東方双神録   作:ぎんがぁ!

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竹取物語編は短いお話が多い様な気がします。わざとではないんですけどね…。伸び悩んでます。

お気に入り件数50件ありがとうございます!無事に完結できるよう頑張ります!

では三十四話!どうぞっ


第三十四話 輝夜の想い

簾っぽいのを上げて出てきた輝夜は、俺の対面の座布団に座り、口を開いた。

 

「……名前を聞いた時にもしやと思ったけど……本当にあの神薙双也だったなんてね」

 

「ん?なに、俺の事知ってんの?」

 

他の誰にも聞かれていないからか口調が崩れた。やっぱりこっちの方がピンとくる。

俺の問いに輝夜は少し笑いを含んで答えた。

 

「ふふっ 知ってるも何も、あなた月では知らない人がいないくらいに有名よ?」

 

お?マジ?いなくなった後も名前が語り継がれるってなんか偉人みたいで悪い気はしないな!でもなんて言われてんだろ…。

 

「有名って、どんな風に言われてるんだ?」

 

「馬鹿みたいに強いぽっと出隊長」

 

「なんだよぽっと出って!!有名になっても嬉しくないわそんなん!!」

 

アレか!?戦争の時か!?確かにぽっと出で隊長やってたけどそんなこと言ったら大半の兵がぽっと出の一般市民だったじゃん!!あ軍の兵もいたか。

突然の事で思わず突っ込みが出てしまったが、気付けば輝夜は口を押さえて笑いを堪えていた。

…完全に乗せられたっぽい。

 

「ぷっ…ふふふふふ……じょ、冗談よ。そんな名で呼ばれてるわけ、クスクス…無いじゃない。ふふふ…」

 

「おい、からかったのは何も言わないから笑うのやめろよ」

 

自分で乗せたくせにちょっと笑い過ぎだと思う。話してる合間にも笑われたら気分悪くなるじゃん。

漸く笑いが治った輝夜は、息を整えて話を戻した。

 

「はぁっ 笑った笑った。冗談はこれくらいにして、本当は"伝説の英雄"って呼ばれているわ」

 

「え、英雄……」

 

ちょっとジーンと来るものがある。日女を通して月の様子は聞いていたが、自分が守った人達がこうして思ってくれていると考えるとなんだか胸が暖かくなった。

 

「それはそうと…」

 

「ん?」

 

話に一区切りついた所で輝夜が話し始めた。

 

「双也…あなたなんで私の名と……月からのお迎え(・・・・・・・)の事を知ってるの?」

 

「………えーっと」

 

正直言って少し困った。そう言えば一億年前は輝夜と会ってないな。生まれてすらいなかったのかもしれないが。

お迎えの事も原作知識で知っていたことだ。輝夜の気を引くために言ったが悪手だった様だ。

 

「名は…ほ、ほら!俺ツクヨミに聞いたんだよ!蓬莱山の家にこんな子が生まれたんだぞーってさ!」

 

……うん、我ながらヒドイ言い訳だったと思う。

しょうがないじゃん!こんな質問予想してなかったんだよ!

 

「ふーん…まぁ英雄様じゃ不思議はないわね。お迎えの事は?」

 

アッサリ流されてしまった。不思議は無いのか?

と言うことでお迎えの事だが…う〜ん…

 

「か、神様ですから!」

 

俺は拳を自分の胸にポスッと当てて言った。

ちょっと言い訳が思いつかなかったので無茶してみたのだ。コレで誤魔化せたらこれからもコレ使うことにする。

 

「神様? 双也って神様なの?」

 

「そ、そう!俺神なんだよ!半分だけどね!」

 

誤魔化せはしなかった気がするが話題は反らせたからいいとする。でもまぁ、またあの面倒くさい説明をしなくてはならなくなったわけだが…。はぁ、割愛。

 

 

 

 

〜英雄様説明中〜

 

 

 

 

「と言うわけで、俺神だから知ってたんだよ!」

 

「へぇ〜!双也って凄いのね!天罰神の現人神なんて…英雄と呼ばれるわけね!」

 

例のごとく、転生の事を端折(はしょ)って説明した。

興味を持ってくれたようで何よりだ。

暫く輝夜は俺に関心を向けていたが、突然思い出したように焦った声を出した。

 

「あっ、そうよお迎えよ!双也どうしよう!私月からお迎えが来るって分かってるのに結婚なんかできないわ!本当は諦めさせるために難題を課したのに…」

 

輝夜が焦っていたのは結婚の事についてだった。それなら心配ない。全部俺の望み通りに進んでるから。

 

「心配すんな輝夜。大丈夫だ、お前は結婚なんてせずに済む。俺が約束するよ」

 

「ほ、ホント?」

 

「ああ、ホントだ。全部上手くいくから、心配すんな」

 

「……ありがと双也!」

 

輝夜は顔を上げて明るく微笑んだ。多分俺がどうにかしてくれるって思ってるんだろうが、生憎そうではない。結婚を断る口実が自然にできるって事だ。

御行の難題が解けた事は意外だったが、多分俺が関与してしまったゆえに本当の竹取物語とは違いが出てしまったのだろう。不比等さんには殆ど関与してないし、原作通りに進むはずだ。結局は不比等さんのも本物のようで偽物だったってことだな。

 

その後は俺の旅の事とか輝夜の月での話とか、談笑で大きく盛り上がった。時間もそれなりに過ぎていった訳だが…まぁあの貴族たちは帰ったのだろう。ココでする事は終わったわけだし、部屋の外に霊力も感じない。

俺たちは襖を開けて、すっかり暗くなった空に浮かぶ満月を見ながら座っていた。

 

「ねぇ…双也」

 

「ん?何だ?」

 

輝夜は月を眺めながら俺に声をかけた。さっきまでの盛り上がりが嘘のように静かな声だった。

 

「私ね、月では八意永琳って人と仲が良かったの。私の教育係って立場ではあったけど、よくお話を聞かせてくれてね」

 

「…永琳…か」

 

この名を他人の口から聞くのは何年ぶりだろう。今でも思い出す、街での日々。

輝夜は一呼吸置いて再開した

 

「永琳のお話にはよく伝説の英雄様の事が出てきたわ。まるで友達であったような顔で、声で、こんな人だったのよって私に言うの」

 

「………………」

 

「憧れたわ…そんな人が本当にいたなら、退屈な月での日々もきっと楽しく過ごせるだろうなって」

 

輝夜はそこまで言うと俺の方に向き直った。その顔は少し赤らんでいた。

 

「双也…」

 

「!? か、輝夜?」

 

輝夜は勢いよく俺に抱き着いた。女性独特の甘い香りがする。

そのまま、輝夜は耳元で話し始めた。

 

「私はね、蓬莱の薬を飲んで地上に落とされたのは望んだ事だったの。退屈な月での生活から逃げ出したいって気持ちもあったけど、もう一つ…地上に一人残った英雄様に会ってみたいって思ったからなの。神頼みに近かったんだけどね、もしかしたら生きているかもって思って」

 

輝夜は少しはにかんだ声で言った。依然輝夜は抱き着いたままだ。

 

「そして本当に出会えた。私が課した難題にも屈せず、心の底から楽しい時間を過ごさせてくれた。

……私あなたと話していて改めて思ったの。こんなに強くて、こんなに楽しくて、こんなに他人思いな人になら、私は………」

 

輝夜はそこまで言って黙ってしまった。代わりに一層強く抱き締められた。

俺はさすがに何を言えばいいのか分からない。輝夜の気持ちをどう受け取ればいいのか分からない。

輝夜は強く抱き締めた状態で囁いた。

 

「ねぇ…双也、私と一緒に…月に戻らない…?」

 

「……なぜ?」

 

「私はあの退屈な日々に戻りたくない。でも双也が居てくれるなら月での生活も良いものになる。だから…!」

 

……輝夜の気持ちには応えてあげたい。気持ちも素直に嬉しい。でも…その為には輝夜の事をもっと知らなくてはいけない。そして、今はそれに費やすだけの時間が足りない。

 

「輝夜…気持ちは嬉しい。でも、一緒に月へは行けない」

 

「え…」

 

「俺はここでやる事があるんだ。この世界をもっと楽しく生きる為に、見届けなきゃいけない事がある」

 

「……………」

 

「それに言っただろ?"全部上手くいく"って。月に戻りたくない、それが願いならきっと叶う」

 

俺は輝夜の肩を掴んで離し、目を真っ直ぐ見て言った。

そしてスッと立ち上がった。

 

「双也……」

 

「迎えが来るのは次の満月の日だろ?俺を信じろ輝夜!大丈夫、お前を悲しませたりはしないさ」

 

俺はそう言って瞬間移動を使って輝夜の屋敷を去った。

一ヶ月後、あいつらが来る。

 

 

 

 

「ふふ… 双也、思った以上に………。

いいわ信じてあげましょう。月に語られる英雄様?」

 

 

 

 

 




なんか…ラブコメ要素が……。
ま、まぁこう言うキャラが居ても悪くはないですよねっ!
ですよ…ね?
念の為言っておきます。"ぐーやは俺の嫁だっ!"と言うファンの方々…すいませんでしたっ!!

ではでは。

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