東方双神録   作:ぎんがぁ!

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今回は今までで一番短いと思います。
あサボった訳ではありませんよ?区切りが良かっただけです。

双也視点。

ではではどうぞ〜


第十六話 月の様子、届いた想い

「一億年経った今…あなたの友人たち、月の民がどうしているのか」

 

 

 

 

 

 

 

「!? 永琳がどうしているか分かるのか!! ちゃんと月に着いたんだよな!?全員無事だよな!?」

 

俺は日女の予想外の言葉に驚き、今まで密かに気にかけていた事が一気に口から出た。自分でも、近年稀に見る焦り様だと思う。

それを見て日女は冷静に話を続けた。

 

「落ち着きなさい双也、全員無事です。あなたが命をかけて護った人々は今も月で暮らしています」

 

「っ!! っはぁ…よかった…」

 

「ただ…」

 

再び俺の中で緊張が走る。何か…あったのか…?

 

「八意永琳は、あなたが地上に残って妖怪達と戦ったと聞いた後、相当落ち込んでしまった様です。最後にあなたを見た綿月依姫も、あなたを護れなかったと暫く塞ぎ込んでいたそうですね」

 

「………そんなに、想っててくれたのか。……心配をかけちゃったな……」

 

「そのようですね。八意永琳は仕事どころか食事も喉を通らないようになってしまって、綿月依姫は部屋にこもりっきり。あの子の姉ですらまともに会話出来なかったそうです」

 

「……そうか……」

 

永琳たちには悪い事をしたな、ろくに別れも告げられなかったし。そんなに塞ぎ込んでしまうとは…… ちゃんと元気でやっているのだろうか

 

「今はもう元気なのか?」

 

「まぁ、かなり元には戻った様です。穢れが無いので寿命も在りませんしね。二人を元気付けるのは苦労したとツクヨミは言っていました。ですがツクヨミの話を聞く限り、偶に寂しそうな表情をする時があるそうです」

 

ははは…命懸けで護ったのに、俺が悲しませてるんじゃ世話無いな。いつか、謝れる日が来ればいいけど…

俺は部屋の天井…いや、その遥か彼方に浮かんでいるであろう月を見上げて静かに願った。

その心を知ってか知らずか、日女が新しい話を切り出した。

 

「さて、湿っぽい話になってしまいましたが、話題を少し変えましょうか。

あ、そういえば、月の技術は今も進歩を続けているようですよ?」

 

「まだ進歩してるのか?あれ以上進歩したらどうなっちゃうんだよ」

 

「えーと、今は"たいむましん"と言うのを開発しているとツクヨミが言っていましたね。でもかなり難航しているようです」

 

「……そりゃそうだろ。いくらあの技術でもタイムマシンなんかほいほい作れちゃったらいろんな意味でヤバいぞ」

 

タイムマシンなんかこの時代に作ってどうするのだろうか?そもそもまだ歴史が浅いんだし、作るほどの価値無くない?もうちょっと生活の役に立つもの作った方がまだいいと思う。どこ○もドアとか。

 

「私も、ツクヨミにどんな物なのかだけ聞きましたが、流石に無茶じゃないかと思いましたよ、はい」

 

日女も俺の言葉には賛成のようだ。て言うか、"タイムマシン"っていう言葉がもうある事に驚き。相変わらず文化が進みすぎだと思う。

 

「また危ないもの作らなければ良いけどなぁ…」

 

「そうですねぇ。進み過ぎた技術や力は自分の身を滅しかねません。そういう意味では、旅立った後に隕石で町を跡形もなく消し去っておいたあの子の判断は正しかったのでしょうね」

 

日女は少しホッとした様な表情で言った。やはり隕石はツクヨミが落とした様だな。俺もそれは正しかったと思う。弊害として恐竜が滅んでしまったが。

……あ、そう言えば

 

「なぁ日女?俺が頼んでおいた伝言は伝えてくれた?」

 

「はい。しっかり伝えましたよ。…ふふふ、あの子ったら、それを伝えたら少し涙目になってそっぽ向いてしまったんですよ?アレは可愛かったですねぇ♪

ふふふふっ」

 

んー何だろう…日女はいつものツクヨミとのギャップを可愛いと言っているのだろうか。まぁ確かに、神ってだけあってツクヨミはかなり美人だったと思う。言葉使いが威厳たっぷりだったからギャップに何か感じるのは分かる気がする

しばらくその時の様子を思い出してにやけていた日女は、すっかり冷めてしまったお茶を啜って区切りをつけると、俺に話を振った。

 

「ふぅ…それでですね双也、ツクヨミからも少し伝言を預かっているんです」

 

「ん?」

 

俺に伝言?俺の伝言は何か言葉を返すようなモノじゃなかったと思うけど…

日女は今までより一層ニッコリして言葉を続けた。

 

 

 

「"またいつか、月に遊びに来い!その時は目一杯歓迎してやる!"……だそうです。良かったですね!双也!」

 

 

 

「…………………」

 

俺は無意識に笑みを浮かべていた。ツクヨミもまた、俺の身を案じてくれていた者の一人。みんなを救えて…本当に良かった……。

と、そんな話をしている間にもう随分日が沈んでしまっている事に気がついた。よく耳を澄ませば、来た時の様な活気あふれた民の声はもう響かなくなっている。

 

「さて、じゃあそろそろ帰るよ日女。今日はありがと、楽しかった」

 

「はい!私も楽しかったです!また来てください」

 

「ああ、じゃあな」

 

俺は瞬間移動を使って元の道を帰っていった。この分なら日が沈み切る前には諏訪に着くだろう。

自分のやってきたことは正しかったんだと、日女の話を聞いて感じることが出来た。日女にも感謝しないとな。

俺は清々しい気持ちで帰路に着いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………のだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「完全にお前が悪いだろう!!人の物を勝手に取るなんて神のすることか!?」

 

「良いじゃんちょっとくらい!神がどうとかって言うなら神奈子だって少しの間違いは見逃すくらい心を広く持ちなよ!」

 

現在は夕飯の席。折角清々しい気持ちで帰ってきてご飯を頂いていたのに、机を挟んだ目の前でギャーギャー騒いでいるバカ神が二人。

 

「大体!諏訪子の方が年上なんだからもうちょっと威厳って言うものを持ちな!民に見捨てられるよ!」

 

「その民の信仰を越えられなかったって言ったのは神奈子でしょ!?何ならも一回勝負する!?今度は負けないよ!!」

 

まぁ所謂喧嘩の真っ最中。神奈子の皿によそってあった御菜を諏訪子が少し横取りしたのだ。悪気はなかったのだろうが、神奈子はそういうのが通用する性格では無い。結果、今まさに第二次諏訪大戦が始まろうとしているのだ。

 

「いいだろう!!今度こそ完膚なきまでに潰してやる!!」

 

そう言ったのと同時に神奈子が拳をダンっ!!と机にぶつけた。その揺れで味噌汁の入った器が揺らぎ……

 

 

 

バシャン!

 

 

 

「…………………」

 

「…………………あ」

 

「あわわわわわ…」

 

俺の足にかかった。正確には腹から足までグッショリだ。

諏訪子はやっちまったって顔をし、神奈子は青くなって大量に汗をかき、稲穂は隣でわたわたしている。

もう……………限界。

 

「お前ら……」

 

「「はひっ!!!」」

 

だんだん白くなっていく俺の髪。

俺が言いたいのはただ一つ。俺の今の想いが全て込められた言葉。

 

 

 

「いい加減にしやがれぇぇえええ!!!!」

 

 

 

その日の夜。下町の宿では大きな落雷が見えたと言う。




初めの方は深夜に書いていたので変なところが無いか心配です…
て言うか、なんか神格化がネタになってきているような………。

ではでは。

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