東方双神録   作:ぎんがぁ!

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この回ずっと書きたかった……。

ではどうぞ〜


第二十三話 新たな武器、刃の頂点

「やぁああ!!」

 

「はぁ…いい加減理解しろよ…」

 

双也に向かい、一人の白狼天狗が突進していく。双也はそれを呆れたように見据え、構えた。

 

「正面突破じゃ何人で来ても意味ないって、さ!」

 

「!! がふぁっ!!」

 

向かってくる白狼天狗は双也に突きを放つが、双也はその腕を掴み、勢いを使って背負い投げで地面に叩きつけた。天狗のスピードと双也の力により、衝突面には小さなクレーターができている。

 

「全く…授業でやってたにわか柔道がこんな事に役立つとはな…」

 

双也は後ろを振り返り、通ってきた道を見ながら言った。

双也は今山の中間あたりまで来ている。そこに来るまで次々と白狼天狗たちが襲ってきて、そして双也はその全てをのしてきたため、双也の通った後には沢山の白狼天狗が倒れて呻いていた。

 

「体捌き足払い背負い投げ…ふつーに真面目に授業やっててよかったかもな」

 

双也は再び歩き出しながら呟いた。双也が今までのしてきた天狗達は、双也の"自称にわか柔道"によって倒されてきた。にわかなどと言ってはいるものの、技術は未熟でも現人神の身体能力と合わさった双也の柔道は、最早にわかなどと言うレベルでは無くなっている。今でも前世の感覚が残っている双也は未だ気付いていないが。

そうして歩いている内にも襲ってくる白狼天狗たちを倒していくと、いつの間にか襲ってくる頻度が下がった事に気が付いた。

 

「侵入者!!止まりなさい!!」

 

不意に聞こえた甲高い少女の声に、双也は上を見上げた。

 

「随分と荒らしてくれたようですが、それもここで終わりです!!大人しく倒されてください!!」

 

そういう天狗は、背に黒い翼を生やし、現代で言うワイシャツの様な服に黒いスカートを履いた少女だった。頭にはボンボンが付いている何かを乗せている。

双也は少女を見ると、少し驚いたように声を上げた。

 

「お?おお!?君って射命丸文? 椛は途中で見かけなかったけど」

 

「あやや?何故私の名前を知っているのですか?その椛というのは知りませんが、やはり怪しいですねぇ…」

 

(……この時代では椛はまだ産まれてないって事か)

 

双也の目の前に現れたのは、東方projectのキャラクターの一人、幻想の伝統ブン屋こと射命丸文(しゃめいまるあや)だった。同じ天狗でこの山に住むという犬走椛(いぬばしりもみじ)の名も出してみたが、文が知らないあたりまだ産まれていないのだろう、と双也は理解した。

文と話していると、次々に白狼天狗に代わって烏天狗が集まって双也を包囲した。

 

「さぁ、もう逃げられません!大人しく降伏して下さい!」

 

文は勝ち誇った顔で双也に叫ぶが、当の本人はそれを気にしない様に周りの烏天狗たちを見回していた。

一通り見終わると、双也は向き直って口を開いた。

 

「ふむふむなるほど。烏天狗ねぇ…。コレなら十分かな」

 

双也はそう言うと、今まで使わなかった太刀に手を掛け、鯉口を切ってゆっくりと抜き始めた。

 

 

現れたのは、霊力を象徴する様な美しい青色の刀身。

 

 

「な、何ですか…その刀は…?」

 

その様子を見ていた文は、焦りとも言える驚嘆の声をあげた。

 

(あの刀…霊力を放ってる(・・・・・・・)…!)

 

刀の異変に気付いた天狗達は、次々と武器を構え直していく。

それを見て我に帰った文は全員に聞こえるように声を張り上げた。

 

「い、行きなさい!!一瞬で片を付けるんです!!」

 

その号令を皮切りに、包囲していた天狗たちは双也に向かって矛先を向けた。

 

「はっ、この展開何回目だろ?」

 

双也はそう言い、焦ることなく刀を抜刀した。

 

「さて、試し斬りといこうか…!!」

 

 

 

 

天狗たちは双也の周囲を囲うように迫ってきた。彼ら烏天狗は天狗の中でも特に速い部類。この襲撃でも風のような速さで攻撃した。しかし

 

「!? 何!?どこへ行った!?」

 

「こっちだこっち!」

 

烏天狗達が前に突くと、そこにはもう誰も居なかった。突然消えた双也に驚愕していたが、上空から聞こえた声に振り向くと、そこには空中で刀を構えた双也の姿があった。

双也は薄く笑みを浮かべ、構えた刀を振り抜く。

 

「旋空!!」

 

振り抜いた刀は透き通った青色の軌跡を描き、そこから合計八つの旋空が放たれた(・・・・・・・・・・・・)

突然の事に反応できなかった天狗達は、あっけなくその場に身を沈めた。

 

「隙ありだ!!」

 

「空中で天狗に勝てると思うなよ!!」

 

空中で身動きが取れない双也に、今度は二人の天狗が攻撃を仕掛けた。

攻撃を仕掛けた本人達もそんな双也を見て獲った!と思っていたが…

 

「な、何だ…!」

 

「貴様何故、空中に立っているのだ!?」

 

奇襲をかけた天狗たちの武器は受け止められていた。双也は霊力を結合させて集め、それを足場にして立って空中で攻撃を受け止めたのだ。

 

「止まってていいのか?」

 

双也の言葉で我に帰った天狗達は、とっさに離れようとしたが片方の天狗は双也から逃れられず、刀で武器を斬られて蹴りによって地面に向かって吹き飛ばされた。

 

「くっ、もう一回!!」

 

「…甘過ぎる!」

 

双也から離れられた方の天狗は、もう一度双也に斬りかかった。しかし正面から来る天狗に双也が隙を見せるはずもなく、天狗の刃は双也が腰から振るった刀によって止められた。瞬間、

 

ザシュッ!

 

「ぐあっ!!? 」

 

双也の刀はたった今天狗の刃を止めている筈なのに(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、天狗の腹が斬られていた。

双也はその状態から天狗の刃を弾くと、返す刀で天狗の肩から腰までを斬り抜いた。

 

「よし、完っ璧の出来だな!!」

 

双也は刀を見てそう一人呟くと、地面の方に居る天狗たちに向き直って刀を構え、ど真ん中へ突進した。

 

「!?血迷ったか!!」

 

天狗の一人はそう叫んで武器を振るったが、当然双也に当たることは無く、どころか武器もろとも体を斬り付けられていた。

双也はそこで止まることはなく、刀を振るって次々と天狗達を斬り伏せていく。

軌跡を残して進む双也の姿は、まるで蒼い嵐の様だった。

それを見ていた文は、ある不可解な事に気が付いた。

 

(……あれ?…刀を振るう回数と刀傷の数が一致しない…?)

 

文が双也の動きを注意深く見ていたからこそ気づけた違和感。双也が嵐のように進みながら刀を振るう回数よりも、天狗達が付けられる傷の数の方が圧倒的に多いのだ。

双也の実力をある程度まで見抜いた為に、隙を見つける為ずっと双也を凝視していた文は、この事から仮説を立てて作戦を考えていた。

 

(もしあの男の能力が"一振りで二度以上斬りつける程度の能力"なら……)

 

文は双也と少し距離を取り、ありったけの妖力で大量の妖力弾を作り、双也に向けてマシンガンの様に放った。

 

(距離を置いて弾幕を張り、動きを制限する!!)

 

流石の双也も弾丸の中を進むわけにもいかず、その場に止まって迫り来る妖力弾を捌き続ける。

 

「結構な量の妖力持ってるな、文!」

 

「お褒めに預かり光栄ですっ!光栄ついでに…」

 

文は妖力弾を放つスピードと密度を最高まであげた。

 

「死んでください!!」

 

突然激しさを増した弾幕に双也は少し焦り、弾幕を捌ききれなくなってきた。そしてついに妖力弾が一つ当たり、双也がよろめいた。

 

(ここだ!!)

 

そう思った文は、残った烏天狗達に向かって声を張り上げた。

 

「今です!!総攻撃!!!」

 

怯んだ双也に向かって約二十人ほどの天狗たちが襲いかかった。その速さは今までの比ではない。全員が自分の持つ速さの限りを尽くし、双也に刃を向けた。

勝った!! 全員がそう思った。だが次の瞬間、その場には絶望を顔に貼り付けた文だけが残っていた。

 

「ウソ…でしょ……」

 

攻撃を受ける瞬間、双也はよろめいた体を回転させ、その勢いを使って刀を振り抜いた。その瞬間、双也の周囲につむじ風の様な青白い何かが発生し、迫った天狗達をことごとく斬り裂いたのだ。

 

「作戦は悪くない。でも……足りない」

 

双也は絶望に身を浸されて座り込む文にゆっくり歩み寄りながら話し始めた。

 

「弾幕で俺を近づけさせないようにしたのは良かったけど、どうやら何か勘違いしてたみたいだな。この刀の事を話そうか」

 

「………………」

 

文は黙ったまま、虚ろな頭で言葉を聞く。

 

「この刀は俺が作った霊刀、『天御雷(あめのみかづち)』。この刀の(なかご)には札が三枚貼ってあってな、それぞれ能力を打ち込んであるんだ」

 

双也はゆっくり文に近づいていく。

 

「一つ、所有者が霊力を少しでも流せば、瞬時に所有者と結合し、重さを感じなくなる。

二つ、この刀はどんな"力"の干渉も遮断する。

三つ、所有者が少しでも霊力を流せば、瞬時に周囲にある所有者の霊力を集めて、自在に原子遮断結界、つまりなんでも斬れる刃を発生させる」

 

双也は順番に指を立てて、文に向かって説明した。文は座ったまま黙って聞いている。

 

「そしてこの天御雷の刀身は、俺が常に霊力を流しながら鍛えた。だから風化もしないし、それによって札の能力が普段よりずっと強く発動出来る。刀身が青いのはその所為だ」

 

双也は文の前まで来た。すると、ずっと黙ったままだった文が小さく口を動かした。

 

「あなたは…………何者なんですか…………?」

 

その言葉に双也は笑顔で答える。

 

「初めの天狗達にも言った。俺は、ただちょっと強いだけの人間さ」

 

「!? ひぃっ!!」

 

その笑顔を見た文は、背筋が凍りつく様な恐怖を覚えた。妖怪の本能が危険を察知したのだろう。

この人を本当に敵に回したら…………死ぬ。

 

双也は文の気など気にもとめず、今度は普通の笑顔で、文の頭に手を乗せて言った。

 

「まぁこんな事しちゃったけど、向かってきたから反撃しただけだ。殺してなんかいないし、ましてや絶賛戦意消失中の文に手を出したりもしない。元気出せ」

 

「え…あ…」

 

双也は乗せた手で頭をポンポンとしながら言った。我に返ってその状況をしっかり理解した文は少し顔を赤くして言った。

 

「殺しては……いないんですね。あ、ありがとうございます…」

 

双也は少し笑うと、文の頭から手を離して立ち上がり、振り返って言った。

 

「さて、妖怪の治癒力なら治してくる必要もないかな?」

(正直面倒くさいだけだけど…)

 

双也が刀を収めながらそう思っていると、突然強い風が通り抜けた。

 

「コレは…全てお主がやったのか…?」

 

風が過ぎ、双也が目を開けるとそこには、他の者とは段違いの妖力を纏う黒髪の天狗の女性が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




武器のネーミングについて。
"天"の字は『全て、万象』、"御雷"は日本神話で言う所の『刀、刃』から付けました。私が考える中で一番厨二臭いと思いました。はい。
……タイトルの意味、分かったでしょうか?

ではでは。
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