るときは気をつけろよ。その恰好じゃレイプされても文句は言えねぇぞ」

「わ、わかりました……」

 

 女になったのだから性被害を受ける可能性もあるとツルギは怯えながら思う。

 男とセックスするなど御免被る。いや多少は興味あるが。女の性的快感は男の何十倍もあると聞くし。

 

「いただきます」

 

 そう手を合わせてから食事を始める。

 

(……不味くはない、かな)

 

 食えなくはないが毎日これだと少し嫌になる程度の味だ。

 スープにパンを浸して食べる。

 途中気になってパンを自分の体の口に食わせてみた。

 どうやらこちらでも食事になるらしい。といっても元から飲食不要の体なのでどの口で食べても一緒かもしれないが。

 

 食事を終えると店主にお盆を返し部屋の鍵を貰って二階に上がっていく。

 与えられた部屋は一番奥の右手の部屋だ。

 部屋に入る。

 部屋はそこそこの広さで四方にベッドが置いてある。

 ベッドといっても木で出来たベッドに布団が置かれただけのもので質は悪い。

 

 入口右手前のベッド以外は使われているようでベッドの上に袋が置かれている。

 ツルギは空いているベッドに横たわる。

 

 異世界転移。妖王の肉体への変化。男から女へのTS。初めての飛行。

 一日で色々ありすぎた。なんで言葉が通じてるかとかなんで日本語が文字としてあるかなどの疑問もあるが今は疲れていた。

 

(あっ……結界張らないと……)

 

 疲れる頭、肉体的疲労とは無縁だが精神的疲労はまた別だ。

 つかれる頭で結界を軽く張り、眠りについた。

 

 

 

 ■

 

「おい、生きてるか?」

 

 ツルギが去った後の宿の一階で。店主はツルギに絡んだ男を足蹴りした。

 

「うっ……ここは……」

 

 男は頭を押さえながら立ち上がった。

 

 見ればほかの宿の客もよろめきながら立ち上がっており意識を取り戻している。

 

「とんでもない新人が来たな」

「あぁ……ただのビッチじゃないらしい……」

 

 冒険者のほとんどはツルギの格好からビッチ扱いする。あんな格好するのはビッチぐらいなのであまり間違ってないが。

 

 冒険者がこうして絡むのには理由がある。

 相手の実力と本気度を測るためだ。

 チンピラ相手にどう対処するのか。対処するとしてどう力を使うのかを判断するのだ。

 同業者として仲間に勧誘するのにふさわしいか値踏みしているのだ。

 その値踏みの結果は合格、冒険者としてやっていくのにふさわしい力があるだろう。

 

 ルシフェルの時と同じく急にランクを駆け上がりそうな新人が来たな、と冒険者たちは期待に胸を膨らませた。

 

 

 

 ■

 

 翌朝。六時ごろにツルギは起きた。

 他の冒険者たちも起きておりのそのそと動いている。

 ツルギも何かしようと思うがタオルすら持ってないので顔を洗おうにも洗えない。といっても不老の体は老廃物を出さないので顔は汚れてないが。

 しょうがないので結界を解いて部屋を出て一回の酒場に向かう。

 

「おはようございます」

 

 ツルギは何か調理している店主にそう挨拶をする。

 

「おうおはよう。飯はいるか?」

「お願いします」

「んじゃあ適当なところに座っとけ」

 

 言われるがままツルギはカウンター席に座る。

 少し待つと朝食の野菜のサンドウィッチが渡される。

 

「ありがとうございます」

 

 ツルギは財布を取り出し二十セラ出して支払う。

 毎度、と店主は受け取ると次の準備に移った。

 この宿に泊まる人間も多いため作る朝食の量も多いのだ。

 

 いただきます、と手を合わせて食事をする。

 

 食べながら今日の予定を考える。

 まずは今日は服を買おうと決める。

 ルシフェルからもらったお金にはまだ少し余裕がある。一着ぐらいはまともな服を買うべきだ。

 着ていたこの服は売るか異空間に収納すればいい。

 妖王ミハカノシノツルギが持つ能力は多岐にわたる。そのため異空間にものをしまうことが出来る。念のためすべての能力が使えるか確認しておいた方がいいだろうとツルギは思う。

 

 食事を終えると「ごちそうさま」と皿を店主に渡す。

 

 そして宿を出ていき、街の外へ向かって歩いて行った。

 

 朝早いこともあって人影は少ない。

 店のほとんどは九時からだし冒険者ギルドも八時からのオープンだ。六時過ぎだと何もやってない。

 そのため最初に能力の確認をしようと思い街の外へ向かう。

 人気のない異世界の街をツルギは歩く。

 なぜか涙が出てくる。元の世界への帰郷の念だろうか。

 

 十分ほど歩くと街の外への門に辿り着く。

 

「朝早くから冒険か?」

 

 昨日と同じ門番の男がツルギに話しかける。

 

「いえ、ちょっと街の外で確認したいことがあって……」

「そうか、街の外にはモンスターも出る、気をつけろよ」

「忠告、ありがとうございます」

 

 そういうと街から出ていく。

 グラート平原を十分ほど歩く。

 

 街の城壁が少し小さく見える。

 

「じゃあ、確認するか」

 

 妖王ミハカノシノツルギはラスボスだけあって強大な力を持つ。

 マッハで走れる走力にパワー。その力で走っても壊れない肉体強度。

 パンチ一つで山を消し飛ばすぐらいなら余裕で出来る。

 

 それ以外にも霊術、陰陽術を扱える。

 

 陰陽術というのは退魔に特化した力だ。

 妖怪や魔族、アンデッドに特攻の力である。

 

 妖怪と魔族は名称が違うだけで同一の存在である。

 

 妖怪とは斬炎の陰陽師では妖魔界に住まう異形の者たちの総称だ。

 寿命がなく異形の姿をしていて人肉が好きな種族だ。

 妖魔界では人間牧場があり牧場さんの肉を基本食っている。

 そのくせ妖怪は基本食事睡眠要らないのだ。

 妖王ミハカノシノツルギは食事睡眠に加え疲労に毒も無効だが。

 

 結界術。守りの力。一言でいえばバリアのような物。

 他者の侵入を阻害する結界から世界から断絶し異空間を形成する力まである。

 

 妖術。

 妖力をもとにした力。

 妖怪が使う力であり炎を生み出したり雷を生み出したり空を飛んだり出来る。

妖怪が使うことで己の再生能力を高めることが出来る。ミハカノシノツルギならば頭が吹き飛ぼうが再生が可能で全身の細胞が一片も残らず消し飛ばれない限り再生できる。

 

 それ以外の異能と呼ばれる別種の力をミハカノシノツルギは三つ持っている。

 

 一つ目。耐性会得。

 あらゆる攻撃に対し耐性を会得する。

 斬撃を受ければ斬撃に対し九十九パーセントの耐性を会得し炎に身を包まれれば炎に対し九十九パーセントの耐性を得る。

 ただし最大値が九十九パーセントなので残る一パーセントのダメージは普通に受ける。

 今のツルギはあらゆる耐性を持ってないので再度取得する必要があるだろう。

 

 二つ目。眷属創造。

 全ての妖怪とオリジナルの妖怪や魔族を作れる。

 一反木綿やぬりかべ、カラス天狗や雪女などを作ることが出来る。

 作った相手とは特殊な繋がりを持ちいつでもどこでも命令を下すことが出来る。妖王の命令一つで自害させることも可能。

 

 三つ目。万剣胎動。

 特殊効果を持つ剣を作り出すことが出来る力。

 剣とは言うが刃がついていれば割と何でも作れる。スパイク付きの盾なんてものも作れるし槍も作れる。

 作った武器には斬った相手を燃やす効果や空間事相手を斬るなんて効果を持たせることも出来る。

 一度に万単位で作れるし作った武器だけを操作するなんてことも出来るので棒英雄王ごっこも可能。

 

 ほかに大した能力ではないが己の影の中に物資をしまうことが出来る。ただ時間停止などのおまけはないが容量は無限だ。

 

 これらが妖王ミハカノシノツルギの能力だ。

 

「まずは……眷属創造だ」

 

 作るイメージは原作の最終決戦でミハカノシノツルギが作っていた眷属を生み出す。

 

 己の影がにゅっと伸び影が実態を得ていく。

 

 身長三メートル。人型だが体が紫色の岩でできている。肉付きはスマートで細マッチョといったところだ。

 顔には耳や鼻、目はなく牙が縦についている。牙の中には赤い眼球が一つついている。

 頭上には黒い天使の輪が浮いている。

 右手には同じく紫色の戦斧を持っている。

 

 名は牙界(がかい)。ミハカノシノツルギが最大存在数十二体まで作れるという眷属の中では最上位の魔族だ。

 

 戦闘力も非常に高く主人公の仲間である霧ヶ峰和人でも同時に四体までしか相手できない強敵だ。

 といっても特殊能力は一つしかない。

 

 牙界の黒い輪はミハカノシノツルギの背中の輪と同じ効果を持つ。

 牙界が受けたダメージは本体であるミハカノシノツルギへ影響を与え、耐性会得の力が発動するのだ。

 つまり眷属である牙界と戦えば本体であるミハカノシノツルギに耐性が生まれるのである。クソゲーである。

 

「……踊ってみろ」

 

 ツルギは取りあえず適当に命令を出してみる。

 この造った眷属と魔法的な繋がりを得たのを感じる。

 支配の糸が伸びた感覚であり言いようもない感覚だ。

 

 命令通りにへたくそな踊りを牙界は疲労し始めた。見てて哀れになるレベルで下手である。

 戦闘を前提にした存在なので下手でもしょうがないのだが。

 

「……よし。次だ」

 

 ツルギは右手に妖力を集めながら手のひらをまっすぐに構える。

 そして──放出。妖力のレーザーは黒い光という矛盾となって放たれた。

 

 はるか遠くまで地形をえぐりながら飛んで行く。

 この星の重力圏を超えて星々の彼方へと消えていった。

 

「……わーお」

 

 開いた口がふさがらない、とはこのことであった。

 はるか遠く地平線の彼方までえぐられて消えている。

 当然牙界も消滅していた。この威力のレーザーに耐えれるほど頑丈ではない。

 だがダメージを受けたのでツルギが自分の妖力砲に対し耐性の会得を始めた。

 

 この耐性会得は基本三十分かかる。

 そこから同じ攻撃を短時間で何度も受けるなどをすれば会得が加速し最短十分で九十九パーセントの耐性会得にまで至る。

 同じ攻撃を受け続けなくとも三十分で九十九パーセントの耐性を得られるので受けるだけ得である。

 

「えぇっと……じゃあ次だ」

 

 ツルギはふわりと空を飛ぶ。

 

 浮遊し力を集中する。

 ツルギの周囲に霊力や妖力で構成された球体が生まれる。

 それを地面に向かって放つ。

 着弾と同時に爆発を起こし地面が見るも無残なクレーターだらけになる。

 ここまでやってから(あれ? これ後で怒られるのでは?)と思ったが気づかなかったことにした。

 

「……戦闘力は充分、かぁ……」

 

 これだけの戦闘力があればそこらのチンピラや雑魚モンスターに後れを取ることはないだろう。

 だがそれでも自分が戦う、いや自分が命を奪うというのは非常に恐ろしい事だ。

 蚊などの虫けらを殺すのとはわけが違う。モンスターだって立派に生きているのだ。

 

 今度は万剣胎動の力を使う。

 適当に斬った相手を燃やす剣を作る。

 刀身から鍔、グリップまで全部黒である。

 

 剣としての性能は高い。鋼鉄だろうとたやすく両断できる。

 この武器をほとんどノーコストで量産できるのだ。

 何なら剣がついていればいいの理論で盾も鎧も作れる。

 

 ツルギは軽くぶんぶんと剣を振るう。

 

(うーん。振り方がわからん)

 

 だが中身は一般人。剣の使い方なんてわからない。

 肉体は最強最善の物でも中身がぼんくらでは宝の持ち腐れである。

 これは鍛錬とかした方がいいのか、という思いとどうせ戦わないしな……という思いが衝突する。

 

「……取りあえず服買いに行くか」

 

 剣を消滅させ街へと戻る。

 気づけば時間は結構経っていた。これなら店もオープンしているだろう。

 

 来た時の倍の時間をかけて街に戻る。

 

「なぁあんた、大丈夫だったか?」

 

 門をくぐろうとしたとき、来た時と同じ門番が話しかけてきた。

 

「? 何かあったんですか?」

「いや、さっき黒い光がびゅーんて飛んで行っていただろ? 気づかなかったのか?」

 

 どうやら妖力砲は街からでも見えたらしい。ツルギは微妙な表情をした。

 

「……そうなんですね、気づきませんでした。俺は大丈夫です」

「そうか、ならいいが……気を付けるんだな」

「はい、ありがとうございます」

 

 そういうとツルギはそそくさと街中に入る。

 

 歩いていて服屋がどこかわからないので衛兵らしき人に尋ね服屋に辿り着いた。

 女性向けの服屋である。店の外にはガラスのショーウィンドウがあり下着を着たマネキンがある。

 

 恐る恐る店の中に入る。

「いらっしゃいませー!」という元気な声が聞こえてきてツルギはビビった。

 

 取りあえずブラジャーを探そうと歩こうとしたらすぐさま女性の店員がやってきた。

 

「お客様何をお求めですか?」

 

 きらきらとした笑顔に元が陰キャのツルギはダメージを受けつつ返答する。

 

「えっと、ブラジャーとパンツを探しに……できれば服も一着買おうかな、って思ってるんですけど……」

「わかりました。ですが服の方は……申し訳ありません。お客様の種族に合う服はないかと……」

「あ、ブラジャーだけでも大丈夫です。あとズボンさえあれば……」

「わかりました。こちらにあります、ついてきてください」

 

 店員に言われるがままついていく。

 ついて行った先は更衣室だ。

 

「まずは胸のサイズを測りましょう」

「わかりました」

 

 更衣室にツルギは店員と一緒に入る。

 

「まずはそのブラジャーを外してください」

「わかりました」

 

 ツルギは背中のほぼ紐みたいなブラジャーの紐を解く。

 簡単にブラガ外れ胸があらわになる。

 一メートルもある爆乳だが垂れるようなことはなくつんと上を向く。

 妖怪という異形種の体は胸もでかいし強いのだ。

 

「では測りますね~」

 

 店員がメジャーで測る。

 

「え~と……G80ですね~」

「じ、Gカップ……」

 

 己の胸の大きさにツルギは戦慄する。

 そりゃ男どもが一発やらせろという訳である。痴女の格好をしているのだから猶更だ。

 己も男でこの格好の女に会えば言っていたかもしれない。

 

 ツルギはほぼ紐のブラジャーを付けなおしてから更衣室を出る。

 

「あの、予算六千円……じゃなかった、六千セラでブラジャーとパンツとズボンを買いたいのですが……」

「……その予算ですと一着ずつぎりぎり買えるか、になりますが……」

「うっ……けど今手持ちがないので……」

 

 ルシフェルからもらった貴重なお金をこんなところで使っていいのかという思いと流石に露出プレイは辞めたいという思いがせめぎ合う。

 結果露出プレイを辞めたい気持ちが勝った。

 

「わかりました、ではこちらになります──」

 

 

 その後一時間ほど服を見た。

 

 

「よし、これなら恥ずかしくないな」

 

 一時間後、そこにはまともな服を着たツルギの姿があった。

 黒のスポーツブラによって胸の大部分は隠されている。

 下を見ればちゃんとした黒の特徴のないパンツを履いてその上から短パンを履いている。

 お値段合わせて六千五百セラであった。痛い出費だ。

 これで残りは千五百セラしかない。

 

「ありがとうございましたー!」

 

 店員がそう言い、ツルギも礼を言いながら店を出た。

 向かうは冒険者ギルド。仕事を求めて。

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