ではどうぞー!
二日後、俺は白玉楼の庭で能力を使っていた。"感知能力を繋げた霊力"を南に飛ばしている。風呂で思いついた次の日から、こうして
俺は今日の分の探索を諦め、能力を解こうとした時目の前に大きな妖力を感じた。
「…なんだよ紫」
「あら?気配は消したつもりだったんだけど…霊力を飛ばしてるだけじゃなかったのね」
「気配はよく消えてたさ。上手くなったもんだよ」
「それは嬉しいわね♪」
目の前の妖力は紫のモノだった。昔は気配消すもの下手くそだったが、今ではかなり上達している。教えてた身としては嬉しい限りだ。紫が何をしに来たのかは気になったが、ふと思いついた疑問を投げかけてみた。
「なぁ紫、西行妖はどれくらいで満開になるんだ?」
その質問を聞き、紫は少し悩んだ顔をした。
そして少し自嘲気味に言う。
「…様子を見ないと分からないわね」
「じゃあ行くか。これも必要な情報だろ」
「そうね、じゃあこのスキマに----」
「それに頼りすぎると運動量減って太るぞ」
紫は開いたスキマを静かに閉じた。紫は元々のスタイルが一級品な為に、プロポーション関係の会話をすると意外と操れるのだ。大妖怪かっこわら痛いっ!!
「さっさと行くわよっ!」
「いって〜…また出てたか」
紫に扇子で叩かれた。やっぱり俺はポーカーフェイスなる物が苦手らしい。一応練習はしてるんだけどね、嵐の前で。
と、そんなことを考えていたら紫は結構遠くに行ってしまっていた。俺は急いで追いかけ、西行妖の元へ向かった。
〜西行妖前〜
「…蕾がつき始めてるわね」
「妖力も前より大きくなってるな。まだ対処できる範囲だけど…これが全開放だったらどんなに楽だったろうな…」
俺たちが西行妖に着くとその枝には蕾がつき始めていた。咲きかけている花は一つもないが、妖力だけは大きくなっていた。
俺の言葉を聞いた紫は俺に問いかけてきた。
「今はどれくらいの解放なの?」
「そうだな……もう少しで一割に到達ってくらいだな。下位の大妖怪くらいは相手出来るんじゃね?」
「わ、私は…どれくらい?」
「ん? 紫? 紫は上位の大妖怪だろ。お前近年負けてないだろ?」
「そうだけど…よ、良かった…」
紫は何の心配をしているのだろうか?誰がどう見ても紫は上位。ぶっちゃけ名を知らない妖怪の方が少ないのではないだろうか。
紫は何故かホッとしているが、俺はそんな事は気にかけず話題を戻した。
「で、あとどれくらいなんだよ?」
「そうね…」
紫はもう一度西行妖を見上げた。
しばらく西行妖を見回すと、一つ頷いて言った。
「あと…一、二ヶ月ってところかしら?」
「あと一、二ヶ月か…それまでに媒体を見つけないとな」
「…そうね」
紫は少し不安そうな表情をしていた。やっぱり心配な様だ。
「大丈夫だ紫。三人で頑張れば見つかるさ。俺にもあてがあるんだ、だから元気出せ」
「双也…そうね、私たちが不安になってちゃしょうがないわよね。頑張りましょう!」
「おう!」
そう言うと、紫はスキマを開いて俺に言った。
「じゃ、私も器探しに戻るわね。あても考えてみるわ。じゃあね」
紫はスキマの中に消えていった。
………太るぞってさっき言ったばかりなんだけど…?
まぁ太っても自業自得、俺にはかんけー無い。
じゃあ俺も行くか!
俺は再び器を探し始めた。
「あ…居た!!」
数日後、俺は東西南北に霊力を飛ばしても見つからなかったので、今度は八方位に区切って霊力を飛ばしていた。結果、見事目的の人物を発見する事に成功した。
なぜか昔いた場所よりもだいぶそれた場所に居るようだが…まぁいいだろう。
早速行動に移した。
「おーい紫ー!!」
取り敢えず紫に伝える。アイツからなら幽々子にも妖忌にも連絡は早くなると考えたからだ。
呼んでから数秒後、目の前にスキマが開いた。
「どうしたの双也?媒体見つかったの?」
「いや、そういう訳じゃない。二週間くらいここを空けるから、幽々子に妖忌に…嵐にも伝えといてくれ」
善は急げだ。俺はそう伝えると早速出かけようとした。が、紫に呼び止められた。
「ちょっと双也!?こんな大事な時にどこに行くっていうのよ!?」
俺は駆け出そうとした足を止め、振り返って言った。
「デカイ器が無いなら…作ってもらおうと思ってね!」
「……は?」
「じゃあそういう事だから!幽々子を頼むな!」
「双也!?」
俺は見つけた人物の居る方角に向かって瞬歩を使った。紫の声はどんどん遠ざかっていった。
「久しぶりに会うな…もう何十年も経つか……
俺は瞬歩の速度を上げた。
〜紫side〜
「はぁ…行っちゃったわね…それにしても"作ってもらう"って…?前に言ってたあての事かしら?」
双也はすごい速さで行ってしまった。ああ言っていた事だし、双也が物事を投げ出す様な人じゃないのは知っている。心配はしていないのだが、説明はして欲しかった。
「まぁ…双也の事だし、大丈夫よね」
そう勝手に結論付け、再びスキマに入ろうとした時後ろから声をかけられた。
「紫様、どうかされましたか?何か叫んでいたようでしたが」
「妖忌…いえ、何でもないわ。双也が突然どこかへ行っちゃっただけ…あ、二週間程戻らないらしいから、そのつもりでね」
「? 媒体を探す時間は一秒でも惜しいと言うのに出かけたのですか?双也殿は何を…?」
「どうやら何かあてがあるみたいよ。"無いなら作ってもらう"って言ってたけど…何のことかしらね?」
私は少し頭を悩ませながらスキマに入った。伝言の事は妖忌が幽々子に伝えてくれると予想を立てた。
さて、私も探さないと…
「………。ただ探しても見つかる可能性は限りなく低い。何か違う方面から考えれば…」
私はスキマに椅子を落とし、そこに座って考え始めた。
「器の大きいモノって言うのは、大抵存在する物として質の高いもの…そう…例えば神器や、古い経典や、大仏や………」
頭の中で例を次々とあげて器の大きい物の特徴を考える。元々私は考えるのが得意だ。あらゆる事柄を計算で割り出す事が出来る。その脳を使って考えていく。
すると、一つ思いつくことがあった。
「……………穢れ…?神々しさ…かしら?」
穢れ、神々しさ、これから割り出される効率的な探し方。
………あったわ。
「なんだ、一石二鳥じゃない♪」
私は自然と笑みをこぼしていた。
〜双也side〜
「はぁ……はぁ……ちょっと疲れたな…」
白玉楼を出て少し経つ。俺は森の中で休憩していた。いくら瞬歩で素早く移動出来るとはいえ結局は能力。脳の負担は存在するのだ。
と言うわけで少し疲れたので休憩を挟んでいた。2m程の段差を水が流れ落ちていたので、水を飲むついでに頭を濡らす。あーー生き返るー。
と、すぐ近くに気配を感じた。
「ア〜…おナカすいタわ……」
その気配はだんだん近付いてくる。振り返って気配のする方向を見ていると、木陰から何か出てきた。
「ミちニモ迷ッたし…コこどこヨ……」
それは……なんと言うか、すごいゴツゴツした外殻を纏った妖怪だった。例えるなら…仮面ライダーに出てきそうな怪人?声もなぜか二重に重なって聞こえる。
だが…何か違和感を感じるんだよな…一瞬姿がブレたし。
(えーっと、"視覚に影響を及ぼす力を遮断"っと)
自分自身に能力を使うと、妖怪の姿どんどんブレていき、最終的には一人の少女になった。
「あ〜…もう疲れたよ…ここらで休も……!? 人間!?」
その子は、背中に青と赤の変な物体を三本ずつ生やし、全体的に黒の服と黒のニーソックスを履いた少女だった。
原作のキャラにこんな子が居たような……つーかこの時代にニーソックスがあるなんて初耳だ…ってそれはどうでもいいや。
少女は俺を見て驚き、すぐに澄まし顔になって言った。
「ふっふっふ…人間、こんな所で私に見つかるなんて運がなかったな!この封獣ぬえ様が骨の髄まで食い尽くしてやるぞぉ!」
「………………」
暫く沈黙が流れた。驚いた直後の切り返しってこんなにも寂しい物だったのか…なんか悪寒がしてきた。
同時にこの少女の事を思い出した。あんまり見ない顔だったから完全に忘れてたが、彼女が自分で名乗ってくれたおかげでなんとかなった。
そう言えば、この子はなんで突然上から目線になったのだろうか?見た目は人間と大差ないのに…あもしかして
「えっと、ぬえ?もしかして姿が割れてるの気付いてない?」
「…………え?」
「俺にはぬえの正体ばっちり見えてるよ?」
そう言うと、ぬえはとても焦った顔をし…
「うわぁぁああああ!!!」
…顔を真っ赤にして絶叫したのだった。
後々の事を考えての登場!
なぜかぬえはいつも腹を空かせてるイメージです。
いやホント何故かわかりませんけどw
ではでは。