【旧式戦車】とゴルティロックスゾーン 作:せんごる作者
信号を遮断すれば、履帯の音。
敵の咆哮。
5年の時を、人のために戦い続け。
『おい!そっち終わったかー!』
数多の家族を失い。
『砲塔の取り外し終わりました!』
数えきれないほどの友達も失い。
『後何両だ?』
残るは解体され、この世を去るだけとなったとき。
『主任!なんですかあれ!』
『ダンジョンが発生しているというのか...!?』
その事件は、発生した。
◎
「」ピピピッ
あれ...
「うご、ける?」
戦闘補助AIの私が、動かせるの?
「何があった...?」
このマナ濃度...まるでダンジョンだ。
「ダンジョン?」
少し進み、砲身で扉を開ける。するとそこには...
「...地竜」
カテゴリーAのモンスター、地竜がいた。
「...」
私はそれ向かって突撃。
「排除」
怯んで大きく口を開けた隙に、口内に12.7mの劣化ウランの塊を連射した。
「あの頃と同じ」
どうやら人が居なくても戦闘能力は据え置き...というか、搭乗者の負荷を気にしなくていいので上がったかもしれない。
「...ウィンドウ?」
地竜を倒した直後に出てきたのは、モンスターや探索者が持っているウィンドウだった。
「つまり私は...」
モンスターになった、ということになる。
名前:───
種族:10式戦車A型
クラス:───
レベル:50
AP5100/ 5100
MP5150/ 5150
アクティブスキル:補給 リペア
パッシブスキル:整備
称号:旧式戦車 囚われしもの
補給とリペアはわかる。整備も恐らく、APやMPの常時回復と言った効果だろう。
「囚われしもの...」
囚われしもの
この称号を持つ者は、何かに囚われている。願望、欲望、未練、過去、未来、人、物。それはやがて苦しみとなり、保持者に襲い掛かるだろう。
...過去、人、物、か。
「考えても仕方がないかな」
思考でわかっていても、私の回路はソレを繰り返し出力し続ける。
「せめて」
あのとき、私は皆を守れなかったけれど。
「ここだけでも...」
皆が眠る、この場所だけは守りたい。
「守ることが出来なかった」
せめてもの、贖罪として。
「まずは...」
慣熟訓練...かな。
◎
「...発射」
あれから一週間と13時間、私は施設内の敵を掃討し終えた。
「残敵ゼロ」
...敵はいなくなった。
「どうしよう」
私は、戦うことしか知らない。生まれてからずっと戦って、戦って戦って戦ってきた。
「わからない」
どうすればいいか、なにをすればいいか。
「...大丈夫」
また、あの頃に戻るだけ。終わりの見えない
「独りは、慣れてるでしょ?」
質問をしても、答えは返ってこない。当たり前だ、ここにいるのは私だけだから。
☀
「はろー皆!こんひま!」
・こんひま!
・こんひまー!
・こんひま!
・こんひま~
・今日は何をするんだ?
「今日はね~協会から依頼があって...なんと!」
・なんと?
・なんだなんだ?
・ついに妖魔ダンジョンに...
「あんなダンジョン行くか!新しいダンジョンが発見されたから調査の依頼!」
・ううっ...スライムに体当たりされて転んでた子がもうこんなに立派になって...
・そんなことあったな
・てか、新しいダンジョンってどんなとこなんです?
「えっとぉ...辺境にある解体施設が巻き込まれたから消滅させてくれだってー」
・辺境の解体施設
「けっこー大きいらしいよ。今のご時世は大変だもんねぇ~」
・あぁ~ね
・ダンジョン戦役時代の兵器の解体が忙しいからねぇ
・シンギュラリティ問題ってどうなったんだっけ
・なんやそれ↑
・一部の兵器のAIが非戦闘時に雑談してたっていう都市伝説と、AIが人間を超えるっていう話が混ざったやつだよ
ダンジョン戦役時代、あまりに人が死にすぎた。だから人類は兵器にAIを搭載して戦場に送り出したけど、その一部のAIが自我を持って行動をしていたという話だ。
「ん~もしも自我があったらみんなはどうする?」
・ワイは怖いから無理やな、電源切るわ
・俺は美少女の身体用意して自分好みの女の子にする
・皆AIが人を超えたら人間が家畜みたいになるって考えとるみたいやけど、俺は逆に飼われたいんだが?
・生粋の変態現る↑
・ひまちゃんはどうなんよ
「あたしは...普通に接するかな」
・その心は?
「多分、人間がAIに支配されるって言うのは、共存を考えてないからなんだよ。人間と同じように接すれば、向こうもわかってくれるはず」
これはあたしの本音だ。実際、過去にそうであろう存在と話したことがある。別に、人類を支配しようだなんて思惑は感じなかった。
・ひまちゃんはええ子やなぁ...
・ほんと、俺らの太陽よ
・ひまちゃんよ永遠なれ!
・ワイ34歳ブラック企業勤め、癒しは陽葵ちゃんだけの模様
・限界社畜いて草
「も~ちゃんと休みなよ?それと辞表出せ辞表」
・やっぱり太陽だわ、天使
・太陽なのか天使なのかはっきりせい
・それはそう
・とりあえず、陽毬ちゃんはいい子ってことで
・そういうことで
「ええーそんなことないよー♪」
まったく、褒めても笑顔ぐらいしかでないぞー???
・ご機嫌だねぇ
・ルンルンやがな
・解体施設見つけたぁ!
「えっ?どこどこ?」
・ほら、崩れてる高速道路の先にクレーンがあるじゃろう?
・あ、これか
・これだわ
「ん~あ、あった!あれ...だ?」
『~~~!!』ゴォォォォッ
見えてきたのは、解体施設と、それに炎を吐いている黒い影だった。
「は?」
・おいおいおいなんだよあれ!
・ブラックドラゴンじゃねぇかあれ!
・なんでこんなダンジョンにいんの?
・ちょ!ひまちゃん!
・あれはやべぇ!今は気づかれてないからひまちゃんは逃げて!
・今なんか爆発しなかった?
『───j-4』
「今...何か聞こえた...?」
『15A-Gaw...ts4...ts48!』