そろそろバリエーションが欲しいですね。
では三十一話!どうぞ〜!
激しい光が迫ってくる。ああ、これが走馬灯って言うのかな…ゆっくり迫ってくる様だ。
心残りは沢山ある。豪邸に住んでみたかった…元の恋人と仲直りしたかった…親孝行出来なかった……
…主様や先輩方に、認められたかった……。
僕の全てが、真っ白に染まった気がした。
「……あれ?……生きてる…?」
僕はゆっくり目を開けた。いや死んでなかった事に驚きだけど、取り敢えず目を開けて現状の把握をしようと思った。
辺りは先ほどの光線で地面が抉られ、所々花が巻き添えになって剥げた所もある。向こうには不機嫌そうな顔をした風見さん。目の前には…
黒みがかった不思議な服を着ている、あの人がいた。
〜双也side〜
「……あっぶねぇ〜…」
幽香との戦闘が盛り上がり、疲労困憊の状態で幽香が放ったマスタースパーク。披露状態とは思えない威力だったが何とか跳ね返し、着弾先にチラッと目を向けたら何故か人がいた。なんで人がこんなところにいるのかは不思議だったけど、このままだと間違いなく死ぬので咄嗟に間へ瞬間移動して守った。……スッゲー焦ったわ。
「怪我は無い?」
取り敢えず怪我がないか聞いてみる。服から考えると…貴族?
その人は少しの間呆けた顔をしていたが、突然我に返って返事した。
「…ハッ! だ、だだ、大丈夫です!怪我なんかありません!」
「そ、そっか。なら良いけど…」
絶体絶命から生還したばかりだからか結構動揺している様だ。ホントに大丈夫だろうか?
まぁ取り敢えず放っておいて、目の前の事を片付けなければならない。
俺は少し不機嫌そうな顔をした幽香に話しかけた。
「で、まだやるか幽香?」
「……はぁ……遠慮するわ。興が醒めちゃったし。そこの人間の所為でね…」
幽香はこの貴族っぽい人を睨みつけた。
うわ怖…俺あんなのに晒されたら生きてられない…。
案の定貴族っぽい人は気絶しちゃった様だし、どうするか…。
そんな様子を見かねたのか、幽香は仕方なさそうに俺に言った。
「しょうがないわね…うちに来なさい。お茶くらい出すわよ。……その人間を寝かす必要もありそうだしね」
「お、ありがとな幽香。お言葉に甘えるとするよ」
俺は目を回した貴族っぽい人を担ぎ上げ、家に向かう幽香に着いていった。
「ほ〜う…中々でっかい屋敷だなぁ」
「まぁね。さ、入るわよ」
幽香の家は洋式の大きめな屋敷だった。この時代になんでこのデザインがあるのかは不思議なところだが、まぁ気にしないでおこうと思う。中はエントランスから廊下までたくさんの花で彩られ、歩いていて飽きがこない。…余談だが、その中を歩く幽香の後ろ姿はものすごく絵になってた。さすがフラワーマスター…。
やがて目的の部屋に着き、置いてあるソファに座らせてもらった。貴族っぽい人は隣のソファに寝かせている。
「さて、それじゃあ色々と聞かせてもらうわよ」
幽香は自分と俺の前にお茶を置いて言った。匂いから察するとハーブティー。
って、やっぱり俺の話聞くために家にあげたのか…。
平静を装って家に上がらせてもらったけど、出来れば俺はさっさと花と種貰って帰りたかった。何故か?この人が怖いからに決まってるじゃん。
「……今、失礼なこと考えたわね」
「え!?」
「顔に出過ぎよ。その流し目やめなさい」
今の言葉で永琳のこと思い出した…まだ治ってなかったのか。何年経ってると思ってんだよ俺…。
俺は自分に少し呆れた。まぁでも、さっさと終わらせて帰りたいので観念して幽香に答えようと思う。
「で、何聞きたい?」
「まず名前。私は一方的に名乗ったから成り行きで知られてしまってるけど、あなたの名は聞いていないわ」
そう言えばそうだった。すっかりタイミングを逃してしまっていた。俺は幽香にちゃんと向き直って名乗った。
「遅れて悪い。改めて、俺は神薙双也だ」
「双也ね…覚えておくわ。次だけど…」
幽香はそう言って区切りをつけ、質問を再開した。
「そうね…他に言いたいことがあるとすれば、私が最後に放ったマスタースパーク、やっと跳ね返したって感じの割にそこの人間を守る時にはアッサリ打ち消してたわね。何?手加減でもしてたの?」
おっとそれが来たか…手加減って言うか、全開で戦ったら周りの花をことごとく斬り倒しちゃって後で恨みを買うと思ったから…。
幽香は明らかに不機嫌な顔をしている。手加減されたと思って苛立ちがこみ上げてきているのだろう。ちゃんと弁解しておかないとマズイと思った。
「あのな幽香…手加減って言うよりも、全開で戦ったら花を全部切り倒しちゃうと思ってギリギリの開放にしただけなんだよ。別に幽香を甘く見てたとかじゃなくて----」
「私の花達の為、と言いたいの?」
「お、おう…そういう事…」
突然幽香が割り込んできたから返事が曖昧になってしまった。幽香は言葉の真偽を確かめるように俺を見つめている。気分的にはあまりよろしくない。
少しして幽香は目を離し、口調を柔らかくして言った。
「いいわ、信じてあげる。双也も花を大切にしてくれるのね。最近は私の花を勝手に持っていくヤツも居てね。まぁ全部叩き潰して取り返してるんだけど」
幽香の声がだんだん低くなっていく。表情を見る勇気は俺には無い。ホントシャレになってないからやめて下さい。
幽香は咳払いして声を戻し、質問を続けた。
「コホン…コレで最後よ。あなた普通の人間じゃあないわよね? ここまで強い人間なんて居るはずないもの」
やっぱりこの質問くるよねー。……何回説明する事になんだろ…きっと東方キャラ全員出るまで説明し続けるんだろうな…。
先のことを考えて少しウンザリした。
と言うわけで割愛!
〜人間?説明中〜
「ふ〜ん、現人神ね〜」
「あれ、あんまり驚かない?」
俺は今までとは違う反応に少し戸惑った。まぁ今までワーギャー騒がれたくらいしか頭に残ってないので仕方ないと自分を納得させる。
幽香はそんな俺を見て、さも当然といった表情で答えた。
「そりゃそうよ。私の最高の技をアッサリ打ち消したのよ?妖怪はあり得ないし、人間では無いなら神しかないじゃない」
「いや…俺一応人間なんだけど…」
「どの口が言っているのよ」
「…………………」
ちょっと…やっぱり傷付くなコレ…。紫に次いで幽香までも俺を人間として見なくなっちゃったよ…。
俺が落ち込んで下を向いていると、横のソファからガバッという音がした。
「えっと…ココどこ!?」
「おー起きたか、ここは幽香の屋敷だよ。お前気を失ってたんだぞ」
俺たちが話している間に貴族っぽい人が起きたようだ。俺が現状を伝えてやると、片手を額に当てて思い出し始めた。
「気を失って…そうだ、風見さんに睨まれて…それで……!!」
貴族っぽい人は記憶を掘り出しながら顔を上げた。真っ先に視界に入ったのが幽香だったのだろう、すごい勢いで扉の辺りまで後ずさった。あー完全に怯えてるな。
それを見て幽香が言った。
「ちょっと、私を見ていきなり後ずさるのは失礼じゃない?いいから席に戻りなさい」
「い、いや----」
「戻 り な さ い ?」
「………はい」
幽香が睨みを利かせて言ったら渋々戻った。きっとトラウマになるだろうなーかわいそ…。
同情しても仕方ないので、貴族っぽい人に事情を聞くことにした。
「お前…えと、名前わかんないけど、なんであそこに居たんだ?危険なのは見れば分かるだろ?」
「ぼ、僕は士郎です。その…ある方の命令で、神薙さんを尾行していたんです。"神薙さんの難題が解けそうなら邪魔をしろ"と言われて…」
士郎は少し申し訳なさそうに言った。ここまで着いてくるくらい覚悟はあったけど、心の底ではどこか不本意だったのかな、邪魔しようとしたこと。まぁこいつが居ようが居まいが難題は解いていただろうが。
それにしても…俺の邪魔をしたがるくらい憎んでる奴なんてあの時のクズ貴族だけだよな…。懲らしめてやろうか…。
俺はそう考えていたが、ふと不可思議なことがあるのに気が付いた。
「そういや士郎。お前どうやってここに来たんだ?」
俺は紫に頼んでスキマを開けてもらい、そこを通ってここに来た。士郎はただの人間だろうし、そのままでは尾行なんか出来なかったはずだが…。
その問いに、士郎は表情を乱さずに言った。
「どうやってって…神薙さんが入ったあの目玉の物を通って来たんですよ?出現したままだったので」
「目玉の物? ……ああ…ったく紫のヤツ…」
士郎の言った目玉の物ってのは恐らくスキマの事だろう。俺が通った後も出しっ放しにしてたのは、多分士郎の存在にも気付いていたからだろう。なんで士郎を寄越したのかは分からないが、紫の事だし、あらかた"面白そうだから"とか言うんだろうな…。
コレで大体知りたい事は分かった。俺は幽香にお茶の礼を言って出て行こうとした。が
「待ちなさい双也。今夜は泊まっていったら?士郎もね」
「「………………え?」」
「もうすぐ日が落ちるわ。その目玉の物ってのを通ってきたなら道がわからないんじゃない?客を夜道に放り出すのも家主としてはよろしくないし」
言われてみればそうだ。直で来たんじゃ瞬間移動もできない。知らない道を暗闇の中歩くのは、俺ならまだしも士郎には危険極まりない。………従うしかないか。士郎はすごい嫌そうな顔をしてるけど。
「分かった。じゃあ泊まらせてもらうよ」
「ええ!? 神薙さん!?」
「士郎、お前暗闇の中を歩いてったら死ぬぞ?」
「うっ……」
「決まりね。部屋は余ってるし、そこの両脇の部屋を貸してあげるわ。私はお風呂に入ってくるから自由にしてて構わないわよ。…………覗いたら…分かってるわね?」
「「覗かねぇよ!(覗きませんよ!)」」
そう言って幽香は行ってしまった。自由にしててと言われても、下手なことしたら殺されそうなので俺はサッサと寝ることにする。
「じゃあ士郎、俺寝るから」
「はい、お休みなさい」
俺はあてがわれた部屋のベットで、グッスリ眠った。
なんだかんだ今まで通りの章の長さになりそうです。
ではでは。