東方双神録   作:ぎんがぁ!

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年代を逆算してこのお話がここに。
遂にあの人の出番です!

では新章、始まり始まり〜!


第四章 竹取物語編
第二十七話 旅の途中、"スキマ"の時間


都を去り、旅を再開して暫く。俺は森の中を歩いている。前世では想像も出来なかった綺麗な森だ。例えるなら…そう、もの○け姫に出てくる森。それが一番当てはまる。

歩いていると、川の流れる音が聞こえてきた。丁度喉が渇いてきたので寄って行くことにした。

 

「こっちから聞こえるな…」

 

草を掻き分け、木の根を飛び越え、辿り着いた川はとても澄んでいて美しい川だった。

 

「少し休憩しようかな〜。お、魚も泳いでる!」

 

川を覗くと魚も泳いでいた。ん〜知らない魚だな。元々魚には詳しくないけど、こんな綺麗な川で泳いでるなら食べても大丈夫だろ。

少し昼には早いけど、水を飲んでから飯の準備をする事にした。

 

 

まずは釣り。

 

「コツとかあんのかな……。まぁ引かれたら釣ればいいか」

 

近くの木で竿を作り、釣り針は石を削って作った。糸はどうにも出来ないから霊力でつる下げておく。耐久力は問題ない。コーティングしてあるし。

これで一匹釣るのに約三十分。

 

 

次、焚き火。

 

「これどーやって火起こすんだ?木どうしを擦ってればつくかね?」

 

木を集め、火を起こす。前回の旅の時は面倒だったからやらなかった焚き火。火を起こすには木どうしで擦ればいい、という安直な発想でひたすら木を擦り続ける。

これで焚き火を作るのに約一時間。

 

 

最後、調理。

 

「ん〜っと、ココ切ってこれ取り出して?かな? あ、火が消える!酸素酸素!」

 

釣った魚の内二匹は刺身、もう二匹は焼く。

先に刺身。木を切り出して作った即興まな板に魚を乗せ、小型の結界刃で切っていく。手捌きは完全にど素人だ。捌き方なんてこれっぽっちも知らないんだから仕方ない。しかも火が消えないように必死で火に酸素を繋げて送り込んでいるので手元に集中もできない。

おかげで刺身は一応食べれるがグチャグチャに。焼き魚は案外上手くいった。

これに約一時間。

 

「…………………疲れた」

 

結局飯に出来たのは大体二時頃。日も傾いてしまっている。…もう…さっさと食べよ…。

いただきます。と言ってから食べ始める。

やっぱり料理はやったほうがいいな…都では親切なお隣さんに貰ってたから…。

そうして食べていると、どっからか声が聞こえた。

 

「あらあら、こんな所に一人でいるなんて、不用心極まりないわね」

 

俺は知らない顔して魚を食べ続ける。

 

「初めまして。私は八雲紫(やくもゆかり)。妖怪よ」

 

俺より少し離れた場所に姿を現した様だが関係ない。もう疲れているのだ。

 

「こんな所に人間が居るなんて珍しいけど、このさいどうでもいいわ。早速…いただきま----」

 

「うっさい!俺疲れてんの!魚食ってんだから静かにしてろ!Are you OK!?」

 

少々ウザったくなってきたので怒鳴ってしまった。コッチの気くらい察しろ!そいつは突然怒鳴られて驚いているのか少し気圧された様な顔をしている。

………って、あれ?この人……

 

「え、あの…あんた八雲紫…?」

 

「だからそう言ったでしょう?聞いてなかったの?」

 

魚に夢中で名前を聞き逃していた。危ない危ない、この世界の主要人物とも言える妖怪をスルーするところだった。

 

「で?なんの用?」

 

一応聞いておいた。まぁ大方予想は付いているが…。

 

「ふふふ…人間がこんな所に一人でいるんですもの。

……食べたくなるのは当たり前ではなくて?」

 

「そっか。……今動かない方がいいぞ紫」

 

「? そんな事言っても無駄な事に変わりは……!! くっ…」

 

「言っただろ。動かない方がいいって」

 

紫が俺の注意を聞かずに前に進もうとしたところ、突然指が切れた。予想ができていた時点で、俺は魂守りの張り盾と同質の霊力で紫の周囲を囲んでいたのだ。

その霊力に触れたから斬れた。当然の事だ。

紫は少しこっちを睨んで言った。

 

「なら、こっちよ!」

 

紫は沢山の目のある空間を作って中に入り、消えた。なるほど、あれが"スキマ"か。実物見ると気持ち悪いな…。

俺は"近くの空間の繋がりが切れる"感覚を覚えたので、そこに向かって天御雷を抜いた。切っ先は頰に汗を垂らした紫の首元に当たる寸前で止まっていた。

 

「だから、動くなって言ってるだろ?魚食べるか?」

 

「っ………戴くわ…」

 

俺は切っ先を紫に向けたまま焼き魚を差し出した。少し警戒しているが、紫は焼き魚を受け取った。

 

「あなた、なぜこんな森の中に居るの?……ん、この魚美味しいわね」

 

紫は魚を頬張りながら俺に聞いた。嘘をつく必要もないので素直に言う。…ついでに名前も。

 

「俺は神薙双也だ。…旅をしてるんだ。俺は会っておきたい人がたくさん居るものでね」

 

「旅…だからここでお昼を食べていたという事ね。随分遅いけど」

 

「んぐっ…それは言うなよ…」

 

紫は少しニヤついている。原作でも紫はとんでもなく頭がいいらしいし、この状況の経緯もお見通しって訳だ。今の言葉…コイツ確信犯だろ…。

 

「紫は今何かしてるのか?」

 

今度は俺が紫に聞いた。もちろん、あの世界(・・・・)の創造をすでに考えているか知りたかったからだ。

紫は少し考える素振りをしてから答えた。

 

「ん〜…特には何もしていないわ。私という妖怪が生まれてからそんなに経っていないしね」

 

「そっか。…って、お前まだ生まれて間も無いのか!?」

 

驚愕。目の前にいる紫はまだ年が浅いらしい。どうりでたいして強くない訳だ。このままだと創造以前に他の妖怪に負けて殺されるかもしれない。困ったな…。

俺がそう考えていると、不思議そうな顔をした紫が声をかけてきた。

 

「ええ、そうだけど……どうかしたの双也?考え込んで…」

 

「ふむ。紫、お前もっと強くなった方がいいぞ。少なくとも"大妖怪"と呼ばれるまでには」

 

それくらいにならないと世界の創造なんて出来ないと思うのだ。大妖怪くらいになって貰わないとこっちも困る。何のために原作キャラと関係持とうとしてるのか……。

そんな俺の思いとは裏腹に、紫は取り乱した声を出した。

 

「だ、大妖怪!? 私が!? 流石に無理よ!どうやってあんな化け物に……」

 

お前もその内化け物になるんだぞ……と思った。でも恐らくこのままだと紫は進歩しない。ここは俺が導かないといけないか……。

俺は紫をどうやって導くか考え、話しかけた。

 

「紫、お前…自分の能力、空間を開くだけだと思ってないか?」

 

「? ええそうよ。私だけの空間を開いて移動できるの。便利でしょ?」

 

やっぱりか…。紫は生まれて間もないらしいので、あの強大な能力をちゃんと把握できていない可能性がある、と考えた。そして予想通り、紫は空間を開くだけの能力だと思ってた様だ。

俺は、本当の能力を教えてやれば紫にも向上心が芽生えると考えた。

 

「紫、お前の能力は空間を開くだけの能力じゃないぞ。俺が見た感じ、本当の能力は"境界を操る程度の能力"だ」

 

「境界を操る? ………ちょっと待って。それってかなり……」

 

「流石、回転が早いな。そう、かなり反則的な能力だ。物事は全て境界があるからこそ存在出来る。海と空は水平線という境界があるからこそ別々に存在でき、世界ってのは現実と幻が分かれているからこそ存在している。お前はその全てを操ることが出来るんだ。でも…」

 

俺は紫に大雑把に説明した。初対面で能力を見抜くとか怪しまれるかとも思ったが、紫が死ぬより断然良い。

紫は少し困った顔をしていた。

 

「…今は能力が使えない、だろ?力が足りてないんだ。でもその能力を完璧に使いこなせるようになったら…もう敵無しじゃないか?」

 

「!!!」

 

俺はニヤついた顔で紫に言った。我ながら良い感じに煽れたと思う。雰囲気で分かる。紫はもう完全にヤル気だ。

 

「いいわ…大妖怪まで昇りつめてやろうじゃない!」

 

紫はそう言って俺に手を差し出してきた。え、なに?

 

「その為にはきっとあなたの力も必要になるわ。だから、お友達になりましょう?」

 

「…え? 友達?………まぁいいか。何かあったら呼んでくれて構わないぞ。出来る限りは力になろう」

 

あれ…なんか既視感があるな…。俺は差し出された手を握って答えた。これで紫が大妖怪になってくれれば、自然と世界創造に辿り着くだろ。

 

「ええ!お願いするわ。これからよろしくね双也!じゃ、また会いましょう」

 

紫はそう言ってスキマに入って消えた。よし、また一つ旅の目的達成だ!

俺は残りの刺身を一気に食べ尽くして、とりあえず野宿の準備を始めた。

 

(んー……次に出会うのは誰かな…思い当たるのは二人…いや、二作品(・・・))

 

俺はそんなことを考えながら、森での一日を終えた。

 

 

 

 

 




ゆかりんの口調が違ってたらゴメンなさい。
若かりし頃、と割り切ってもらえるとコレ幸い。

ではでは。

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