双也視点です。
どうぞ!
大戦から数日、神と言うだけあって回復が早かった諏訪子と俺、そして避難場所から帰ってきた稲穂は、元の様な生活に戻って一日を過ごしていた。
「はっ! そらぁ!」
「よいしょ、 ほっ」
負けた直後は、それはそれは落ち込んでいた諏訪子も今では元のように元気になった。
だが"信仰が得られないから諦める"なんて言うほど神奈子達は甘くはなく、中々引き下がらなかった。
「くっ! そこだ!」
「まだだな まだ遅い!」
では何故諏訪子が元気になったか。それはずっと難しい顔をして何かを考えていた創顕の言葉による。創顕が考えていたのは"信仰対象を変えずにどうやって信仰の恩恵を受けるか"という事らしく、創顕が眉にしわを寄せて考え出したのが『表裏二神制』だ。
「これなら…どうだ!」
「っとあぶね! オラァ!」
コレは、表に神奈子、裏に諏訪子として、二人で国を取り仕切る方式である。表面上は神奈子が信仰対象として取り仕切るが、本当に信仰を受けているのは実は諏訪子で、二人で国を取り仕切っているから神奈子にも恩恵が来る、という原理だ。正直俺はよく分からなかったが、神の原理を理解しようとするのは無意味と判断し、考えるのはやめた。
「神奈子、武器が武器だから遅いのは仕方ないが隙が多いな」
「ぐっ……参った…」
そういう訳でコッチの神社に移り住み始めた神奈子だが、今は俺に刃を突きつけられている。何故かって?創顕に勝ったと言ったら俺に勝負を申し込んできて負けたからだ。もちろん殺し合いでは無い。
申し込まれた時に、さすが軍神血の気が多いなと思ったのはここだけの話。
「二人とも〜!ご飯出来たから来なよ〜!」
「ん?もう昼か。 今行く〜」
丁度諏訪子が呼びに来たので、俺は刃を引きながらそれに応えた。
因みにだが、諏訪子と神奈子は戦って以来割と仲が良い。接戦だった故にお互い力を認めたのだろう。うん、繋がりを増やすのは良いことだ。
俺たちは、今度は四人で机を囲んでご飯を食べ始めた。
そこで俺は、今日予定があるのを思い出した。
「あ、今日俺大和の国に行ってくる。夕方には戻るから」
「大和へ?あそこに行ってどうするんです?」
「ああ、遊びに行くって日女に言っちゃったからな。そろそろお邪魔しようかと」
ひるめ?と質問してきた稲穂はハテナを浮かべているが、その名に反応したのは神奈子だった。
「日女様!? なんでお前がそんな気軽に日女様に会おうとしてるんだ!?」
「おおそうか、俺言ってなかったな。よく聞いとけ」
言ってなかったの忘れてた。俺は創顕との戦いの後にあったことを話した。
〜現人神説明中〜
「……そうか。相も変わらず、あの方の呑気さは理解が出来んな」
「うん、呑気すぎる点に関しては俺もそう思う」
神奈子は若干…いや、もう諦めているかの様な表情で頷いた。初対面だった俺でもあのペースには簡単に持って行かれたのだ、長年近くに居たであろう神奈子が諦めたような表情をするのも無理はないと思う。
……あれ?俺、神奈子をこんなにしちゃうような人と友達になったの?不安になってきたんですが…。
ふと浮き上がった不安を振り払い、代わりにちょっとした覚悟を決めた。
「「「いってらっしゃーい!」」」
「行ってきまーす」
午後、出ようとしたら三人が見送ってくれた。諏訪子はいつもの笑顔で送ってくれたが神奈子の視線には少しの同情がこもっていた。二人は並んで立っていたが、なんかもう雰囲気が全然違ってた。神奈子…俺の不安を煽るなよ…
俺は気にしないフリをして神社を出た。
大和の国は、歩いていけば2〜3時間で着くくらいの距離にある。行きだけでそんなに時間を使えないので、瞬間移動で飛ばし飛ばしに進んでいた。最初は一気に大和へ飛ぼうとしたのだが、あいにく出来なかった。恐らく、瞬間移動は能力の工夫によって使っている上に、俺の能力は俺自身が把握している範囲でないと発動しないものだから、把握してるどころか行ったこともない大和には飛べなかったんだと思う。
「えーっとー、こっち…だな」
因みに、地理に詳しい諏訪子に地図を作って貰ったから迷ってはいない。変な所で子供っぽいのか地図が落書きみたいだが、一応読めるので許容範囲だ。
そのうち俺は瞬間移動を止めて、風景を楽しむ様に歩いて進んでいた。
「キラキラ〜ダイヤモンド〜♪ 輝く〜星の様に〜♪」
今俺が歩いているのは青々とした森の中。しかしちゃんと日の光は入っており、木々の隙間を通る光の柱が何となく幻想的な風景を生み出している。
そんな中を歩いていたら、いつの間にか"⑨のパーフェクト算数教室"を歌っていた。多分、ココが東方projectの世界ということもあって、印象に残った曲の一つであるこの歌が脳内セレクトされた結果なんだと思う。
「霊夢んとこの〜♪ 百万円の〜♪ 壺をだ----」
「何ですかその歌。そんなの大声で歌って恥ずかしくないのですか?」
いよいよ気分がのってきて大声になってきた所で、その熱を冷ます様な冷たい言葉が上から降ってきた。俺はピタッと止まって声がした頭上を見上げると、そこには足を三本もった大きめの不思議な鴉が木に止まっていた。
鴉は、こちらが視認したのを確認すると、俺の前に飛んできて突然炎に包まれた。
「!? 何!?」
突然の事で声を出してしまったが、どうやら攻撃ではないらしい。その炎はだんだんと大きくなっていき、弾けるように炎が散ると、そこには目にかかるくらいの若干赤いメッシュの入った黒髪に、鏡のように光る小さな円盤をネックレスのようにしている顔の整った青年が立っていた。
「人…いや、神力を感じるし、お前神か?」
「はい。僕は太陽の化身、八咫烏と言います。僕のこと覚えておられますか?"大和の兵を斬り刻んだ神薙双也さん?"」
ん?対談の時のこと知ってるって事はあの場に居たのか?う〜ん…よく思い出せば、神奈子のデカい神力の影に隠れてた小さな神力があったような… 多分それだな。
俺は曖昧な記憶を引き出して一人納得すると、八咫烏に話しかけた。
「ん〜何となくだけど思い出した。それで?太陽の化身様が何でこんな所に?」
「国の周辺の見回りをしていたのです。鴉の姿で飛んでいたら、小っ恥ずかしい変な歌を歌ってる双也さんを見つけたのです。日女様の所へ行くのでしょう?日女様の部下として、主の友である双也さんには国の紹介も含めてこの先をご案内しますよ」
八咫烏の"小っ恥ずかしい変な歌"と言う言葉を聞き、さっきまでの自分の姿を見られたと思ったら顔が熱くなってきた。八咫烏はその表情を見てクスクス笑っている。コイツ……若干Sなのか…?
八咫烏の視線が痛いので、目を逸らして別の事を考え始めた。すると直ぐに"何で日女と友達になった事知ってんだろ?"という疑問が浮かび上がった。その様子を察したのか、八咫烏が行動を促してきた。
「何で友になったと知っているのか、とお考えでしょう。ここでずっと立ち止まってても仕方ないですし、歩きながら話しますよ。…こっちです」
「あ、ちょっ 待てって!」
八咫烏は人の姿のまま、大和に向かって歩き出した。慌てて追いかけて八咫烏の隣に来ると、八咫烏が話し始めた。
「言ってもそんなに難しい事ではありません。僕は太陽の化身。化身と言うのは、他のどんな存在よりもその神に近い者の事なんです」
「なるほど。それで、近いとどうなるんだ?」
「化身は主の命令は絶対であるのと同時に、それを遂行する為に少し力を分けてもらっているのです。……その一つとして、任意であれば一部記憶の共有も出来ます」
「あぁ、そういう事か」
「はい、そういう事です」
なるほどな。記憶の共有を使って日女が教えたのか。あの性格だし、一番の部下である八咫烏には伝えておきたかったんだろうな。
化身…か、力を分けてもらってるって言ってたな。じゃあそれなりに強いのかな
俺は八咫烏の実力が少し気になった。化身ってのがどれ位力を分けてもらってるかは知らないが、何となく弱そうな雰囲気は感じない。
「なぁ八咫烏、お前の実力ってどれくらいなんだ?」
八咫烏は少し不思議そうに目を開いてこちらを向き、少しの間の後に口を開いた。
「……驚きましたね、双也さんほどの存在が僕の実力を気にするなんて」
「ん〜なんだかな、別に深い意味なんてないぞ?なんとなく気になっただけなんだけど…」
「…そうですか、まぁいいです。んーそうですねぇ…コレでも最高神の化身ですから、そこらにいるような者よりは遥かに強いと思いますよ。神奈子様に少し届かない位ですかね」
「おお、神奈子に少し届かないと。神奈子と比べられるだけすごいと思うぞ?結構強いんだな!」
「ウチの軍隊を一人で相手出来る程ではありませんけどね。まぁありがとうございます」
八咫烏は俺を見て言った。なんだ皮肉のつもりなのか?戦闘狂とかホントに思われたくないんだけど…
そうこう話していたら森の出口が見えてきた。八咫烏はそれを確認すると小走りで出口まで行き、こちらを振り返ると…
「さぁ双也さん着きましたよ!此処が我らの国、最高神アマテラス様の治める大和の国です!!」
「………おおお!!」
俺の視界には素晴らしい光景が広がっていた。諏訪の国よりも沢山の人々が道を行き交い、活気に溢れている。日女の力なのか国中が優しい光に照らされており、何より大きい。とんでもなく大きい国だった。
俺が大和の国の光景に感嘆していると、目の前に眩しい光が集まってきた。それを見て八咫烏が一言。
「あ、今も共有してるって言うの忘れてた…」
「………え?」
光がだんだん小さくなり、遂に消えてしまうとそこには八咫烏の主、アマテラスオオカミこと伊勢日女が立っていた。
「久しぶりですね双也!いつ遊びに来るのかとずっと待っていましたよ!」
「……な、なぁ日女、八咫烏とずっと五感を共有してたのか…?」
「? はい、五感というか視覚と聴覚ですが、それが何か……ああ、ふふふふっ」
日女はそう答えると、何かに気が付いたのか笑い出した。何かと言うか、ホントは俺も薄々分かってる。認めたくないだけ…。
日女は俺にしっかり向き直ると、思い出すように言葉を紡いだ。
「えーっとぉ… クルクル〜時計の針〜♪グルグル〜頭回る〜♪ ……でしたっけ? クスクス」
「うわぁぁぁあああ!二人も聞かれてたぁぁあぁああ!!」
俺は頭を抱えてうずくまった。もちろん顔は真っ赤になってると思う。何であの歌をセレクトしたのか数十分前の俺の頭に問いたい!後悔しか無い!
「ふふふふっ さ、双也!せっかく遊びに来たのですから、そんなところでうずくまってないで行きますよ!」
「誰の所為だと思ってるんだよ!」
「ん〜?私と視覚や聴覚を共有させてた八咫烏の所為では?」
「屁理屈か!責任逃れするなよ!八咫烏もなんか言ってくれ!」
「あの、日女様。これから双也さんに国を紹介しながら向かおうと思ってたのですが…」
「ああ、そうでしたね。ん〜でもここに来るのが今日だけって訳ではないと思いますし、後日に回しましょう」
「話を聞いてくれ!!」
やっぱダメだ!簡単にペース持ってかれる!神奈子はこんなのを長年耐えてたのか!?素直に尊敬するわ!
そんなことを考えていると日女に肩を掴まれた。
「さ、今度こそ行きますよ!私の部屋まで!」
日女がそう言った直後、視界が真っ白な光に塗り潰された。光が止んでいるのに気がついて目を開けると、そこはいろいろな装飾の施された和室だった。
「今お茶を入れますから、座っていてください」
「あ、ああ。ありがと」
俺は日女に勧められ、置いてあった座布団に座った。そこでちょうど日女が二人分のお茶を持ってきて同じように座り、俺に手渡すと話し始めた。
「さて、双也。一つ聞かせておきたい事があります」
「聞かせたい事?何か重要な事か?」
「まぁ…そうですね、重要というか知っておいた方がいい事、ですかね」
知っておいた方がいい事、か。んーちょっと想像つかないな。
俺は少しだけ考えたが、特に思い当たることは無かった。だがしかし、日女の言葉は俺が興味を持つのに十分な力を持っていた。
「あなたも知りたいでしょう?一億年経った今……
あなたの友人達、月の民がどうしているのか」
いやぁ長かった! て言うか諏訪大戦終わったのに長々と続いてしまってますね。もう少しで次の章です。
あと今回出てきた曲についてですが、著作権云々を考えて⑨と表記させて頂きました。いらぬ心配と思う方もいると思いますが念には念を、です。
ではでは。