東方双神録   作:ぎんがぁ!

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タイトル詐欺です。実際は後半からです。ご注意をっ!

あ、あとUA10000突破ありがとうございます!
これからも頑張ります!

ではどうぞ〜


第四十二話 VS四天王、"語られる怪力乱神"

「まさか…本当に勝ってしまうとは……」

 

双也と四天王、萃香の喧嘩に決着がついた直後、嵐はあまりの驚きにそんな言葉をこぼしていた。

鬼が山にやってきた時、天魔である嵐は必死に抵抗した。妖力も完全に開放し、殺気を隠すこともせずに本気で向かっていった。それでも勝てなかったあの鬼、しかも四天王に、人間であるはずの双也は勝ってしまった。嵐にとっては衝撃以外の何者でもなかった。

嵐がそう思っていると、大の字で仰向けになっている萃香が口を開いた。

 

「ははは…ホントに強いな双也は…まさか人間に負けるなんて、面目ないねぇ…」

 

それを聞いた双也は萃香に顔を向けて言葉を返す。

 

「こっちのセリフだよ。鬼ってのはみんなこんなに強いのか?嵐が負ける訳だ」

 

「いやぁ私はこれでも四天王だからね。そこらの奴…さっき双也が戦った奴とかと比べるなら私の方が強いさ」

 

「まぁ…そりゃそうか」

 

双也は萃香に手を差し出し、彼女はそれに掴まって起き上がった。身体中ボロボロである。

 

「いつつ…こんなに傷ついたのはいつぶりかな…」

 

「……ちょっと待ってろ」

 

双也はそう言うと、萃香の肩に手を乗せて能力を使った。例の如く、治癒をしているのだ。

治った萃香の身体を見て、嵐が感嘆の声をあげた。

 

「凄いな…双也は傷も治せるのか」

 

「まぁな。俺の能力は応用範囲が広いから」

 

「それだけじゃあここまで強くなれないと思うけど…」

 

双也の言い分に萃香は少し呆れた声でつぶやいた。

実際、元である霊力がなければ能力は発動できない。戦いの際に双也が躊躇わず能力を使えるのは、毎日瞑想して霊力を増やしてきた双也の努力の証とも言える。

双也は萃香の言葉などは気にせず、呟いた。

 

「さて、他の四天王は…上かな?」

 

双也の言葉には萃香が反応した。

 

「そうだけど…双也、まさか他にも喧嘩ふっかける気?」

 

「俺が発端みたいに言うな。喧嘩しようって言ったのお前だろ」

 

「あんなデカイ霊力出してたら誘ってるようなモンだよ、鬼にとってはね」

 

双也が他の鬼たちの方を見ると、全員が打ち合わせしたようにウンウンと頷いていた。それを見て双也は呟く。

 

「俺は接点作りたいだけなのに…」

 

「鬼と仲良くなりたいなら、"喧嘩して宴会"!コレに限るよ!!」

 

「……………また喧嘩することになりそうだなぁ…」

 

双也は愚痴をこぼしながらまた山を登り始めた。萃香や他の鬼たちはついでにそこで宴会を開いていくらしく、双也には着いて行かなかった。

歩いている途中、嵐は双也に気になっていた事を尋ねた。

 

「なぁ双也、決着をつけた時に雷を出してたが…お前刀を使うんじゃなかったのか?前に来た時は刀で一掃されたと聞いたぞ」

 

嵐の問いに双也は振り返らずに答える。

 

「確かに俺は剣術を使うけど、今回は大体拳でやるって決めてたからな。別の方法にしたんだ。まぁ最後に少し使ったけど…それは置いといて、能力の応用の仕方を変えたんだ」

 

「応用の仕方?」

 

「ああ。今まで俺は結合の能力を主に物質を集める為、つまり物理的に使ってた訳だけど、今回は少し無茶な概念的結合を使ってみたんだ。雷の性質を霊力に結合(・・・・・・・・・・)ってね」

 

「!!」

 

概念の結合。それが凄まじいことだと嵐は気付いていた。"雷を生み出す程度の能力"などとは違う、世の理を捻じ曲げた様な力であると。

程度能力で火や雷を放つのは、本来能力によって霊力や妖力を変換してそのものとする事で出来る。しかし、双也がやってのけたのは性質の結合。つまりそのままのモノに別のモノを付与したのだ。彼はそれを使って雷そのものではなく雷と霊力の性質を持ったモノを作り上げた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

下手をすれば、地面のように硬い雲や、水のように流れる火など、物理法則を無視した様なあり得ない物を創造する事も出来るという事だ。

嵐は双也の計り知れない力と潜在能力に恐怖すら覚えていた。

 

「お前は…本当に凄い奴だな」

 

「そうか?」

 

双也と嵐がそうして話していると、ようやく山頂に着いた。山頂には割と大きい家が建っており、その玄関の石階段には、座って酒を飲んでいる一本角を額から生やした一人の女性が。

その女性は双也たちを見ると声をかけた。

 

「来たね、お前が萃香を倒した人間かい?」

 

「ああ。俺は神薙双也。お前四天王の一人だよな?」

 

「おうとも!私は星熊勇儀(ほしぐまゆうぎ)!萃香と同じ四天王さ!」

 

勇儀は立ち上がり、自分の拳を胸にドスンと当てた。勇儀は言葉を続ける。

 

「早速で悪いんだけど、萃香との戦いを妖力やらで感じてたら私も喧嘩したくなっちまった。………いいかい?」

 

「はぁ…喧嘩っ早いにも程があるだろ。他の鬼でももう少し脈絡っつーもんがあったぞ?」

 

「悪いね。あんたが来るのをじっと待ってたらもう堪えられなくなってさっ!」

 

勇儀はそう言うのと同時に妖力を解放した。初めの妖力よりも大きくなり、それは萃香と同等かそれ以上。双也も霊力を解放して言った。

 

「鬼と三連戦……キツイけど、萃香が言ってたことももっともだしな…」

 

「アイツがなんて言ってたんだい?」

 

「"鬼と仲良くなるなら喧嘩と宴会"だってさ。だから俺は、喧嘩でもってお前と仲良くなろうと思う」

 

それを聞いた勇儀は勢いよく笑い出した。

 

「あっはっはっはっはっは!!鬼と仲良くなりたい人間なんているんだね!!いいよ双也!面白いじゃんか!ならたっぷり、喧嘩を楽しもう!!」

 

勇儀はそう言って地を蹴った。同時に双也も駆け出す。

 

「「うおらああああ!!!」」

 

勇儀がの拳と双也の拳が重なる。それは爆音と衝撃を放って反発し、互いを吹っ飛ばした。双也はすぐに体勢を立て直し、瞬歩で未だ吹き飛んでいる勇儀の所へ移動した。彼女を打ち返すように蹴りを放つ。

 

「ふんっ!!」

 

「甘いよ!!」

 

「!?」

 

なんと勇儀は、双也の蹴りを空中で受け止め、その体勢で地に足をつけて双也を地面に叩きつけた。

 

「がふっ!」

 

「まだまだぁ!!」

 

勇儀は下になっている双也に向けて拳を振り下ろそうとした。しかし彼女の拳は逆立ちの様にして双也の足に止められ、もう片方の足で蹴り飛ばされた。木を何本か折り倒して止まる。

 

「あぶねぇ…お前の拳なんか食らったらシャレにならないな」

 

「ちっ、よく言うよ。食らってもどうせピンピンしてるだろ?」

 

「どうだか、ね!」

 

今度は双也が仕掛けた。霊力を込めた拳を勇儀に放つ。勇儀は片手でそれを受け流すが、彼はそのまま回転し、彼女の側頭部を狙って裏拳を放つ。

 

「こっちだ!」

 

「うおっと!! あぶない、ねぇ!!」

 

裏拳を受け止めた勇儀は、背を向けている双也を蹴りで吹き飛ばす。双也は飛ばされて地面にぶつかりながらもなんとか受け身を取り、勇儀の方に振り返ると、彼女は上空で拳を構えていた。

 

「くらえええええ!!!」

 

そう叫びながら勇儀は迫ってくる。双也は彼女の動きをよく見、拳を突き出したのと同時に両手で腕を絡む様に掴み、勢いを殺さずに振り回す。

 

「うおぁぁああ!?」

 

「これだけじゃ、終わんねぇぞ!」

 

そこでジャンプし、縦に振り回しながら霊力を込める。その状態で自由落下し、最後

 

秘技(ひぎ)雷転一本背負(らいてんいっぽんぜお)い』!!」

 

込めた雷の霊力を炸裂させながら地面に叩きつけた。ただの柔道と霊力の組み合わせだが、たっぷりとかかった遠心力と相まって直径3mほどのクレーターを作るほどの威力となった。

 

「ぐあぁぁあ!!」

 

「おらぁ!!」

 

双也は叩きつけた勇儀を投げ飛ばした。辛うじてだが、彼女も受け身をとっても着地する。しかしもう身体はボロボロだった。

 

「くう…このままじゃ負けるな…仕方ない、鬼に伝わる大技、双也に見せてやるよ」

 

「流れが萃香と一緒だぞ」

 

「そんなのはどうでもいいんだ。それにあいつのは"大鬼"の技だろ?私のはあんなのの比じゃないよ……ふっ!!」

 

勇儀が拳に力を込めると、双也でも少し驚くような量の妖力が彼女に集まっていった。それはどんどん圧縮され、大気を震わせる。

 

「四天王奥義『三歩必殺』…! 行くぞ双也ァ!!」

 

その声と同時に双也は構える。勇儀は大股に一歩を踏み出した。

 

「一!!」

 

 

 

 

拳は勇儀自身の妖力をも吸収した。妖力が跳ね上がる。

 

 

 

 

「二のォ!!」

 

 

 

 

地面が大きく揺れ、その場にいる者の足場を崩していく。

 

 

 

 

「三!! くらえぇぇぇええええ!!!」

 

 

 

 

双也の目の前に踏み込み、体を浮かせる。そこに正真正銘勇儀の最大火力が叩き込まれた。

 

(もってくれ…!!!)

 

双也は腕をクロスさせて防御の姿勢をとる。勇儀はそれを気にせず、問答無用に拳をいれた。瞬間、初めの比ではない衝撃波が発生し、あたりの木々を吹き飛ばした。同時に二人共(・・・)吹き飛んだ。

 

「双也ぁぁあ!!」

 

戦いを見ていた嵐は勇儀の三歩必殺をもろに食らった双也が飛ばされた方に叫んだ。

 

「おい!大丈夫か!? おい双也!!」

 

「…ぐっ、うぅぅ…いってぇぇえ…。くそっ、バカみたいな威力だな…」

 

土煙の中からは、腕がバキバキに折れた双也が痛そうにしながら出てきた。嵐はそれを見て驚愕する。

 

「アレを食らってそれだけか!?」

 

「はぁ!?こんなに(・・・・)だよ!!あんな必死に防御したんだぞ!!」

 

双也と嵐がそうやって言い合っていると、勇儀が吹き飛んだ方の土煙も晴れてきた。中には膝をついて吐血している勇儀の姿があった。なぜか腹を抑えている。

 

「うっ…ガボッ… っはぁ、はぁ、な、なんで…私に…こんな…」

 

双也と嵐は腕を直しながら勇儀に近寄って肩を貸した。双也は鬼の屋敷に向かって歩きながら説明した。

 

「勇儀の拳が当たった瞬間、能力で"衝撃を勇儀の腹に繋げた"んだ。流石に防御しきれないと思ってね。それでも威力を流しきれなかった…ホント、凄いやつらだよ、鬼ってのは」

 

「はっ…喧嘩に負けて褒められるようじゃまだまだ甘いね、私は。……でも、これで双也ともダチだな…!」

 

勇儀は力ない声で双也に言った。双也はそれを聞き、勇儀に笑いかけて言った。

 

「ああ。腹の内をさらけ出しあったんだ、もう立派なダチさ!」

 

勇儀はそれを聞くと、少し笑って気絶した。

 

彼女を屋敷の玄関に横たえて振り向くと、酒やら肴やらを持ったたくさんの鬼たちが集まってきていた。

 

 

 

 

 

 




妖怪の山は早いですかね〜…。でもまだ先は長いです。

ではでは。

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