死にゲーみたいな仕様で異世界転生したスライムはどうすりゃいいですか? 作:ブナハブ
同胞達の名付けをする事になったモモと俺は、まず手始めに近場に居た小柄な赤色の同胞に目をやった。
『ソラ、このいろは?』
『うーん、そうだな』
『ーーー』
俺が何色と答えるべきか悩んでいる間、同胞は野原をピョンピョンと跳ね回って遊んでいた。
(……機敏だな)
赤色の同胞の動きは、他の同胞達と比べても素早い。特に目を見張るべきは、その移動方法。
普通のスライムなら這いずって移動する所を、この同胞は兎のように跳躍して動き回る事が出来る。
(俺もこんだけ動けたらなぁ。こう、シュシュシュッと……シュシュシュ……シュ、か)
何気ない考えから、俺はパッと良さげな名前を思い付く。
『シューだ』
『シュー?』
『ああ、朱色のシュー。オレンジ色に近い鮮やかな赤、この同胞にピッタリな色だ』
『シュイロノシュー!』
俺の言葉を聞いたモモは、嬉しそうにシューに近づいて伝える。
『シュイロノシューだって』
『……?』
『あ、いや、シューだけでいいから』
俺は急いで彼女の勘違いを訂正する。変に捻ると勘違いが起きそうだな。
次に訪れた同胞は、大柄な黄色の同胞。大柄と言った通り、俺達の中では一番体が大きく、小柄なシューと比べればその差は二倍ほどあった。
『……』
(……ちょっと前にも雑草食べてなかったか?)
そんな同胞は見た目通りの大食いらしく、目を向けるたびに黙々と何かしらを貪っていた。
『このいろはー?』
『そうだなぁ』
こうしてじっくり観察すると発見も多い。例えばこの同胞の色は、黄色というより金色に近かった。
スライム特有のテラテラ感が独特な輝きを放っている。金属のように滑らかな光沢感ではないが、まあ金色である事に違いは無いだろう。
(金色……金……
少し間を置いて、俺は答える。
『
『コガネいろ?』
『ああ、コガネだ』
『コガネ!』
『……』
(うーん、無関心)
ただし、当の本人は食べる事に夢中だった。
『さて、残る同胞は二人……二匹? いや匹って呼ぶのも失礼か?』
同胞達にはどうでも良い事柄だろうが、とりあえず人で数える事にするか。
『二人とも近くに居なさそうだが、どこに居るんだ?』
『……? あそこにいるよー?』
『え?』
そう言ってモモが意識を向けた方向を見てみるが、木が一本生えているだけで同胞の姿は見えない。
『どこだ?』
『あそこ、おーい!』
モモが呼びかけた次の瞬間、木の下の落ち葉の中からヌルっと黒い物体が滲み出てきた。
『ほら!』
『あ、ああ』(全然気付かなかった)
体を薄く広げて、完璧に落ち葉の中に埋もれていたのだろう。とんでもない隠密性能だ。
『ねーねー、このいろは?』
『あーっと、そうだな』
体色は黒だが、これをどう表現すべきか……
(……別に黒はクロで良いんじゃないか?)
ピンクとか黄色とか、名前として使いづらい物はともかく、クロは名前として普通にあるだろう。
『黒色だな』
『クロ!』
変に考え込むのも良く無いだろうと思い、俺は早々に色を口にした。
『お、いたいた』
同胞の数は桃を除けば全部で四人。残る最後の同胞は、ここから少し離れた茂みの中に紛れ込んでいた。
『ーーー』
『これは、何をしてるんだ?』
茶色の同胞は、体内に石ころを入れて、それをグルグルと回していた。
『あそんでるのー』
『そ、そうか』(痛くないのか?)
消化できない異物を体に含んでる訳だが……気にしすぎだろうか?
『すごいよねー』
『確かに器用だな……』(いったいどうやって)
『ねーねー、それで色はー?』
『あ、ああ、そうだな』
どうやってるんだろうかと考えていた俺は、モモに急かされて思考を切り替える。
(茶色か……ブラウン、栗色、いや栗色というほど濃くないな)
寧ろ薄い方で、なんというか、良い感じに日焼けした人みたいな色合いだ。
『……小麦色だな』
『コムギ!』
小麦色のコムギ。うん、良いんじゃないか?
(よし、これで全員の名付けは終わったかな?)
『ねーねーコムギ。モモだよー』
『ーーー』
『えへへー』
喜んでくれているのかさっぱり分からんが、まあモモは嬉しそうにしてるので良しとしよう。
『ーーー』
(ふーむ、にしても器用だ。俺もできるかな?)
小石を体内でグルグルと回すコムギを見て、俺も試しにとそこら辺にあった小石を体内に含んでみる。
(……む、難しい。けど練習すればなんとか───ハッ!)
その時、俺は閃いた。
『そ、そうだ、これだ! これなら、いける!』
これなら、スライムでも戦える!
……かも知れない!