東方双神録   作:ぎんがぁ!

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今回は短いです。切りが良かったので。

ではど〜ぞ〜


第四十三話 宴会、"友達"の意味

「さぁさぁもっと飲め!!今回の主役はお前さんなんだからな!!パーっといかないと損だぜ!!」

 

「そうだぜ兄ちゃん!四天王を倒したくらいだからぁ?酒も結構いけるんだろ!?」

 

「あいや、俺もう結構飲んでるし…つーか肩痛いから離れて…」

 

妖怪の山山頂。勇儀に勝った俺は、直後に集まってきた鬼達の宴会に参加していた。確かに日も沈んできて宴会するにはちょうどいい時間だが…

 

「ほらもっといけもっといけ!!」

 

「ほーう、やっぱいい身体してんなぁ兄ちゃん。このまま鬼の仲間入りしねぇ?」

 

…鬼たちの絡みがひっじょ〜にウザいッ!

事あるごとにバカみたいな度数した酒を飲ませたがり、俺と話す時にはすげぇ力で肩を組む。ヤンキーかっつーの。

それだけでも結構な迷惑なのに、周りを見渡せば…

 

「おいテメェ!!」

 

「あ"ん? やんのかゴラァ!!」

 

「いいぞもっとやれー!」

 

…些細なことで喧嘩を起こす始末。うるさいったらありゃしない。まぁあいつらが楽しいなら良いんだけどね?"慣れてない俺の事も考えて欲しい"とか思ってないからね?

そうして静かに(?)酒を飲んでいると、隣に萃香がやって来た。

 

「よっ双也!昼間ぶり!ちゃんと飲んでるかい?」

 

「お前も酒飲ませに来たのか?」

 

「そう言う訳じゃないけど…コレは宴会での挨拶だよ!鬼と友達になったんだからそれくらい覚えとかないと」

 

友達になったのちょっと後悔してきた……。

萃香の言葉を聞いてそう思った。つまりはそんな事を覚えとかないといけないほど頻繁に宴会してるって事だろ?俺人間だよ?殺す気か。

心の中でそう愚痴っていると、萃香は思い出したように声を上げた。

 

「あ!そう言えば天魔は?さっきから見てないんだけど…」

 

「ああ、嵐ならそこで潰れてるぞ」

 

「きゅうぅぅ〜………」

 

「なんだ早いなぁ。コレでも天狗の長?

ホラ天魔!もっと飲むぞー!起きろー!」

 

萃香は倒れている嵐に近付き、頭をぺしぺし叩いて起こそうとしている。…そして微かに"うっ、ちょ、やめ…もう…"

とか悲痛な叫びが聞こえた。鬼だな萃香。あ鬼だったな。

そうしてその様子を見ていると、屋敷の玄関の方から声が聞こえた。

 

「あぁ〜いってぇぇ〜…。お!やってるねぇ!私も混ぜろぉ!」

 

聞こえた声の主、勇儀はジャンプして俺の隣に座った。いつの間にか大きな盃も持っている。なるほど、コレが"星熊盃"か。すげぇデカイ。

嵐に酒を飲ませていた萃香は、勇儀に気付くと再びこっちに来た。

 

「おお勇儀!もう大丈夫なの?派手にやられたみたいだけど」

 

「ああ、お陰様でね。…にしても双也強かったなぁ!あの…一本背負いっての?アレは効いたね!」

 

「まぁ結構頑張った技だったからな…効いてくれてないとへこむ」

 

「私なんて雷吼炮ってので大鬼状態のまま吹っ飛ばされちゃったよ!こんな強い人間初めて見たね」

 

そんな会話をしながらどんどん夜は更けていった。グチグチとは言っていたけど、なんだかんだで楽しい宴会だった。この時にはもう後悔したなんて感情は消え失せていた。

ほとんどの奴はもう酔い潰れ、残っているのは俺と萃香だけになった。やっぱり静かに酒を飲むのも良い。

…因みに勇儀は酔い潰れたからではなく、疲れたから寝ている。多分ここ重要。

 

「なぁ萃香、四天王って言うんだからもう二人いるんだろ?そいつらはどうしたんだ?」

 

俺はふと疑問に思ったことを口にした。萃香は物思いに耽るように月を見上げ、少し寂しそうな声で言った。

 

「……一人はどっか行っちゃったんだ。"仙人になる"とか言って出て行った。今はどこで何をしてるのやら」

 

「仙人か…」

 

仙人という単語に神子たちを思い出した。でもあいつらは鬼じゃない。鬼で仙人って言うと…一人いた気がするな…うろ覚えだが。

俺がそう考えていると、萃香は続きを話し始めた。

 

「もう一人は………死んだんだ」

 

「!!」

 

「昔から、私たち鬼は人間たちとの真剣勝負を楽しんでた。でもある頃から、人間達は卑怯な手を使って鬼を殺すようになった。正確にいつからかとは覚えてないけど……そいつはその一人目の犠牲者だったんだ。…鬼の四天王ってのは、力の序列を表してるだけで居なきゃいけない存在って訳じゃないから、そいつを超える者が現れない限り死んでも四天王のままなんだ。皮肉だよね…」

 

「……悪い」

 

「いやいいよ。さっきも言った通り昔の話だから」

 

そう言って笑う萃香の表情はとても悲しそうだった。そりゃあ近しい存在が消えたら悲しくなるよな。萃香には悪いことをした。

暫く、二人黙って酒を飲んでいた。互いに酌をしながら、月を静かに眺めていた。

もう月が真上にきた頃、萃香は立ち上がって俺に言った。

 

「さて、そろそろ私も寝るよ。ここに来る前にも軽く宴会やって疲れたからね。おやすみ双也」

 

「ああ、おやすみ萃香。また明日な」

 

俺がそう言うと、萃香は少し不思議そうな顔をしてこちらを向き、すぐ笑顔になって言った。

 

「うん、また明日!」

 

萃香は屋敷の中へ去っていった。

ふと思ったことだが、さっきの笑顔…今日見た中では一番嬉しそうな笑顔だった。萃香が現れた時はみんな震えて恐れていたし、ひょっとして萃香って友達と言える友達が少ないのかも知れない。

 

(その上で近しい存在を二人も無くしてるのか…。辛いだろうな…)

 

"仲良くなるなら喧嘩と宴会"。四天王が特に喧嘩っ早いのは近しい存在を欲している事の裏返しなのかも知れない。

萃香が四天王として恐れられているなら、恐らく勇儀も…。

 

「友達…ね」

 

友達と言う言葉は難しい。この言葉を逆手に他人を利用したり、はたまたただ面識があるってだけの相手の事をそう呼んだり。お互いを支え合い、心を通わせて生きる相手の事をそう呼んだりもする。人によって定義が違うのだ。

四天王の奴らはきっと、心を通わせる相手を求めているのだと思う。生き物ってのは孤独では生きられない。だから心の拠り所を求める。友達を作ろうとするのはある種の生存本能とも言えるかもしれない。

 

「俺にとっては………」

 

友達。俺にとって真にそう呼べる者は……

 

 

 

「………対人関係って複雑だな」

 

俺は考えるのをやめ、そう呟いて寝っ転がった。

 

そうしているうちに、いつの間にか眠りに落ちていった。

 

 

 

 




……………。

シリアス展開は難しいです。

ではでは。

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