東方双神録   作:ぎんがぁ!

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閑話多いような……そう感じる私がここに居ます。

ではどうぞー


第百四話 侵し入る五人の生者

「にしても、本当にあったかいな。空は」

 

レティの情報を頼りに空へ上がった私達三人は、暖かい空気の流れに乗って飛んでいた。

魔理沙は独り言を呟きながら首に巻いていたマフラーを取っている。私は暑かったから既に取ってあるけど、咲夜は魔理沙の様子を見て取り始めていた。

 

 

……そう、既にここは、"暖かい"と言うより"暑い"というほど気温が高い。

 

 

マフラーの影響もあるとは言え、まさにここだけ春が訪れている様な感覚だ。

 

 

(ここだけ春、かぁ……犯人は春でも集めてるのかしらね?)

 

と、"春を集める"なんておかしな想像をしてみる。

きっとこれを二人に言ったら笑われることだろう。

単なる想像は、胸の内に秘めておく事にした。

 

「異変が終わったらこれだけ暖かい世界に戻るって事よね」

 

「そうだな」

 

「じゃ、速度もっと上げて早期解決を目指しましょうか。炬燵ーーもういいわ、正直に言う。咲夜の料理を頬張る為に頑張りましょ」

 

「おー!!」

 

(結局料理なのね…)

 

そう意気込み、私達は暖気の流れに沿って更に速度を上げた。

と、そうして直ぐの事。私達はおかしな所を見つけた。

いや、私としては洒落にならないくらい(・・・・・・・・・・)重大な問題なのだが(・・・・・・・・・)

 

「ちょ、ちょっと…どういう事よアレ…

 

 

 

 

 

 

なんで結界に穴が空いてるのよっ!?」

 

 

 

 

 

 

「あー、ポッカリいってるなぁ」

 

「暖気はあそこに流れ込んでるみたい……って霊夢? 大丈夫?」

 

結界に穴が空いているなんて…なんで私気がつかなかったの!? 管理どこか間違ってた? いや、私の術式は間違ってないはず…事実それを使った結界の展開はできている訳だし……。

っていうか、結界に穴が空いたら大問題だって言うのに紫は何を…………あ

 

 

(アイツ寝てんのかぁ〜…………)

 

 

忘れてた…アイツ冬眠するんだったわね…しかも今は冬…ガッツリ眠り込んじゃってるんでしょうねぇ……。

 

「ホント…使えない妖怪…」

 

「ん? なんだぜ霊夢? 妖怪?」

 

「……何でもないわ。さっさと行きましょ。早く解決しなくちゃいけない理由がまた一つ増えたわ」

 

全く、こうなったらホントに速攻で片付けないといけないわね。

結界のことは、春になって起きてきた紫に頼めばどうにかなるわ。今は異変優先。

 

私達は暖気が流れ込んでいる結界の穴へ向かった。

 

 

 

「あーちょっと! あなた達お呼ばれじゃないでしょ!」

 

白い帽子の少女が突然前に出てきた。

 

「うっさい! 私苛立ってるから邪魔すると容赦しないわよ!」

 

「邪魔する前に撃ってるじゃない! きゃっ!?」

 

 

しかし瞬殺。

 

 

「ああ! メル姉! よくもーーへっ?」

 

「ブレイジングスターッ!!」

 

 

赤い帽子の娘は星になり、

 

 

「よくも妹達をやってくれたわねっ! 容赦しないわよ!ーーあ」

 

「容赦の前に油断しない事」

 

 

黒い帽子の娘は咲夜に刺殺。

何事も無く結界の穴へ飛び込んだ。

 

「…ねぇ、あの子達アレで良かったのかしら?」

 

「私達の前に立ったのが悪い」

 

「容赦ねぇなぁ霊夢」

 

「一人を星にした奴がそれを言う?」

 

「言っちゃうんだなぁ。それが私だっ!」

 

「あっそ…」

 

魔理沙のよく分からない自己主張を聞き流し、越えた先に降り立った。

そこは私の想像とは違って……

 

 

 

息を呑むほどに美しい、桜が咲き誇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜双也&霊那side〜

 

「疲れた」

 

一言。

霊那に言う訳でもなく、誰に聞いてほしい訳でもなく、ただ呟いた。

呟いただけなのだが…今の俺の心境を現すにはパズルのピースの様に当てはまる言葉だ。

 

隣を飛んでいた霊那にはちゃんと聞こえていたようで、少し困った声音で言ってきた。

 

「ま、まぁまぁ、飛び回って疲れたなら少し休みましょう? このまま行っても頭が回りませんよ?」

 

「ご尤もなんだけど……早く行きたいしなぁ…」

 

なんだか行き詰まった様な気分になり、溜息と共に肩を落とした。

全く、何年も待ったって言うのにこの仕打ちは何だよ。こんなにも人生は上手くいかないものなのか?

 

「取り敢えず、下に降りて何かに腰掛けましょう」

 

霊那に促され、先導され、まだ雪が降り続く地上に降り立った俺たちは、地面から飛び出た大きめの岩に腰掛けた。

霊那は袖の中をガサガサ漁って札とかの確認をしている。

…どこまで真面目なんだこの人は。

 

「あー…なんか良い方法ないかなぁ…」

 

また呟き、ボーッと視線を落とす。

疲れが精神にまで影響してか、目の前の物を頭が認識していなかった。

偶にある、"特に見ているわけでもないのに視線が一点に止まる"ってアレだ。

俺は朝目が覚めた直後のように、無表情で固まっていた。

 

 

 

 

 

「先代とはいえ、博麗の巫女がこんな所でのんびりしていていいの?」

 

 

 

 

ふと、ボーッとしていた頭が綺麗な声を認識した。

言葉を聞く限り霊那にかけられた言葉のようだったため、目だけ動かしてその声の主を探す。

すると、ザクザクと雪を踏みしめながら、カチューシャをつけた金髪の女性が歩いてくるのが見えた。

 

「いえいえ、私は仕事で来ているのではありませんので」

 

「でしょうねぇ。博麗の巫女が男を連れて異変解決だなんて…見た人誰もが"今度は雪じゃなくて槍でも降るのか?"って思うわよ」

 

二人の会話が耳に入る。

今俺の頭は絶賛停止中なので会話に入る気にはならないのだが、一つ言わせてもらおう。

 

霊那既婚者だから。

 

男なら相手居るから。

 

あ、これじゃ二つだ。

でもまぁ取り敢えず、博麗の巫女=男連れはおかしいって考えたらダメって事が伝わればいい。

口に出してないから伝わらないけど。

 

二人の会話はまだ続く。

 

「あ、自己紹介がまだだったわ。私はアリス・マーガトロイド。魔法使いよ」

 

「私は博麗霊那と言います。こちらは神薙双也さん。異変解決をしたいのは彼。私はただの連れです」

 

いつもの丁寧な言葉で、霊那は簡潔に説明した。

間違ってる所は特にないし、俺も黙って居たのだが……予想外に、反応したのはアリスだった。

 

「神薙…双也? もしかして、あなたが魔理沙の言ってた…」

 

「…ん? 俺の事知ってるのか? アリス・マーガトリング」

 

「何よその強そうな名前は…マーガトロイドよ。マー、ガ、ト、ロ、イ、ド!」

 

「はいはい分かったよ、アリス」

 

「ホントに分かってるのかしら…」

 

ジト目で訝しげな視線を送ってくるアリス。

その様子に苦笑いをする霊那の姿が隣にあった。

 

「ってそうじゃなくて! あなたが魔理沙の言ってた"凄い強い人間"なの?」

 

会話の軸を戻すように、アリスは若干怒鳴りがちに言った。

なんか…アリスはきっと苦労人って立場だな。霊夢と魔理沙に振り回される姿が容易に想像できる。

 

っと、ちゃんと答えないと。

 

「多分…俺の事だと思う。紅霧異変の時にはボコボコにしちまったからなぁ…」

 

「やっぱりそうなのね。魔理沙のマスタースパークを両断したって聞いたけどそれも本当?」

 

「ああ。本当だ」

 

そう答えると、アリスは何やらニヤニヤしながら顎に拳を添え、明後日の方を見ながら一人頷いていた。

なんか…企んでるだろ。

 

そんな予想をしていると、一人何かに納得していたアリスは、改めて俺の方を向き、言い放った。

 

「ねぇ、双也」

 

「ん?」

 

「私と弾幕勝負しない?」

 

「……は?」

 

「私と弾幕勝負しない?」

 

「……え?」

 

突然言い出すな…。温厚そうに見えたから戦闘にはならないと思ったのに…意外と戦闘好きなのかな?

…一応理由聞いとくか。

 

「なんで…そう考えたんだ?」

 

「魔理沙に負けたくないから。あなたに挑んで、そして勝てば…私が魔理沙より強いって証明出来るじゃない?」

 

アリスは、挑発的な表情でそう言った。

まぁ間接的にはそうなるけど、そこまでライバル心を燃やす事なのか? 普通に魔法研究すれば良いのに…

 

まぁ、早く結果を出したいって思うのは当然か。

 

「よし、じゃあーー」

 

「止めておいた方が良いですよ、アリスさん」

 

やるか。ーーと言いかけると、俺たちの会話に霊那が割って入った。

 

「…なんでよ?」

 

「例えやっても勝ち目がないからです。それに、こちらは異変解決の合間に休憩を挟んでいるだけなので、余計に時間は使いたくないんですよ」

 

と、合ってはいるが何処か突き離すような言い方をする霊那。

アリスがそれに食ってかかるのは当然の事で。

 

「勝ち目がないって……やらなきゃ分からないでしょう? 大体、彼はやる気だったんだから」

 

「双也さんは戦闘好きですからね。そういう申し出を断った所を見たことがありません。ですが……それとは話が別ですよ。弾幕勝負だからまだマシですけど、戦闘に関して双也さんに勝てる者なんて幻想郷には居ないんですから。あなたが怪我をしますよ?」

 

声音は柔らかに、しかし突き離す姿勢は崩さずに言った。

アリスはますます首をかしげる。

 

「…どうしてそう言い切れるのよ。過小評価してる訳じゃないけど、魔理沙に圧勝したからって幻想郷一になれる訳じゃないのよ? 妖怪だってごまんと居るし」

 

「それは分かっています。私も巫女ですから。…ですが、そのごまんと居る妖怪の頂点はご存知ですか?」

 

「頂点? えっと……八雲…紫だったかしら?」

 

「そうです。双也さんは、その八雲紫さんの師匠なんですよ」

 

「へぇ〜………」

 

……………………。

 

…………。

 

…。

 

「……………えっ!?!?」

 

しばらく間を置き、アリスは驚愕の声を張り上げた。

驚いた表情で霊那と俺を交互に見ている。

 

「え、えぇ!? 八雲紫の…師匠!?」

 

「あー、一応な」

 

「あなた人間じゃないの!?」

 

「半分だ。俺は現人神」

 

「じ、じゃあ歳は…千年以上…?」

 

「いや一億以上」

 

「……………………」

 

最早受け止めきれない、と言うようにアリスはカクンと頭を落とした。

同時に放たれた大きな溜息がアリスの心労を物語っているようだった。

まぁ、俺が原因なんだけど。

 

「納得しましたか?」

 

「せざるを得ない…わね。そりゃ勝ち目がないって言われる訳よ…」

 

「まぁ、この事は霊那と紫と…一部しか知らないんだけどな」

 

幻想郷にて、俺の素性を知ってる者は意外と限られている。

長年の付き合いである紫はもちろん、アイツを師事していた霊那や…慧音…あと稗田の直系とか。

俺自身普段から自分のことは話さないので、認知度が低いのも別段おかしい事ではない。

知られて騒がれても困るし。

 

「じゃあ、霊夢はその事知ってるの? それだけ生きてるなら、どうせ博麗神社とも関係があるんでしょ?」

 

「………いや、霊夢は知らない」

 

「? どうして?」

 

長年生きている俺が、同じく長年存在している博麗神社と関係があるとアリスが予想するのも、当然な事だろう。

実際、関係はある。確かにある。俺の望まない形ではあるが。

アリスにそう問われた瞬間、傷口に塩を塗られたように錯覚して、言葉が詰まった。

俺が顔を顰めた事を察してか、アリスの問いには霊那が答えてくれた。

 

「…霊夢は、小さい頃から双也さんに構ってもらっていたんです。それこそ物心のついた頃から。なのであの子は双也さんの事を"人間のお兄さん"くらいにしか思っていないんですよ。素性を知ればあの子の対応も変わってしまうと思い、私も言いませんでした」

 

「ふーん…面倒ね」

 

複雑な物を見てウンザリしたような、そんな表情でアリスは言った。

確かに、面倒だ。

隠し事のないカラッとした人間関係がどれだけ楽で爽やかか、突きつけられている気分だ。

 

「……さて、お話に区切りがついた所で……双也さん、私達も行きましょうか」

 

「ああ。そうだな」

 

一つ頷き、立ち上がった。

気持ちの疲れも体の疲れも、すっかり回復していた。

 

…あ、どうせならアリスに少し聞いてくか。

 

「なぁアリス。これからまた異変解決に行くんだけどさ、どこかで結界の穴とか見かけなかったか?」

 

「結界の穴? って、博麗大結界の?………あぁ…」

 

お? ビンゴか?

アリスは少しだけ思い出す素振りをすると、ある方向へ人差し指を向けた。

 

「あっちに穴があったわよ。すぐに異変に関係があるって分かったけど、私は解決者じゃないしね」

 

「お、そうか! ありがとな!」

 

「ええ、役に立って何よりだわ」

 

アリスはにこやかな表情で小さく手を振っていた。

それに手を振り返し、彼女の指した方へ霊那と連れ立って飛ぶ。

 

「にしても、休憩を挟んで正解でしたね、双也さん」

 

「……そうだな」

 

………探し回っていた俺達に対して、偶然発見したアリスに若干の劣等感を抱きながら。

 

こうして俺たちは、無事冥界へ侵入することに成功したのだった。

 

 

 

 

 




アリスは温厚だけど魔理沙に対抗心を燃やしているイメージですw

あ、一応補足します。双也くんの言う"傷口"とは、"あの時"の事と隠し事をしているという後ろめたさの事です。
二重の意味なんですねー。

ではでは。
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