東方双神録   作:ぎんがぁ!

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長めです。
ちょっと久しぶりなシリアス成分。

ではどうぞ。


第百八十五話 来たる日に馳せる想い

 ーー時は、数分前に遡る。

 

 星のカミングアウトを受け、心底から面倒臭く思った双也は、取り敢えず何か効率のいい方法がないかを模索していた。

 その最中も隣で星が申し訳なさそうにチラチラと見てくるものだから、その集中力散漫っぷりといえば相当なものだったが、双也は何とかして、方法を導き出したのだった。

 

 その方法とは。

 

『そ、双也さん? 甲板まで出てどうするんですか?』

 

『見つけるの面倒臭いから、宝塔の方から来てもらうんだよ』

 

『……はい?』

 

 首を傾げる星に、双也は心配無いと微笑み掛ける。

 だが、心許ないのは当然だろう。

 百聞は一見にしかず、聞かせて安心させるより、見せて納得させた方が良いに決まっている。

 双也は甲板の中心に立ち、霊力を解放した。

 

『……何をするつもりです?』

 

『昔な、この方法で友人を見つけた事があったんだ』

 

 脈絡などない。

 しかし、星は何も言わずに耳を傾ける。

 

『その時は今ほど霊力が無かったから、この国中に霊力を飛ばして感知する事しか出来なかったんだけど……霊力が倍近くになった今なら、感知した上で(・・・・・・)能力も(・・・)掛けら(・・・)れる(・・)……!』

 

 ブワッ!

 瞬間、双也から大量の霊力が周囲へと放たれた。

 だが霊撃の様に荒々しいものでは決してなく、ただただこの世界に満ちる様に広がっていく。

 ーーやがて、双也が反応した。

 

『……見つけた!』

 

 それと同時、広がった霊力は急速に彼の元へと戻って来る。

 如何やら、見つかった宝塔を霊力と共に引き戻している様である。

 星には、収束されるその霊力が風を吹かせている様に感じた。

 

『……あ! 来ました宝塔!』

 

 やがて、星の視界にも飛来する宝塔が映り込む。

 霊力と共に、まるで撃ち放たれた弓矢の様に、宝塔は真っ直ぐと双也の掌に向かって来ていた。

 それを確認し、双也はニヤリと笑う。

 星も、探し物が見つかった喜びに顔を綻ばせていた。

 

 ーーしかし。

 

 

 

 

『あら、なんか飛んでる』

 

 

 

 

 双也の手元まであと数メートル。

 明らかな空中であるその場所で、宝塔は飛行を唐突に止めた。

 ーー否、唐突に止められたのだ。

 

 『……何よこれ、なんか変な力を感じるんだけど』

 

 宝塔を飛来の途中で掴み取った手。

 その手の主は、偶然にも掴んだ宝塔を眺めながら不思議そうに呟く。

 それに応えるように、双也は甲板の端に歩み寄りながら、手の主へと声を掛けた。

 

『お、霊夢。 お前も来たのか』

 

『ん、 双也にぃ……?』

 

 手の主ーー博麗 霊夢は、宝塔を手で弄びながら双也の側に着地する。

 そのすぐ後ろからは霧雨 魔理沙、そしてナズーリンーー双也には面識がないーーが順に着地し、それぞれが様々に軽い挨拶を交わした。

 

 魔理沙は、その陽気な性格から"その事"に何の考えもしない様だったが、霊夢とナズーリンは、それぞれ観点が違えども多少なりとも違和感と警戒をしていた。

 ーー即ち。

 

何で双也にぃがこの船に?(何故君はご主人の側にいるのかな?)

 

 正直な所、双也に驚きは無かった。

 霊夢の疑問は事前に想定していたし、ナズーリンの疑問に関しては、彼女が現れた時点で想像が出来ていた。

 そりゃあ、相手方からすれば自分は見知らぬ者だし、そんな者が自らの主と共に居れば、警戒されて然るべしである。

 だから双也は余計な誤解を生まぬ様、簡潔にこう答えた。

 

『ん、異変じゃあないって分かったからさ、こいつらを手伝ってるんだ』

 

『……はぁ?』

 

 片眉を釣り上げながら、霊夢は首を傾げる。

 一体こいつ何を言ってる?

 異変じゃないなら異変じゃないで、何故手伝いなんか?  と。

 しかし実際は、口でそう言いながらも彼女自身、双也に"そういう所"があるのは承知の上であった。そこまで疑っていない、と言うのが本音である。

 そして、こういう時には必ず溜め息が漏れてしまうというのが、霊夢の一種の癖であった。

 

「(成程、それでご主人の側に……。 だが……)」

 

 ならば警戒は必要ないのかも。

 ナズーリンは、霊夢と話す"得体の知れない男"を見やりながら、ふっと僅かな警戒を解いた。

 手伝ってくれるのならば好都合。 先程宝塔が飛んでいたのも、彼が引き寄せたと言うなら合点がいく。

 ーーだが残念ながら、ナズーリンの、強いては星の不安はまだ続く。

 

『それで、博麗の巫女。 君はそれをどうするつもりでいるんだい?』

 

『ん? コレ?』

 

『そ、そうです! それ私が失くした物なんですよ!

 ……返してくれますよね?』

 

 星の懇願する様な視線に晒された霊夢は、相変わらず弄んでいる手元の宝塔に視線を落とした。

 輝く玉に台座と屋根のような物が付いていて、掌から少しだけはみ出るほどの大きさの物体。

 一見唯の高価な置物程度にしか見えないそれに、しかし霊夢の感知力は、その小さな物体に込められた"不思議で大きな得体の知れない力"をしっかりと感じ取っていた。

 

 勿論、星やナズーリンは勿論の事、ある程度の説明を受けた双也もその力が"法力"と呼ばれるものだという事は知っている。

 だからこそ、法力がどんな物かを知っている双也は、この件が異変ではないと結論付けた訳だがーー霊夢にそれは、正直な所関係がないのだ。

 

『(……双也にぃはああ言ってるけど、得体の知れない力ってのは得てして得体の知れない使われ方をするもんなのよね……)』

 

 博麗の巫女にとって大切なのは、如何に物事を推察し、妖怪の成す事柄に対処していくかである。

 偶然にも今回の件に関与していると見られる者達の大切にしている物を手に入れた霊夢には、十分な熟考の余地があった。

 そもそも、敬愛する双也の妹である以前に博麗の巫女である霊夢としては、異変に関する物などそう易々と渡せるものでもないのである。

 なら、どうするか。

 そんなの決まっている。

 

 

 

『私に勝ったら返してあげるわよ』

 

 

 

 弾幕勝負の使い所だ。

 

『えぇっ!? そのまま返してくれないんですか!?』

 

『物事は弾幕勝負の勝敗で決定できる。……そういうルールだしね』

 

 と言いつつも、れっきとした理由はあった。

 確かに妖怪の起こそうとしている物事への対処は博麗の巫女の仕事である。

 予防も必要だろうし、極端な事を言えば、"妖怪は見つけ次第に対処する"という霊夢の考えも一理はある。

 だがそれ以上に、起こされた異変の対処こそが博麗の巫女の一番の仕事だ。

 異変と妖怪退治は大抵の場合がイコールの関係である。

 仮にここで宝塔を穏便に渡し、そしてそれが原因で大規模な異変が起きた場合だって、例外ではない。

 結局、"それ"に異変の可能性があるならば、渡そうが渡すまいが霊夢が動く事に変わりないのだ。

 

 なら、ここで渡さなくても良いじゃないか。

 どうせ戦う事になるなら、予防線は張っておくべきだろう?

 

 霊夢は不敵に微笑みながら、大幣を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーって訳だな。 霊夢にも困ったもんだ」

 

「成程……霊夢さんらしいと言えばらしいんですけどね」

 

「っていうか、それなら双也が止めてくれれば良いのに……」

 

 時は戻り、船内廊下。

 星と霊夢の戦闘が目の前で繰り広げられる中、双也は早苗と水蜜に事の顛末を説明していた。

 苦笑いながらも同調する早苗とは対照的に、水蜜はどこか双也を責めるかの様な視線をしている。

 やはり、船が壊れる状況の中で止められる立場にいながら、しかし止めなかった彼には、少しばかりの悪態が口から漏れ出てしまう様である。

 だがそんな視線を受けながらも、双也は微笑みながら返した。

 

「それも考えたんだがな、多分霊夢だって色々考えての行動だと思うんだ。

 それくらい重要な立場にいるんだし、何より決して馬鹿じゃないって事を俺が知ってる」

 

「でも……」

 

 双也の言い分に理解は得つつ、しかしやっぱり納得出来ない様子の水蜜。

 まぁ仕方ないよな。 と、双也も内心で妥協しつつ、水蜜の頭をポンポンの撫でた。

 

「え……?」

 

「だいじょーぶだって。 俺だってお前達の手伝いをしてる身なんだ、そう易々と諦めたりしないよ」

 

 もう一度、ポンポンと。

 若干子供扱いされている気がした水蜜だったが、それが双也の本心であるとその表情から悟ると、彼女はコクリと頷いた。

 

 さて。

 

 振り返り、確認する。

 水蜜の悩みの種となっている二人の戦闘は果たして、どうなったのか。

 星が勝っているならば問題は無し。出る幕はない。

 霊夢が勝っているなら、はてさてどうしたものか。

 十中八九、霊夢が勝つだろうなぁと心の片隅で思いながら、目を上へと向ける。

 見上げた双也の視界には、丁度吹き飛ばされて床に激突する、星の姿が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず、無茶苦茶やってるわねぇ……」

 

 溜め息を吐くような口振りで、紫はポツリと呟く。

 彼女の視線は、掌ほどの大きさに開いたスキマの向こうーー双也達の様子を見守る様に注がれていた。

 

 見守る様に、と優しく表現したが、それはあくまで見た目の話。

 その溜め息に含まれる成分には、しっかりと"呆れ"も混じっていた。

 それは、背後で入れられるお茶のコポコポという音に混じって、マヨヒガの空間に染み入っていく。

 

「また双也様が何かしでかしたのですか、紫様?」

 

 そんな紫に、掛けられる声が一つ。

 それは、丁度彼女の後ろに控えている八雲 藍の声だった。

 手元のお茶が程度良く冷めるのを待ちながら、藍は微笑ましい表情で紫に問う。

 紫は、"ふふ"と小さく笑った。

 

「そうね、しでかしたと言うより、何だか変な方向に話が進んでいるみたいよ」

 

「というと?」

 

「双也は、今回の件が異変になり得ないと判断したらしくてね。

 普通そこで帰ってくれば良いものを、まさか向こう側の手伝いを始めるなんて、思いもしないでしょう?」

 

「そ、それはまた……」

 

 双也の予想外な行動を聞き、藍は苦笑いを零した。

 なんともまぁ、どこまでも常識外れなお方だ、と。

 ただ、そこに呆れは多少あろうとも、軽蔑や幻滅は含まれていなかった。

 

「ですが、双也様がそう決めたのならば、紫様は止めるつもりなどないのでしょう?」

 

「そうね。 信じているもの」

 

 明らかに間違った時は、正してあげるだけよ。

 最後にそう付け足し、紫は再びスキマの向こうを見据えた。

 どうやら今は、双也が霊夢を説得か何かしている様だった。

 弾幕ごっこで賭けた宝塔とやらの事だろうか?

 本当ならば、あの虎の妖怪が負けた時点で霊夢に所有権がある訳だが、双也なら、それくらいの障害で手伝いを放り投げたりはしないだろう。

 紫は歪んでしまう口元を扇子で隠しながら、これから先に何が起こるのかを内心でワクワクしていた。

 

 その様子を背後で見、藍は。

 

「……ふふ、双也様も幸せ者ですね」

 

 紫にこれだけ想われているのだから。

 ーーと付け足す前に。

 藍は、その言葉に反応したらしい紫の視線が、いつの間にか己の方を向いていることに気が付いた。 正確には、そういう視線を感じた。

 顔を上げてみれば、確かに紫が、少しだけ不思議そうな顔をして藍を見つめていた。

 

「……紫様?」

 

「……ねぇ、藍。 今更だけれど、その"双也様"って、何?」

 

「……え?」

 

 何ってそりゃ、彼の事だろう?

 他に誰がいる?

 藍の固まった表情にそんな言葉を感じ取った紫は、更にもう少し言葉を続けた。

 

「その、"様"って? どうして付けているの?」

 

 それは、紫の素直な疑問だった。

 藍の主は紫である。

 それは、八雲 紫という妖怪を知っているならば藍のことも知っていて当然と言うほどに、広く知られた事実だ。

 そして藍も紫のみに忠実な式であり、彼女の他に(へりくだ)った態度を取る者は存在しない。

 なら、"様"というのは?

 それは双也を、敬っているということか?

 

 その疑問が真なるものなのは確かだが、とうの藍自身にとっては、実は違った。

 むしろ、"紫ならば(・・・・)そう驚くことでもないだろう"とすら思っていた。

 だから、次の言葉は、紫の不意を突いた様な形で藍の口から漏れ出たのだった。

 

 

 

「え……? そりゃ、双也様もすぐに私の主人になるでしょうし。

 敬うのは当然の事ではないですか」

 

 

 

 ーー紫の時間が、暫く止まった。

 いや、それは紫の体感時間であって、藍にとってはほんの一瞬だったのかもしれないが、紫にはその言葉を理解するのに一瞬(数時間)の時を要した。

 そして、必然か。

 紫の顔は次の一瞬で、真っ赤に染めあがった。

 

「……な、なな、何を……っ!?」

 

「? 何、と言われましても……"運命の契り"、でしょうか。

 紫様と双也様が築いた絆と愛は、既にそれ程のものであると私は判断していますので」

 

「〜〜〜〜ッ!!」

 

 藍の淡々とした口調に、紫は益々顔を染め上げる。

 何の躊躇いも恥ずかしげもなく"愛"だの"絆"だのと口にする彼女の姿こそが、何よりも紫の心を沸騰させる原因となっていた。

 

「紫様、この際だから言いますが、私は昔から心配していたのです。

 紫様はそれだけの智慧と力と美貌を持ちながら、余りにも性に無頓着であると」

 

「あ、あぅ……」

 

 紫には、言い返す事が出来ない。

 藍の言い分が至極正しい事なのだと理解しているのだ。

 

 紫は、双也を想うようになる以前に誰かを愛した事はない。

 妖怪間の抗争や実力をつける為に、そんな時間がなかったと言えばそうなのだが、何よりもそんな欲が一切無かったのだ。

 ーーいや、もしかしから、その頃からずっと、内心では双也の事を想っていたからなのかもしれない。

 だがそれは、本人ですら知る由のない事である。

 紫だって、気が付かぬうちに彼を好いていたのだから。

 

 「良いですか紫様? 生物の端的な目的は子孫を残す事です。 そして紫様の遺伝子を継いだ子を成すともなれば、それは直接的にこの幻想郷の為にもなるのです。

 そしてそのお相手には、紫様以上の強大な力と非常に強い絆を持った、双也様こそ相応しいと、私は思っているのです」

 

「ちょ、ちょっと藍……?」

 

「私も、紫様と双也様が愛を育む際に邪魔など一切致しませんし、もし子が産まれたならば、お忙しい紫様に代わって精魂込めてお世話をする覚悟も既に出来ております。

 ですから紫様、もう少し素直になられても良いのではないかとーームグッ」

 

「ス、ストップ! 一体どれだけ先の話をしているのっ!?」

 

 咄嗟に、紫は藍の口に手を当てた。

 それ以上は話さないで! というのである。

 藍の態度に恥ずかしさや照れの限界を超えた紫は、その顔を更に赤く染め上げていた。

 藍は、予想以上の反応に内心で小さく驚きながら、当てられた紫の手をズラして更に続ける。

 

「……何故そう恥ずかしがるのですか? 紫様と双也様は、恋人となってもう既に一年以上も経っているでしょう?

 幾ら妖怪でも、性欲くらいあって当然だと思うのですが」

 

「そ、そりゃ、私だって……」

 

「……?」

 

 ふいっ、とそっぽを向いた紫の耳は、やはり顔と同じように赤く染まっていた。

 しかし、藍の注目する場所はそこではなく、紫の雰囲気そのものが若干変わった、というところだった。

 大きな違いではない。 相変わらず紫は恥ずかしがっているし、耳も赤い。

 だが、そりゃ……と言いかけた時の紫の雰囲気はーーそう、少しばかりの優しさを含んでいる様に思われたのだ。

 

「……双也ね、神界から帰ってきてからは、前にも増して自由に行動するようになったの。 本当に、したい事を片っ端からしているようにね。

 ……その双也が、私と"そういう事"をしたいってまだ思わないなら、私は待とうと思うの。 私も、私の我儘で無理矢理したいとは思わない。    

 ……だから、待つわ」

 

「紫様……」

 

 双也の事を真に理解している事。 それが、紫が双也の恋人である事の証明である。

 紫から見て、帰ってきた双也は、西行妖の件以外には行動に変化が現れていた。

 自由奔放にマイペースに。

 元の彼が戻ってきたと言えばそうだが、長らく彼を見てきた紫をして、それとも少し違う。

 双也をそう理解した紫には、彼が間違った事を選ばない限り、無理に彼の道や選択を捻じ曲げる事など出来はしないのだ。

 紫と双也の間に、強い信頼がなければ出来ない事である。

 

 紫の語りに深い愛と絆を感じた藍は、彼女の姿に柔らかい微笑みを零した。

 ーーしかし、その二人の絆の中で、ふとした疑問が浮かび上がった。

 なんて事はない。 "もしかしたら"の話なのだが、藍は訊かずにいられなかった。

 

「……紫様」

 

「何かしら」

 

「もし……もし、紫様よりも先に双也様が亡くなるかもしれないとしたら……どうしますか?」

 

 ピクリと、紫の肩が僅かに揺れる。

 それに、藍が大した反応も示さなかったのは、紫が悩むだろうと判断し、答えを急かさない為である。

 程なくして、返答は帰ってきた。

 

「……その時は、多少我儘になるのも一興ね♪」

 

 顔だけを振り向かせた紫は、少しだけ頬を染めて微笑んでいた。

 その表情のなんと(あで)やかな事か。

 藍はその表情に息を呑み、返答が返せなかった。

 

「とは言え、藍?」

 

 そんな藍を気にもせず、紫はそっと丁度良くぬるくなったお茶を手に取る。

 藍は、ハッとして彼女の言葉に耳を傾けた。

 

「私達が一緒になったとしても、その"様"っていうのは止めておきなさい。

 彼には既に、十一人の優秀な部下達が居るのだから。 混同してはいけないわ」

 

「は、はぁ……」

 

 勿論、この部下達とは、地獄の閻魔達の事なのだが、藍にはそれを知る由も無い。

 ただ理解を得ぬままに空返事を返すことしか出来ないのだった。

 

 お茶を啜りながら、少しだけ日の傾き始めた空を仰ぐ。

 紫は遠い先の事を見据えていた。

 

「(……死の訪れによって、私達が離ればなれになる時、か……。

 そうしたら……私は一体、どうなるのかしら……)」

 

 晴天の空は、紫をその答えに導く事は当然なかった。

 

 

 

 

 




予想では二百十話位で完結する気がします。

ではでは。

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