少年漫画のラスボスになったので異世界堪能します 作:Revak
一日かけてアカツキとツルギの二人はダンジョンを探索し終えた。
全五階層に分けられているダンジョンだった。
第一層は平原。第二層は森。第三層はサバンナ。第四層は湿地帯。第五層は砂漠だった。
砂漠のボスモンスターであるデザートデスワームを倒した。
因みに砂漠の中によく潜るモンスターだったため直接の戦闘力よりも面倒さが勝るモンスターだった。
最終的に薙刀の風操作の力で周囲の砂全部吹き飛ばして相手を見つけてから短剣の雷で倒した。
ツルギは気づいてないが三千のモンスターの群れの中にもいた。範囲攻撃で雑に消し飛ばされてたが。
「むぅ……ここまで来てもスタンビードの原因らしきものはなし、か」
最後のボスモンスターを倒した後でもアカツキは暗い顔をした。
「というかこのダンジョンモンスター少ないですね。ダンジョンってもっとモンスターだらけだと思ってました」
「それは恐らくここがスタンビードを起こしたダンジョンだからだ。大半のモンスターが出ていったのだろう」
「そうですか……結局原因はわからない感じですか?」
「ああ。私の目でも原因がわからない。これは恐らくもっと上位の魔法の使い手が居ないと無理だな……」
バルグラート帝国の宮廷魔術師ならば過去視が使える。そのレベルの魔法の使い手が要るとアカツキは判断した。
「だがこの様子ならば定期的に狩りをすれば今後同じようなことが起こることはないだろう。ある程度街からも近いから定期便を出して冒険者をダンジョンに向かわせればいい」
「うま味はあるんですかね?」
「ダンジョンバッドだけでもうま味があるさ。それ以外にも奥に潜ればもっとうま味のあるモンスターも多数いた。まぁ放置してきたが……よし。そろそろグラートに戻ろう」
「わかりました」
そうして二人はダンジョンを去っていった。
■
翌日の朝の冒険者ギルドにて。ツルギは何の依頼を受けるか悩んでいた。
結果はなかったもののダンジョン探索の報酬も貰った為懐には結構な余裕があるのでしばらく依頼を受けなくてもいいが元社会人として何かしらの仕事を受けた方がいいだろうとギルドに来ていた。
「やっほーツルギ。元気してるー?」
そこにかつてのようにルシフェルが話しかけてきた。
「またなんか変なことするつもりか?」
ツルギは少し嫌な顔で返答する。
つい先日ゴブリン退治に連れていかれたのをまだ恨みに思っているのだ。
「いや今日はちょっと話そうと思って。女子会しようよ」
「女子会~?」
「そう、君の目標をかなえてる人とさ」
「……まぁ、いいけど」
女子会という物にきゃぴきゃぴしたものを感じツルギは内心ワクワクしながらルシフェルについて行った。
「おお! お前が噂の! でっかいのー!」
着いて行った先は喫茶店だ。
女子向けの喫茶店でゆるふわ系の店である。
オープンテラス席には既に一人の女性が座っている。
金髪赤目の女だ。身長は百六十三センチ程。髪は肩までかかっている。
金色の貴族服を纏っている。容姿は優れており美しいと言える。
芸術的な美に近い容姿をしている。
「えっと、初めまして、ミハカノシノツルギです。長いのでツルギでどうぞ」
「うむ! わらわはアトラシア・ドレッドムーン! 真祖の吸血鬼じゃ!」
「吸血鬼……」
普通のファンタジーならばまず討伐対象の相手である。
それが堂々と街中に居るのだからこの世界は何気凄い。
「うむ。吸血鬼なので飲み物しか飲めないからこうしてメロンソーダを飲んでおる」
この世界の吸血鬼は飲み物を飲むことは出来ても食事はできない。
そのため飲み物を飲むのが娯楽になっている場合が多く、アトラシアもそうであった。
ちなみに食事によるバフを得ることも出来ない。
「さぁ立ってないで座れ座れ」
言われるがままツルギとルシフェルは座る。
「しかし珍しいのぉ、ルシフェルがわらわに話したいことがあるとは」
アトラシアはにやにやと笑う。
「まぁーねー。人って変わるものだからねー」
「お互いに人ではなかろうに……さて、本題と行こう。ツルギは領主になりたいんじゃな?」
「はい、今後の人生として冒険者一職で戦い続けるのはちょっとな、と思っていまして……」
「まぁ確かに女子なんだから戦闘ばかりの人生というのもな。敵ばかり殺すものはいずれ殺されるものよ……魔王がそうであったように」
「魔王……ですか?」
「なんじゃ、知らんのか? 百年前勇者に倒された魔王の事じゃ。魔王はあらゆる種族を力で支配下に置いた。だが力による支配は反発を生み、半神の勇者によって討たれた……」
「へぇ……」
この世界にも魔王と勇者が居たんだ、とツルギは内心ワクワクする。
「まぁ、勇者はいまだ現役だが魔王は既にいない(ものとなっている)から、安心すると言い」
何か小声で言ったがツルギは聞きとなれなかった。
魔王はいまだ生きている。といっても何か悪事を田倉でもなく日向ぼっこしてる日常を送ってるが。
「と、話がずれたな。領主になるにはやはりノルドレイン連邦に行くのが一番じゃ」
「連邦、ですか」
ツルギは脳内で慌てて連邦ってなんだっけと検索をかける。
記憶能力と情報処理能力が上がっているツルギは即座に答えがわかる。
連邦とは多数の国(アメリカ合衆国の州のように、高度の自主権をもつもの)によって構成される国家。連合国家である。
by辞書。
「そこでは外部からの領主を招いているんですか?」
「というよりは連邦はこの大陸最大のダンジョン保有国でな。どのダンジョンがいつスタンビードを起こすかわからんから戦力になってくれるものには多少優遇してでもいてほしいというのが本音じゃ。ツルギの種族を聞いてもいいか?」
何故種族を、と思ったがおとなしく答える。
「妖王っていう……妖怪の上位種みたいな感じです」
「ふむ。妖怪という事は寿命のない異形種か?」
「そうですね、他者に殺されない限り死なない不老不死みたいな感じです」
「なら問題ないな。わらわのネクロポリスのように異形種が支配する街も多くある。その一つになれるじゃろうて」
「おぉ……けど具体的には何を目指せばいいんでしょう?」
「ダンジョンの攻略、じゃな。まだ未攻略のダンジョンが十三個ある。そのうちの一つを攻略すれば国が正式に領主にならないかと打診しに来るぞ」
「おお、意外と簡単ですね」
ツルギのその言葉にアトラシアはクスリと笑う。
「いいや、簡単じゃないぞ。建国から百年たっても誰も攻略で来てないダンジョンの攻略じゃからな」
「ひゃ、百年……」
百年というスケールの長さにツルギは戦慄する。
百年不落のダンジョンの攻略。己に出来るのかと疑問を抱いてしまう。
「ま、見たところおぬし結構強いからな……いやほんと強いな。わらわより強いんじゃないか?」
アトラシアはそう思う。
この世界一定上の実力者は相手の力を探ることが出来る。
気だとか魔力だとか気配とか殺気とかいう物だ。それで判別できるのだ。
実際ミハカノシノツルギをレベル換算すると九十レベルのスペックがある。ただこれは異能を考えない場合で異能含めると百レベルになるだろう。
因みにアトラシアのレベルは七十五である。
もちろんその気になれば──同格が居ないという前提が居るが──単独で国一つ滅ぼせる能力の持ち主だ。
今は戦闘経験の差でアトラシアのが有利だがすぐにツルギのが上になるだろう。
「まずはノルドレイン連邦への移住、ですね」
「うむ。次にどのダンジョンを攻略するかだな。わらわお勧めのダンジョンは
「黄泉……
「うむ。妖怪系のモンスターが出現するダンジョンでなな、いまだ第十層のボスの土蜘蛛が討伐されておらん。レベルは確か四十じゃな」
「レベル四十……それなら誰かが倒しそうなものですが……」
「ほかにも十二のダンジョンがある。そちらの攻略にかかりっきりなのじゃよ。ほかのダンジョンはスタンビードを起こしたことがあるが
「なるほど……」
「そこのダンジョンを管理してる……確か東雲皇国から来た……そう、
「風守家、ですか」
「ああ。そこの領主も兼ねているから、まぁ攻略してそこの領主になりたいと言えば実質的に乗っ取る形になるな」
「それは嫌なんですが……」
「まぁその場合は別の土地が欲しいとでもいえばよかろう」
「そうですね……まずはノルドレイン連邦を目指します」
「まぁ、ツルギの力なら飛んで行けばすぐ着くけどねー」
横からルシフェルがココアをすすりながらそう言った。
「まぁ一定以上の実力者は馬だなんだの使うより自力で走った方が速いからな……」
レベルが上がればそれだけ速度も上がる。自分で走った方が速くなるのは自然の理だった。
更にはツルギは異空間に物をしまう能力も持っているので馬車を使う必要すらない。
「あ、そうだ。この前の金返せよ。五万な」
「あ、わかった」
ツルギは腰につけたバッグから財布を取り出し五万出す。
「せんきゅー」
「友人とはいえ金の貸し借りはやめた方がいいぞ……?」
アトラシアが心配そうに言った。
「いやこれ自分が壁壊して金欠だったのでその修理代をルシフェルに建て替えて貰ってたんです」
「なるほどな。というか今も金欠なのか? 上の服ブラジャーしかつけてないじゃないか」
「ああ、いやおかねはあるんですけど女性用の服を買うの怖くて……」
「ふむ。ならばわらわが出してやるから服を買うぞ! 女の子は服を買うものだ!」
ツルギは己の年齢を思い(女の子という歳か……?)と思ったが素直についていく事にした。
■
「結構買いましたね……」
夕方の喫茶店にて。ツルギ達三人は結構な量の服を買った。
因みにツルギは全てオーダーメイドの服だ。この世界縫製技術も高い。
というよりはやることに応じてクラスを習得しやることに対して補正を受けるのだ。
そのため優れた者なら結果をより早く正確に優れて出すことが出来る。
優れた者なら十分もかからず新品の服を作れるのである。
そのため今ツルギは女性の服を着ていた。
といっても胸だけ隠したスタイルなのはかわらない。胸部分と腹に口があるため全身隠す服だと口が蒸れるのだ。
へそ丸出し──といってもへそも口になっているが──のスタイルは変わらない。
それでも無地の質のいい服を上下セットで五着ほど買えたのはアトラシアが財布を出したからだ。出なければツルギの手持ちで買えるわけがなかった。
ついでにパジャマも買った。猫さんパジャマである。
全てツルギの影の中に収納しているので置き場所には困らない。
「そうだ、これを渡しておこう」
アトラシアは懐からある手紙を取り出す。
「
「え、いいんですか? 貰っちゃって……」
「新しい友人へのプレゼントだ。ぜひ受け取ってくれ」
「……ありがとうございます!」
「うむ、若人への先行投資へのようなものだからな、気にしないでくれ……さて、と」
アトラシアは椅子から降りる。
「ではわらわはネクロポリスに帰るとしよう」
ネクロポリスとはアトラシアが支配する街にしてこの世界最大のアンデッドが大手を振るって暮らせる街の事だ。
「ではな!」
アトラシアは背中から蝙蝠の翼を生やすと飛び去って行った。
「いっちゃった……」
「結構すごい人でしょ」
「うん。すごかった……俺もいつかああなれるかな」
豪快だが悪い気のしないいい人だった、とツルギは空を仰いだ。