キリは悪いですが。
あ、あと結構短めです。
ではどうぞ!
幽々子達から分かれて暫く。
時刻で表すならば午前三時ほどだろうか。相変わらずあたりは暗く、虫達の声すら殆ど聞こえない。いくら人外である双也とフランと言えど、やはり寒さを感じる秋の夜。正直、早く明けて欲しいところである。
ーーまぁ、その儚い願いは叶う事などない訳だけれど。
「ん、なんか嫌な予感がするぞ」
フランを背負って闇を駆ける双也は、そんな事をポツリと零した。肌寒く感じて彼の背中に引っ付いているフランは、彼のそんな言葉に当然疑問を返す。
「どうして?」
「ん〜…予感だから説明しにくいんだけど…」
顔を見ずとも分かる困った声。フランは特に煽る事はしなかった。
「なんか、流れ的にさ…魔理沙達、幽々子達ときたら今度は…ってさ」
「ああ…確かにそうかも…」
フランが納得するのは容易であった。
ジンクス、とでも言うのか、流れというものは案外当たりやすいモノだ。その人の気分にも寄るのだろうが、そういうふっとした予感は意外と当たる。
そして、それが何の障害にも会わず当たった時、それはーー
「え…? な、なんでフランが此処に…?」
予定調和、というのである。
「あ、お姉さまだ! 咲夜も!」
双也の背中から乗り出し、フランは現れた紅魔館の二人ーー咲夜とレミリアに声を掛けた。咲夜に関しては、"なぜあまり外にでない妹様が、よりによって異変の真っ最中に出かけているのか"と、変わらない澄まし顔の裏で驚愕していた。表情に思い切り出てしまっているが、それはレミリアも然り。
「フラン! 異変の最中なのだから出てはダメでしょう!?」
「えぇ〜? お姉さま、話が違うよ。もうお外に出ても良いって言ってたじゃない」
「状況を考えなさい状況を!」
「お姉さまだって、真面目に異変解決とかする気ないんでしょ? 面白そうだったからーとか、そんな理由のハズ」
「うっ…それは、そう…だけど…」
慌ててフランを叱るが、逆にレミリアが煙に巻かれてしまう始末。叱っていた筈が、いつの間にか彼女が小さくなってしまっていた。
端から見れば微笑ましい限りなので、双也と咲夜の大人組は静かに見守っていた。
ーーしかし。
「〜〜ッ! 双也ッ! あなたがフランを連れてきたの!?」
繰り返される問答の中で流されてしまう妹への気持ちは、その同行者へと矛先が変わった。
「……ん? 俺?」
「そうよ! フランは普段、家ではおとなしくしてるのよ!? それが突然外に飛び出したりして……あなたしか原因が見つからないわ!」
「…………………」
八つ当たり、だな。
瞬間的に、彼は思った。確かに、フランは双也を追ってこの竹林へと来た。そういう意味では、なるほど、確かに彼が原因だろう。
しかしそもそも、初め双也はフランを連れて行くつもりはなかった訳で、仕方無しに了承しただけなのだ。完全にフランの一存で事は決まった。
ーーならば、レミリアが彼に怒るのは、いささか筋違いというものではないだろうか?
咲夜も双也も、直ぐにそれには気が付いていたが、どちらも言葉には出さなかった。
どうせ聞きはしないだろう、と言うのも理由の一つだが、何より
ーー
「人の妹を勝手に連れ出すなんてどういう了見かしら!? しかも異変の真っ最中なんて! 考えが浅はか過ぎるわ!」
ビシッと指差し、双也に言う。
「あなた、フランにお兄さまって呼ばれて調子に乗ってるんじゃないでしょうね!? この子の実の姉妹は私なんだから、それを蔑ろにしたら許さないわよ!!」
脱線し始めた事には気が付かない。
「そもそも何よその状態は! 勝手に連れ出した上におんぶなんて何様よ!! 私だってそこまで積極的になった事ないのにっ!!」
終いには欲が見え隠れしている。
怒りの解放と同時に、普段から溜め込んでいた色々なものが出てきたらしい。言いたい事がありすぎて、レミリアの頭の中は、端から見ても相当に混乱してしまっていた。
最早、怒気というよりは頭に浮かんだ事をそのまま言葉にしているだけの様な、シュールな光景になってしまっていた。
これが所謂、カリスマブレイクという奴なのだろう。
その場の三人共が、同じような事を考えていた。
「あ〜もう! 言葉だけじゃやり切れないわ! 双也!! 私と勝負しなさい!!」
「…はぁ、やっぱりそうなるのか」
あまり驚きはしない。むしろ予想通りである。
唐突に申し込まれた勝負ではあった。しかし双也は、彼女達とはち会う直前に感じた"嫌な予感"から、そのうち勝負になるんだろうなぁ、とは予想していた。
ただ…そろそろ彼も、いちいち戦うのが面倒に感じてきたのもまた、事実。アリス戦、妖夢戦ーーは彼の意思であったがーーを始め、月の光でおかしくなった妖精達の相手も全て双也が担っていたのだから、当たり前である。彼の面倒臭がりは、いつまで経っても消えはしない。
「はぁ……一瞬で終わらせる」
「ふっ、 やってみなさい!」
レミリアは意気揚々と、双也は実にかったるそうに、観戦を決め込む咲夜とフランを置いて空へと上がった。
それぞれ一枚ずつスペルカードを取り出し、構える。
「この間の宴会でのリベンジよ! 本気で来なさいっ!」
「まだ引きずってるのかよ。もういいじゃんかそれは」
「そうもいかないわ! 高尚な私達吸血鬼が、簡単に負けていいはずがないのよ!」
「……そうか」
そんな、軽い会話を交わし、互いに弾幕を飛ばし始めた。
「先ずは…様子見よ」
持ち前の素早さで双也の弾幕を避けながら、レミリアは構えたスペルカードを輝かせた。
そしてーー宣言。
「神罰『幼きデーモンロード』!」
瞬間、レミリアを中心に太めのレーザーが張り巡らされ、同時に大粒の弾幕も放たれた。
強大な吸血鬼という種族なだけあり、様子見と言いつつもそれはそこらの妖怪なら軽く捻る事の出来るくらいのものであった。
ただーー
「様子見? 笑わせんな」
ーーこの少年にそれが通用するかどうかは、別の話だが。
「一瞬で終わらせるって、言っただろ」
レーザーと弾幕をするすると避けていく中、双也は霊力を大きく解放し、スペルカードを輝かせた。
言葉通り、一瞬で終わらせるつもりなのである。
「光滅『
解放された霊力が、彼の突き出された掌に集まっていく。
紫と組んで放った時程では無いが、こちらも、空間が歪む程には強力な、霊力の塊である。
そしてそれはーー躊躇いなく、放たれた。
「え、ちょっと…! こんなのーー」
レミリアの驚愕を孕んだ声は、蒼く強烈な光の元に、掻き消えてしまうのだった。
言葉通り、見事レミリアを瞬殺してきた双也は、やれやれといった表情でスーっと降りてきた。
観戦していたーーと言っても、短すぎて観戦といって良いのかは定かではないがーー咲夜は、あまりの強さを見せつけた双也に引きつった声をかけた。
「や、やり過ぎじゃないかしら?」
「本気で来なさいって言われたんだから、いいだろ」
「…本気でやったの?」
「いんや、四分の一も出してない」
「…………………」
最早笑う事もできない。
咲夜の表情は何処までも微妙な様子で、彼女の呆れ具合がありありと分かるようだ。
…因みに、フランはただただポカーンとしており、その表情が驚き以外に何を表しているのかは、分からない。
まぁ、純粋な驚き、という可能性もあるが。
「さーて、じゃあ行くわ。レミリアによろしく」
「え、ええ…」
なんとも言えない空気を作り出したまま放り投げ、双也はフランを連れて歩を進めた。
吹き飛んだレミリアは、"咲夜時間"約十分後に見つけ出されたそうだ。
雑…でしたね…。特に最後あたりが。
うーん…、書溜めが底をつきかけて焦るのはどうしようもいんですけど、これはひどかったです。
こういう事ないように頑張ります…。
ではでは。