東方双神録   作:ぎんがぁ!

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はい、諏訪での閑話第二回ですね。
やっぱり同居人との交流は大事だと思うんです。

それでは!どうぞっ!


第十話 買い物帰りの制裁、戦いの兆し

初仕事から一ヶ月。俺はもはや朝の日課となっている瞑想を終えて机の前にいる。目の前には食欲が掻き立てられるような香りの料理が並んでいる。

 

「「「いただきます!」」」

 

手を合わせ、声を揃えてそう言って食べ始める。稲穂の料理は永琳並みに美味い。まぁ稲穂の料理の方が、俺としてはある程度知っている物なので、安心感は別物だが。

 

「なぁ諏訪子。何でも知ってるわけじゃないのを承知で聞くけど」

 

「何? 私が答えられる様なのにしてね?」

 

「ま、まぁ……えと、俺の寿命って今どうなってんのかな?起きた時は神格化してたからいいけど、今はどっちかっていうと人間に近いよな?」

 

俺が密かに心配していたこと、寿命。神がとても長生きなのは知っている。でも俺は半分しか神ではない。そうなるとどっちの寿命に合わせることになるのだろうか?

せっかく神に転生したんだからすぐに死ぬのは御免こうむりたい。

 

「ん〜寿命かぁ…よくわかんないけど、双也は現人神だけど、完全に神にもなれるんだよね?それなら多分神としての寿命に沿うことになると思うなぁ。双也は信仰も必要ないし」

 

「ああ、確かに信仰は必要無いですね。と言うより、信仰を得られる事がまずあり得ないですね」

 

なんで?と口に出かけたがよく考えてみるとそうだ。俺は天罰神。人々に恵みを与えるどころか罰を与える神だ。誰だって自分たちに害をもたらすヤツを信仰したりしないだろう。俺は信仰とは無関係ということだ。

心配ごとが一つ減った気がした。

区切りがついたところで稲穂が思いついた様な口調で俺に話しかけた。

 

「そうだ、双也さん!また買い出しを手伝ってくれませんか?そろそろ食材が尽きそうなんです」

 

「ああ、いいよ。荷物持ちは任せてくれ」

 

「はい。お願いします!」

 

稲穂はニッコリ笑って言った。俺はこの一ヶ月、度々稲穂の買い物に付き合っていた。居候だし、なんか手伝いたかったのだ。これで三度目くらいになる。まぁたまには町に顔を出したいというのもあるが。

ということで出かける準備。外に出るともう稲穂が待っていた。

 

「よし、お待たせ。じゃあ行こう」

 

「はい!」

 

「いってらっしゃ〜い!」

 

境内で諏訪子が送り出してくれた。なんかニヤニヤしてる気がするけど、なんか言ってきたらゲンコツでも食らわそう。

店に着くと稲穂はテキパキと食材を選んで買っていった。食材を吟味するのにも数秒しかかからない。稲穂の家事スキルって相当なんだな。度々驚かされる。

 

一通り買ったら休憩ということで団子屋さんに寄った。

もちろん頼むのはみたらし団子。前世からの好物だ。俺の中ではこれ以外考えられない。稲穂は普通の団子を頼んだようだ。

 

「おお、この団子美味い!今まで食べたこと無いくらいだ!」

 

「フフッ そうでしょう?ここは町に来た時にはよく寄る行きつけのお店なんです。店主さんもいい人なんですよ」

 

「いやぁ稲穂さんには世話になってます!なんたって稲穂さんが店にくるだけでいつもの三倍くらいは客が来るんですからね!」

 

会話が聞こえたらしい店主さんが出てきて言った。確かに人が良さそうな顔をしている。これなら普段でも繁盛していそうだ。

そして振り返ると"いつもの三倍分の客達"がこっちを睨んでいた。なんで?

その様子を察したらしい店主さんが耳打ちをしてきた。

 

「多分、旦那が稲穂さんと一緒にいるから目の敵にしてるんだと思います。ほら、稲穂さんかなりの美人でしょう?この国にゃ稲穂さんに憧れるヤツも少なくないんですよ」

 

それを聞いて納得した。じゃあこいつらストーカーって事か?稲穂が恋人を作らないわけだ。みんな下心丸出しだもんな。よく見ると稲穂も気不味い顔してるし。

……一言言ってやるか。

 

「なぁお前らさぁ、人の迷惑も考えられないのか?」

 

「「「あぁん!?どーゆー意味だゴラァ!」」」

 

「お前らが付きまとってる所為で稲穂が困ってる事にも気づかないのかって言ってんの。お前ら稲穂に憧れてんだろ?好きなヤツの気持ちくらい考えてやれよ。それで困らせてんじゃ本末転倒だろ?」

 

好きな奴がいたらまず第一はそいつの気持ち。そいつを想ってるなら尚のこと自分が困らせてはいけない。コレって普通じゃないか?

 

「るっせぇ!ポッと出の脇役が!俺らはテメェの何倍も稲穂さんのことを分かってるんだよ!口出すんじゃねえ!」

 

「それが自己満足って事にもいい加減気づけ。あと口調が不良みたいだぞ。直した方が稲穂にも好印象なんじゃないか?」

 

ストーカーたちはどんどん青筋が深くなっていく。店主さんもここでは騒がれたくない様で少し苦い顔をしている。

ふぅ、しょうがない。俺は少し霊力を解放して薄く広げた。

稲穂が少し心配そうな視線を向けてくる。霊力を感じ取ったのだろう。

 

「そ、双也さん?」

 

「心配すんな稲穂、乱暴はしないさ。ただちょっと、口で言ってもわからなそうだから」

 

「何だとゴラァ!!」

 

「お前ら、ちょっと頭冷やしてこい」

 

俺はそう言うとかざした手のひらをグッと握った。するとストーカーたちはドサドサと倒れていった。周りの人は驚いた顔をしている。

 

「だ、旦那…何をしたんです?」

 

「ん?いや、ただ気絶させただけだよ」

 

そう、気絶させただけだ。間違っても殺してはいない。

広げた霊力を媒体に遮断の力を奴らに繋げ、間接的に意識を遮断したのだ。少し複雑な技なので咄嗟には使えない。

 

「悪い店主さん。騒がせちゃったな。また来てもいいか?」

 

「え、ええ…そりゃ構いませんが、出来れば今みたいのは今日限りにして下さい…」

 

「ああ、そうする。ホント悪かった」

 

俺は荷物を持ち、稲穂の手をとって店を出た。ちょっとやり過ぎたと後悔している。帰り道、稲穂にちょっと言っておこうと思い、声をかけた。

 

「稲穂、さっきみたいな奴らよくいるのか?」

 

「まぁ…はい。私に何かする訳でもありませんし、好意を向けてくれているのは分かっています。そんな方々を私から突き放すのはなんとなく気が引けてしまって…」

 

やっぱりな…あいつらのセリフだとよくつきまとってるってのは予想してた。それで稲穂が何も言えずにいるんだろうって事も。やっぱり稲穂の家系は他人に対して優しすぎるのだ。優しいのは良いことだけど、度がすぎると自分を苦しめてしまう。稲穂はその典型的な例だ。

 

「稲穂、お前が優しいってのはよく分かってる。でも自分が嫌って思ったことはしっかり口に出して言わないと、もしかしたら別の人も嫌な思いをするかもしれないんだぞ?」

 

「どういうことです?」

 

「さっきの奴らに例えるけど、あいつらは稲穂が嫌がってるのにも気付かずに付きまとってた。そこで稲穂が嫌だってしっかり言っておけばあいつらも気づくだろ?」

 

「はい」

 

「でもそこで言わなかったとする。そうすると、あいつらはもしかすると他の女性にも同じ事をするかもしれない。嫌がられる行動だって気付いてないからな」

 

間違ってる人がいたら、それを正すのは別の人だ。何も言わなかったらどんどん悪化してしまう。キツく言う事も大切なのだ。

 

「…………すみません双也さん。私、そこまで気がつかなくて……」

 

「分かってくれたらいいさ。今回は俺じゃあいつらを説得出来なかったからまた来るだろうけど、そん時に気づかせてやればいいだろ」

 

「はい…!分かりました!」

 

よし、これで大丈夫だろ。稲穂もいい笑顔に戻ったし、一件落着!

俺たちは晴れ晴れした気持ちで帰路についた。

 

が、その心はすぐに曇る事になる。

 

 

 

丁度夕日が沈みかけた頃、俺たちは神社に着いた。

 

「「ただいま(帰りました)〜!」」

 

俺たちはそれなりの声で帰宅を知らせ居間に入った。すると諏訪子が血相を変えて走ってきた。手には何やら紙が握られている。

 

「稲穂〜!双也〜!大変だよ!!」

 

「どうした?」

 

「ちょっと前に矢文が届いてね、戦争を申し込まれたんだよ!!」

 

「なんだ戦争か。前みたいに俺が出て片付ければいいんだろ?」

 

なんの事かと思えば戦争の事だった。ちょっと構えて損したな。

………戦争をこんな簡単に受け入れられる様になってしまった俺はもうこの時代に毒されているのだろうか…?少し悲しい…

 

「そんな単純な事じゃないよ!今回申し込んできたのは……」

 

次の瞬間には俺の顔は余裕から驚愕へと塗り変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「アマテラス様の率いる"大和の国"なんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 




ほのぼの日常とか、能力の新しい使い方とかを書きたかったのに……なんか違うものになっている気がする……。

あ、ストーカー達に言ったことは双也くん、ひいては私の考え方なので真には受けないで下さい。
ああそうだなって思ってくれたらそれでもいいですが。

ではでは。

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