東方双神録   作:ぎんがぁ!

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早めに章完結させたいのに中々ストーリーが進まない……。

なまじ文章力が身に着くと書くことが多くなって大変ですねw

ではどうぞ!


第百八十四話 お手伝いの二人

 事の概要を説明するならば、こうだ。

 何、難しい事は何もない。 実に簡単、且つ良い話である。

 

 要は、"大昔ーーと言っても俺からすれば半年前くらいの感覚ーーに封印された妖怪達が、大恩人を救う為に奮闘する話"である。

 異変のつもりで家を出てきたと言うのに、そんな概要を理解した時は何とも言えない肩透かし感に襲われたもんだが、よくよく考えてみれば、それってむしろ良い事だよな。

 

 よくある話だ。

 "杞憂に終わる"と表現される事が間々ある。

 何事かを心配して動いてはみたけれど、結局それは取り越し苦労で、何の心配もいらなかった、と。

 全く、異変かも知れないという俺の懸念はまさに杞憂に終わった訳だ。

 ……いや、早苗に無理矢理連れて来られた感が否めないから、ここは"無駄骨だった"と言っておこう。

 

 まぁ、何事も起こらない訳だから、良い事には良い事なんだけど。

 

 さて、そんなこんなで、結局俺達は一輪達の手伝いをする事になった訳だが、これが如何にも面倒事が多いようだ。

 何がって、まず散らばって飛んでいる飛倉の破片を集めなければならない。

 どれほどの数が必要なのかは聞いていないが、まぁ二、三個ではないだろうな。

 

 そして次に、飛倉の破片を集めた上で魔界に突入しなければならない。

 正確には"法界"というらしいが、まぁそれはさて置き。

 幻想郷と外の世界のように、魔界だって別世界だ。

 ただ、幻想郷側にも扉がある分外の世界よりも多少(・・)行き来しやすいと言うだけ。

 そう、多少という部分が重要だ。

 だがまぁ、いざとなったら俺がどうにかして空間を割けば良い話だし、実はそこまで(うれ)いてはいない。

 むしろ、もう一つが最も面倒臭いと思っている。

 即ちーー

 

 

 

「ほぉぉおうとぉおお〜!

 どこですかぁぁあああっ!!」

 

 

 

 ……この威厳も糞も吹き飛んだ、神の代行人の探し物である。

 

「……なぁ星、もう少し落ち着いて探してくれないか?

 それじゃむしろーー」

 

ドンガラガッシャーン「わぁぁあぁあっ!? 積んであった物がぁぁあっ!!」

 

「…………散らかるだけだからさ……」

 

 物を探すのと同時にあらゆるものを散らかしていくこの慌ただしい女性は、寅丸(とらまる) (しょう)という。

 これでも一応七福神の一柱、毘沙門天の代行者だそうな。

 詰まる所、彼女らの目的を果たすのに必要なもう一つの要素と言うのが、彼女の持つ"宝塔"らしい。

 

 例の如くどう使うのかは聞いていないが、問題なのはそこではない。

 その宝塔を、このうっかり屋が失くしてしまったと言う事だ。

 探し物が得意な部下に探してもらっているそうだが、いつも頼り切りなので自分でも船内を探しているのだとか。

 

 ……ホントに代行人なのかよ?

 もう少し威厳ってもんがあっても良いと思うんだけど。

 

「双也さぁん! ボーッとしてないで手伝って下さいよぅっ!」

 

「はぁ……」

 

 全く、何でこんな事に。

 いや、そりゃね? 確かに今俺が出来る事って言ったら何も無いのが現状だけど、だからって"あ、双也、暇なら仲間の探し物手伝ってくれない?"なんて言うのはどうなんだ?

 ……いや、探し物を手伝わされたのはこの際良いとしよう。

 俺が言いたいのは、"あいつら絶対自分が手伝いたくないからって俺に押し付けただろ"って事だ。

 だってこいつ、そう思わずにはいられない程面倒事ばっかり起こすんだ。

 

ドドドドッ「きゃっ!? な、なんでこっちの物まで崩れて……」

 

 ほれ見ろ。

 歩く不幸かこいつは。

 

「あーもう分かったから、ちょっと退いてろ星」

 

「へ? は、はい……」

 

 こいつに任せてたら日が暮れるどころか年が暮れる。

 正直投げ出したいところだが、生返事でも手伝うと言ってしまった手前それは出来ない。

 しょうがないから能力を使おう。

 

「ここら辺のはそこに積んで……そこに散らばってんのは中に入れればいいか?」

 

「え……はい……」

 

「ん」

 

 少しばかり霊力を解放。

 小さくはない、という程の室内目一杯に霊力を充満させ、結合能力を発動する。

 床に散らばりまくって足の踏み場すら覆い隠してしまっていた物品達は、各々が俺の能力の導かれるままに宙を漂い、指定した場所へ戻っていく。

 三十秒もかからない内に、室内は元どおりの整頓された部屋に戻った。

 

「はぁぁ〜! スゴイですね双也さん! とても便利な能力ですね!」

 

「……んー、この手の使い方が便利だって思うのはお前だけなんじゃないか?」

 

 これ程散らかす奴はそうそういないだろうし。

 そもそも俺の能力の本質はこういうモンじゃないし。

 ……まぁいいか。

 

「さて、それじゃあ別の所も探すか。 まだ探してないところは?」

 

「え? あ、あ〜えーと……その、ですね……」

 

「……?」

 

 あからさまに目を合わせようとしない星。

 なんだ、ここはもう探し切ったし、別のところを探すのは当然だろう?

 

 ーーいや待て、待てよ。

 俺はここに来てから、一輪達に押し付けられたからこいつと一緒に探してる。

 んで、俺が来た時には丁度星がここを探していた。

 でも、星は俺が来る前から船内を探し回っていたわけで……。

 

「……おい星、まさか……」

 

「は、はぃ……えっと、必死で探してる内に、ですね……」

 

 

 

 ーー実は別の部屋全部、散らかり過ぎて探し物どころではなくなってるんですよ……。

 

 

 

 ……やっぱ、投げ出したくなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ、私、何もする事無いんですか?」

 

 ガッカリしたような驚いたような、そんな声が一室に広がる。

 相変わらず鈍く響くごうんごうんという音に混じっても、それはしっかりと相手に伝わっていた。

 

「うん、そだよ?

 ホントは飛倉の破片をもっと集めて欲しいところだけど、封印を解くのに全部の破片が必要な訳じゃないし、あと少し足りない分は一輪が取りに行ってるし」

 

「そ、そうですか……」

 

 水蜜のあっけらかんとした口調の説明に、早苗は何となく肩透かしを食らった気分だった。

 そりゃ、大分意気込んで手伝いを申し出たのだから、当然と言えば当然の事。

 ただ、何もする事がないからといって投げ出す程、早苗は悪辣に育ってはいない。

 何かする事はないだろうか、と探し始めるのが普通の人間の心理であり、また、曰く先祖共々お人好しである早苗であろう。

 そして早苗にとって、すべき事はすぐに見つかるのだった。

 

「……何やってんの、早苗?」

 

「お祈りですよ。

 巫女の仕事は、神様に祈る事です。

 恵みを下さい、とね」

 

 その場で座り、手を合わせ、早苗は祈りを捧げていた。

 本当は実際に祈りを捧げた事など片手の指で足りる程に少ないーー祈りたいなら祀っている神様本人に言えばいいからーーし、細かく言えば風祝と巫女では少しだけ違うのだが、早苗にとってそれはそれ程重視する問題ではない。

 兎に角、何もしないのが嫌だったのだ。

 

 双也も一輪も、先程顔を合わせた星もここに居る水蜜だって、何かしらの仕事をこなしているのだからーー。

 

 

 

「いや、そういうのいいからさ、私とお話でもしてようよ?」

 

 

 

「……へっ?」

 

 先程と同じ調子であっけらかんと放たれた言葉に、早苗は思わず間の抜けた声を漏らした。

 え、お話? 仕事はどうしたの?

 放ったらかしていい事なの?

 頭の中で渦を巻く疑問に翻弄され、口を開けたまま固まる早苗。

 そんな彼女の姿に、水蜜は直ぐに察した。

 ああこの子、勘違いしてるな、と。

 

「えっと……勘違いしてるみたいだから言うけど、私も結構暇よ?」

 

「……え?」

 

「自他共に船長とか言ってるけど、飾りよ飾り。

 そもそもこの船、自動船だもん」

 

「えええっ!?」

 

 あーやっぱりか、と。

 早苗の驚き様に、水蜜はカリカリと頬を掻いた。

 水蜜は舟幽霊。 ある海域で船を沈没させて遊んでいた所を白蓮に拾われ、立場上この船の船長という事になっているだけ。

 自動船であるこの船に船長など、正直な所必要ないのだが、水蜜は"管理人だと思ってればいいか"と妥協しているのである。

 故に、水蜜が忙しいなどとんでもない。

 現在の早苗同様の、暇人であった。

 

「星の探し物を手伝う気にはなれないし、船のメンテナンスとかはしっかりしてるし、やる事ないのよね。

 だからさ、お祈りなんかしてないでーー」

 

「あ、あのっ!」

 

 水蜜の言葉を断ち切って、早苗は思い切った様に声を掛けた。

 不思議に思って彼女を見れば、早苗は、水蜜に向けるその視線をキラキラと輝かせていた。

 

「自動船、なんですよねっ!?」

 

「えっ? う、うん……」

 

「じゃあ、何かスゴイからくりがあるって事ですよねっ!?」

 

「う、う〜ん?」

 

 はて、そんな大層なからくりなどあっただろうか?

 首を傾げる水蜜を気になどせず、早苗は更に申し出る。

 

「あ、あの! この船の動力部とか武装とか、その……中身を見せてもらえませんかっ!?」

 

 水蜜は既に、早苗の勢いに押されていた。

 そりゃもう、この子こんな好奇心旺盛な子なの? と思わず考えてしまうほどの勢いで迫られれば、ほぼ初対面である水蜜に彼女を押し返すほどの力などあろうはずもない。

 苦笑いを零しながら、頷く事しかできなかった。

 

「わ、分かったよ。 動力部……とかだね?」

 

「はいっ!!」

 

「…………(こりゃあ、変わった子だね……)」

 

 内心で早苗の人柄を改めながら、水蜜は渋々と彼女の先導を始めた。

 この船は割と広く大きい。

 廊下や部屋が乱立して、迷い易いといえば迷い易い構造である。

 目的の場所へと導くのは必要な事なのだが、現時点においてその役である水蜜へ、始終早苗が期待の眼差しを向けているものだから、水蜜には苦笑いを零さずにいられないのだった。

 

 ーーと、そんな時。

 

ドォオンッ!「きゃぁあっ!!」

 

 水蜜達の目と鼻の先。

 その廊下の壁が吹き飛び、叫び声が響いた。

 本当に唐突な事で、二人は事態について行けず固まるばかり。

 しかし、その土煙の中で立ち上がるシルエットを見て、水蜜が叫んだ。

 

「星っ!? どうしたのよ!?」

 

「えっ、村紗? 悪いけど後でーー」

 

「駄弁ってる余裕あるのかしら?」

 

 これも、唐突に。

 星の吹き飛んできた壁の穴の向こうから、聞き慣れない声が響く。

 新たに現れたその姿を見て叫んだのは、早苗だった。

 

「れ、霊夢さんっ!?」

 

「あら、あんたも居たの」

 

 煙の中に見え隠れするのは、大きな赤いリボン、艶やかな黒髪、使い古された大幣。

 

 ーー現れたのは楽園の巫女、博麗 霊夢であった。

 

 

 

 

 




あと三話以内には星蓮船終わらせたい……。

ではでは。
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