Smolder Blood, Sweet Smell それらは全て、復讐のために 作:メグリくくる
「さぁ、オレたちの街へようこそ!」
そう言って出迎えてくれたのは、この『牧場』を取りまとめているというズラドゥスという人間の青年だ。少し痩せているが、藍色の瞳は輝いて、生き生きとしている。黒い髪と肌は艶があり、食事に困っている様子はない。
俺は口元を押さえながら、ズラドゥスに話しかけた。
「この『集落』は、随分煙が凄いな」
「まぁね。多分、『科学(ヴィエダ)』、中でも『電子機関(エレクトロニケェストロイ)』ではなく、『蒸気機関(パラニィストロイ)』が発達しているからかな」
そう言って、ズラドゥスは口元だけを覆う防毒面越しに笑った。彼の防護面には無数の歯車が回転しており、時折排気弁から水蒸気が吐き出される。通行人たちも、皆防毒面を身につけている。形も様々で、鳥の嘴のようなものや、吸収缶へやたら管がついているもの、吸気弁だけがやたらと大きいものや、巨大な耳のような補聴器がついているものもあった。
「なぁ、ズラドゥス。防毒面がなくても、本当に大丈夫なのか?」
「基本的には水蒸気だけだからね。でも、街の地域によっては空気中の毒の濃度が高いところもあるから、そこは行っちゃダメだよ」
「そういう場所は、是非早めに教えてもらいたいね……」
早速身の危険を感じながら、俺は『牧場』を見上げる。煙があらゆる建物から立ち上り、太陽の光がまともにここまで届かない。光を補うためか、街燈がやたらと立っているが、その色は赤や緑、それに黄色等様々で、統一感がなかった。その建物には煙を逃がすための鈍色の管が無数に張り巡らされ、蒸気が吹き上がる度に、錆びついた歯車が耳障りな音を出して動き出し、集まって液体になった汚水が、あちらこちらで水たまりを作っている。そしてその水たまりの上を、四つの巨大な車輪がついた、歯車でできた馬車のようなものが、蒸気を出しながら通過していった。
……どうやら、この『集落』の人間は、かなり自由に生活させてもらっているみたいだな。
そう思いながらも、俺は別行動を取っているクゥニとメラスに思いを馳せた。
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「それでは、今回の役割分担について、認識合わせをしよう」
メラスにそう言われ、俺とクゥニは頷いた。俺たちは今、眼前の『集落』、煙で建物が見えなくなっているそれへ入る前の、最終確認を行っている。
「いつものように、私が流れの吸血鬼として、『管理者』との調整役となる。クゥニさんは、私の付き人。ラスカは、私があの『集落』へ入るための献上品、という設定だ」
その言葉に、俺は頷いた。
「俺の役割は、クゥニと二人で行動してたときと変わらずだな。俺が『牧場』に入っている間に、メラスとクゥニは、俺の仇の情報収集と、逃走経路の確保だ」
逃げ出す時は力技で押し通してもいいのだが、それだとまた俺が負傷する可能性が高まる。メラスという戦力が増えてから、安全に『集落』を脱出するための経路の確保も行うことにしていた。
俺の言葉に、クゥニも続く。
「……私は、ラスカとメラスの連絡係として、『居住区』と『牧場』を行き来する。ここから逃げるか、ここを潰すか、それはラスカが決める。でも、緊急時には、問答無用でラスカを連れ出し、この『集落』を脱出する」
「役割分担については、問題なさそうですね。後は出たとこ勝負ですが、少なくとも、ラスカは先に『牧場』へ入れられるでしょう」
「そこからは、別行動するしかないな。二人とも、頼んだぞ」
「任せてください」
「……ラスカ、気をつけて」
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