この物語もついに五十話目ですね。折り返しにもなってない進行の遅さに少し呆れる私が居ます…。
ではどうぞ。
「お、見えてきたな」
白玉楼を飛び出し五日目。森を抜けると都が見えてきた。大きくはない様だが、その中心あたりから創顕の神力を感じる。
俺は直前で速度を落とし、怪しまれないよう歩いて門をくぐった。
「ほー。大和程じゃないけど割と賑わってるな」
俺は歩きながら町を見回していた。服装こそ時代相応の質素なものだが、表情は皆明るい。どうやら創顕はうまく都を治めてるようだ。まぁ"表裏二神制"なんて思いつくキレ者がこれくらいのこと出来ないとは思ってないが。
俺は感じる神力に向け、まっすぐ歩を進めた。
「また…階段ですか…」
神力を感じる都の中心まで来た。見る限り神社になっている様なのだが、その前に長い階段があった。白玉楼程ではないにしろ面倒には変わりない。全く…なんでこんな高いところに住みたがるかねぇ?
人目につくから瞬歩はあまり使いたくない。しょうがないから歩く事にした。
マイペースに登っていると屋根らしきものが見えてきた。それは全体像が出てくるのに比例して大きくなっていく。登りきった階段の上には大きな大きな神社が広がっていた。
「おいおいおい…どうしてこんな大きいんだ…東大寺の大仏殿みたいじゃんか…」
俺は少し気圧されながらも足を進めた。一度前世の修学旅行で東大寺大仏殿に訪れた事があるが、その時と同じくらいの感動だった。距離感を無くしそうである。
「さて、どうやって入ろうかな…久しぶりだし、ちょっと脅かそうかな……はぁっ!」
俺は大きな庭の真ん中あたりで霊力を解放した。突然現れた霊力に驚いて出てくるんじゃないだろうか。
バンッ「なんだこの霊力は!?」
「久しぶり創顕!」
「お前…双也か!?霊力も桁違いになっているではないか!!」
「コツコツ瞑想してたんでね!」
「お前らしいな」
「「あっはっはっはっは!」」
……みたいな事を想像したが、正直短絡的すぎて自分でも少し呆れた。
そんな事を考えながら解放し続けていると、何やら地響きがしている事に気が付いた。
「え、何コレどうゆう展開?」
地響きはだんだん音に変わり、ドドドドドと少しずつ大きくなっていく。突然バンッと扉が開いたと思えば
「敵は排除する!!」
そう言って創顕が突っ込んできた。もちろん神剣を構えてだ。予想外で焦ったが、何とか天御雷で受け止める。
「いやいや…突然斬りかかってくるとか正気じゃねぇだろ」
「ん?お前…双也か?」
「そうだよっ!」
俺はそう言って創顕を弾き飛ばした。難なく創顕も着地する。俺たちはお互いに向き直った。
「本当に…双也か?霊力も異様に大きいし、諏訪に居たのでは?」
「何十年かしてから旅に出てたんだよ。ついでに瞑想も欠かしてないもんでな」
「ふっ、そうか…」
創顕は一言そう言うと、少し間をおいて俺に言った。
「久しぶりだな双也!!大戦以来だ!」
「ああ、久しぶり創顕!!元気そうで何よりだ!」
俺たちは久しぶりの再開に際して握手した。一度戦った相手だから割と仲が良いのだ。
「それでどうしたのだ双也、何か用か?」
「ん、ああ。お前に頼みがあって来たんだ」
「そうか、まぁ取り敢えずは中に入ろう。話はそれからだ」
俺は創顕に案内されて神社の中に入った。
〜白玉楼〜
「妖忌〜!お茶おねが〜い!」
「はいただいま!」
剣の稽古をしていたところ、居間の方から幽々子様の声が聞こえた。主の命令を無視する訳など無く、返事をして準備した。お茶というなら菓子も必要だろう、オマケに羊羹を添えて居間へ向かう。
幽々子様は外の桜を眺めていた。
「お持ちいたしました。お茶と羊羹です」
「あら、お菓子も用意してくれるなんて気が効くわね♪」
「お茶だけでは味気ないと思いまして」
「いいわ、ありがとう妖忌。戴くわね」
幽々子様はそう言って、とても美味しそうに食べ始めた。
それを眺めていると、表情は笑っているが少し寂しそうな雰囲気を纏っていることに気が付いた。
「…どうしましたかな幽々子様?」
「え?」
「今の幽々子様はどこか寂しそうな雰囲気を持っています。どうかされたのかと」
もう何年もこの方に仕えているのだ、今では僅かな表情の違いで気持ちを理解できるようになってしまったのだ。
幽々子様は少し驚いた顔をした。
「…ふふ、さすが妖忌ね。まさか心の内まで読まれるとは思っていなかったわ」
幽々子様は笑って言った。しかし寂しい雰囲気は消えていない。
幽々子様は桜に目を戻して話し始めた。
「どうしてかしらね…双也も紫も、そして妖忌も、あの桜をどうにかしようと頑張ってくれているけど……私がこうしている間に、皆何処かに行ってしまうんじゃないかって気持ちになるの。そう思ったら…寂しくてね…」
「………………」
幽々子様は俯いてしまった。主が想ってくれているなど家臣冥利に尽きる所ではあるが、ここは何か声をかけて差し上げるべきだと判断した。よく考えて幽々子様に声をかけた。
「幽々子様、ワシたちはどこにも消えたり致しません。紫様も双也殿も、そんな薄情なお方ではありませぬ。幽々子様を一人残して何処かへ消えるなどあり得ぬ事です。いえ、そんな事があればワシが叩っ斬ってやりましょう」
「妖忌……ふふ、私はいい家臣を持ったものね。いつもありがと妖忌」
「いえ、それがワシの勤めですので」
「もう、固いんだから」
どうやら少しは元気を取り戻した様だ。心の内で一安心した。
「それにしても…双也と紫はどこに行ったのかしらね?」
「紫様は存じ上げませんが、双也殿は何か人に会いに行ったようです。何かを作ってもらうそうで」
「作ってもらう?今必要な物って媒体なのよね?それを作ってもらうって……現人神は人脈が広いのね」
「全くですな。媒体を作れる存在が知り合いに居るなど…」
幽々子様は一口お茶を啜り、一息ついて思い出したように言った。
「あ、そう言えば紫は妖怪を集めてるみたいだったわね。しかも割と強い妖怪達」
「…幽々子様、なぜそんなことを?」
「この間紫がお風呂に入ってる時に乱入しようとしたんだけど、その時紫がブツブツ言ってたのを聞いたのよ」
「幽々子様…」
天然…というか破天荒な主の一面に呆れた視線を送ると、幽々子様は なによ〜 と言って頰を膨らませた。幽々子様のこう言うところには毎度苦労している。
それにしても…紫様は妖怪を集めて何をするつもりなのだろうか?紫様も時間を無駄にする人では無い。と言えば幽々子様の為になる事のはずなのだが…何か企んでいそうである。
ワシは手を顎に添えて考えていたが、幽々子様に話しかけられて我に帰った。
「まぁ、紫には紫なりのやり方があるんでしょ。皆頑張ってくれているのに何もしていない私が口を挟むところでは無いわ」
「誰もそんな事は思っていないと思いますが…まぁそうですね。紫様に任せましょう」
少し不安もあるが、紫様ならば大丈夫だろうという結論に至った。それくらいの知恵と力を持ったお方なのだ。
「ではワシは戻ります。何かあれば呼んでください」
「ええ、頑張ってね」
ワシはそう言って稽古に戻った。これが終われば媒体を探しに行くつもりである。
まっすぐ道場に戻った。
〜創顕の神社〜
「ふむ、事情はあい分かった。知り合いの頼みだ、協力してやろう」
「ありがとう創顕!」
神社に上げてもらい、創顕の部屋らしき所で事情の説明をした。
まぁ大きな器が必要だってことくらいだが、何となく察してくれたようだ。さすが創顕。
まぁ少し話が逸れて俺の天御雷の話題になった時もあったが。
創顕は少し考えて俺に言った。
「しかし、その器の数値というのはよくわからん。取り敢えず基準が知りたい」
「基準かぁ…じゃあ取り敢えず適当に神器作ってみてくれ。測るから」
「うむ。…ふっ」
創顕が少し力むと、手から光が漏れ出した。止んだ後には一振りの剣が握られていた。
「これでいいか?普段作るのと同じくらいの神力を込めたが」
「ああ、十分だ。じゃあ…ペタッと」
その剣に札を貼ると、少ししてから数字が浮かび上がった。その数値は………百。
「おお!これで百か!望みはありそうだな!」
感動した。結構感動した。だっていままで一桁ばっかだったんだよ?それが一桁飛ばして百!嬉しくない訳がない。割と楽に三万まで届きそうだ。
と、そうしていると創顕が難しい顔をしている事に気が付いた。
「どうした創顕?」
「いや、コレで百となると…三万の神器を作るには時間がかかるかもしれん」
「は?」
「神器と言うのは神力を込めて形作るもの、しかし一度に大量の力を込めれば形を保てずに爆散してしまうのだ。ゆえに、時間をかけてゆっくり込める必要がある」
「三万の器なら…どれくらいかかる?」
俺の問いに、創顕は苦々しい顔をして答えた。
「……形を保てるようにゆっくり込めるとして……約一年だな」
「!!」
俺は絶句した。俺たちは一年なんて待っていられないのだ。西行妖が咲けば大量の人が死ぬ。あまりに死んでしまえば、今度こそ幽々子の能力が暴走を始めるかもしれないし、もしそうなれば被害は白玉楼だけにはとどまらないだろう。
「すまぬ双也…力になってやれないようだ…」
「いや、いいよ。最初から簡単に見つかるものじゃないってのは分かってた事だから…」
口ではこう言っているが、正直まだ絶望したままだ。このままじゃ幽々子達を救えない、絶体絶命だ。
「双也、取り敢えず今日は泊まっていけ。力にはなってやれないが、お前には休養も必要だろう」
「……ああ、ありがと…」
今は考える時間が必要だ。創顕もそれを察してこう言ってくれたのだと思う。
俺は言葉に甘えて、今日一日分の部屋を借りた。
創顕はいい人。
ではでは。