東方双神録   作:ぎんがぁ!

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決闘のあと、です。

もう二十話目ですね…早いもんです。

では、はりきってどうぞ!


第二十話 都生活の確立

現在夕方。都に着いて一日目なのにかなり濃い内容になってしまった。親切な団子屋さんに会い、目的だった豊聡耳神子と会うことにも成功して、何故か決闘することになってしまい、手解き(フルボッコ)してあげた訳だが……

 

「あの…なんで俺こんな拘束されてんですかね…?」

 

「馬鹿者!!太子様をあんな傷だらけにした男が何言っておる!!立場を考えろ!!」

 

神子の傷を治そうとしたところで周りの兵に捕まり、なんか大きな屋敷にて、手足を縛られて拘束を受けている。なんで抵抗しなかったか?…もう疲れてたんです。面倒くさかったんです。

俺の目の前には、白銀の髪をポニーテールにした少女と、フワフワしてそうなカールのかかった髪をしている緑色の少女がいる。まぁ原作を知っているから言うが、物部布都と蘇我屠自古だ。

 

「だから、傷は治そうとしたところだったって言ってるでしょ?」

 

「そんなの信じるわけねぇだろ!大体、太子様は今緊急治療を受けている!それほどの傷をお前なんかが治せるわけねぇだろ!!」

 

「人を見かけで判断しない方がいいぞ?」

 

「コイツ…!!」

 

屠自古は頭にきたようで手を振り上げた直後、扉の向こうから声が聞こえた。

 

「太子様!まだ治療は----」

 

「大丈夫です!このくらい包帯を巻いておけばすぐに治ります」

 

「太子様!」

 

扉が開かれたその先には身体にたくさんの包帯を巻いた神子が立っていた。彼女の元へ布都が駆けていく。

 

「太子様!お身体はもういいのですか!?」

 

「ええ、まぁ。屠自古、双也の縄を解いてあげなさい」

 

「は!?太子様!?コイツは太子様を殺そうとしたんですよ!?そんな奴を…」

 

「良いんです。私が勝負を申し込んだのです。あまりに人間離れしていたものですから…」

 

屠自古は神子の言葉に驚愕している。神子から申し込んだことに驚いているのか、それとも神子に人間離れしていると言わせるほど俺が特殊なことに驚いているのかは知らないが、その場を動こうとしない。

仕方ないな…。俺は縄のあたりに広げた霊力を使って縄の原子結合を遮断し、手足を拘束している縄を切って神子に歩み寄った。

 

「!? お前…いつの間に!?」

 

驚いている布都や屠自古の視線を無視し、若干顔が強張っている神子の肩に手を乗せた。

 

「悪かったな神子。…はい、これで治ったぞ」

 

「え?……傷が…治ってる…!?」

 

神子は信じられない物を見たような表情をして、ゆっくり包帯を取っていく。現れた白い肌には、ひとつの傷も残っていない。

 

「約束は約束だ。ちゃんと守ってもらうぞ? それとは別に、ちょっとやりすぎたお詫びとして俺の事を話してやるよ。知りたかったんだろ?俺の正体」

 

「え!?いいんですか!?」

 

俺は、まぁコレならいい接点になるだろ、と思いつつ頷いた。神子は一見驚いた顔をしているが、好奇心からか目が輝いている。もう俺を追い出す気は無くなったのかな?傷を治してくれる人なら害はないだろう、とか思ってそう。元々都を害する気なんてさらさら無いけど。

俺は神子、ついでに布都と屠自古にも話を始めた。

 

 

 

 

 

〜旅人説明中〜

 

 

 

 

 

「「「か…神ぃぃいいい!!?」」」

 

「そ。神って言っても半分だけどね」

 

俺が説明すると三人とも大声をあげて驚嘆していた。能力の説明の時は、呆れの混じったモノだったが、種族についての驚嘆は純粋な物のようだ。

驚きから転じて最初に声を上げたのは布都だった。

 

「現人神というのは初めて聞いたが、要は神なのであろう!?ならば、何か願い事を叶えてくれるのか!?なぁ!?」

 

「いや、そんなに興味を示されると言いづらいんだけど、俺は天罰神って神だから願い事は…その…」

 

それを聞いて布都は見て分かるくらい暗く沈んでしまったが、その様子を見て屠自古が一言。

 

「どうせ下らない願い事なんだろ?神に願う程の事じゃないだろきっと」

 

「なぁぁんだとぉぉお!?屠自古!お主が何を知っていると言うのだ!!お主だって毎日毎日神棚に願い事をしているではないか!!この前だって太子様と…」

 

「うわぁぁあ!!!何言ってんだお前!!関係ねぇだろんな事は!!今日こそ()ってやんぞ!?」

 

「おお望むところだ!!お前なんぞ燃やし尽くしてくれるわ!!」

 

「「ぐぬぬぬぬぬ…」」

 

いつの間にか喧嘩になってしまった二人はお互いの両頬を抓って睨み合っている。なんでこんなに喧嘩腰なんだ……。

それを見かねてか、神子はいつの間にか持っていた勺で二人の頭を叩いて言った。

 

「いい加減になさい二人とも!双也は今や客人です。そんな人を前に喧嘩とは失礼ですよ!」

 

「は、はい…すみません…」

 

「申し訳ない…」

 

二人はシュンとなって俯いてしまった。まぁ神子の言い分が正論なんだから仕方ない。ずっとこの二人と一緒にいるとは、神子の苦労に頭が下がる思いだ。

神子に少しズレた関心を抱いていると、神子は俺に話しかけてきた。

 

「双也、あなたはここに来たばかりなのでしょう?では宿もまだ無い筈です。今日は泊まっていってはどうですか?」

 

「お、泊まってっていいのか?助かるな」

 

「はい。まぁでも、ずっとここに住まわせる事は出来ないので、住めるような家が見つかるまでですが」

 

「それでもいいさ。ありがとな神子」

 

神子は、お気になさらず、と言って微笑んだ。

という訳で神子の屋敷に一晩泊まったわけだが…"流石太子、いい暮らししてんな…"としか言えない生活だった。夕飯は多いし豪華だし、風呂も無駄にデカイし、一晩泊まるだけの客人に一部屋丸々あげちゃうし。こりゃあ疲れも吹っ飛ぶよな、と思った。

 

 

 

翌日、コレまた超豪華な朝ごはんを三人と食べ、今は神子と約束していた鍛冶屋に来ていた。

 

「ではお頭、お願いしますね」

 

「太子様の言うことでさぁ、断ったりゃしませんが…大丈夫なんですかこのガキ?」

 

ガキ、という言葉が少々俺の怒りを誘ったがグッと堪えた。年上なんだからこんな事で怒ってはダメだ。そう言い聞かせる。

俺の我慢を知ってか知らずか、神子がお頭に言った。

 

「大丈夫ですよ。何も心配はいりません。むしろ、普通に弟子を取るよりは大分有望株だと思いますよ。私が保証します」

 

「へぇぇ〜…」

 

鍛冶屋のお頭は品定めをする様に俺を見回す。一応笑顔を作っているつもりではあるが、引きつっていないか正直心配だ。

 

「ではお願いします。私は仕事があるのでこれで」

 

神子はそう言って帰っていった。神子を見送り終わると、お頭が話し始めた。

 

「さて、こうなった以上は仕方ねぇ。弟子の事なんか全く考えてなかったが、お前を弟子として俺の技術を叩き込んでやる。弱音なんか吐くなよ!」

 

「はい!俺は神薙双也です!よろしくお願いします!!」

 

俺はこうして無事?に弟子入りした。まぁ取り敢えず、納得のいく最高の一振りを作るまではここで技術を学ぼうと思う。なんせあの七星剣を作った鍛冶屋だ。技術をマスターすれば、七星剣に勝るとも劣らない一振りを作れるはず!!

俺は近年稀に見るやる気を出していた。

 

「ここを……こうですか、お頭?」

 

カンッ! カンッ! カンッ!

 

「そうだ。次は色をよく見て……」

 

ゴオオォォォオオオ

 

「あ、コレはこうしたほうがいいですかね?」

 

ギンッ!ギンッ! ギンッ!

 

「よし、いい感じだ。後は…」

 

シュインッ シュインッ

 

「…………よし!取り敢えず完成だ!お疲れさん!」

 

「ふぅぅ…」

 

俺はたった今完成した小刀を見ながら汗を拭った。一日目と言うことで、上手くいかなくても一通りやらせてもらっていたのだ。出来は…まぁうん。如何にも初めてだなって感じ。

初めてとはいえ、予想以上の出来の悪さにちょっとショックを受けていた時、感心するようなお頭の声が聞こえた。

 

「いやぁ…双也おめぇ、ホントに初めてか?大抵のもんは初めてでこんな出来にゃならねぇぞ?」

 

「え?コレ…出来良いんですか?」

 

「おうよ!名刀匠から見れば鉄屑のそれだが、初心者の一振りとしてはこれ以上ない出来だ。これなら一、二カ月で上等な太刀を作れるようになるかもしれねぇな!今日はもうこれでいいぞ。明日からもビシバシ行くからな!」

 

お頭は、さすが太子様だぜ。ホントに有望株連れて来やがった、とか言いながら工房の奥へ消えていった。俺もそろそろ帰ろう。

俺の気分は妙に明るかった。

 

 

 

 

 

「あれ?屠自古?」

 

俺が神子の屋敷に着くと、門の前には屠自古が立っていた。

 

「どうしたんだ屠自古?誰か待ってるのか?」

 

「おお双也、やっと来たか。お前を待っていたんだ。行くぞ」

 

「え!?ちょ、どこに!?」

 

屠自古は振り返らずにボソッっと言った。

 

「お前の家だ」

 

 

 

 

 

「ほ〜…まさか二日目にしてもう住める家を用意出来るとは……」

 

「太子様は仕事が早いからな」

 

「……それだけの理由か?」

 

現在、町の中にある一軒家の前に居る。そんなに大きな家では無い。これからはここに暫く住むのだ。

神子の仕事の早さにはかなり驚くが、まぁ摂政ならこれくらい出来ないとやってられないのかな、とも思う。

もう日は沈んできている。屠自古に礼を言って早速新しい我が家に入ろうとした時、屠自古に呼び止められた。

 

「あ、双也!太子様から言伝(ことづて)を預かってるんだ。"何かあったら手伝って貰うことがあるかもしれない"だそうだ」

 

「……まぁ別にいいけど、会って一日目、しかも一度戦った相手に頼むものかそれ?」

 

頼みごとを聞くのは別に良いのだが、知り合って間もない人を信じてしまうのは大丈夫なのだろうか?少し神子が心配になってくる。

しかし、その質問に屠自古は事も無げに答えた。

 

「太子様は人の本質を見抜ける。信用するに値する存在だって思われてるんじゃないか?」

 

「………そうか」

 

屠自古の言葉にどこか納得した。少し照れ臭くもあったが、悪い気はしない。

俺は今度こそ屠自古と別れ、新たな家で床についた。

 

 

 

 

 




布都とか屠自古とかのキャラはこんな感じで合っているのでしょうか…。一番の心配は神子さんですけどね…

ではでは。

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