東方双神録   作:ぎんがぁ!

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どうも、今になって小説を勉強し始めたぎんがぁ!です。

ではどうぞ!


第百七十四話 太陽の望み

「久しぶり霊夢。 助けに来てみた」

 

突然の来訪者に、霊夢は驚愕の声を上げた。

だって、彼はさっきまで紫の所にいたじゃないか。 いつの間に此処に?

少しばかり混乱を起こしている霊夢を横目に、現れた双也はポンと彼女の肩に手を置く。

 

「ちょっと、俺と代わってくれないか?」

 

「え…代わるって?」

 

「あいつの相手」

 

「……は?」

 

双也の指差す先には、当然の如くお空が佇んでいた。

突然現れた彼を警戒しているのか、彼女はジッとそこに立ったまま動かない。

 

ーーそれなら好都合。

今の内に、突然何を言い出すんだ、と文句を言っておこう。

 

お空の様子を横目で確認した霊夢は、再び双也へと視線を戻した。

そして、未だ混乱の中にいる頭で文句を放つ

 

「ちょ、ちょっと何言ってーー?」

 

が、言葉は途中で途切れてしまった。

彼女を見上げる双也の瞳は、何か別のものを写している様に見えたのだ。

 

「…双也にぃ…?」

 

「いいから、代わってくれよ。 勇儀とも戦って疲れてるだろ?」

 

「…むぅ」

 

確かにそうだけどーーなんて弱音は、何となく零すのが憚られた。

それが何故だかは彼女自身にも分からないが、本当に何となく、である。

まるで、"いい所を見せてやりたかったな"なんて兄へのアピールを止められたかの様な、曖昧な気持ちだった。

 

そうこうと考えるうち、双也は霊夢の横を通り抜けて行ってしまった。

それは誰から見ても、"俺が相手だ"という宣言に等しい行動。

空の視線も、先程より鋭いものとなっている。

 

「(………ん?)」

 

前へと出る双也の背中。

黒いガウンをはためかせ、とても頼り甲斐を感じさせる大きな姿。

最早見慣れたその姿にふと、霊夢は違和感を感じた。

 

「……双也にぃの髪、あんな色してたかしら…?」

 

違和感の正体はすぐに掴めた。

それは、彼の髪ーー正確には毛先が、ほん(・・)のりと灰色に染まっている(・・・・・・・・・・・・)のだ。

本当に薄っすらとした変化ではあるが、霊夢にはそれをすぐに発見できた。

 

何故なら……彼女にとってその手の(・・・・)変化は、ある種のトラウマに近いものだったから。

 

「ねぇ、紫…」

 

「…………………」

 

「……紫?」

 

霊夢の問いに、紫は沈黙する。

トラウマの事も相まり、彼女の心は段々と不安な部分が大きくなってきた。

果たして、このまま戦わせて大丈夫なのか?

今の彼は"いつもの"彼なのか?

内心で葛藤する霊夢に、双也は笑って言う。

 

「いいから待ってな。 お前には少し荷が重い相手だと思うぞ」

 

「荷が重いって何よ!?」

 

「そのまんまの意味さ。 ありゃキツイ相手だ。 妖怪って考えない方がいい」

 

そうして双也は霊夢を一瞥だけすると、お空の方へと向き直った。

 

「…随分と強くなったみたいじゃんか。 昇進でもしたか?」

 

「? あなた、いきなり出てきて何言ってるの? 私達は会ったことないよね?」

 

全く噛み合わない言葉を受け、お空は首を傾げながらも返答する。

しかし、返された双也はお空に対して、軽く首を振るうだけだった。

 

ーー当然だ。

双也は、お空に話しかけているのではないのだから。

 

「…お前に言ってるんじゃない、霊烏路 空。 ……分かってんだぞ、そこに居るの。 出てこいよーー"八咫烏"」

 

瞬間、お空の体から巨大な衝撃波が放たれた。

双也こそ微動だにしないものの、霊夢にとっては身構えなければ吹き飛ばされそうになる程の衝撃である。

 

いや、霊夢も分かっていた。

これは衝撃ーーつまり空気圧なんかではない。

巨大な力が唐突に爆発した様な……そう、これは…。

 

「……っ! 何…!? この馬鹿デカい神力……っ!!」

 

爆発後の粉塵の様に広がった神力は急速に集まって行き、少しずつ形を持ち始めた。

 

赤いメッシュの入った黒い髪。

首に掛けてある鏡の様なネックレス。

そしてーーハッキリと感じる強大な神力。

 

 

「本当に久しぶりですね、双也さん」

 

 

現れたのは、嘗て大和の国を治めた天照に仕えていた化身、八咫烏であった。

 

 

「あれ? あなた、あの時の。どこに行ってたの?」

 

「おや、僕の事は覚えててくれたんですね空。 ずっと側にいましたよ」

 

「そうなの?」

 

「ええ、そうです」

 

問いかけるお空に、八咫烏はそっと頭を撫でる。

えへへ、と笑うお空に微笑み返し、八咫烏は再び双也の方へと視線を向けた。

 

「さて、前に顔を合わせたのは大和の国……もう千年はゆうに超えてますよね。

相変わらずの化け物っぷりに呆れすら感じます」

 

「よく言うぜ。 お前も昔より何倍も強くなってるじゃないか。 お前も十分化け物さ」

 

「あの後、僕の神格も上がりましてね。

今では立派に太陽神の一人ですよ。 日女様には敵いませんけど」

 

「……ふん。 で、その太陽神様がこんな所で何油売ってんだよ。 妖怪に取り憑いて(・・・・・)までして」

 

「これも仕事ですよ。 ちょっと頼まれ事をしましてね」

 

「誰に?」

 

「言えません」

 

二人の会話を後ろで聞きながら、霊夢は密かにぶつかり合う力をビリビリと感じていた。

この二人、仲良くする気無いーー。

もしくは、戦わずに済ませようなんて微塵も考えてないーー。

いつ切って落とされるのか分からない火蓋を察知して、霊夢は頰に一筋汗を流した。

 

そんな霊夢に。

 

『…安心しなさい、霊夢』

 

紫はポツリと、そう言った。

 

 

「言ったら怒られるってか。 まぁ当ては付いてるが…太陽神様が何とも不憫なものだな」

 

「僕は日女様の様に偉くはないんですよ」

 

「そうかい」

 

「ただまぁ……」

 

その一瞬、大気の温度が急激に上がった様に感じた。

 

 

「パワーでなら引けは取りませんけどねッ!」

 

 

ゴォッ!!

それは、不意打ちにも近い攻撃だった。

予備動作は、ほぼ無し。 しかしそれに似合わず、八咫烏から放たれたのは、お空の放つ光線を何倍にも強くして、何本にも増やした物だった。

 

「やっぱお前も、化け物だよ」

 

不意打ちに動けなかったのか、それとも動かなかったのか。

どちらにしろ、双也は直前にそう呟き、光線に呆気なく呑み込まれた。

 

「ッ!! 双也にぃッ!!」

 

吹き付ける熱風を腕で遮り、霊夢は目一杯に叫んだ。

見た限り、双也は完全に直撃している。 しかも光線は未だ途切れる事なく、彼のいる場所を焼き払い続けているのだ。

 

「そんな、うそ…っ!」

 

その惨状を乾く瞳で見つめ、霊夢は絞り出す様な声で言った。

そんな、あんな呆気なく?

あれだけ強い双也にぃが?

霊夢の頭は、目の前の出来事を受け入れる事ができなかった。

 

そうして凝視している内ーー霊夢は、炎の隙間に深い蒼色の何か(・・・・・・・)を見た。

 

『だから、心配ないって言っているでしょう?』

 

彼女がそれを確認したのを計った様に、隣に浮かぶ陰陽玉から、紫が彼女を諭す様に言う。

霊夢はそれに、答える事ができなかった。

 

なぜか? それはーー目の前の光景に、目を奪われていたから。

 

 

『私も聞いた時には驚いたわ。 まさか双也が……

 

 

 

 

 

 

 

西行妖と同化して(・・・・・・・・)戻ってくるなんてーー。

 

 

 

 

 

 

 

光線は、瞬く間に溢れ出した深い蒼色ーー深海色の霊力に呑み込まれ、掻き消えた。

そして次の瞬間、ピュンッと軽い音が鳴り響きーー八咫烏が大爆発を起こした。

 

一瞬の事過ぎて、何が起こったのかは理解が追いつかない。

霊夢の視線は、ただ一点に注がれていた。

 

その海の様に深く濃い霊力の中心、恐らくは八咫烏へと攻撃を放った場所の中心には、傷一つ無い姿の双也が、不敵な笑みで爆発後の煙を見上げていたのだ。

 

「不意打ちなんて、随分と余裕の無い真似をするんだな。 うっかり反撃しちまった」

 

「ぅ…く…竜姫様と修行していたという噂は本当でしたか…」

 

僅かな唸りを零しながら、八咫烏はブワッと煙を振り払う。

双也の反撃を受け止めたのか、彼の片腕は少しだけ焦げていた。

 

「不意打ち、ですって?

確かにそうですね。 あなたから見れば、あれは不意打ちだったかもしれません」

 

「不意打ちだろーが」

 

「いいえ、我慢が利かなくなっただけですよ」

 

ポン「…? うにゅ?」

 

八咫烏は、おもむろにそっと、お空の肩に手を乗せた。

何気ない、本当に何気ない動作だったが、双也だけは気が付いていた。

 

今あいつがやってるのは、神力の供給(・・・・・)だーーと。

 

それは明らかに、これから戦闘を始めるぞ、という意思表明に他ならなかった。

 

霊力を迸らせながら、双也もそっと刀に手を掛ける。

そして一言、霊夢へと声を掛けた。

 

「霊夢、お空の相手は頼むぞ。 アレは妖怪(・・)だ」

 

「! オッケー!」

 

「紫も、霊夢のサポート頼む。 多分俺は、そんな余裕ないから」

 

『分かったわ』

 

返事を聞くと、双也は再び八咫烏を睨み付ける。

見上げた彼の口元は、既に大きく歪んでいた。

 

「ずっと待ってたんですよ、こうなる日を。 双也さん、僕は昔から、あなたと本気で戦ってみたかったッ!」

 

ゴォ!

八咫烏の神力が、再び爆発する様な上昇を見せた。

それはまるで、八咫烏の"待ちわびた日が来た"という興奮を丸々体現した様に大きく、激しいもの。

 

何処までも声高らかに、八咫烏は、笑っていた。

 

「戦う時間は大いにあった筈だけど」

 

「ええ、ありました。 でも無意味な時間です。 あの頃の僕では、勝負を挑んでも軽く捻られてしまう。 それは本気の勝負ではありません。

だからこそ、力を得た"今"なんです」

 

興奮と決意の入り混じった彼の言葉に、双也は小さく溜息を吐いた。

 

「……そうかい」

 

やはり戦うしかないらしい。

双也は刀を抜刀しながら、そう結論付けた。

八咫烏から放たれる神力は、殺気にも似て鋭い。 そしてそれが、あまり手加減出来る相手ではないという事を、これ以上なく明らかにしていた。

 

構え、鯉口を切る。

そこから覗く刀身は、周囲の炎に照らされて透き通った蒼色を放っていた。

これが双也の、意思表明。

お前を斬り倒すーーそんな覚悟にも似た、意思の表れだ。

 

「くく、やる気になってくれましたね双也さん。 ならば僕も礼儀の一つとして、名乗りましょう!」

 

強大な圧力を掛けられながら、八咫烏はそれでも興奮を抑えられない様だった。

それはある種、戦闘狂とも言える様な限りない戦闘への意欲。

八咫烏は、炎を顕現させながら、高々と言い放った。

 

「僕の名は陽鷹(ひだか) 鏡真(きょうま)

さぁ双也さん、修行の成果という奴を、僕に見せてください!」

 

「……良いだろう、俺の辿り着いた答えの(・・・・・・・・・・)一つ(・・)、目に焼き付けとけッ!」

 

熱線と剣撃。

二つの交錯を合図として、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 




仕上がり、もう少し改善したいところですね。

ではでは。
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