東方双神録   作:ぎんがぁ!

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最近は部活やら何やらがいっぱいで大変です…
フラグっぽいのがありますが、まぁ誰かは分かるでしょう。

前半は双也、最後の方は三人称視点。

ではどうぞっ!


第九話 諏訪での楽しき日々

…刃が交わる音がする。戦う者達の活気の満ちた声が響き、土煙が舞い上がる。

 

「うぉぉおおお!!」

 

俺の前に男が現れ、剣を振りかぶる。しかしそれは俺に当たることなく"腕ごと"中に舞い上がる。振り下ろす前に手に持つ刃で斬り上げたのだ。

 

「悪いな」

 

そう言い残して、俺はまた争いの続く場所へと駆ける。

…そう、俺は駆けている。未だ戦いの続くこの"戦場"を。

 

「な、なんだお前は!!?」

 

「ただの居候さっ!」

 

相手国の兵士が集まっているところに空から強襲し、霊力弾を降らせながら、致命傷にならない位置を切り抜いていく。

この青白い刃は『結界刃』。君たちは俺が炭素を繋げて剣を作り出した事があるのを覚えているだろうか?あの時は単に硬いものを作りたかったので炭素にしたが、よく考えてみると"霊力同士"を繋げてしまえば簡単に作れる事を思いついた。

因みに結界刃は自由な形で発動できる。今の様に剣にもできるし、ゲームでよく有る剣閃みたいにも出来る。要は自由自在って事だ。

 

「隙ありぃ!!」

 

「甘いな、そらっ!」

 

俺が敵を斬っていると、横から若い兵士が袈裟斬りをしてきた。正直死角でも何でもない。慌てずに"兵士の剣を斬った"。

 

「えっ ぐあっ!」

 

俺は驚いている兵士の横腹を斬って蹴りで吹っ飛ばした。

実はこの結界刃、結合と遮断を同時発動出来ることを用いて"原子結合を遮断する"という能力を掛けてある。鉄製の剣を斬るなんて造作もない。

 

「ここは通さんぞ妖怪ぃぃ!!」

 

「失敬なっ!!妖怪じゃねぇよ!!」

 

俺を妖怪と間違えたらしい敵国の兵士が集まって矢を大量に放ってきた。全部は斬り落とせないので、新しく覚えた技を使う。

 

魂守りの張り盾(たまもりのはりだて)

 

俺はかざした手の前に霊力を展開する。その霊力の膜に当たった矢はことごとく斬り裂かれ地に落ちていく。

 

「なにぃ!?」

 

「敵から目を離しちゃあダメだ!」

 

俺はすぐさま近づき、いつかの様に蹴りの衝撃を繋げて吹き飛ばした。

魂守りの張り盾は結界刃の応用だ。霊力を展開し、それに触れた物から次々と結界刃を発動して切り裂く。ただの盾で受け止めるのが大変なら斬ってでもして勢いを無くせばいい、と言う考えから出来た技だ。

 

「そこまでだ!よくも我が国の兵を殺したな!」

 

「いや殺してないよ、急所は避けて斬ってるし」

 

なんだこの国の民、勘違い多過ぎだろ。洞察力皆無か?

と一瞬気が抜けかけたが出てきた男をよく見てみる。おお、そこらの兵士よりも数倍はれいりょ……ん?神力?まぁいいや。けっこう高いな。敵さんの大将ってとこか。

 

「おお…!ワカヒコ様が出て来られた!あの男も終わりだな! これで我が国のしょうグボァ!」

 

「うっさい、ちょっと黙れ」

 

さっき吹き飛ばした兵士の一人が気に触る事を言ったので軽い霊力弾を顔面にぶつけてやった。

まぁ敵さん達が興奮する気持ちも分からなくはない。ワカヒコと呼ばれる男の神力はかなり大きい。きっと自国で無双してきたんだろう。敵さんの切り札って訳だ。

 

 

 

 

 

………まぁ人間相手に無双してても俺に敵う理由にはならないけどね

 

 

 

 

「お、お主…何故そんなに霊力が上がっていくのだ!?」

 

「ん?そんなの、今まで抑えてきたのを解放してるからに決まってるだろ?」

 

俺は当然の様に答える。霊力が大き過ぎるから抑える練習をした方がいいと諏訪子に言われたので、まだ完全では無いが抑えていたのだ。抑えを解いたら溢れてくる。当たり前だね。

ワカヒコの顔はどんどん曇っていく。他の敵兵達も不安に駆られているようだ。

 

「ええい!一撃できめる!喰らえ!

天之羽々矢(あめのはばや)』!!」

 

ワカヒコの手の弓に神力が集まっていき、神力の渦を巻きながら放たれた。ワカヒコの最大の攻撃だろう。俺はもう片方の手にも結界刃を作り出し、静かに見据えて……

 

「はぁぁああ!!」

 

上空へ弾き返した。ワカヒコの矢は雲を突き抜けて飛んで行く。今度は俺の番だ!

 

「旋空!」

 

俺が刃を振ると、剣圧が空気を媒体に繋がってワカヒコを切り裂いた。

旋空は俺が前世で好きだったワー○ドトリ○ーの技の一つ。まぁ原作と違って単純に斬撃範囲が広がるわけじゃないが…まぁこの際いいとしよう。

ワカヒコはその場で倒れた。

 

「俺たちの勝ちだな」

 

「ふっ、我々に勝ったところでいつかは大和に負けるのが落ち。遅いか早いかの違いよ…」

 

「そうか。じゃあな……!?」

 

俺がワカヒコから目を離して振り返ろうとした瞬間、倒れていたワカヒコの心臓に先程の矢が落ちてきた。しかも初めよりも強い神力が宿っている。ワカヒコはこの一撃で死んでしまったようだ。殺すつもりはなかったのに…

俺は空を見上げ、気配を探るが何もない。いつもの晴れ晴れとした空だった。俺はワカヒコの言葉にも不安を覚えながらも諏訪子達の待つ諏訪大社へ戻った。

 

 

 

 

 

〜諏訪大社 境内〜

 

俺が神社に戻ると諏訪子達が祝勝会の準備をしていた。

 

「あ、お帰りなさい双也さん!もうすぐ準備が出来ますので少々お待ちください!」

 

「お疲れ双也〜!いやぁ初参戦にしてこの戦果は流石だね!私の目に狂いは無かった!」

 

「住み始めてたかだか一週間で仕事が来るとは思ってなかったけどな」

 

そう、俺がこの神社に住み始めて一週間。戦争なんてそうそう起こる事はないと思っていたがとんだ間違いだった。なに?そんな頻繁に戦争やってんのこの時代?ちょっと落ち着けと言ってやりたい。

 

「ねぇ双也〜」

 

「ちょっと落ち着け」

 

「え!? 何が!?」

 

「おっと悪い。今の忘れて」

 

心で愚痴を言ってる時に突然声かけるから諏訪子に言ってしまった。諏訪子はハテナ浮かべてるけどそのうち気にしなくなるだろう。意外と単純だし。

で、何を言いかけたんだろ。

 

「んで何 諏訪子?」

 

「え、えとさ!今回の戦争中に霊力解放したのを感じたんだけど、そんなに強かった?アメノワカヒコって」

 

「いや、周りがうるさかったからちょっと本気出しただけ。………あそうだ、ワカヒコのことちょっと聞かせてくれないか?もう終わったけど、相手の事は知っとかないとな!」

 

そうか、みんなワカヒコ様って言ってたけど本当はアメノワカヒコって言うのか。諏訪子は国の主と言う事で戦争を仕掛けてきた者の事も分かる。しかも神力を持っていたからワカヒコも神なんだろう。諏訪子に聞けば分かると思ったのだ。

 

「ん〜、終わったんだから知らなくても……まぁいいか。いいよ、教えてあげる!」

 

「ああ、よろしく」

 

諏訪子は少し納得していなさそうだったが仕方ない様な顔をして教えてくれた。

 

「アメノワカヒコはね、元は大和の国のアマテラス様に仕える神だったんだよ。でもある日仕事を任されて出かけたあと、8年間もアマテラス様の下に戻らなかったんだ」

 

「なんで?」

 

「シタテルヒメって人に惚れて仕事を放棄したんだよ。要は神による駆け落ちだね。私も正直バカみたいって思ったよ」

 

「………結構しょうもない理由だな。最近思うけど、神って人間よりも人間臭いよな。思った事をすぐに実行するとかさ」

 

俺は諏訪子を見て言った。諏訪子は祟り神。民が信仰していなければ祟りを降らせる神だ。今まではそんな事したことないようだが、もしやったら簡単に人は死ぬ。そして諏訪子はそれを気にも留めないんだろう。諏訪子は優しい。でも性格よりも性質が問題なのだ。神ってのはそういうモノなんだと思う。

 

「それでそのシタテルヒメ? と国を築いてこの諏訪に攻めてきたと。死人を悪く言いたくないがバカだなアイツ」

 

「うん。民は主に似るようでね、あの国の民はよく勘違いをするって聞くよ」

 

おうふ、あいつらがよく勘違いするのは洞察力云々じゃなくて主が問題だったようだ。まぁその民達も今は諏訪の住人だから少しはマシになると思いたい願いたい。

……ワカヒコのトドメになった矢については黙っておく事にした。諏訪子も全知全能じゃないって言ってたし、無駄に話をめんどくさくするだけだ。

ここで準備が終わったようで、稲穂が最後の料理を持ってきた。

 

「は〜い、準備ができましたよ〜!皆さんもそろそろ出てきてくださ〜い!」

 

ん?今襖の方に向けて言ったよな?誰か居んの?

 

「あの稲穂、そっちにゃ誰が----」

 

「は〜い、わかりやしたぜ稲穂さん!今いくぜ〜」

 

「おお、美味そうな料理!これ全部稲穂さんが!?」

 

「おお〜い、酒はどこだ〜?酒がねぇと始まんないぜ!」

 

……ゾロゾロと兵士たちが入ってきた。あいつら待機してたのか?しかもなんかデレデレしてるし。稲穂って凄いな、この国の男牛耳れるんじゃなかろうか?

と言うことで諏訪子や稲穂、俺とその他兵士諸々、後から来たワカヒコの国の民も集まって祝勝会兼仲直り会をした。要は宴会だ。

 

「ほらほら〜旦那も飲んでェ〜!」

 

「ちょ待てって!それお神酒だろ!?度数が洒落にならグボガボッ!」

 

「あはははは!!双也が潰れたぁ〜!」

 

「まだ潰れ切ってません!私の酒も飲んでください〜!」

 

「ガボボグボガボボッ!」

 

おいおい、みんな顔真っ赤にして酔ってるじゃん!稲穂なんかヤバい量のお神酒持ってきたよ!?遮断の力でアルコール分解してなかったらアルコール中毒で死んでるよ!!

 

楽しい宴会は明け方まで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

〜ある国 神々の間〜

 

「ふむ、アメノワカヒコが諏訪に負けたようですね。よかったのですか"タカミムスビ"?あの弓と矢はあなたが与えた物でしょう?」

 

「だからこそですよ"アマテラス様"。もともとはこの国に尽くす為に与えた物。しかしあやつは使命を忘れるどころか弓と矢の力で国を築いてしまった。当然の報いです」

 

「う〜ん、仕事で出会った女と駆け落ちなんて、とても感動的だと思いますが…」

 

アマテラスと呼ばれた神は、どうやらアメノワカヒコの事を怒ってはいないようだ。若干観点がズレている気もするが。一方タカミムスビと呼ばれた神は怒っているようで、駆け落ちなど言語道断!という心構えらしい。

そこへ別の神が会話に参加した。

 

「まぁまぁ、気を鎮めなさいタカミムスビ。もう手は打ったんだろう?もう気にする事ではない。今は諏訪のことだ」

 

「そうですね。よく言ってくれました"タケミナカタ"。もう攻め入る準備は出来たのですか?」

 

タケミナカタと呼ばれた神は静かに首を横に振った。

 

「いいえ、まだ兵の訓練が終わっていません。恥ずかしながら、あまり進みが良くなくて…もう少しかかります」

 

「…まぁいいでしょう。私達にとってはほんの一瞬ですし。あ、あとタケミナカタ?アメノワカヒコを破った"人間"についてはどうです?」

 

「アマテラス様!その事についてですが、そやつの相手、このタカミムスビに任せては頂けないでしょうか」

 

アマテラスの言葉に反応したのはタカミムスビ。アマテラスは突然の提案に理由を求める。

 

「…なぜです?」

 

「もともとは我が与えた矢。神力のこもった矢をその人間は跳ね返した。どんな人間なのか見てみたいのです」

 

アマテラスはしばし考えると、ゆっくり口を開いた。

 

「今回の戦いの指揮はタケミナカタです。判断は彼女に任せます」

 

「分かりました。ではタカミムスビ、報告は後でする。私は稽古があるのでこれで失礼します」

 

タケミナカタはそう言い残すと部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

新たな災厄が、諏訪の国に迫っていた。

 

 

 

 

 




双也くんが放棄してしまったので旋空について私が解説します。
想像としては、原作の旋空の形で、"伸ばした切っ先の部分"と"本体"との間の刀身がない感じのものだと思ってください。つまり相手との間に障害物があっても斬れるって事です。 分かりにくいですよね? 私も説明が難しくて困ってます。ゴメンなさい…

ではでは。

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