少年漫画のラスボスになったので異世界堪能します 作:Revak
「よぉ姉ちゃん。あんた討伐依頼は受けねぇのか?」
一週間後の朝の冒険者ギルドにて。ツルギは男の冒険者に絡まれていた。
絡んできたのは比較的若い男の冒険者だ。軽装鎧をまとい腰には剣を下げている。
胸には鉄級冒険者の証の鉄のプレートを下げている。
「……そうですが、どうしましたか?」
ツルギは男に嫌なものを感じて嫌な顔をしながら返答する。
ツルギは男の言う通り討伐系依頼を受けずに過ごしてきた。
これには当然、戦いたくないという心情がある。
戦いたくないなら冒険者を辞めればいい、と思われるがそうはいかない事情がある。
この世界、いや日本だとしても戸籍のない物は暮らしにくい。
ツルギは最下級冒険者なのでさらにだ。
今のツルギはいわば住所なし戸籍なしマイナンバーなし学歴なし社歴なしの不法移民である。この状態で仕事を探す方が難しい。
試しにパン屋などにここで働かせてくださいと言ったがあんたは駄目だと追い出されている。
そのため仕事はあるが命がどうなっても構わない冒険者ぐらいしかツルギは出来ない。
もちろん上位の冒険者となれば社会的地位もある為普通の職につけるようになる。
だが上位の冒険者になるには討伐依頼を受ける必要があり、戦いたくないツルギではそれが出来ないという問題があった。
この一週間で受けたのもゴミ掃除やどぶ掃除の依頼に屋根の修理などの依頼ばかりで討伐依頼は一つも受けてない。
それどころか街の外の薬草採取の依頼すら受けてない。
街の外に出れば必然的にモンスターと戦うことになると思い能力検証以来外に出ていなかった。
「へへ、あんた仲間がいないんだろ? 俺が仲間になってやるよ。もちろんただじゃねぇぞ。一発やらせろよ」
またこの手の相手か、とツルギはため息を吐いた。
痴女同然の格好はいまだ同じ。下はズボンを履いたのでマシになったが上はブラジャーだけつけた状態のままである。
前の用に乳輪が見えていることはないがそれでも痴女の格好だ。
「やめてください。俺は体を売るような女じゃないですし、仲間も……今はいりません」
「んだよ、じゃあ金払うからやらせてくれよ。五万セラ払うからよ」
「ご、五万?!」
ツルギは提示された五万という金額に驚く。
五万もあれば変えの服を買えるしいい飯だって食べれる。それどころかしばらくはいい宿に泊まれるだろう。
喉から手が出るほどにほしい大金である。
だけど体を売るのは、という思いと女の体の快楽すごいからやってみろという悪魔のささやきが聞こえてくる。
「お前、僕の友人になに持ち掛けてんの?」
そこの声がかかった。
男とツルギは声の方に顔を向ける。
そこには以前と同じ黒いローブをまとった少女ルシフェルが居た。
「る、ルシフェルさん! 嫌なに、ちょっとこの女がね……」
「娼婦以外に体を売るよう持ち掛けるのはこの国だと犯罪だって知らないの? 頭ぶち抜かれたくなかったら消えな」
「わ、わかりました!」
男は怖がりながら走ってギルドから出て行ってしまった。
「ありがとう、ルシフェル」
「気にすんな。相手が悪い……それで、うん。調子は……悪そうだね」
「……見てわかる?」
「というか嗅いでわかる。風呂入ってないだろ」
そう。ツルギは風呂にロクに入ってないのだ。
それどころか服も買ったやつから変えてない。
言い訳をするならば替えの服がないのである。
因みに匂いがするとは言うがツルギの臭いはしない。疲労無効なので汗をかくことないし不老の体なので老廃物が出ることもない。
何ならこの一週間ツルギは排便も排泄もしてない。
それでも臭うのは埃などは受けてしまうからだ。
「いやお風呂のある宿じゃないし……」
「公衆浴場あるでしょ。そこいけよ」
「……存在に気付いてなかったです」
「……お前なぁ……」
ルシフェルは呆れた顔をする。
ツルギも公衆浴場があるかなど調べてもいなかった。
これには訳がある。
「いやけど公衆浴場て高いじゃん?」
日本でも六百円から七百円ぐらいはする。
この世界の通貨と日本円はイコールではないがそれでも高いものだという認識は間違ってないだろうとツルギは思う。
「いや五十セラだけど」
「今の俺からしたら十分高いです」
二食分より高いとなれば行かない方がいいと思ってしまう。
最近は貯金のために昼食を抜いているから猶更だ。
「まぁいいや。今日は風呂行くぞ」
「え、けどお金……」
「僕が出すから気にするな。あ、だけど壁代はいつか返せよ」
「……はい」
ルシフェルに連れられツルギはギルドを出ていった。
「こ、ここが公衆浴場……」
そして五分も歩けば公衆浴場に辿り着いた。
この国、というかこの大陸には公衆浴場が一般的にある。
これは二百年前の賢王トイラが齎した知識だ。
人間清潔な方が病気にかかりにくいのである。だからこそ賢王は公衆浴場や公衆トイレを広めた。
つくりは日本のそれとは違う。外見はレンガ作りである。
中に入る。入ってすぐに靴箱がある。二人とも靴を脱いで靴箱に仕舞う。
しまって二階に上がる。
二階には食事処と休憩所がある。
そして当然風呂場への入り口があり男と女と書かれた暖簾がある。
受付の老婆にルシフェルが百セラ払い二人分の入場券を買う。
ルシフェルは躊躇なく女と書かれた方に入っていきツルギは暖簾の前で止まった。
(お、俺が……男の俺が女湯に入っていいのか?!)
男だった身として入るのは駄目だろうという気持ちといや今の体は女なんだから女の体を嘗め回してやろうという悪魔の囁きが聞こえてくる。
「どったの?」
中々入ってこないツルギを見かねてルシフェルが出てくる。
「お、おれ……ここはいっていいのかなって……」
「女なんだからいいでしょ」
「いや、その……」
ツルギは迷った末に真実を告げることにした。
やはり何も知らない女の人の体を見るのはいけないとなけなしの良心が訴えてくるのだ。
「俺、体は女なんだけど心は男なんだ……だから女湯に入ったらだめだと思う」
「それぐらい気にしなくていいでしょ。この世界男が女になって女湯に入るのたまにあるし」
「俺と同じ事例あるの?!」
「うん。今の白銀級冒険者が男の老人から美少女になった奴だよ。名前は……忘れたけど」
「えぇ……?」
「だからツルギは女湯入っても法律的に問題なし。いこ」
ルシフェルはツルギの下の手を掴んで引っ張って行ってしまった。
抵抗することも出来たがする気になれずツルギは女湯に入って行ってしまった。
「お、おお……」
ツルギは生まれて初めての女湯に興奮しまたから汁をにじませていた。
朝早いからか今脱衣所には客はいない。
「じゃぬごっか」
「お、おう」
ツルギは恐る恐るブラジャーを外す。
ぶるん、と爆乳があらわになる。一メートルを超える爆乳が。
その胸を見たルシフェルは己の小さい胸と見比べて微妙な顔をした。
ルシフェルも服を脱いで裸となった。
胸は黒のコートからわかっていたことだが胸は小さい。
Cカップあるかないか程度だろう。ツルギと比べると非常に小さい。
ツルギはちらちらとルシフェルの裸を見てしまう。異性の裸を見るのは初めてだ。
ルシフェルも胸と背が小さいことを除けば女性的な体をしている。
「あ、服は洗濯機にいれよっか。その服臭いし」
「え、ここ洗濯機あるの?」
「あるよ。君みたいに服を複数買えない人向けに設置されてる」
「へー」
ルシフェルに案内され壁側にある洗濯機に服を入れる。
殆ど日本の洗濯機と同じだった。
これは
この世界には魔法がある。
環魔法と呼ばれ第一環から第十環魔法まであるこれは超常の現象を起こす。
無から有の生成すら可能にするこの力は非常に強力だが使えるものは少ない。
天才と呼ばれるもので第三環魔法が限界とされている。もちろん更に優れた者は第四環魔法も使うが。
因みにルシフェルは第十環魔法まで使える。
この洗濯機も二つの魔法が込められている。
「じゃあ服入れて、ボタン押して」
「わかった」
服を洗濯機に入れてふたをしてボタンを押す。
「はい、これで洗濯終わり」
「え、もう終わり?」
「うん。普通の洗濯じゃなくて魔法で結果だけ起こすからね。時間なんてかからないよ」
「へぇ……便利だね」
ツルギは洗濯機のふたを開けて中身を取り出す。
ホカホカの服が出てきた。選択が終わり臭いも綺麗に消えている。
服をロッカーに仕舞いロッカーのカギはブレスレット場なので上の右手につける。
ドアを開けて風呂場に入る。
「おぉ……」
風呂場の作りも日本のそれと左程変わらない。
大きめの浴場が幾つかあり電気風呂やジャグジーがついた風呂などもある。
サウナだってある。思わず日本の銭湯に来たのかと勘違いするほどだ。
「じゃ好きにはいろっか」
「お、おう」
風呂場には朝早いというのに何人かの客がいる。
(この世界顔面偏差値高くない?)
そして入っているのは案の定美しいと言える女たちだ。
この世界に来てからツルギは不細工にあっていない。
みんなツラと体形がいいのである。自分にも言えることだが。
ちらちらとほかの客たちの体を見てしまう。
無修正おまんこが丸見えである。ツルギは興奮し愛液が垂れてくる。
これはいかんと頬を叩き壁に行く。
壁には椅子とシャンプーとボディソープが備え付けられている。もちろんシャワーもある。
まずはかけ湯をする。これに意味があるかはわからないが習慣的にしている。
備え付けのタオルにボディソープを付けて体を洗う。
二メートルの長身に加え一メートル超えのおっぱいに四つの腕と洗う箇所が多くて大変である。
体を洗っていく。
この世界には
基本動力不要で動く物であり無限のエネルギーを発揮することだって出来る超常の物質だ。
この銭湯にも多数の
前者はお湯を。後者は水を作る
これで大量の湯を用意できている。魔法とはかくも偉大である。
もちろん一日に作れる量に限界はあるが百人が浪費しても問題ないだけの量は作れる。
胸を洗う時思わず揉みながら洗ってしまった。乳首もちょっとつまんだ。
一人部屋がないのでオナニーしてないが女の体で自慰行為してみたくてたまらないむっつりであった。
これはいかんと思いながら体に着いた泡を洗い流し次は髪に手を付ける。
シャンプーをつけ長い髪を四つの腕で洗う。
髪も一メートル近くある。己の腰の少し上まであるのだ。
洗ってないのに黒く艶やかな髪のままだが手入れはした方がいいだろうと思う。
四つの腕で洗い終わるとシャワーで泡を洗い落とす。
「ふぅ……」
第三の目は常に開眼しているが意識手に視界を閉じることは出来る。
だが三つ目の視界を閉じたところで外見的にはあけっぱである。
そのためシャンプーを流すときに目に入らないか怖かったが無事に済んだ。
入らなかったわけではない。単に妖王の体が丈夫で洗剤に耐えただけだった。
じゃあ湯銭に浸かるか、と湯銭に歩く。
入る直前に気づく。女の髪って湯銭に入れていいのか? と。
気になって他の客を見るとちゃんと髪を縛っている。
ならば自分も縛らねばならないと思ったが髪の縛り方なんて知るわけがない。
「どったの?」
なかなか入らないツルギにルシフェルが声をかける。
「えっと……髪の縛り方がわからなくて……」
「ああ、じゃあ僕が結んであげる。しゃがんで」
「ありがとう」
ツルギは言われるがまましゃがむ。
しゃがんだツルギの髪をルシフェルが弄る。
器用に長髪をいじる。
どこからかゴムを取り出しゴムで縛った。
「はい、出来上がり。やり方覚えた?」
「感覚は掴めたので大丈夫」
ミハカノシノツルギは優秀だ。
相手の剣術をその場でラーニング、覚えることだって出来る。
そのスペックは佐藤が憑依していてもいかんなく発揮しこれでツルギも髪の結び方を理解した。
ツルギは礼を言い二人そろって湯銭に浸かる。
ツルギは思わず口から息が漏れた。
一週間ぶりの風呂である。転生する前は三日に一回しか入らなかったが一週間も入らないと結構来るものがある。
三日に一回とは言うが毎日シャワーは浴びていた。
(風呂は心の洗濯とは言うが……まさしくその通りだな)
ちらりと横を見ればルシフェルも堪能しているようだった。
(……なんで、ルシフェルは俺にここまでしてくれるんだ?)
ゆっくりしているとどうしても疑問が出てくる。
初対面の赤の他人に対しなぜここまでよくしてくれるのか。気になって仕方がない。
更には初日に壁を破壊しその修理費を請求しているのにも関わらず気にした素振りはない。
この世界の住人がそうなのかと思ったがほかの人間は不法移民(仮)であるツルギに対し冷たいものが多い。
「……なぁ、なんで俺によくしてくれるんだ?」
気になって仕方がないので問いかけてみた。
最悪これで激昂されて関係が切れたとしてもまぁ何とかなるやろの精神である。
「ん? 僕と君は同じだからだよ」
「同じって……何が?」
共通点など異形種で女であるという事しかない。
「同じ転生者でしょ、日本から来た。しかも風呂に入る様子を見るに同じ元男だ」
「え、ルシフェルも男だったの?!」
ツルギは思わずルシフェルの顔をガン見する。
「そうだよー。といっても女の方が暦長いけどね、多分千年以上は女やってるよ」
「ほえー……」
千年以上といは言うが正確には四千年以上である。
約四千年前に転生してきたルシフェルは堕天使として君臨し続けてきた。
「だから、まぁ同じ境遇の奴いると思わず手助けしよかなってなるの。まぁ武士の情けみたいな?」
「それはちょっと違う気がするけど……そっか。納得できたよ、ありがとう」
「ん、いいよ」
その後二人はゆっくり二十分ほど風呂を堪能した。