東方双神録   作:ぎんがぁ!

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貴公子を前にした輝夜の口調ってどんななんですかね?

引き続き双也視点。

ではどうぞー!


第三十三話 六つの難題、答え合わせ

一週間前に来た時と同じ部屋。再度集まった俺たち六人はゾロゾロと部屋に入り、並んで座る。

最初に声を発したのはかぐや姫だった。

 

「では皆さん、早速解答と参りましょうか」

 

かぐや姫がそう言うと、丁度俺とは真反対の方にいる貴族の人が品物を出した。コレ暗黙の了解って言うのかな?アピールの時は騒いでた人たちがよく…。

そう思っていると、悔しそうな声が聞こえてきた。

……………え?

 

「ふむ…光っていませんね。不正解です」

 

「くっ…」

 

ちょっ…

 

「簡単に燃えましたね。不正解」

 

「くそぉ!」

 

まっ…

 

「コレは作り物ではないですか。不合格です」

 

「なぜ私だけ合否!?」

 

ドンマイ…

 

「かぐや姫よ!これがお望みの"龍の顎の玉"ですぞ!さぁ我と婚約の契りを!」

 

「…!……コレは……」

 

イヤイヤ速すぎ!まるで人がゴミのようにはたき落とされていったぞ!一分かかってないし!凄腕鑑定士か!!

かぐや姫の品物鑑定はスルスル進み、三人落とされた。四人目はあのクズ御行様な訳だが…どういうわけかかぐや姫は何も言わない。……まさか…

 

「どうですかぐや姫!お気に召しましたかな!?」

 

「……これは本物ですね。輝き方、色の種類、全て一致しています…」

 

嘘だろ!?普通の竹取物語と違う!?

かぐや姫も予想外の様で少し困った声をしている。

まずいまずい!このまま進んだら色々まずい!どうする!?

 

「ではかぐや姫!私とk----」

 

「お待ちくださいかぐや姫。私の品をご覧になっておりません」

 

俺が心の中で焦りに焦っていると、クズ御行の言葉に割り込んで不比等さんがかぐや姫に言った。

確かにそうだ!全部鑑定するまで決めきれない!不比等さんグッジョブ!!

 

「………そうですね。確かに本物ですが、藤原さんの品も確認しなければなりません」

 

「藤原の!貴様ァ!」

 

「当然の事を言ったまでだ。文句を言われる筋合いはない」

 

「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ…」

 

(はっ!ざまぁ見やがれ!)

 

俺は心の内で言ってやった。これで不比等さんのも本物ならばまだどうにかできるかもしれない!

不比等さんは静かに自らの品物を出した。

 

「かぐや姫、これが私の答え…"蓬莱の玉の枝"です」

 

「!」

 

不比等さんが出したのは、真珠の実をつけた金色の茎と、土から僅かに見える銀の根を持つ木。この空間において強い存在感を放つ品だった。

かぐや姫はそれを手にとって一言。

 

「コレも………本物……」

 

(よし来た!)

 

俺は小さくガッツポーズをした。

首の皮一枚繋がった。ここで婚約が成立してしまったら後々に響く。ここはどうにかしなければならない。

かぐや姫は少し困った声で言った。

 

「仕方ありません。どちらも本物であってはどうにかして決めなければなりません。神薙さんは婚約が願いではありませんでしたが、どうしますか?」

 

「え、あ、あーっとどうするか…」

 

確か竹取物語では、蓬莱の玉の枝は作り物で後々バレるってなってたはずだから、不比等さんが選ばれれば俺の望み通りに事が進むわけだけど、ここで参加しても導けるかどうか…

俺が頭を悩ませていると、部屋の扉が開く音がした。

 

「…士郎?」

 

「士郎!お前何をしに来た!」

 

扉を開いたのは数刻前に別れた士郎だった。突然の登場に俺も御行も驚いた。一体何をしに?

士郎は俺でも御行でも無く、かぐや姫に声をかけた。

 

「…かぐや姫様、僕は大伴御行様に仕える家臣、士郎と言います。無礼を働いたことはお許しください。申し上げたいことがあるのです」

 

士郎はとても丁寧な言葉遣いでかぐや姫に進言した。流石貴族の家臣と言ったところか。

御行は士郎の言葉に何か感付いたのか、声を少し荒げて士郎に言った。

 

「士郎!貴様一体何を言うつもりだ!」

 

「…御行様、僕は考えたんです。仕える主の言うままに全てをこなすのが、本当に正しい事なのか。

……僕は、主を突き落としてでもでも間違いは正すべきと考えます…!」

 

「なっ…!!」

 

士郎はまっすぐな目で御行を見て言い放った。よく決めた士郎!そしてナイスタイミング!

俺は士郎が言おうとしていることを察した。同時に、確信に近い"不比等さんの勝利"を予感した。

 

「…いいでしょう。士郎さん、あなたの話を聞きましょう」

 

かぐや姫がそう言うと、士郎は頷き、少し近寄って話し始めた。

 

「かぐや姫様、僕は見てきました。御行様の今までの行いを」

 

士郎の言葉がそういった直後には、全員の視線は御行に集まっていた。事を察した何人かは少し冷たい視線を送っている。

 

「御行様は、その傲慢な性格で度々非道な行いをしてきました。自らは毎日遊んで暮らし、家族や周りの人には情けも容赦もない。毎月重い税を民に納めさせ、そのくせその民たちを下民だ汚らしい、と罵っていたのです。僕は家臣になって日は浅いですが、その間でもずっとこの様な調子です」

 

「…………………」

 

かぐや姫は黙って聞いているが、影の感じからすると御行の方を見ているようだ。

って言うか御行そんな事までしてたのか?つくづくクズだな。救いようがない。

 

「挙句の果て、一週間前に僕が命じられたのは、"神薙双也の邪魔をして、難題を解けさせるな"です。御行様は自分の為に他人を蹴落とそうとしていたのです」

 

「黙れ黙れェェエエ!!」

 

士郎が言い終わるのと同時に御行が怒鳴った。

士郎の言った命令の内容は若干変わっているが、まぁ許容範囲だろう。間違ってはいない。

御行は懐から短刀を取り出し、士郎に向かっていった。

 

「おっと!」

 

キンッ

 

「…なに…?」

 

このまま進ませたら士郎が死んでしまうので、素早く天御雷を抜いて短刀の刀身を斬った。

天御雷をチンッと鞘に収めながら俺は言う。

 

「士郎に手は出させない。悪いのはお前だからな、大伴御行」

 

「ぐっ…」

 

御行は千切れるんじゃないかと思うほど額に血管を浮かばせて、悔しそうにしていた。士郎の言葉によってどういう結末になるか悟ったんだろう。

俺たちの動きが止まると、かぐや姫が声を発した。

 

「分かりました。大伴さん、私はあなたとは結婚できません。いくら品物が本物でも、そんな極悪非道な方に着いていくことはできません。よって、私は藤原さんと結婚いたしましょう」

 

「待ってくださいかぐや姫!!

こやつh----」

 

「見苦しいぞ大伴殿。かぐや姫は私と結婚するのだ。邪魔立てするでない」

 

悪あがきする御行を不比等さんがバッサリ切り捨てた。こう言うスッキリしたところは嫌いではない。俺はその隙に士郎をこちらに呼んで小声で話した。

 

「士郎、お前部屋の外でずっと待ってたのか?」

 

「はい。神薙さんが僕に言ってくれた言葉から考えた結果です。罪を犯したなら、報いを受けて改心させるべき、と考えたんです」

 

「…そうか」

 

俺は士郎に笑いかけた。やっぱり士郎はいい奴だ。本当ならこういう人間が偉くなるべきなのに、なんで世の中ってのはそうならないのだろうか?不思議に思う。

俺たちが話しているところへ、かぐや姫が声をかけてきた。やっとか…

 

「さて、婚約の話は終わりましたが…神薙さん、あなたの鑑定が終わっていませんね。品物をこちらへ」

 

俺は幽香に貰った花と種を差し出した。かぐや姫は例の如くそれを手に取って鑑定する。

 

「本物…ですね。……意外です。ある意味一番の難題だったのに…」

 

「俺にかかればこんなモンですよ」

 

「いいでしょう。では二人でお話ししましょうか。みなさん静かにしていt----」

 

「ええ〜、二人っきりでお話したいです俺」

 

俺の言葉に一瞬静まり返る。なんだ、そんなに誰か見張りをつけておきたいのか?箱入り娘かよ。

そんなことを思っていると、意外にもおじいさんが口を開いた。しょーがないな。

 

「神薙様それは出来ませぬ。なぜなら----」

 

「そう言えばかぐや姫!最近月がとても美しいですよね!」

 

「……………?」

 

「こういう月を見ると、何だか何か凄いものが降りてくる(・・・・・・・・・・・・)…そんな気がしませんか?」

 

「!!」

 

その言葉を聴いた瞬間、かぐや姫の体がビクッと揺れた。そのすぐ後には声が響く。

 

「…神薙さん以外は全員部屋から出て行ってください」

 

「かぐや姫!?」

 

「いいから」

 

「……………」

 

かぐや姫の言葉で俺以外は全員、渋々だが部屋から出て行った。俺はその直後に能力を使う。

 

「……部屋に防音の結界を張っておいた。もう普通に話していいぞ。蓬莱山輝夜(ほうらいさんかぐや)

 

輝夜は顔が見えない様にかけられていた(すだれ)っぽい物を手であげて中から出てきた。

腰より長く伸びた(つや)やかな黒髪、薄紅色の服を前のリボンで留め、濃い赤色の長いスカートを履いた、淡麗な整った顔立ちの美しい少女。俺の知っている蓬莱山輝夜が、俺を見ていた。

 

 

「さ、お話しようか。輝夜姫?」

 

 

 

 

 

 

 




区切りがあまり納得いっていない私です。どうも。

ではでは。

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