少年漫画のラスボスになったので異世界堪能します 作:Revak
「さーて、どうなるかな」
にやにやとルシフェルはグラートの街の上空を浮いていた。
──このモンスターの群れを作り出したのはルシフェルだ。
新しく来た同胞、ミハカノシノツルギの能力を図るためにわざわざ元上司の元に行き貴重な
アイテムの名は
この世界にはダンジョンがある。
神々の修練場とも呼ばれるダンジョンは複雑機会だ。
内部は殆ど異空間であり墓地型や草原型など多数ある。
内部にはモンスターがどこからともなく出現し、侵入者に襲い掛かる。
またどういう訳か宝箱が生成され
ダンジョン内で死んだ者は結晶状の物質というドロップアイテムになる。これは人間も例外ではない。
ドロップアイテムは使用することで中身のアイテムを取り出すことが出来る。
こういった摩訶不思議な力であふれているのがダンジョンだ。
そのダンジョンでごくまれに起こるのがスタンピードという現象だ。
これはダンジョン内で出現したモンスターが行き場を失いダンジョン外に出ていく事だ。
基本放置されたダンジョンで起こる現象だ。ルシフェルが何もしなくともグラート平原にあるダンジョンはスタンピードを起こしていただろう。
ルシフェルはグラート平原にあるダンジョンを見つけそこで魔巣胎玉を使用。スタンピードを意図的に起こし、モンスターの先をグラートの街に向けた。
これもすべてミハカノシノツルギの力を見極めるため。
己と同じ同胞である彼、または彼女がどう動くのか気になったからだ。
「何を企んでいる?」
そこに声をかけるものが居た。
空中に立つ男だ。
身長は百九十二センチとルシフェルよりよほど背が高い。
白い髪に赤い瞳。上半身裸の格好。ワイルド系のイケメンと言ったところだろう。
胸には上下反対になった泣いている女の入れ墨が彫ってある。
「まおーさま。気になってきたの?」
ルシフェルがくつくつ笑いながら男──魔王の顔を見る。
「わざわざ貴重な品を借りてまでしようとしたことだ。気になるのも当然だろう」
魔王と呼ばれた男。レイ・アーヴェルスはそう返答する。
かつてこの世界では魔王と勇者の戦いがあった。
だが最終的に魔王は破れ、死したとされるがそれは過ちだ。
魔王は生き延びていた。己の勢力を失いつつも生き延びたのだ。
生き残りはしたが何か大したことを考えているわけではない。僻地に魔王城を移し平穏に暮らしている。
何かなければ五百年ほどは平和に暮らしているだろう。
「何がそこまでお前を動かす?」
「ん-、百年ぶりの楽しみ……かな」
「ほぉ?」
「百年前、魔王軍に加わった時と同じ。世界が動く予感がするんだ。だから、それを少しでも大きく、楽しいものにしようってね」
にやり、とルシフェルは笑み浮かべた。
■
平原を異形が飛ぶ。
鴉をそのまま人型にした鴉頭の妖怪だ。
山伏装束をまとった妖怪であり名はカラス天狗だ。
『ミハカノシノツルギ様。目標を発見しました。数は……三千を超えているかと』
カラス天狗は陰陽術の一つ、霊話でグラートの街に居るツルギに話しかける。
『そうか……軌道をずらすことは可能か?』
『私では無理かと。流され押しつぶされて終わりです』
カラス天狗のレベルは十程度。
モンスターの群れの中にレベル二十にも迫るモンスターが居るのとレベル十程度では数の暴力が聞くため倒されて終わりだろう。
『わかった。戻ってこい』
『かしこまりました』
ふぅ、とツルギはため息を吐いた。
今ツルギが居るのはグラートの街門前だ。
ここには多数の武装した冒険者たちが居る。
共にゴブリン退治をしたガルド一行もいる。
その数は百七人。百体三千だ。
ここにレベル五十などの超越者が居れば勝ち格だったがこの場にはツルギしかいない。
ツルギの戦闘経験はない。そのため単騎で暴れてもモンスターの侵入を許すだろう。
となれば、もっと戦力が居る。
ツルギは己の影を伸ばし眷属創造の力を使う。
影が十二に別れのび、実体化する。
出現するのは牙界。
三メートルの巨躯。すらっとした体形。紫色の岩でできた体。
顔には縦に牙がついており、牙の中には赤い眼球がある。
頭の上には黒い輪がある。
十二体はそれぞれ別の武器を持っている。
大剣、槍、ハンマー、戦斧、ナックル等々。
牙界たちのレベルは七十といったところだ。といっても特殊能力の類がないため同レベル対と戦えばまず負ける。
だがそれでも非常に強い。敵の殲滅だけならこの一体で終わる。
だがそれには時間がかかるし生き残りが街に侵入しないとも限らない。そのために複数出した。
「よ、よし。やるぞ」
ツルギは更に万剣胎動の力を使う。
作るのは黒い薙刀と短剣だ。
上の右手に薙刀を。下の左手に短剣を持つ。
薙刀には風を操る能力を付与し短剣には雷を操る能力を付与する。
自分一人だけ戦わないでいるわけにはいかない。自分という超戦力が動かない理由がないのだ。
それぞれ冒険者と牙界が配置につき、街の門が閉められる。
そうして待つこと十分。敵は来た。
「……あれだけの数を倒すのか」
うわぁ、とツルギは顔が引きつった。
見えてきたのはモンスターの群れだ。
ゴブリン、オーガ。スケルトン、スケルトン・キャスター。
ジャイアントビード。ダンジョンバッド。スケイルメイル。
巨大なムカデに巨大な鶏。これまた巨大なカマキリだ。
その他モンスターも多数いる。
「おい、ツルギ。お前が音頭をとれ」
「え」
ガルドがそう話しかけてくる。
「なんでもいい、突撃とか、それだけでも言え。この場で一番強いお前が言うべきだ」
「わ、わかった……」
ツルギは身構えながら振り向く。
ツルギを先頭としそこには多数の冒険者たちが居た。
「と、突撃ー!」
「「「オオォォォオォオオ!!!」」」
冒険者たちが突撃する。
その熱気についていけないがツルギも遅れて突撃する。
だが身体能力はこの世界最高峰の物だ。たやすくほかの冒険者たちを追い抜く。
敵陣の先頭に立つモンスター、オーガに向かってツルギは薙刀を振るう。
体を横から両断するように振るう。
すると綺麗に斬られ、オーガは絶命した。
──肉を切った嫌な感触がした。
まだ生きている肉を斬った時特有の嫌な感じ。ツルギは吐きそうになるのを堪える。
「え、えい!」
今度は左下の手の短剣を振るう。
雷が空から降ってくる。
六つの雷が降ってきてモンスターの軍団を焼き殺した。
「おえ……」
ツルギは不快感と戦いながら戦闘を続ける。
後ろからくるモンスターを長直感で感知し振り向いて槍で刺し殺し。
向かってくる三体のゴブリンに向かって薙刀を振るい切り殺す。
またも肉を斬った嫌な感じがする。嫌悪感に己が陥るも気合でごまかす。
「オオオオ!」
ツルギは吠えた。
雄たけびとともに敵陣に突っ込み薙刀をがむしゃらに振るう。
ついでに近づいてきたモンスターには拳で戦う。
肉を殴る嫌な感じがした。
そうして戦っていると、ある感覚がしてくる。
──楽しい。
まるで幼少期に意味もわからずおもちゃを地面にぶん投げた時のように。己の力で形あるものを壊していく。
その快感が堪らない。
「あは、アハハハ!」
空いている下の右手と上の左手に妖力をためる。
そして開放。初めて打った時とは違い規模は小さいが威力は変わらずレーザーが放たれ、モンスターの群れを打ち抜いて消し飛ばした。
「もっとだ! もっともっと!」
ツルギに呼応するように牙界たちも暴れる。
レベル差が五十以上もあるのだ。相手になるわけがない。
モンスターたちは全て倒されていく。
「キシャアアアア!」
そこに巨大な蜘蛛がやってくる。
全長五メートル。前足の二つは刃がついている。
全体的に黒いシルエットのモンスターだ。
名はカディ。レベル二十のモンスターである。ルシフェルがスタンビートを起こしたダンジョンの階層ボスだ。
「死ね!」
楽しくなってきたツルギは薙刀を振るうことで真正面から真っ二つに両断した。
カディの体液を浴びながらもツルギは暴れるのを辞めない。
無双ゲームで無双している気分だ。楽しくて楽しくてたまらない。
当然、攻撃を受ける。
前しか見ず殺して回るツルギの背後に回りゴブリンがこん棒で殴る。
だがツルギの体はこの世界の最高位金属以上の強度を持つ。こん棒の方が負け折れた。
そして黒い輪が回転し打撃に対し耐性を会得し始める。
くるりとツルギは振り替えるとゴブリンに短剣を刺し殺した。
死体を掴んで放り投げる。ぶつかったオーガの頭部がはじけ飛んだ。
薙刀を振るう。
付与した風操作の力で風の刃を形成し飛ばす。
モンスターがずたずたに切り裂かれていく。
「あは、あは、アハハハハハ!」
「うーん。ちょっと予想外」
戦場の空の上で。ルシフェルはそう呟いた。
嫌々ながら戦うだろうと思っていたらまさかの吹っ切れて虐殺を始めた。これにはさすがのルシフェルも苦笑いである。
だがいいことだ。この世界で生きていくには戦闘能力が必須である。
戦わなければ生き残れないのだ。
「あれ? もう終わり?」
ツルギは優れた薙刀術と短剣術を見せた。
ミハカノシノツルギは戦闘の天才という設定がある。その肉体に入った佐藤もそれが適応されたのか戦闘術を戦いながら磨いていったのだ。
そうして楽しんで暴れていたら気づけば敵が居なくなっていた。
魔法的なつながりで牙界に敵がいないか聞くも返事は「いない」というだけ。
「無事か? ツルギ」
そこにガルドが話しかけてくる。
「ガルドさん、俺は無事ですよ」
「とてもそうは見えないがな……」
ガルドはため息を吐くのを堪える。
見ていて危なっかしかった。
初めての戦闘でハイになるやつは一定数いるがそれでもツルギほどハイになるのは殆どいないだろう。
その大半がハイになってそのままやられるのに対しツルギは戦闘術を確立させていって生き残った。
元のスペックが高いのもあるだろうが、これはまずいとガルドは思う。
下手に戦闘に楽しみを抱き続ければ、戦闘狂いの狂人になりかねない。
それは本人のためにならない。
「……まぁいい。街に戻るぞ。その汚れた体も洗うといい」
「ああ、確かに返り血どうにかしないとですね」
ツルギは同意する。
気づけば体はモンスターの返り血だらけだ。
前は血なんて嫌だったのに嫌な感じがしなかった。
ツルギとガルドは門の前まで戻る。
「おう! すごかったな嬢ちゃん!」
「強いとは思ってたがこれほど強いとはな!」
「弱気なのは治ったのか? すごかったな!」
冒険者たちが次々にツルギを褒めてくる。
ツルギは少し照れて顔を赤くする。
「いえ、その……正直無我夢中に戦ってただけなので……そこまで褒められることじゃ……」
「なーに言ってんだ! あんたがいなきゃこの街は滅んでたかもしれないんだ! 誇っていいんだぜ!」
鉄級冒険者がそうツルギの肩を叩いた。
「そうか……うん、そうですね」
ツルギは顔をあげ、どこか誇らしげな顔をした。