東方双神録   作:ぎんがぁ!

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プロローグ
転生


……………

 

暖かい………

 

 

ついさっきまでとても冷たく、寒いような感覚だったのに

なぜか今は光に包まれたように暖かく、心地いい。

少年は、ゆっくり目を開けた。

 

「……え? ここドコ…?」

 

目を覚ました少年の視界には、真っ白な空間が広がっていた。いや、空間と言えるのかも分からない、まるでどこまでも進んで行けてしまいそうな不思議な場所。

 

「え?え?ホントどこ?俺今どういう状況なの?」

 

「意識があるなら思い出せるはずじゃよ。自分がどうなったのか」

 

突然背後から声がした。少年は肩をビクッと震わせ、振り向いた。

そこには少年より背が小さい、もっと言うなら腰くらいまでしかない、黒の長い髪をした女の子が立っていた。

 

(こんな不思議空間になんで幼女が…)

 

と、少年は思った。それがまずかった。思った瞬間頭に激痛が走った

 

「ッ!! イッッッテェ!!?」

 

「幼女じゃと…?お前今私の事を幼女じゃと思ったな!?神である私を幼女呼ばわりとはいい度胸じゃな!」

 

「待て待て! いきなり拳骨することないだろ!? つーかなんで心読んじゃってんの!?」

 

よう…少女は「それでよい」軽くため息をつき、言葉を続ける。

 

「お前は私の言った事を聞いておらんのか?言ったじゃろう"神である私"と。つまり私は神、竜神と言う者じゃ」

 

「え!?神様!?こんな幼女が!?…あ」

 

「どうやらもう一発食らいたいようじゃな」

 

衝撃発言につい本音がでてしまったようだ。少年の目の前には拳をワナワナと震わせている竜神がいる。

 

「もう一回反省してこい!!」

 

真っ白な空間に鈍い音が響いた…

 

 

〜数十分後〜

 

 

「いってぇぇ〜…」

 

「お、目を覚ましたようじゃな」

 

少年が起き上がると、竜神は歩いてきて言った。

 

「ちゃんとした自己紹介がまだじゃったな。 私は竜神、お前の居た世界の神じゃ。突然殴って悪かったな。」

 

「あ、いや、気に触る事を言ったのは俺だから、ごめん。俺は神薙双也っていうんだ。」

 

二人で自己紹介を済ませると、竜神が本題だと言って話始めた。

 

「お前は今どういう状況にいるのか分かっているか?」

 

「……いや、わからない。思いつくのは、神様に拉致られたってことだな」

 

「ふざけているのか?神がそんなことする訳が無かろう。…仕方ない、時間をやるから思い出せ。初めに言ったが、意識があるなら思い出せるばずじゃ」

 

双也は座り込み、目を瞑って集中しだした……

 

 

 

 

 

俺は普通の高校生だった。普通の家庭に生まれ、普通に学校に通い、普通に育って、時には変わった出来事が起こらないかなぁなんて思うほどに普通の人生を送ってきた。

 

でも普通の人生に飽きてきたころ、俺はあの子と出会った。

 

その子の名は東風谷早苗。若葉色の髪にカエルと蛇の髪飾りを付けた、一見すれば非行少女に見えなくもない同い年の少女。面倒ごとの苦手な俺は、もちろん初めは関わらないようにしていた。

でもある日、先生に頼まれた重い書類を運んでいる時、俺はつまずいて書類を散らかしてしまったことがあった。

あまりにも多い書類の量に、周りの同級生は見て見ぬふりをする中

 

「ああ! 大丈夫ですか!? なんで誰も手伝ってあげないんでしょう…」

 

そう言いながら手伝ってくれたのは早苗だった。

 

「え? あ、ありがとう…」

 

俺は内心驚きながらも感謝した。だって緑色だぞ?どんな不良でも緑に染める人はあんまりいないだろう。

そんな人が同級生に敬語を使い、書類集めを手伝ってくれた。しかも半分運ぶとまでいいだした。そりゃあ驚くだろう。優しいを通り越して重度のお人好しなんじゃなかろうかこの子は。

 

その時からなぜか学校でも話す機会が増えた。非行少女でないとわかり、心のどこかで作っていた壁がなくなったからかも知れない。たまたま帰る道も途中まで同じだったため一緒に帰る事も多くなった。そんな生活に満足している俺も確かに居た。

変わってしまったのは…そう、あの日…

 

その日はいつものように早苗と一緒に帰っていた。

 

「それでですね!そのロボットは羽が開くと同時にビームサーベルを抜いて敵の大群に向かって行くんです!もう凄いカッコよくて!」

 

早苗のオタクとも言えるガン○ムトークに辛うじて相槌を打っていると丁度交差点が見えてきた。ここからは、早苗とは道が違う。

 

「じゃあ双也さん!また明日、学校で!」

 

「ああ、また明日、早苗」

 

早苗と挨拶を交わし、振り返ろうとした直前、早苗の後ろに見えてしまった黒い影とその手にもつ銀色に光る何か。

 

気付いた時には体は動いていた。早苗を突き飛ばし、向かってきた影と当たる瞬間、腹に響く鋭い痛み。

 

「うぐっ、うあぁぁあっ!」

 

俺は激痛に耐えられず倒れた。犯人は手を離したようで刃物はまだ刺さっている。犯人とっくに逃げたようだ。

 

「双也さん!? 双也さん!!」

 

早苗が叫んでいる。でももう意識が薄れてきた俺には続きが聞こえない。早苗の涙がポタポタと顔に落ちてくる。

もう耳も聞こえず、ほとんど動かない唇で一言。

 

「死にたく…ない、なぁ…」

 

意識はすぐに遠のいてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ……あのとき、刺されて…ってことはもしかして!」

 

「さよう。お前は死んだ。東風谷早苗を守り、その身代わりとなっての。」

 

双也は絶望した。まさか本当に死んでいたとは……

しかし疑問も浮かんできた。死んだならばなぜここに居て、こんなにも意識がはっきりしているのか

 

「いいところに気が付いた。喜べ、お前は転生する事が許されたんじゃ」

 

「………は?」

 

「じゃから、転生出来ると言うておる。ほれ、早く設定を言うのじゃ」

 

竜神の口から放たれた衝撃発言。『転生出来る』。

双也は理解するのに数十秒かかった。

 

「えっと、なんで??」

 

「それは転生してから教えてやる。今は設定を考えるのじゃ」

 

設定ってなに? この疑問がグルグルと頭の中を回った。

これに見かねた竜神が説明してくれた。

 

「いいか? お前は少々特別な理由で転生するんじゃ。いい意味での。そこで転生先の世界でのお前自身の事を自由に決める権利が与えられたんじゃ。行きたい世界も含めての。」

 

自分の事を自由に決めれる。それならば双也は迷わない。

生きていた頃から妄想していたことをハッキリ告げる。

 

「神になりたい!!」

 

「ほうほう、神か…よし、つぎは?」

 

竜神は紙に書くと、次の設定を求めて来た。他は…

 

「特にないかな」

 

「お前意外と無欲なんじゃな」

 

そうだろうか?と双也は首をかしげる。神になりたいなんてそれこそ欲の塊だと思っていたからだ。

 

「最近はどチート能力を求める輩も多いと言うのに…」

 

「…どチート?」

 

「なんでもない、コッチの話じゃ。それより、ホントにこれだけでいいんじゃな?他のありとあらゆる設定がランダムになってしまうぞ?」

 

「いい。これで。」

 

双也は力強く頷き、竜神も頷き返す。

 

「よし、それでは転生させてやろう。次の世界でも元気でな、双也」

 

「ああ、ありがとう竜神。恩は忘れないよ。」

 

双也がそう言うと、竜神はニッコリ笑って手を振った。

瞬間、視界が閃光に包まれた。

 

 

 

 

普通の高校生、神薙双也の第2の神(じん)生が始まった。




初めまして、ぎんがぁ!と申します。
この小説は私の妄想が抑えきれなくなって出来たものです。なのでおかしなところも多くあると思いますが少しでも面白いと思っていただければとおもっています。
これからもよろしくお願いします。

ではでは

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