東方双神録   作:ぎんがぁ!

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これを書いてる頃に丁度新たな鬼道が発覚するという事実。斬華輪…使えるといいなぁ…

ではどうぞ


第百十五話 挑むは妹、迎えるは兄

異変も終わり、今や其処を彩るのが桜ではなくなった冥界。

たった今其処を彩るのは、桜でもなく、人魂でもなくーーひたすらに大量の弾幕であった。

 

「く……なんで……」

 

空を自由自在に飛び回る紅白の巫女、霊夢は、苦々しい表情をしながら休まずに札や針を放っていた。

小妖怪なら既に蜂の巣になっているであろう。そんな弾幕の連射である。

しかしそれでも、彼女がそんな表情をしているのには理由がある。

 

「なんで……なんでこんなに強いのよっ!!?」

 

「あんまりにぃちゃんを舐めんなよ?」

 

ーーいつまで経っても仕留められないからである。

彼女の札と針による猛攻に対し、双也は未だ涼しい顔で刀を振るい、弾幕を放ち、その猛攻に掠る事さえ無かった。

…流石に、天御雷の能力(無限流)を使いながらではあるが。まぁそれでも、霊夢にとっては全て捌かれている事に変わり無い。

 

「…それなら…これよ!!」

 

連射を止め、彼女が取り出したのはやはりお札。しかし当然ながら唯のお札ではない。

それは、彼女の持つ普通のお札の中では飛び切り高性能な物だと言えよう。

 

「喰らいなさい!」

 

ドバッと大量のお札が、彼女の霊力を込められながら放たれた。それらはその瞬間勢いよく飛び出し、双也へ殺到する。

彼も片手で霊力弾を大量に放ち、相殺を狙う。しかしーー

 

「!? なんだその札!?」

 

「私のとっておきよっ!」

 

彼の弾は一発たりともお札に当たることはない。

というより、お札自体が向かってくるそれらを避けていた。ーーそう、異変の際彼女が何処ぞの雪女に使用したお札である。

いくら威力が高くとも、当たらなければ意味はない。真っ直ぐ飛ぶ彼の弾幕には、最適なお札であった。

 

「ちっ…そんな札があるとは知らなかったな……まぁ」

 

飛んでくるお札を見据え、静かに手を前に掲げる。その掌には、正方形に圧縮された霊力が浮かんでいた。

ーー彼も、タダでやられる気は毛頭ないのだ。

 

「それで勝てると思ったら大間違いなんだけどな」

 

長方形の霊力が、無数に分かれた。

 

「アステロイド・相殺弾(ブレイクシュート)

 

無数に分かれた霊力はお札に向かって飛んでいく。

相殺を目的に放たれたその弾の速度は、お札とほぼ同じであった。

避けても追いかけてくる彼の弾幕に、霊夢のお札も追いかけ回され、遂には、かなりの量のお札は確かに相殺された。

なんとか逃げ切ったお札は双也に辿り着くも、彼の無限流によって切り裂かれ、彼に一歩届かず炸裂する。

結局、このお札でも双也に届くことはなかった。

 

 

 

 

まぁ、霊夢の狙いはそれなのだが。

 

 

 

 

「思ってないわよそんな事っ!」

 

「っ!」

 

札の炸裂による煙で、彼の視界はお世辞にも良くはない。その隙を狙い、霊夢は双也の懐に潜り込んでいた。

 

「神技『天覇風神脚』!」

 

霊力を纏わせ、威力の跳ね上がったサマーソルトを連続で放つ。ただの足技ではあるが、直接攻撃する為威力はそれなりにある。

完全に隙をついた攻撃は、確かに入ったーーと思いきや。

 

「縛道の八『斥』」

 

すんでのところで滑り込んだ彼の手の甲。それに張られた円形の簡素な結界により、衝突した霊夢の蹴りは弾き飛ばされた。

技の不発によってよろめいた彼女の身体へ、双也は畳み掛ける。

 

「特式八番『斥気衝』!」

 

「うぁぅっ!?」

 

数枚に重ねられた"斥"の結界をガラ空きの腹へ叩き込まれ、霊夢は呆気なく吹き飛ばされた。

そもそもが拘束や防御に使われる縛道であるこの特式には、殺傷力は皆無である。しかし、突っ撥ねて引き離すことにはとことん秀でていた。

その能力は遺憾無く発揮され、せっかく近付いた霊夢も最初以上に引き離された。

 

悔しげな表情をする霊夢は、自らの腹を抑えながら言った。

 

「………さっきから、知らない術ばっかり使うわね。私の結界術でも無ければ紫とかの妖術でもない。………また、私の知らない事…」

 

「…そうだ。この術は俺独自の物。長い時間をかけて創り上げた"鬼道"って術だ」

 

「鬼道……」

 

霊夢の頭に、再び"知らない事象"が反復する。しかし、ちゃんと決意を固めた彼女に混乱という物は無かった。

むしろ、兄の事をまた一つ知れて良かったくらいである。

ーー双也は鬼道を扱える。

今まで言わなかった事への怒りがまた少し増える反面、その事をしっかりと頭に刻みつける霊夢であった。

 

「ついでだから、その鬼道を使ったスペルでも見せてやる。……さっき考えたんだがな」

 

そう言って笑い、彼は新たなスペルカードを取り出した。

未知の術、そして今までの例に漏れず強力であろうスペルを予想し、霊夢は改めて構え直す。

 

そしてーー宣言された。

 

「鬼道『一匹足りない百鬼行軍』」

 

瞬間、彼の背後に巨大な陣が形成され始めた。

それは瞬く間に組み上げられ、大気を震わせるかのような巨大な霊力を迸らせていた。

 

「まずは…一から四十九まで」

 

双也が手を突き出すのに反応し、陣から大量の弾幕が放出された。

辛うじて目に見えるかという程の小さな弾幕ーー衝。

真っ直ぐで白いレーザーの弾幕ーー白雷。

蒼く煌めく爆炎の弾幕ーー蒼火墜。

どれも彼の鬼道に類する技である。

色だけ見れば、誰もが目を奪われる程の美しさ。しかしその弾幕に規則性などは殆ど無く、兎に角ばら撒かれていた。

もちろん、前世のある漫画が元になっている鬼道には、双也の知らない鬼道もある。なので正確には四十九つの種類全てを放っているわけでは無いのだが…まぁそれは、霊夢には与り知らぬ事である。

 

「…ふっ、この程度じゃ当たらないわよっ!」

 

"兎に角ばら撒かれる"。それによって一番厄介なのは、弾幕勝負の醍醐味でありコツでもある、パターン作りを行えない事。

弾幕勝負に関してのプロフェッショナルである霊夢でも、普段の弾幕勝負では基本的にパターンを作っている。なので規則性の無いこのスペルには初め面食らった物だがーー彼女の経験、そして勘が良く働き、初見であるこのスペルにも上手く対処していた。

叫んだ彼女の表情は、汗を垂らしながらも不敵に笑っていた。

 

「隙だらけ、よ!!」

 

余裕が出来たからか、暫しの間中断していた攻撃も再開。お札や針が再び双也に迫る。

しかし、同じく余裕を残している双也も、落ち着いて弾幕を斬り落とし、再び手を突き出して言った。

 

「なら次だ。切り替え…五十から八十九」

 

その宣言が響き渡った瞬間、ばら撒かれていた鬼道たちはパッと消え失せ、代わりに、陣がまた巨大な霊力を放ち始めていた。

そして次の瞬間ーー

 

「っ!? 何よこれ!?」

 

「移動制限だ。そん中で弾幕避けろ」

 

「はぁ!?」

 

霊夢は、無数に浮遊する光の杭ーー六杖光牢と、その周囲を回る幾つかの黒い物体ーー九曜縛に囲まれていた。それは双也の言った通り、彼女の移動を制限するものである。越えようとすれば瞬時に攻撃される弾幕の一種だ。

 

彼女の驚愕などつゆ知らず、双也の陣から攻撃が開始される。始めに放たれたのは、灰色の弾幕ーー廃炎だった。

大量に放たれるそれは、炎らしく少しだけ尾を引いて彼女に迫る。

それを見、霊夢は焦らずに弾幕を放った。

 

「はっ、そんな弾幕なら相殺してーー!?」

 

向かっていく弾幕。

相殺する為の弾幕なので、当然狙いは向かってくる廃炎だった。

しかし、霊夢の弾幕は、衝突した瞬間に燃え上り、廃炎を止められた弾は一つもなかった。

 

「それ、避けるしか無い弾幕だからな」

 

「言うの遅いっ!」

 

相殺が出来ないと分かった霊夢は、即座に回避に移った。

相殺出来ないと言っても、密度は高く無い攻撃だ。霊夢にとって避けるのは容易である。

 

「ふむ…次」

 

放たれた廃炎が全て終わると、双也は手を突き出して新たな弾幕を放つ。

廃炎を避け切った霊夢を襲ったのは、とんでもない風速を誇る竜巻ーー闐嵐である。

 

「うぐっ……前が……っ!」

 

瞬間、前方に迫る物に気がついた霊夢は、霊力を込めて大幣を横に薙いだ。

真っ二つになったのはーー岩。

 

「っ………風に乗って…!!」

 

彼女が見据えたその先は、闐嵐に乗って飛んでくる岩ーー大地転踊と、一対になって回転しながら迫る蒼炎ーー双漣蒼火堕であった。

風に乗って回転しながら、それでも霊夢を狙って放たれている。弾幕が大きくなり、その隙間も反比例して小さくなったが、霊夢は狭い移動範囲の中でも大幣を使い、必死に避け続けた。

 

そして、向かってくるそれらが無くなったかと思うとーー霊夢は、周囲に電撃が疾るのに気が付いた。

 

「この段階はこれで最後だーー行くぞ」

 

吹き荒れていた闐嵐を突き破って放たれたのは、巨大で強大な、雷。

 

ーー飛竜撃賊震天雷炮。

 

「っ!!? (まず)いっ……」

 

制限もかかり、避けられない事を悟った霊夢は、反射的にスペルカードを取り出した。

……耐え切るつもりである。

 

「夢境『二重大結界』!!」

 

霊夢の周囲を包んだのは、二重になった四角い結界。

元々防御に使われる結界術である上、二重になったこのスペルには高い耐久力がある。

彼の言葉から、まだ先があると推理した霊夢は迎え撃つのではなく、耐え切ることを選んだのだ。

どちらにしろ、大きく体力を消耗するだろう、とは分かってはいたのだが。

 

備える霊夢を、爆撃は容赦なく呑み込んだ。

 

「〜〜〜〜〜ッッ!!」

 

結界は、当たった瞬間から軋み始めていた。

魔理沙のマスタースパークを上回るかと思われる程の砲撃は、二重に重ねられた防御結界ですら砕きかねなかった。

加えーー

 

ドパンッ

 

「ッ!?」

 

軋む結界に新たな衝撃。数秒毎に襲ってくるそれは、爆撃に混じって飛んでくる雷の衝撃破ーー雷吼炮である。

ただでさえ()っていた彼女の結界に、その攻撃は余りにも辛かった。

 

ーー容赦が無い。

 

霊夢は、双也の更なる一面を垣間見た気がしていた。

 

 

 

「だから…何よっ!!!」

 

 

 

そう、だから何だ。双也が強い事なんて分かっていた事だ。容赦して貰えるなんて初めから思っていない。むしろ霊夢ならば、彼が手加減していたと知ったなら別の理由で彼を殴り倒すだろう。

 

"容赦無い"なんて今更過ぎる。彼の本気に打ち勝ってこそ意味がある。双也がどれだけ強かろうと、霊夢の気持ちが変わることは無いのだ。何せ、"自分より相手が強い"なんて今までと何も変わりはしないのだから。

負けるわけには……いかない。

 

ーー神霊

 

 

 

「夢想封印ッ!!!!」

 

 

 

最早結界も限界、と思われた折、彼女は守りを捨ててスペルを唱えた。

溢れ出した霊力は虹色の弾を幾つも作り出し、次々と爆撃へ衝突する。それは、彼女の想いが反映したように強力なスペルであった。

 

「私はっ…あんたを殴るまで…!」

 

衝突部は強い光を発しーー

 

「負けないっ!!!」

 

 

 

 

 

ーー大爆発を起こした。

 

 

 

 

 




あと四話程は続きそうです。

ではでは。
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