少年漫画のラスボスになったので異世界堪能します   作:Revak

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第5話

 

 二人は風呂場を出てコーヒー牛乳を飲んでいた。風呂上りにはこれである。

 因みに一本十セラ。

 

 風呂上がりで煙が出ている。

 

「そうだ。今日ちょっとついてきてほしいところあるんだけど、いいかな」

「ん? いいけど……どこに行くんだ?」

「ちょっと外までね」

「わかった」

 

 ■

 

 そうしてグラートの街を出て飛ぶこと五分。森の中に二人は降りた。

 もちろん着替え済みである。ルシフェルはコートを、ツルギはいつもの上半身ブラジャーだけと下半身にズボンを。

 ルシフェルはともかくツルギは肌が露出しているので森向きの格好ではないが問題ない。

 虫はツルギの鋼鉄よりも固い肌に傷をつけることが出来ないし木々の枝も同じだ。ちなみにルシフェルもツルギに劣るとはいえ鋼鉄並みには固いので二人とも全裸で森を歩いても問題ない。

 

 降りた先は洞窟の手前だ。そこには異形種が一人と人間種が三人いた。

 

「む、ルシフェルか」

 

 そう答えるのは岩でできた異形種ロックモルドだ。

 岩がいくつも固まることで人型になっているが頭の部分はなく変わりに体に顔の絵が彫られている。

 左手に己の全身を覆うほどに大きな盾を。右手には長槍を持っている。

 ロックモルドに服や鎧を着る習慣はないし服は着用できないので全裸である。

 

 残りはドワーフとエルフと人間の神官だ。

 

 ドワーフは人の腰程度のまでの身長を持ち、長いひげを蓄えた種族だ。

 戦士向けであり膂力に優れ鍛冶師としての才能を持つがこのドワーフは魔術師のような恰好をしている。

 寿命は三百年ほどで人よりは長い。

 男であり初老に見えるがドワーフは総じて年寄りのような外見の者が多いので外見から年齢は判断しにくい。

 

 エルフは魔術師と弓使い向けの種族だ。このエルフは弓使いのクラスについているようで斥候の格好をしている。

 尖っていて長い耳が特徴的だ。

 エルフは基本金髪緑眼で美しい容姿を持ちこのエルフは金髪を短髪にしている。口はマスクで隠している。

 女である。エルフはスレンダーな体形が多いのでこのエルフもそうであった。

 

 残るは金髪碧眼の少女だ。

 美しい容姿の美少女だ。肩までかかる長髪を持っている。右手には錫杖を持っている。

 青い神官服を着ている。信仰形呪文詠唱者(スペル・キャスター)だ。

 この世界では魔法を使う物を呪文詠唱者(スペル・キャスター)と呼ぶ。

 

「やっほーガルド。突然なんだけど、横のこいつを今回のゴブリン退治に参加させていい?」

「はぁ?! 聞いてないぞ!」

 

 突然の提案にツルギが大声を出した。

 

「ゴブリンどもが嗅ぎつける。声を小さくしてくれ」

「あ、すみません……じゃなくて、なんで急に。俺戦いたくないんだって!」

「戦わずにどうやって暮らしていくつもり? お金足りないのはわかってるでしょ」

「ぐ、それはそうだけど……」

「おいルシフェル。他人の問題に俺を使わないでくれ」

「いやーこう無理やりにでもさせないと一生戦わないしな、こいつと思って……今度飯おごるから許して」

ロックモルド(俺たち)が食事できない種族とわかって言っているだろう……まったく、まぁ別にいいが、でどうするそこの腕が四つある女。参加するなら受け入れるが」

「ぐぬぬ……」

 

 ツルギは考える。己が本当に戦わずに過ごしていけるか、と。

 無理だろう。戦わなければ一生冒険者ランクは上がらず報酬が少ない依頼を受け続けるしかない。

 そんな暮らし歳をとれば破綻する。いやこの体はほぼ不老不死のような物なので歳は気にしなくてもいいかもしれないが。

 だが風呂にはロクに入れず服も洗えない生活が続く。それはホームレスのようなものだ。

 

「……わかった。戦うけど、俺は戦わない」

「頓智かな?」

「いや、俺眷属を作成できるんだよ……こっち風に言うと召喚魔法? ってやつになるのかな」

「ほう。魔法使いか」

「ああ、見ててくれ……」

 

 ツルギの影がにゅっと伸びる。

 

 今回呼び出すのは牙界ではない。

 牙界は三メートルもあるため洞窟に向かない。そのため小さい妖怪が居る。

 斬炎の陰陽師では妖怪と魔族が登場するが妖怪も魔族も名称が違うだけで同一の存在である。

 呼ぶのは魔族である。

 

 百八十センチ。西洋の全身鎧をまとっている。

 だが頭がない。頭があるべき場所は空白だ。代わりに左手に己の頭を持っている。もちろん頭も兜をかぶっている。

 右手には黒いロングソードを持っている。

 デュラハンというアンデッド系魔族だ。

 

「……強いな」

 

 ガルドはこのデュラハンの実力を感じ取った。

 この世界一定以上の実力者は相手の力を気配で感じ取れる。

 

 ガルドのレベルは二十二。鋼鉄級冒険者レベルだ。

 対しこのデュラハンのレベルは五十丁度。倍以上あるのだ。

 ちなみにミハカノシノツルギにレベルを当てはめるなら九十レベルはある。

 かつてこの世界に君臨した魔王を倒した勇者と同レベルである。

 尚実態は数々の異能を含めればそれ以上になる。

 

「じゃあこいつとともにゴブリン退治いきます!」

「いってらー。僕帰るねー」

「は?」

 

 そういうとルシフェルは翼を広げて飛んで行ってしまった。

 

「あいつ……勝手に変なこと任せて消えやがった……」

 

 マジかあいつ、という目をツルギはするがほかの面々はまぁルシフェルだしな……と諦めの目をしていた。

 

「取りあえず自己紹介しよう。俺はガルド、タンクの役職についている」

 

 よろしく、とガルドが挨拶をする。

 

「わしはドリオン・グラウメル。見ての通り呪文詠唱者(スペル・キャスター)だ。まぁ、ドワーフにしては珍しいとはよく言われるな」

 

 ドワーフは戦士か鍛冶師向けの種族だ。呪文詠唱者(スペル・キャスター)になる者は珍しいと言っていいだろう。

 

「私はリフィア・クアドラ。射手よ。一キロ離れてたって獲物を仕留めて見せるわ」

 

 リフィアのいう事は事実だ。優れた射手でレベル二十七の彼女は直線状ならば一キロ離れた相手にも矢を当てれる。

 

「私はリーネ・アウレリアです。信仰形の呪文詠唱者(スペル・キャスター)で大地と自然の女神ネイカに仕える神官です」

 

 第三環魔法まで使えるとは相当の天才である。

 冒険者を辞めてもくいっぱぐれることはないだろう。

 それでも冒険者をしているには何かしらの理由があるのだろうかとツルギは考える。

 

「えっと、ミハカノシノツルギです。長いのでツルギでどうぞ。能力としては戦士とか魔法使いみたいな能力持ってますが……その、戦うのが怖くて、あまり戦えないです」

「戦うのが怖いのに冒険者になったのか?」

 

 冒険者とは戦うのが前提の職業である。それが怖いとは何かのギャグとしか思えない。

 

「その、諸事情あって故郷から出てくることになって……んでまともな職業にもつけないので冒険者やってます……」

「そうか、それは悪いことを聞いたな、すまない」

 

 ガルドがおとなしく頭を下げた。

 

「いえ、お気になさらずに……では、行きますか?」

「ああ、先頭は召喚したその騎士に。次に俺、ツルギ、ドリオン、リフィア、リーネの順で行こう」

 

 言われた隊列を組み洞窟へと歩いていく。

 ゴブリンが居る洞窟だがゴブリンの影は見えない。

 

 洞窟前にはカラスの骨を使ったトーテムがある。

 

「これは?」

「シャーマンがいる証拠だ。ゴブリンの中に呪文詠唱者(スペル・キャスター)がいる」

「じゃあ気を付けないといけないですね」

 

 といってもゴブリンシャーマンの中で最も優れた者でも第二環魔法を使う程度なのであまり脅威ではない。

 そもそもツルギは妖王の体を持っているので核が直撃しようが死にようがないのでゴブリン程度に警戒する必要がないのだが。

 

 ゴブリン。最弱と呼ばれることもあるモンスター。

 亜人種に分類される種族で子供程度の知能と力を持つ。外見は緑色の肌をしとがった耳と鼻を持っている。

 種族的に暗視能力を持っているうえ繁殖能力が高い。

 といっても基本多種族間では子供が出来ないので女を性的に襲うことはない。

 だが雑食なので人も餌として食う。物理的に。

 そのため害獣とも扱われる。

 

 たまに生まれるボブゴブリンというゴブリンの近新種は知能が高く、ゴブリンたちのリーダー各になることが多い。

 たまーにだがゴブリンに嫌気がさして人の街に来て冒険者になるやつもいる。

 

 洞窟の中に入る。

 

 洞窟は暗い。ゴブリンたちは暗視能力を持っているため灯りを使う必要がないのだ。

 

<照明>(ライト)

 

 ドリオンが灯りの魔法を唱える。

 光球が生まれ周囲を照らす。この光球は術者に自動追尾するので問題ない。

 

「ゴブリンの洞窟なのに広いですね」

 

 ツルギがのんきにそんなことを言う。

 だが実際広い。ツルギは二メートルの身長を持つがそれでも非常に余裕がある。

 

「ゴブリンは時折オーガと共存することがる。といってもオーガはゴブリンを都合の良い奴隷としか思ってないだろうがな。そのための余裕だ」

「なるほど、てことはオーガがいるってことですね」

「そうだ。気をつけろ」

 

 そうして歩いていると奥から足音がするとリフィアが言う。

 

「数は二。どうする?」

「……ここはその騎士の力を試してみよう」

「わかった。デュラハン、やれ」

「わかった」

 

 デュラハンが返答したことにパーティ全員、ツルギ以外が驚く。

 基本召喚されたモンスターは喋らないことが多い。

 といっても知性の高いモンスター、悪魔などを召喚すると喋るが。

 

 デュラハンが剣を片手にゴブリン相手に突撃する。

 

 一瞬。刹那。デュラハンが剣を二度振るうことでゴブリンの首を切り落とした。

 

(強い……まるで見えなかった)

 

 ガルドは戦慄する。

 基本召喚されたモンスターは術者より弱い。

 召喚されたモンスターであるデュラハンがこれだけ強いという事は術者であるツルギも相応に強いという事だ。

 それほど強いくせに戦いたくないとか言っていたのはなんでだろうかと疑問を抱くが頭を振ってその考えを無くす。

 

「いくぞ」

 

 そうして進んでいると何度かゴブリンと遭遇するもすべてデュラハンが殺す。

 ゴブリンもレベルは一とか二程度。負けるわけがない。

 この世界レベルというのは絶対である。

 レベル差が十以上ある相手には何やっても勝てないのがこの世界だ。もちろん都市一つ消し飛ばず爆弾でレベル一が自爆特攻した場合などの例外はあるが。

 それ以外では基本レベルというのは絶対の指針となる。

 因みに戦闘職だけでなく料理人などのレベルもある。その場合は戦闘力にあまり関係しないが。

 

「とまれ」

 

 道中急にガルドがそう言い疑問を持ちながらツルギは止まり、わかっているほかの三人は止まる。

 

「横穴ですね」

 

 神官のリーネがそういう。

 言われてみれば横側に穴があった。ツルギはまったくもって気づいてなかった。

 ツルギも暗視能力を持つため暗くて気づかなかったわけではない。洞窟という事で視野が狭くなっていたのだ。

 

「どうします?」

「……誰か、そうだな。ドリオン、ここで待機できるか?」

「任せよ」

「あ、待ってください俺が眷属……モンスターを配置しておきましょうか?」

「何? 複数召喚して大丈夫なのか?」

 

 モンスターの複数召喚は可能だ。

 上位の召喚魔法で下位のモンスターを複数召喚する、というやり方が可能である。

 そのためガルドは今召喚しているのは消え弱いのに変わるだろうと思ってしまう。

 だがツルギのはそもそも召喚ではなく創造だ。ゼロから妖怪を作っているのである。

 

「大丈夫です……と」

 

 ツルギの影が伸びて実体化する。

 今度出てきたのは頭に矢が刺さった日本の武士だ。

 鎧をまとっているがどこかぼろぼろである。右手には刀を持っている。

 落ち武者の霊である。

 ゴースト系のモンスターに属するため魔法効果の付いた武器か魔法でないとダメージを受けないという特性を持っている。

 ゴブリンが魔法道具(マジックアイテム)を持っていることなんてないので実質無敵みたいなモンスターだ。

 

「……そいつは消えないのか?」

「え、消えませんが……」

 

 ガルドがデュラハンが消えないことに疑問を持ち問いかける。

 

「……ならいい。いくぞ」

「はい」

 

 そうして再び歩く。

 一分も歩けば広間に出た。

 

 広間からは複数の通路が伸びている。

 それぞれ寝床、食糧庫、便所に繋がっている。

 

「どうします?」

 

 ツルギが小声でガルドに問いかける。

 

「……リーネが突入し<閃光>(フラッシュ)を放つ。その隙をついて俺たちが突撃だ。ツルギは……好きにしろ」

「わ、わかりました」

 

 言われた通りリーネが突撃する。

 広間にいたゴブリンとオーガ全員の視線がリーネに向かう。

 

<閃光>(フラッシュ)!」

 

 リーネが魔法を唱えた。

 強力な光が放たれる。直視すれば暫くは目が使え物にならないだろう。

 事実ゴブリンとオーガたちは目が眩んでしまった。

 

 無言で残るメンバーが突撃する。

 ガルドは縮小する槍で攻撃しドリオンは魔法で、リフィアが弓で攻撃する。

 ツルギは妖力弾でも放とうとしたがけどこの攻撃で相手を殺すのは……と思い攻撃できなかった。

 代わりにデュラハンがバッタバッタとゴブリンをなぎ倒している。

 

「グゥゥゥ!」

 

 オーガが悲鳴にも似た声を上げた。

 オーガ。茶色の肌に二メートルの巨躯を持つ亜人種。

 ゴブリンのように耳がとがっており口には牙もついている。

 

 巨大なこん棒をやたらめったらに振り回す。

 ゴブリンが巻き込まれて死んだ。

 

 その暴れるのを放置するわけがなく、ガルドが槍で胸、心臓部を貫いて殺した。

 残るは一体だがそちらもデュラハンが腰から斬り飛ばし上と下真っ二つに殺した。

 

「……おえ」

 

 そして一人ツルギは嘔吐と戦っていた。

 初めての戦闘。あふれる臓物。

 通路で戦っていたときは極力見ないようにすることでどうにかしていた。だがこれは無理だ。

 真後ろを向けばいいがこの状態で真後ろを向けばゴブリンたちが襲ってくるだろうからできない。いやそれを言うなら嘔吐してても襲ってくるだろうが。

 それに強い血と臓物の臭いがツルギに嫌悪感を与える。

 

「……おえぇぇ」

 

 そしてついにツルギは吐いた。

 広間の壁に向かって胃液を出す。

 胃の中に物はない。ミハカノシノツルギが食べたものは全て瞬時に妖力に返還されるからだ。

 だから出てくるのは胃液だけである。

 

 びしゃっと吐しゃ物をまき散らす。

 

「……大丈夫ですか?」

 

 そこに心配そうにリーネが話しかけてきた。ツルギの背中をさすっている。

 見れば戦闘は終わり生き残りが居ないかガルドとドリオンが探し、リフィアが警戒に当たっている。

 デュラハンは命令待ちだった。

 

「大丈夫……です……」

 

「……たかがゴブリン退治で吐くとはな」

 

 ガルドが呆れたように言う。

 

「う……いやでも……俺はこれまで戦ったことないし、野良猫の死体すらないような街に住んでたので……」

「……まぁ、街中に野良猫の死体はないだろうが……」

 

 この世界の街は基本清掃されているので野良猫や野鳥の死体は清掃される。もしくはその前に鳥に突っつかれ食われてなくなる。

 そのため野良猫や野良犬の死体がないのは当たり前である。

 

 この世界の住人は血なまぐさいことに慣れている。そのために死体が無理だという人間はまずいない。

 死体でだめになっているツルギがこの世界では異常なのである。

 

「別の通路も探索するぞ。生き残りを出さないために」

「わかりました……」

 

 ツルギは腹をさすりながら返答し、奥へと進んでいった。

 こうして初めての戦闘は終わった。

 

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