死にゲーみたいな仕様で異世界転生したスライムはどうすりゃいいですか?   作:ブナハブ

4 / 5
なまえ!

 同胞達の名付けをする事になったモモと俺は、まず手始めに近場に居た小柄な赤色の同胞に目をやった。

 

『ソラ、このいろは?』

『うーん、そうだな』

『ーーー』

 

 俺が何色と答えるべきか悩んでいる間、同胞は野原をピョンピョンと跳ね回って遊んでいた。

 

(……機敏だな)

 

 赤色の同胞の動きは、他の同胞達と比べても素早い。特に目を見張るべきは、その移動方法。

 普通のスライムなら這いずって移動する所を、この同胞は兎のように跳躍して動き回る事が出来る。

 

(俺もこんだけ動けたらなぁ。こう、シュシュシュッと……シュシュシュ……シュ、か)

 

 何気ない考えから、俺はパッと良さげな名前を思い付く。

 

『シューだ』

『シュー?』

『ああ、朱色のシュー。オレンジ色に近い鮮やかな赤、この同胞にピッタリな色だ』

『シュイロノシュー!』

 

 俺の言葉を聞いたモモは、嬉しそうにシューに近づいて伝える。

 

『シュイロノシューだって』

『……?』

『あ、いや、シューだけでいいから』

 

 俺は急いで彼女の勘違いを訂正する。変に捻ると勘違いが起きそうだな。

 

 

 

 次に訪れた同胞は、大柄な黄色の同胞。大柄と言った通り、俺達の中では一番体が大きく、小柄なシューと比べればその差は二倍ほどあった。

 

『……』

(……ちょっと前にも雑草食べてなかったか?)

 

 そんな同胞は見た目通りの大食いらしく、目を向けるたびに黙々と何かしらを貪っていた。

 

『このいろはー?』

『そうだなぁ』

 

 こうしてじっくり観察すると発見も多い。例えばこの同胞の色は、黄色というより金色に近かった。

 スライム特有のテラテラ感が独特な輝きを放っている。金属のように滑らかな光沢感ではないが、まあ金色である事に違いは無いだろう。

 

(金色……金……黄金(おうごん)……)

 

 少し間を置いて、俺は答える。

 

黄金(こがね)色だな』

『コガネいろ?』

『ああ、コガネだ』

『コガネ!』

 

 黄金(おうごん)と呼ぶよりも言いやすいだろうと思っての答えだったが、どうやら気に入ってくれたそうだ。

 

『……』

(うーん、無関心)

 

 ただし、当の本人は食べる事に夢中だった。

 

 

 

『さて、残る同胞は二人……二匹? いや匹って呼ぶのも失礼か?』

 

 同胞達にはどうでも良い事柄だろうが、とりあえず人で数える事にするか。

 

『二人とも近くに居なさそうだが、どこに居るんだ?』

『……? あそこにいるよー?』

『え?』

 

 そう言ってモモが意識を向けた方向を見てみるが、木が一本生えているだけで同胞の姿は見えない。

 

『どこだ?』

『あそこ、おーい!』

 

 モモが呼びかけた次の瞬間、木の下の落ち葉の中からヌルっと黒い物体が滲み出てきた。

 

『ほら!』

『あ、ああ』(全然気付かなかった)

 

 体を薄く広げて、完璧に落ち葉の中に埋もれていたのだろう。とんでもない隠密性能だ。

 

『ねーねー、このいろは?』

『あーっと、そうだな』

 

 体色は黒だが、これをどう表現すべきか……

 

(……別に黒はクロで良いんじゃないか?)

 

 ピンクとか黄色とか、名前として使いづらい物はともかく、クロは名前として普通にあるだろう。

 

『黒色だな』

『クロ!』

 

 変に考え込むのも良く無いだろうと思い、俺は早々に色を口にした。

 

 

 

『お、いたいた』

 

 同胞の数は桃を除けば全部で四人。残る最後の同胞は、ここから少し離れた茂みの中に紛れ込んでいた。

 

『ーーー』

『これは、何をしてるんだ?』

 

 茶色の同胞は、体内に石ころを入れて、それをグルグルと回していた。

 

『あそんでるのー』

『そ、そうか』(痛くないのか?)

 

 消化できない異物を体に含んでる訳だが……気にしすぎだろうか?

 

『すごいよねー』

『確かに器用だな……』(いったいどうやって)

『ねーねー、それで色はー?』

『あ、ああ、そうだな』

 

 どうやってるんだろうかと考えていた俺は、モモに急かされて思考を切り替える。

 

(茶色か……ブラウン、栗色、いや栗色というほど濃くないな)

 

 寧ろ薄い方で、なんというか、良い感じに日焼けした人みたいな色合いだ。

 

『……小麦色だな』

『コムギ!』

 

 小麦色のコムギ。うん、良いんじゃないか?

 

(よし、これで全員の名付けは終わったかな?)

『ねーねーコムギ。モモだよー』

『ーーー』

『えへへー』

 

 喜んでくれているのかさっぱり分からんが、まあモモは嬉しそうにしてるので良しとしよう。

 

『ーーー』

(ふーむ、にしても器用だ。俺もできるかな?)

 

 小石を体内でグルグルと回すコムギを見て、俺も試しにとそこら辺にあった小石を体内に含んでみる。

 

(……む、難しい。けど練習すればなんとか───ハッ!)

 

 その時、俺は閃いた。

 

『そ、そうだ、これだ! これなら、いける!』

 

 これなら、スライムでも戦える!

 

……かも知れない!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。