東方双神録   作:ぎんがぁ!

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前話と対になるタイトルにしてみました。
そういう細工をすると上手く書けてるような感じがしますw

ではどうぞ!


第百十六話 挑むは人間、迎えるは妖怪

ぶつかり合った二つのスペル。相殺し、大爆発を起こした後の煙の中に影が二つ。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ…」

 

「まさか、防ぐどころか壊すとは…」

 

霊夢の底知れない力と才能に、冷や汗を垂らしながら双也は呟いた。たった今相殺された鬼道、飛竜撃賊震天雷炮は、主に攻撃に使う"破道"の中でも八十八という高番号を与えられた強力な物だ。その上雷吼炮も重ねられ、普通ならば相殺など到底出来ない。しかしそれを、霊夢は見事に打ち破った。しかもあれだけ疲労した状態で。

 

どこまで力を秘めてるんだ…こいつ…。

双也が思う事はそれに尽るのだった。

 

だが、まだ終わってはいない。

 

「ちょっと…いやかなり驚いたけど、次で終わりだ」

 

再び彼の背の陣が輝き始めた。

そう、彼のスペルはまだ終わっていない。

一から四十九、五十から八十九と来れば次はーー

 

「九十から九十九。…最後だ」

 

彼はまた、新たな弾幕を放出するべく手を前へ

 

 

 

 

 

「…! がはっ!!?」

 

 

 

 

 

ーー突き出されることはなかった。

吹き飛ぶ体を翻し、見ると目の前には

札を高く掲げた霊夢の姿が。

 

「っ! やっば…」

 

「神技『八方鬼縛陣』ッ!!」

 

叩きつけられたお札は八角形の陣を瞬時に形成し、高密度の霊力を噴出させた。完全に隙を突かれた双也は避けられないことを悟り、気休めながらに結界を張りながら呑み込まれた。

 

 

 

霊夢は確かに、限界に近かった。

 

スペルの二段階目を辛くも退けたが、彼女に次の段階を避けきる自信はなかった。体力もそうだが、二段階目でこれだけ苦戦するスペルの三段階目ーー彼女の、予知に迫る勘が告げていたのだ。

 

ーー次が発動したら、負ける。

 

そんな中彼女が見たのは、陣が輝き始め、双也が弾幕を放出しようと手を突き出そうとしている光景。

 

殆ど、無意識での行動だった。

 

"負けられない"、"次が発動されれば終わり"。その事が頭に渦巻いていた霊夢が取った行動は、発動される前に壊す事(・・・・・・・・・・)だったのだ。

彼女の本能が、身体を動かした。

 

手が突き出されるより前に彼女が唱えたのは、『刹那亜空穴』。紫の能力の様に空間を開き、越える技である。

越えた先は勿論、双也の目の前。飛び出ると同時に大幣で彼の腹を殴り、吹き飛ばしたのだ。

追撃も同様。

刹那亜空穴で懐に入り、八方鬼縛陣を唱えた。

 

「………くっ」

 

結界を張ったとはいえ、至近距離でのスペルの直撃である。彼にとって致命傷でなくとも、発動中のスペルには強く響いた。

霊夢の狙い通り、使用者がダメージを受けたため、三段階目を発動することなく双也のスペルはブレイクした。

 

ブレイクした直後、八方鬼縛陣はドウッと吹き飛ばされ、中から少し不満げな双也が出てきた。

 

「……ちっ、まだ途中だったのに」

 

「発動されたら、ヤバそうだった…からね…」

 

「……まぁ間違っちゃいないんだがー」

 

疲労は残っているものの、少しずつ息の整い始めた霊夢は、"やってやったぞ!"というような笑みを浮かべて答える。対して双也は、スペルを最後まで発動できなかったことに不満を漏らし、後頭部をガリガリとかじるのだった。

 

「…しょうがないな。再開と行こうか」

 

「…! 望むところよ!」

 

勝負の再開に備え、それぞれ獲物を構え直して意気込む二人。

彼らに迫る"飛来物"には、当人達も気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数十分前 紫vs魔理沙〜

 

「ああ厄介だなぁくそ!」

 

「ふふ、ほらほら頑張りなさいな」

 

愚痴を叫ぶ魔理沙は、余裕の表情を讃える紫の弾幕を辛くも避けていた。

彼女が見据えているのは、紫を中心に左右へ広がり、突然迫ってくる真っ直ぐな弾幕と、同じく紫を中心にして回転して広がる大弾。

ーースペル、罔両(もうりょう)『ストレートとカーブの夢郷(むきょう)

 

微笑む紫は、危なげながらも避け続ける魔理沙を愉快そうに見ていた。

 

「やるわねぇ貴女。私のスペルをこれだけ破れる者はそう多くないわ」

 

「ちっ、余裕ぶっこいてて何言ってやがる! まだ全然本気じゃありませんよってか!?」

 

「御名答♪」

 

心底愉快そうな表情をした紫は、手に持つ扇子を突き出し、妖力を更に開放した。それにつられ発動中のスペルもその強さを増していく。

一回り大きく、一回り早くなった弾幕が魔理沙に迫った。

 

「舐めてもらっちゃ困るぜ」

 

しかし彼女に焦りは無い。

ニヤッと笑う魔理沙の取り出したスペルカードは、眩しいほどの強い光を放っていた。

 

 

 

「魔砲『ファイナルスパーク』ッ!!」

 

 

 

構えた八卦炉からは、超高火力を誇る砲撃が放たれた。

マスタースパークの上位互換として進化したこのファイナルスパークは、その大きさも早さも輝きも、そして威力も、今までとは桁違いである。

 

向かう弾幕は悉く光に消えていく。妖力を開放した上での紫のスペルも、火力に特化したこのスペルの前では意味をなさなかったのだ。

その威力に少し驚くも、紫は冷静な思考を止めはしない。

 

「境符『四重結界』」

 

新たに唱えられたスペルは、霊夢の"二重大結界"に似た結界を四つ創り出し、紫を中心に展開した。

 

ファイナルスパークは、結界に守られた彼女を容赦なく吞み込む。激しい閃光に襲われるも、紫の表情は厳しくはなかった

 

「…人間にしては桁違いの威力ね」

 

ファイナルスパークを真っ向から受ける中、彼女が目にしたのはヒビの入っていく自らの結界だった。

少しずつ、ピキピキと音を立ててヒビが広がる。ファイナルスパークが終わる頃には、ヒビの入ったニ枚の結界しか残されていなかった。

 

「…くそ、ファイナルスパークでもダメかよ」

 

「ふふ、でも人間にしてはやるわね。私の結界を破るなんて、人間を超えた威力だわ」

 

「私は人間を辞めるつもりなんて無いんだが、な!」

 

少しの会話の後、魔理沙は不意打ちをするように弾幕を放ち始めた。スペルではない、いつもの星型弾幕である。

魔理沙が期待していた通りの強さであったことに少しの嬉しさを感じながら、紫も弾幕勝負を再開する。

 

星の弾幕は尾を引く流星の如く紫へ迫る。ただ、霊夢のようなホーミング性能のある弾ではないので、紫にとってはいくらか楽であった。

速さを生かして降りかかる星を、紫はスキマを使ったりして避けていく。彼女も反撃として弾幕を放つも、異変解決者である魔理沙には避けられていく。

流石に埒があかないと考えた紫は、新たなスペルを取り出した。

 

「さぁ、次のスペルよ」

 

妖力を込め、宣言。

 

 

 

「紫奥義『弾幕結界』」

 

 

 

溢れ出した妖力は二つの陣を作り出し、魔理沙の周りを回転し始めた。

何が来るか身構えていた魔理沙に対し、その陣は彼女の周囲へ細かい弾幕を放った。それらは真っ直ぐ魔理沙へ向かうのではなく、まるで結界を張るように一定距離で止まっていく。

その様子を見て、魔理沙は経験から推測した。

 

 

ーーあぁ、後々厄介になるスペルだなコレ

 

 

分かっているのにそれをわざわざ待つ彼女ではなかった。

言葉にするより行動する。失敗したらそれはそれ。

そんな言葉が当てはまるようなカラッとした性格をしている魔理沙である。

後で厄介になるとわかっているスペルなら、厄介になる前に壊せばいい。

流石は霊夢の親友というのか、アレだけ性格が違っても何処か似ている部分がある二人である。

魔理沙は静かにスペルカードを取り出した。

 

「しゃらくせぇ! 一気に吹っ飛ばして終わりだぜ!」

 

カードをビッと突き出し、宣言した。

 

「彗星『ブレイジングスター』!!」

 

箒に取り付けられた八卦炉から巨大な光が噴き出す。それは普段砲撃として放つマスタースパークそのものである。

その推進力を利用して高速突進。それがブレイジングスターだ。

強い推進力を得た魔理沙は、厄介になる前の"結界"の穴を突き破り、一直線に紫へ迫った。

 

「喰らいやがれっ!!」

 

「遠慮するわ♪」

 

力技で迫ってきた魔理沙のブレイジングスターに対し、紫は足元にスキマを開く事によって軽々避ける。

彼女がスキマから出てきた時には、通り過ぎた魔理沙が旋回して紫の方へ向かってくるところだった。

 

真正面から突っ込んでくる魔理沙。

その様子を見て、紫は微笑みを深くする。

その手には、少しだけ"妖力と霊力の境界"を弄った妖力が集まっていた。

 

「弟子っていうのは……」

 

魔理沙は迫る。一直線に。

 

「師の技を盗んでこそだと思わない?」

 

 

 

 

ーー破道の三十三『蒼火堕』

 

 

 

 

「ッ!?!?」

 

放たれた蒼い爆炎は、向かってくる魔理沙に直撃し、爆発を起こした。

"被弾"というよりも"衝突"したため、服に燃え移るなんて事は無かったが、代わりに反動でとてつもない衝撃が彼女を襲う。

 

声にならない苦痛の声をあげ、魔理沙は吹き飛ばされた。

 

「ぐぅう! がぁあ!」

 

吹き飛ばされた魔理沙は、空気圧で身動きが取れないでいた。蒼火堕による、意識が飛びそうになる程の衝撃で身体中が痛み、上手く力が入らない。

吹き飛ぶ先には硬い地面が見えている。きっと衝突すればただでは済まないだろう。

そんな時に彼女が考えたのはーー

 

「くっ…止ま、れっ!」

 

箒の推進力を使っての減速である。

元々彼女の魔力を元にして飛んでいた箒。故に彼女の体と同じく力は中々入らなかったが、少しずつ減速はできていた。

だがそれも限界は訪れる。

 

ーーもうダメだ!

 

魔理沙が限界を迎え、強い衝撃を覚悟して目を瞑る。

 

瞬間、ドカッという鈍い音が鼓膜を震わせた。

 

「痛っ!!……何すんのよ、魔理沙っ」

 

「………?」

 

予想した衝撃と違って戸惑う中、空中に止まる。思っていたよりも減速出来ていたようだった。

自らへの非難にそちらを向けば、そこにはボロボロになった彼女の親友ーー霊夢が居た。

 

「何、も…反撃食らって、吹き飛んできたとこだぜ…」

 

「! あんたも…苦戦してるみたいね」

 

「苦戦どころじゃあ、無いぜ。遊ばれてるっての」

 

「………こっちもよ」

 

冷や汗を垂らしながら霊夢が見た先には、未だ汗の一つも浮かべていない双也の姿があった。

 

双也が吹き飛んできた魔理沙の登場に少し戸惑う中、彼の隣にスキマが開き、悠々と紫が出現した。

慣れているのかーー実際慣れているがーーとくに驚きも見せず、隣へ立った紫へ言葉をかける。

 

「どうだ調子は」

 

「好調ね。あなたは? ちゃんと作れたかしら」

 

「まぁ…何枚かはな」

 

彼はバラッとカード数枚を手で広げ、紫へ出来た事を証明する。紫は横目でちらと見て確認した。

 

「……ならいいわ」

 

それだけ答え、自分たちを見つめる二人の解決者へと視線を移した。

 

「ちょうど揃ったし、そろそろ終わりにしないか?」

 

双也は二人に向けて言った。彼はさして悪意を込めて言ったわけでも無かったが、彼女らには挑発しているように聞こえたらしくーー

 

「そんな簡単に終わらせないわよ!」

 

そんな声が響くのだった。

まぁどの道、彼女らがどう答えようとも、二対二ーーつまり紫&双也 vs 魔理沙&霊夢になった時点で、長くは続かないだろう、と誰もが思っていた。

ーー誰が勝つかは、お互い違う二人を想像していた。

 

「さぁ、これからだぜ!」

 

「ふふ、楽しくなってきたわね」

 

双也達は。

 

「…行くわよ魔理沙。気ィ引き締めなさい」

 

「言われなくてもだぜ」

 

霊夢達は。

 

お互い視線で牽制し合う四人。

いつもは静かな冥界も、この日だけはピリピリと空気が張り詰めていた。

 

 

 

 

最後の勝負が、始まる。

 

 

 

 

 




二対二すんげぇ難しいです! うまく書けないから結局一対一になるという始末。ここから頑張ります!

ではでは。
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